平成30年6月18日
公正取引委員会事務総局
近畿中国四国事務所中国支所
公正取引委員会は,消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保する観点から,消費税の転嫁拒否等の行為(以下「転嫁拒否行為」という。)の未然防止のための取組と,転嫁拒否行為に対する迅速かつ厳正な対処のための取組を進めてきたところである。
近畿中国四国事務所中国支所(以下「中国支所」という。)においても,転嫁拒否行為等に対して迅速かつ厳正に対処することを目的として,「消費税転嫁対策調査室」を設置し,中国支所管内(鳥取県,島根県,岡山県,広島県及び山口県)において消費税転嫁対策に係る取組を実施してきたところ,平成29年度における管内の取組状況は以下のとおりである。
管内においては,平成29年度は,転嫁拒否行為に対して,23件の指導を行っている。主な指導の概要は別紙のとおりである。
| 年 度 | 平成29年度 | 平成28年度 | 累計(注) | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | ||
| 措 置 | 指 導 | 370 《16》 |
23 《1》 |
362 《20》 |
26 《1》 |
2,121 《140》 |
151 《14》 |
| 勧 告 | 5 《1》 |
0 《0》 |
6 《0》 |
0 《0》 |
43 《8》 |
2 《0》 |
|
| 合 計 | 375 《17》 |
23 《1》 |
368 《20》 |
26 《1》 |
2,164 《148》 |
153 《14》 |
|
| 違反事実なし | 149 | 9 | 218 | 11 | 1,299 | 80 | |
(注) 累計の数値は,平成25年10月から平成30年3月までの累計。また,全国の件数には,中国地区の件数を含む(以下同じ。)。
《 》内の件数は,大規模小売事業者に対する勧告又は指導の件数で内数である。
平成29年度の措置件数(勧告又は指導を行った事件の件数をいう。以下同じ。)について措置を採った特定事業者(注1)の業種別で分類すると,管内においては,製造業が4件(17.4%)と最も多く,建設業及び情報通信業がそれぞれ3件(各13.0%)と続いている。
(注1) 特定事業者とは,[1]大規模小売事業者,[2]特定供給事業者(注2)から継続して商品又は役務の供給を受ける法人事業者である。
(注2) 特定供給事業者とは,[1]大規模小売事業者に継続して商品又は役務を供給する事業者,[2]資本金等の額が3億円以下である事業者,個人事業者等である。
(注1) 累計の数値は,平成25年10月から平成30年3月までの累計。
(注2) 複数の業種にわたる事業者が勧告又は指導の対象となった場合は,当該事業者の主たる業種により分類している。「その他」は娯楽業,医療福祉,事業サービス業(ビルメンテナンス業,警備業等)等である。
(注3) ( )内の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
平成29年度の措置件数について行為類型別で分類すると,管内においては,買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法第3条第1号後段)が23件(92.0%)と最も多い。
(注1) 累計の数値は,平成25年10月から平成30年3月までの累計。
(注2) 1件の事件において複数の違反行為類型について勧告又は指導を行っている場合があるため,違反行為の類型別件数の合計と表1及び表2に記載の措置件数とは一致しない。
(注3) ( )の数値は合計値に占める割合であり,小数点以下第2位を四捨五入しているため,合計は必ずしも100とならない。
管内においては,平成29年度は,転嫁拒否行為によって特定供給事業者が被った不利益について,特定事業者19名から,特定供給事業者403名に対し,総額1561万円の原状回復が行われた。
| 年 度 | 平成29年度 | 平成28年度 | 累計(注1) | |||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | 全国 | 中国地区 | |
| 原状回復を行った特定事業者数 | 357名 | 19名 | 293名 | 28名 | 1,211名 | 106名 |
| 原状回復を受けた特定供給事業者数 | 21,698名 | 403名 | 36,137名 | 239名 | 115,988名 | 6,603名 |
| 原状回復額 | 8億1008万円 | 1561万円 | 9億2957万円 | 1341万円 | 28億2564万円 | 8154万円 |
(注1) 累計の数値は,平成26年4月から平成30年3月までの累計。
(注2) 各期間の原状回復額は1万円未満を切り捨てている。
転嫁拒否行為等に関する事業者からの相談や情報提供を一元的に受け付けるための相談窓口を設置しており,管内においては,平成29年度は18件の相談に対応した。
(注) 転嫁カルテル及び表示カルテルの届出に関する相談件数並びに情報提供件数を含む。
様々な業界における転嫁拒否行為に関する情報や取引実態を把握するため,管内においては,平成29年度は7名の事業者及び10の事業者団体に対してヒアリング調査を実施した。
事業者にとって,より一層相談しやすい環境を整備するため,管内においては,平成29年度は移動相談会を6回実施した。
消費税転嫁対策特別措置法の内容を広く周知するため,事業者及び事業者団体を対象として,公正取引委員会主催の説明会を実施しており,管内においては,平成29年度に6回実施した。
商工会議所,商工会,事業者団体等が開催する説明会等に,公正取引委員会事務総局の職員を講師として派遣しており,管内においては,平成29年度に1回派遣した。
消費税の転嫁の方法の決定に係る共同行為(転嫁カルテル)及び消費税についての表示の方法の決定に係る共同行為(表示カルテル)の届出並びに届出書の記載方法等に関する相談を受け付けているところ,管内において,平成29年度はいずれもなかった。
なお,平成30年3月末までに,管内において,転嫁カルテル2件を受理し,このほか届出書の記載方法等に関して,8件の相談に対応した。
主な指導事例
(平成29年4月〜平成30年3月)
1 減額(第3条第1号前段)
A農業協同組合は,同組合が使用する駐車場の賃貸人(特定供給事業者)に対し,あらかじめ本体価格で定めていた賃料について,対価を支払う際に消費税相当額を減じて支払っていた。
2 買いたたき(第3条第1号後段)
[1] ホームページ制作業を営むB社は,サーバーの保守業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[2] C農業協同組合は,危機管理の研修会及び警備・保安等に係る業務を委託しているそれぞれの事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[3] 化粧用具製造業を営むD社は,営業業務を委託している事業者(特定供給事業者)及び化粧用具の検査等に係る業務を委託している事業者(同)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[4] 広告業を営むE社は,原稿作成業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[5] 建築工事業を営むF社は,大工工事を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[6] 新聞発行業を営むG社は,新聞の配送を委託している事業者(特定供給事業者)並びに原稿の執筆及び撮影に係る業務を委託している事業者(同)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
[7] H森林組合は,森林整備に係る業務を委託している事業者(特定供給事業者)に対し,平成26年4月1日以後も消費税率の引上げ分を上乗せすることなく,消費税込みの委託代金を据え置いていた。
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