令和6年6月19日
公正取引委員会事務総局
九州事務所
公正取引委員会は、迅速かつ実効性のある事件審査を行うとの基本方針の下、国民生活に影響の大きい価格カルテル・入札談合・受注調整、中小事業者等に不当に不利益をもたらす優越的地位の濫用や不当廉売などに厳正かつ積極的に対処することとしている。また、IT・デジタル関連分野や農業・漁業分野における独占禁止法違反被疑行為など、社会的ニーズに的確に対応した多様な事件に取り組んでいる。
そして、公正取引委員会は、一般から提供された情報(申告)、自ら探知した事実等を検討し、必要な審査を行い、審査の結果、違反行為が認められたときは、違反行為をした事業者等に対し、違反行為を排除するために必要な措置等を命じている。違反行為のうち、価格カルテル・入札談合・受注調整、優越的地位の濫用等については、違反行為をした事業者に対して課徴金の納付を命じている。また、違反被疑行為について公正かつ自由な競争の促進を図る上で必要があると認められるときは、確約手続を適用し、事業者と協調的な問題解決を図っている。
最近の5年間における九州地区の独占禁止法違反事件等の処理状況は、次のとおりである。
処理内容/年度
令和2
年度
令和3
年度
法的措置
(注1)
排除措置命令等
0 0 0 3 1その他
警告(注2)
0注意(注3)
5打切り(注4)
2小計
7合計
74
(注1)「法的措置」とは、排除措置命令、課徴金納付命令及び確約計画の認定であり、一つの事件について、排除措置命令と課徴金納付命令が共になされている場合には、法的措置件数を1件としている。
(注2)「警告」とは、排除措置命令を採るに足る証拠が得られないが、違反の疑いがある場合に行う措置である。
(注3)「注意」とは、違反行為の存在を疑うに足る証拠が得られないが、将来違反につながるおそれがある場合に行う措置である。
(注4)「打切り」とは、違反行為が認められない等により、審査を打ち切る場合をいう。
福岡有明海漁業協同組合連合会(以下「福岡有明漁連」という。)は、漁協(注1)を通じて、生産者(注2)から乾海苔の販売を受託し、当該乾海苔を、自らが実施する乾海苔の入札により指定商社(注3)に販売しているところ、次の行為を行っている。
ア 漁協を通じて、生産者に対し、生産した乾海苔の全量を生産者が所属する漁協に出荷する旨の条件を定めた誓約書に記名押印させるとともに、当該誓約書に定めた条件を遵守するよう要請している。
イ 漁協に対し、生産者から集荷した乾海苔の全量を自らに出荷する旨の条件を覚書として定めるとともに、当該覚書に定めた条件を遵守するよう要請している。
ウ 指定商社に対し、自らが実施する入札に付した乾海苔以外に、生産者が生産した乾海苔の買付けを行わない旨の条件を、自らが構成員となっている九州地区漁連乾海苔共販協議会(以下「九州共販協議会」という。)(注4)において書面により定めるとともに、書面に定めた条件を遵守するよう要請している。
エ 自らが構成員となっている九州共販協議会において、自らが実施する入札に付したものの、最も高い入札価格が基準価格(注5)に満たなかった乾海苔について、当該乾海苔を生産した生産者の意向を確認することなく、当該乾海苔を処分することとしている。
(令和5年6月27日 確約計画の認定)
(注1)福岡有明漁連の会員である漁業協同組合であって所属組合員に乾海苔を生産する者がいる漁業協同組合をいう(手鎌漁業協同組合を除く)。
(注2)漁協の所属組合員のうち乾海苔を生産する者をいう。
(注3)福岡有明漁連が実施する乾海苔の入札に参加する事業者をいう。
(注4)福岡県、佐賀県、熊本県、大分県、長崎県、鹿児島県及び山口県の区域内で乾海苔の販売事業を行う漁業協同組合連合会等を会員とした任意団体。
(注5)福岡有明漁連が年度ごとに設定する乾海苔1枚当たりの最低落札価格をいう。
公正取引委員会は、優越的地位の濫用に係る情報に接した場合には、効率的かつ効果的な調査を行い、独占禁止法違反につながるおそれのある行為が認められた場合には、未然防止の観点から注意するほか、独占禁止法違反が認められた場合は厳正に対処することとしている。
令和5年度においては、九州地区で5件の注意を行ったところ、その主な事例は以下のとおりである(注)。
(注) 次の各事例は、独占禁止法違反につながるおそれがあったものである。
ア 金属製品製造業を営むAは、運送業務を委託する物流事業者に対し、積込みの際に待機時間が発生しているにもかかわらず、待機に伴う費用の支払について物流事業者と取り決めておらず、待機料を支払っていなかった。
イ 食料品製造業を営むBは、運送業務を委託する物流事業者に対し、書面による合意を得ることなく、あらかじめ定めた代金から振込手数料相当額を減額して支払っていた。
公正取引委員会は、申告のあった小売業に係る不当廉売事案については、迅速に処理するとの方針の下で対処しているほか、大規模な事業者による不当廉売事案又は繰り返し行われている不当廉売事案であって、周辺の販売事業者に対する影響が大きいと考えられるものについて、周辺の販売事業者の事業活動への影響等について個別に調査を行い、問題のみられる事案については厳正に対処することとしている。
迅速に処理するとの上記方針の下、令和5年度においては、酒類及び石油製品の小売業について、不当廉売につながるおそれがあるとして九州地区で22件の注意を行った。
次の各事例は、独占禁止法違反につながるおそれがあったため、注意を行った。
ア 供花のスタンド花の販売を行う24名は、共同して、供花のスタンド花の販売価格について5,000円引き上げることを合意した。(価格カルテル)
イ 医師会Cは、自由診療の予防接種等の標準料金を決定し、会員である医師に対し、料金表として配布していた。(団体による価格決定)
独占禁止法では第4章において、事業支配力が過度に集中することとなる会社の設立等の禁止(第9条)及び銀行業又は保険業を営む会社の議決権取得・保有の制限(第11条)について規定しているほか、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合及び不公正な取引方法による場合の会社等の株式取得・所有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転及び事業譲受け等の禁止並びに一定の条件を満たす企業結合についての届出義務(第10条及び第13条から第16条まで)を規定している。
公正取引委員会は、これらの規定に従い、企業結合審査を行っているところ、最近5年間における九州地区の企業結合関係届出の状況は、次のとおりである。
令和2
年度
令和3
年度
中小企業等協同組合法は、同法に基づき設立された事業協同組合及び信用協同組合に対し、同法第7条第1項第1号に規定する小規模事業者以外の事業者が加入したとき又は組合員が同小規模事業者でなくなったときには、その旨を公正取引委員会に届け出ることを義務付けている(同法第7条第3項)。
最近5年間における九州地区の協同組合届出件数は、次のとおりである。
令和2
年度
令和3
年度
公正取引委員会は、独占禁止法等の普及・啓発及び競争政策の運営に資するため、次のような広報・広聴活動を行っている。
競争政策への理解の促進と地域の経済社会の実情に即した政策運営に資するため、独占禁止政策協力委員制度を設置しており、公正取引委員会が行う広報活動等に御協力いただくとともに、独占禁止法等の運用や競争政策の運営等について意見聴取を行っている。
令和5年度においては、(1)中小企業の取引適正化/優越的地位の濫用規制・下請法の規制、(2)競争環境の整備に係る調査・提言、(3)広報・広聴活動、(4)地域経済の実情と競争政策上の課題、(5)公正取引委員会に対する期待等についての意見聴取をそれぞれ行った(注)。
(注) 聴取した意見の概要は、他の地区のものと合わせて令和6年5月24日に公表されている。。
各地の有識者と公正取引委員会の委員等との懇談会及び講演会を通して、競争政策についてより一層の理解を求めるとともに、幅広く意見及び要望を把握し、今後の競争政策の有効かつ適切な推進を図るため、毎年、全国各地において有識者との懇談会を開催している。
九州地区では、令和5年度は佐賀市において、佐賀県商工会議所連合会、佐賀県経営者協会等の経済団体、消費者団体及び報道機関と公正取引委員会委員との懇談会を開催するとともに「成長と分配の好循環の実現と公正取引委員会の役割」をテーマに講演会を開催した。
このほか、九州事務所長等と各地の有識者との懇談会を開催しており、令和5年度は福岡市(2か所)、福岡県大川市、佐賀市(4か所)、佐賀県唐津市、同県鳥栖市、同県多久市、同県武雄市、長崎県諫早市、同県壱岐市、同県北松浦郡佐々町、大分市(2か所)、熊本市、熊本県八代市、同県宇土市、同県天草市、宮崎県西都市、鹿児島市(2か所)、鹿児島県出水市及び同県薩摩川内市の計25か所において開催した。また、福岡県及び佐賀県の弁護士会との懇談会を開催した。さらに、公正取引委員会委員が、福岡県粕屋郡新宮町及び佐賀市の事業者の工場等を訪問し、事業実態の説明を受けるとともに、労務費、原材料価格、エネルギーコストの転嫁状況等について意見交換を行った。
公正取引委員会は、独占禁止法等の違反行為の未然防止を図るため、説明会・講習会等を自ら主催しているほか、各種業界団体等から要請を受けて講習会等へ講師を派遣している。
九州地区では、令和5年度は独占禁止法に関する説明会等を19回実施した。また、入札談合等関与行為防止法に関する研修会等を37回実施したほか、インボイス制度への対応に係る独占禁止法等において問題となり得る行為についての説明会を10回実施した。
このほか、令和5年度は、働き方改革等の課題について、各地域で地方公共団体や労使を交えて話し合う場として全都道府県に設置されている「地方版政労使会議」につき、令和6年2月から3月にかけて開催された九州地区の同会議に出席し、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」の説明を行った。
将来を担う中学生、高校生、大学生等を対象に、市場経済の仕組みや競争の機能について説明するなどし、競争の必要性・重要性、独占禁止法の役割等について理解してもらうことを目的として、公正取引委員会の職員による「独占禁止法教室」を開催している。
九州地区では、令和5年度は中学生向け独占禁止法教室を10回、高校生向け独占禁止法教室を7回、大学生向け独占禁止法教室を11回それぞれ開催した。
一般消費者に独占禁止法の内容や公正取引委員会の活動について、より一層理解を深めてもらうことを目的として、地域の一般消費者等を対象としたセミナーを開催しているほか、公正取引委員会の職員を消費者団体等の勉強会等に派遣している。
九州地区では、令和5年度は福岡市、長崎市、長崎県佐世保市、熊本市、熊本県玉名市及び宮崎市の計6か所において、消費者セミナーを開催した。
公正取引委員会は、法運用に対する理解を深め、違反行為の未然防止を図るため、相談を受け付けている。
最近5年間における九州地区の相談受付件数は次のとおりである。
令和元
年度
令和2
年度
令和5
年度
独占
禁止法
下請法
合計
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第2に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局九州事務所経済取引指導官
電話 092-431-5882(直通)
第3に関する問い合わせ先 公正取引委員会事務総局九州事務所総務課
電話 092-431-5881(直通)