新設定された2.5リッターハイブリッド「プレミアムEX」
クルマ雑誌の編集長を経て、フリーランスとして活躍中。新車の試乗記をはじめ、クルマの世界をいろいろな角度から取り上げた記事を、専門誌、一般誌、そしてウェブに寄稿中。趣味としては、どちらかというとクラシックなクルマが好み。1年に1台買い替えても、生きている間に好きなクルマすべてに乗れない......のが悩み(笑)。 <p id="gallery"></p>
スバルがSUV「フォレスター」をフルモデルチェンジし、2025年4月に発表。6月初旬に、ストロングハイブリッドとターボ、二つのモデルに乗った。だいぶ洗練されたのと同時に、悪路走破性も高まっているのが印象的だ。
フォレスターのいいところは、気取らない実直さ、と私は思ってきた。四角い車体、スバル独自のメカニズム、安全装備、それに比較的買いやすい価格などが、あげられる。
第6世代になった新型フォレスターは、従来の特徴を継承して進化させたところもあり、いっぽうで、デザインや価格など変わったなと思わせられる点も散見された。
新型フォレスターのエンジンは二つ。2.5リッターエンジンを使った「ストロングハイブリッド」と、1.8リッターターボ。どちらも水平対向エンジンで、4WDシステムが組み合わされている。
とくに大きく変わったのが、外観だ。大型グリルと、上下幅の薄いヘッドランプ、それに大型のバンパー一体型エアダム。米国のピックアップトラックにも通じる力強さを感じさせる。彼の国ではたしかにウケそうだ。
「量感と頑丈さの追求をモチーフに」外観をデザインし、「ワイド感を強調」したフロントマスクなど、スバルではフォレスターの意匠を説明。車体側面では「フェンダーの張り出し感を強調」したそうだ。
デザインには時間をかけたようで、ドライブトレインやサスペンションシステムが先で、そのあとデザインを適合させていくのが、一般的な流れのようだが、「今回はデザインが先でした」とスバルのエンジニア。順序が逆で現場にはとまどいもあったようだが、「でもおかげで最新のレベルに適合させることができました」。災い(?)転じて福となす、だろうか。
新型フォレスターに乗って感じたのは、操縦性がより高くなったこと、乗り味がよくなったこと、それに驚くほどしずかになったこと。
理由を確認すると、シャシーは継続して使うものの、ボディーは骨格部材を組み立てたのち外板を溶接するフルインナーフレーム構造を採用。それでボディーの剛性が高まったと説明された。ちょっとマニアックな記述なので「?」と思うひともいるだろうけれど、誰が運転しても、その恩恵はよくわかるはず。
高速道路での車線変更を含めた走行性、屈曲路、さらに岩がごろごろの悪路、いろいろな道を走ってみた。従来モデルとはかなりちがう。舗装路では安定していて、山道ではきびきびと、そして悪路では乗員がひどく揺さぶられることがない。すばらしく質感が上がっている。
なぜそうなったか。ボディーの剛性がうんと上がったことで、サスペンションのスプリングとダンパーの動きの自由度が高まった。そのため、本来の機能をフルに発揮できるようになったからだという。
とはいっても、さきに触れたように、米国メーカーのプレミアムクラスのSUVに匹敵するデザインで、上質感が高い。悪路がどんなに得意でも、そこを走るのは気がひける。
スバルでは、ただし、積極的にキャンプも楽しんで、と用品を展開。標準モデルとちがうデザインのグリル、太陽の照り返しを防ぐというフードデカール、サイドプロテクターなど豊富に用意されている。ルーフテントも載る。
すごいのは、ボディーにボルト留めされて堅牢性を高めたユーティリティフックを含めた「荷室大活用パッケージ」。やるなら徹底的に、という姿勢が、あいかわらずスバルらしいなあと私は好感を抱くのだった。
発売直後はストロングハイブリッドがよく売れているようだが、いまは車両の供給の問題もあって、メーカーが当初考えていた以上にターボ車のセールスが追いつくいきおいという。
乗った印象だと、落ち着いていて乗り心地がよくて(おどろくほど)しずか、と先に書いたのが、ハイブリッドの特徴。広い後席を活用して3人以上で長距離をドライブする機会が多いひとには、よく合うと思う。
ターボ車は活発だ。足まわりの設定はやや硬めだけれど、それでも設定は上手で、トルクがたっぷりあるエンジンの特性と、クルマの動きはよく合わせてある。カッコはSUVだけれど、カーブが連続する山道を走るのもたのしい。もちろん、ファミリーカーとして使っても問題はないだろう。
2台の新型フォレスターを体験したあと、これならもっとスポーティーな仕立てでもいけそうだ、と思わせられた。「(モデル展開は)段階的に」とスバルの開発者は言っているので、そのうち「STI」のようなスポーツモデルが登場することを期待したい。
価格は、「エスハイブリッド」とスバルが呼ぶ2.5リッターハイブリッド車が「X-BREAK(エックスブレイク)S:HEV」の420万2000円から。1.8リッター4気筒ターボ車が「SPORT」の404万8000円から。
300万円台の設定はなくなった。それでも、内容を考えると、クルマの値上がりがはげしい昨今において、スバルはがんばったと思う。
【スペックス】
SUBARU Forester S:HEV(カッコ内はSPORT)
×ばつ1730mm
ホイールベース:2670mm
2498cc水平対向4気筒ハイブリッド(1795cc水平対向4気筒) 全輪駆動
最高出力:118kW(130kW)+モーター88kW(なし)
最大トルク:209Nm(300Nm)+モーター270Nm(なし)
燃費 :18.4km@L(13.6km@L)(ともにWLTC)
乗車定員:5名
価格:448万8000(404万8000)円
問い合わせ・写真:SUBARU