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BMWの新型EV「iX3」 大変革とげる新世代のノイエ・クラッセ

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2025年10月06日

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BMW iX3

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BMWが新型EV「iX3」を2025年9月初頭にミュンヘンで発表した。フロントマスクの目立ったデザイン変更。これには、じつは理由がある。そしてそれよりもっと大きな変革がiX3にはあるのだ。

「未来を見据えた」大規模プロジェクト

iX3はSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)とBMWが呼ぶセグメントに属するモデルで、車名は先代から引き継いでいる。全長約4.8mの車体をもつ余裕あるパッケージで、使い勝手もいいモデルだ。

フロントマスクの意匠はあたらしいがプロポーションはオーソドクス
フロントマスクの意匠はあたらしいがプロポーションはオーソドクス

今回はしかし、カッコいいとか、クラス感があるとかといった、従来の価値基準でもってiX3を語っては、評価し足りない、ってことになるかもしれない。

「未来を見据えた当社史上最も大規模なプロジェクト」と、BMW取締役会のオリバー・ツィプセ会長は言う。メディア向け発表会のあったミュンヘンの会場には「NEW ERA」(あたらしい時代)なる大きな垂れ幕が掲げられていた。

IAAモビリティ2025発表会場におけるツィプセ会長 写真:筆者
IAAモビリティ2025発表会場におけるツィプセ会長 写真:筆者

もうひとつの名「ノイエ・クラッセ」 歴史をへて再登場

なにがあたらしいのだろうか。じつはiX3にはもうひとつの名前がある。「ノイエ・クラッセ」というのだ。その第1弾とされる。

ノイエ・クラッセをそのまま訳すと、あたらしいクラス。もとは1962年にBMWが送り出したセダン「BMW1500」で使い始めた名称だ。

リアビューは一目で新型iX3とわかる
リアビューは一目で新型iX3とわかる

当時のドイツで、プレミアムセダンとしてあるていど競合関係にあったのがメルセデス・ベンツ。しかしカバーしていなかったマーケットセグメントに向けてBMWが放ったのが1500で、それをあたらしいクラスと呼んだのだ。

ノイエ・クラッセはラインアップを拡充していき、排気量を拡大し、また4気筒に加えて直列6気筒エンジンを開発。レースにも積極的に参戦。なかでも2ドアの「02」シリーズがウケて、日本でも「2002」は人気が高かった。

iX3はウィンドシールド下のBMWパノラミックiDriveや大型センタースクリーンなどデジタル技術がさらに進化
iX3はウィンドシールド下のBMWパノラミックiDriveや大型センタースクリーンなどデジタル技術がさらに進化

パワフルで高回転型の精緻(せいち)な作りのエンジン、すぐれた操縦性能、デザイン、全体の作りの品質感と、ノイエ・クラッセは、それまでのBMW車、もっといえばドイツ車と一線を画す魅力をそなえていたのだ。

その名前をBMWが2025年にふたたび使う背景には、さきのツィプセ会長の言葉にあるように、クルマづくりのほとんどすべてにおいて、大きなレボリューションを起こそうという気概が感じられる。

設計や製造ラインに新たな工夫

どこがいままでとちがうのか。ひとつは、円筒形のバッテリーセルを独自開発したこと。加えて、それらを並べてパック。それをシャシーに組み込む設計を採用した。

デブレツェン工場ではバッテリーも製造
デブレツェン工場ではバッテリーも製造

クルマに搭載するメインコンピューターは、四つに絞り、各機能を振り分けた。部品点数や構成を見直し、効率化、軽量化、組み立ての容易性などを大きく向上させたという。

私は9月に、ミュンヘンで実車を見たあと、ハンガリー第2の都市デブレツェンにBMWが建てたBEV(バッテリー駆動EV)専用工場を見学した。組み立てもノイエ・クラッセのあたらしさの一つという。

バッテリーはパックに収められ車体に組み込まれる
バッテリーはパックに収められ車体に組み込まれる

敷地はサッカー場70個分に相当する広さで、製造ラインにも工夫が凝らされている。プリアセンブリーしたパーツを、組み付けラインの近くに置いておき、作業を迅速に行う。ライン自体も増産などにすぐ対応できる設計だ。

新世代に不可欠な環境への配慮も

現時点でBMW最新と、工場長が胸を張るのには、さらなる理由がある。温室効果ガスの抑制だ。デブレツェン工場では、化石燃料をいっさい使わず、iX3の組み立てを行う。

周囲には草地を開墾してのソーラーパーク(ソーラーパネルを並べたもの)が広がり、電力を供給する。

製造などを統括する取締役会メンバーのミラン・ネデリコビッチ氏(左)とデブレツェン工場のハンス゠ペーター・ケムザー工場長
製造などを統括する取締役会メンバーのミラン・ネデリコビッチ氏(左)とデブレツェン工場のハンス゠ペーター・ケムザー工場長

おもしろかったのは、土日の休みのあいだに発電した電力の使いかた。電力で水を保温しておき、月曜には、車体の水溶性塗料の希釈などに役立てるんだそうだ。

新世代のノイエ・クラッセは、上記のように環境適合性も重要な課題だったそうだ。

iX3のリアシート
iX3のリアシート

デブレツェン工場で作られるバッテリーセルは、従来のバッテリーに対してカーボンフットプリント(製造過程で排出されるCO2などの量)を42%削減。

バッテリーセルをはじめ、足回りのアルミニウム部品、シートやフロアマットや天井の内張りなど、iX3の3分の1は、リサイクルされた二次原材料で出来ているという。

iX3のバックドアを開けた様子
iX3のバックドアを開けた様子

「私がBMWに籍をおいて34年。数かずの新型車や大胆な技術発表などがありましたが、今回のノイエクラッセこそ、人生でただ一度の経験です」。ツィプセ会長は力をこめてそう言った。乗ってもすごそうだけれど、それは機会を改めて報告します。

【スペックス】
BMW iX3
×ばつ1635mm
ホイールベース:2897mm
車重:2360kg
電気モーター 前後各1基 全輪駆動
システム最高出力:345kW
システム最大トルク:645Nm
一充電走行距離:679〜805km
乗車定員:5名
0-100km/h加速:4.9秒
価格:未定

写真:BMW AG

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ベーチャン
2025年10月18日 12:19 PM

今回は最初から受け入れられそうなデザイン。縦長の細いキドニーがオマージュか。ただこのデザインでICEも出して欲しいところだ。まだまだBEVへの切り替わりには時間がかかるだろう。

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ベーチャン
2025年10月18日 12:19 PM

今回は最初から受け入れられそうなデザイン。縦長の細いキドニーがオマージュか。ただこのデザインでICEも出して欲しいところだ。まだまだBEVへの切り替わりには時間がかかるだろう。

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