加速器工学部
加速器工学部では、エネルギー規模で、MeV級の静電加速器、数十MeV級のサイクロトロン、数万MeV級の重イオン加速器の運転維持管理を行い、陽子からキセノンまでの数多くのビーム、またミクロンから数十cmのビーム領域をカバーする安定的で信頼性の高いビームを加速、供給しています。このようなイオンビームは、マイクロビームや中性子による生物学的放射線応答の研究、がん診断でお馴染みの放射性同位元素を生産、高エネルギー炭素線によるがん治療などに応用されています。我々は、これらの用途に応じた加速装置、ビーム制御装置などのハードウエアの研究開発だけではなく、腫瘍や正常組織に対する生物学的効果を考慮した治療ビームの生成やその制御など、ソフトウエアの研究開発も行っています。このような研究やそこで開発された技術は、実際のがん診断や粒子線がん治療などの目に見える形で国民生活の向上に役立っています。
研究テーマ
重粒子線がん治療装置HIMAC
HIMACとは、"Heavy Ion Medical Accelerator in Chiba"の略で、世界初の重イオンがん治療専用施設です。HIMACは、炭素線をはじめとする重粒子線を核子あたり800 MeVのエネルギーまで加速するための主加速器(シンクロトロン)・入射器(線形加速器)と、患者さんに照射するための治療室で構成されています。
HIMAC模型図
治療室E
[画像:治療室E]
オンデマンド治療に向けたスキャニング照射の高度化
従来法に比べより高度な照射を実現する「高速3次元ビームスキャニング照射法」を開発し、これに「呼吸同期照射」を組み合わせ、世界に先駆けた体幹部スキャニング照射の実現に向けて取り組んでいます。また、360°任意の角度から照射が可能な回転ガントリーを重粒子線でも利用できるように超伝導電磁石を軽量化のために採用するなど研究開発を進めています。これにより、患者さんの身体的負担の更なる軽減や治療時間の短縮、より一層の治療効果の向上が期待されます。
ガントリーイラスト(株式会社東芝より提供)
[画像:ガントリーイラスト]
© 2015 TOSHIBA CORPORATION
治療室G
[画像:治療室G]
「世界を牽引する重粒子線がん治療」の実現に向けて
重粒子線治療の普及のため、重粒子線がん治療に関わる将来の医療関係者の人材育成やHIMACを用いた共同利用研究、さらには国内外の関連機関との協力や支援など、様々な活動に取り組んでいます。
世界地図
[画像:世界地図]
静電加速器を用いる照射・分析技術の開発、産業活用へのサポート
放射線医学総合研究所は、元素分析と陽子線マイクロビーム細胞照射用、及び中性子線発生用の2台のタンデム型静電加速器を有します。
本施設で行われている研究の進捗と共に利用者からは様々な要望が寄せられ、それを基にした新規技術の開発を行い、実現しています。PIXE技術を発展させて分析できる元素の範囲を拡充、細胞照射の速度や照射範囲の向上、エネルギー幅の小さな中性子場の開発はその成果の一端です。
これらの成果と積極的な広報活動により、近年では国内外の大学・研究機関だけでなく産業界の利用希望件数も急増しています。
当施設は今後も科学の発展に寄与する新たな技術開発に積極的に取り組んでいきます。
SPICE照射室、ビームライン
SPICE(マイクロビーム細胞照射装置)の外観。上図は照射室、下図はビームライン。 2μmのビームサイズで細胞皿あたり10000個の細胞に照射可能。
PIXE分析グラフ
NIST SRM2783標準試料のPIXE分析の結果。赤字が新たに分析できるようになった軽元素。
これら以外にFやU等の元素分析も可能になりました。
サイクロトロン加速器の高度化研究
サイクロトロンは、放射性同位元素(RI)の生産や、物理・生物分野の基礎的研究に利用されています。RI生産では、分子イメージング用RIに加え、標的アイソトープ治療用RIが創薬研究のために生産されています。充分な量のRIを生産するためには、高品質な大強度ビームの安定的供給が要求されます。そこで、ビームの大強度化技術や、大強度ビームの照射および診断技術の開発など、サイクロトロンの高度化を目指した研究を行っています。
また、サイクロトロンで生産したRIを重粒子線がん治療に応用することで、照射精度のさらなる向上を図る研究にも取り組んでいます。そのためのRIビーム生成システムの開発を進めています。
研究チーム
- 先進粒子線治療システム開発チーム
- 治療ビーム研究開発チーム
- 治療システム開発チーム
- 粒子線照射効果研究チーム
- 照射システム開発チーム
- 重粒子運転室
- サイクロトロン運転室
- 静電加速器運転室
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