これ以上の先延ばしは許されない
実際に皇室典範を改正するのは国会であり、その国会の取り組みにリーダーシップを期待されているのが政府だ。その政府・国会が、長年にわたってこの問題の解決を怠り、いたずらに先延ばしを繰り返してきた。
しかし、敬宮殿下もすでにご成年を迎えられ、大学もご卒業になった。やがてご結婚も遠い将来のことではないだろう。
もはや、これ以上の先延ばしは許されない局面を迎えている。
岸田政権での取り組みは竜頭蛇尾
皇位継承の問題をめぐる政治の現状はどうか。
上皇陛下のご退位を可能にした皇室典範特例法が可決された時に、国会は全会一致で「安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等」について政府が「速やかに」検討すべきことを、附帯決議として要請した(平成29年[2017年]6月)。
しかし政府が有識者会議を立ち上げ、やっとその報告書が国会に提出されたのは、決議からすでに4年以上が経過した令和4年(2022年)1月だった。とても「速やか」とはいえない対応だ。
しかも、その報告書は驚くべきことに、先の課題に対してまったく"白紙回答"だった。勝手に検討課題を「皇族数の確保」にすり替えて、問題だらけの方策を提案する内容になっていた。
しかし岸田文雄前首相の働きかけによって、この報告書を基に国会の合意を取りつけることが図られた。そのために、額賀福志郎前衆院議長の主導で衆参正副議長の呼びかけという形を取って、国会を構成する全政党・会派を一堂に会した協議の場が設けられた。
そこで国会の総意を取りまとめようとしたものの、全体会議が2回開催されただけでたちまち頓挫してしまった(5月17・24日)。
その後、やむなく党派ごとに個別に意見聴取を行った。だが合意の形成にはほど遠く、解散・総選挙の気配が濃くなる中、聴取結果を併記しただけの中間報告を政府に提出してお茶を濁す竜頭蛇尾ぶりで、岸田―額賀ラインによる取り組みは終わった(9月26日)。
お粗末だった報告書
このようなふがいない結果を招いたのはなぜか。
単に、岸田前首相や額賀前議長らの政治手腕が未熟だったから、というだけの理由ではない。そもそも、検討の土台となるべき有識者会議報告書の中身自体が、あまりにもお粗末だったことが大きな原因だ。