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CTSS

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
Compatible Time-Sharing System
開発者 MIT計算センター
開発状況 歴史的OS
初版 1961年
対象市場 MITのみ
使用できる言語 英語
プラットフォーム IBM 7090(改造版)
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CTSS(Compatible Time-Sharing System、互換タイムシェアリングシステム)は、MIT計算センターで開発された世界初のタイムシェアリングシステムのひとつ。1961年に最初の実演が行われ、1973年までMITで稼動していた。当時、MITの Project MAC にもCTSSの2号機があったが、それ以外のサイトで採用されたことはない。CTSSに関する論文は1962年春季合同コンピュータ会議で発表された。

IBMメインフレームOS
の歴史
初期
S/360初期
  • OS/360 (1966年)
    • PCP (1966年)
    • MFT (1966年)
      • MFT II (1968年)
    • MVT (1967年)
      • 65MP
  • OS/VS1 (1972年)
    • OS/VS1 BPE (1972年)
  • OS/VS2 R1 (SVS) (1972年)
  • MVS (OS/VS2 R2) (1974年)
  • OS/390 (1995年)
  • z/OS (2000年)
  • DOS/360 (1966年)
  • DOS/VS (1972年)
  • DOS/VSE (1979年)
  • VSE/SP (1983、1985年)
  • VSE/ESA (1991年)
  • z/VSE (2005年)
VM系
  • CP-40/CMS (1967年)
  • CP-67/CMS (1967年)
  • VP/CSS (1968年)
  • VM/370 (1972年)
  • VM/BSE(BSEPP)
  • VM/SE (SEPP)
  • VM/SP (1980年)
  • VM/XA MA (1984年)
  • VM/XA SF (1985年)
  • VM/XA SP (1988年)
  • VM/ESA (1990年)
  • z/VM (2000年)
TPF系
UNIX
  • UTS (1981年)
  • AIX/370 (1990年)
  • AIX/ESA (1991年)
  • EVS/ESA (1993年)
  • OS/390 UNIX System Service (1996年)
  • Linux on System z (1999年)
  • z/OS UNIX System Service (2001年)
  • OpenSolaris for System z (2008年)
関連項目

概要

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その名称にある "Compatible"(互換)とは IBM 7094 の標準のバッチ処理 OS FORTRAN Monitor System (FMS) との互換性を意味している。CTSSはバックグラウンド機能で提供された仮想7094上でFMSをそのまま実行することができた(ハードウェアは完全には仮想化できていない)。バックグラウンドFMSジョブは問題なく磁気テープにアクセスできたが、フォアグラウンドプロセスの実行をじゃましたり、それらが使用するリソースを奪うことはできなかった。

CTSSは後世に大きな影響を与えた。タイムシェアリングが可能であることを示し、コンピュータの新たな重要な用途を生み出した。その後のタイムシェアリングシステム(特にCP/CMS(en:CP/CMS))に多大な影響を与え、直接の後継である Multics は後のOSの基本概念の多くを生み出した。

特徴

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  • CTSSには世界初のコンピュータ化された組版ユーティリティの一種 RUNOFFがあった。
  • CTSSには世界初のユーザー間のメッセージ通信機能が実装されており、電子メールの発祥とされることもある[1]
  • MIT計算センターの職員ルイ・プザンはCTSS向けの RUNCOM と呼ばれるコマンドを開発した。これはファイルに書かれているコマンド群を実行するもので、UNIXシェルスクリプトの原型である。RUNCOMにはパラメータ置換機能もあった。

実装

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CTSSは改造された IBM 7094 ×ばつ36ビットワードの磁気コアメモリを2バンク持っている(通常は1個)。うち1バンクはタイムシェアリング管理プログラムが使用し、もう1個をユーザープログラム群が使用する。32Kのうち27Kをユーザーが使用し、残り5Kをモニター用の予約している[2] CPUを割り当てるスケジューリング多段フィードバックキュー方式で制御される[2] 。また、特殊なメモリ管理ハードウェア、クロック割り込み機能、特定の命令をトラップする機能などもあった。入出力ハードウェアはほとんどIBMの標準品である。6本のデータチャネルには以下のデバイスが接続されていた。

  • プリンタ、パンチカードリーダ、およびパンチャー
  • IBM 729 (英語版) 磁気テープ装置、IBM 1301 ディスク記憶装置(後に3800万ワードの容量を持つ IBM1302 にアップグレードされた)
  • IBM 7320 磁気ドラムメモリ、容量は186Kワードで、1秒で32Kメモリバンクをロードできる(後に、1/4秒までアップグレードされる)
  • 2つの独自高速ベクターグラフィックディスプレイ
  • IBM 7750 伝送制御装置、112台のテレタイプ端末を接続可能。端末には IBM 1050 や Model35 テレタイプ端末などが使われた。いくつかの端末は遠隔地にあり、公衆テレックス回線で接続されていた。

影響

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Project MAC では、CTSSの後継として1960年代にMulticsの開発を開始した。Multicsは1969年にUNIXが開発される要因の1つとなった。例えば、「デーモン」という用語はCTSS発祥で、UNIXにまで受け継がれた。

ITS(Incompatible Timesharing System)もMITで開発された初期の革新的タイムシェアリングシステムのひとつである。これはMulticsの方向性を良しとしない人々が開発した。名称はCTSSのパロディ。

脚注

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  1. ^ Tom Van Vleck's memoir of The History of Electronic Mail
  2. ^ a b Silberschatz, Abraham; Peterson, James L. (June 1988). "13: Historical Perspective". Operating System Concepts. p. 514. ISBN 0-201-18760-4  

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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