氷男
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概要
[編集 ]初出 | 『村上春樹ブック』(「文學界」1991年4月臨時増刊) |
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収録書籍 | 『レキシントンの幽霊』(文藝春秋、1996年11月) |
村上によれば執筆時期は1990年秋頃。「緑色の獣」とふたつ一緒に書いた記憶があるという[1] 。
80年代末から90年代初頭にかけて、村上は女性が主人公の短編小説を集中的に書いた。「眠り」(1989年)、「加納クレタ」(1990年)、「ゾンビ」(1990年)、「緑色の獣」(1991年)などである。本作「氷男」も同様に女性が主人公の物語である。
英訳
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タイトル | Ice Man | The Ice Man |
翻訳 | リチャード・L・ピーターソン | フィリップ・ガブリエル |
初出 | 『ザ・ニューヨーカー』 2003年2月10日号[2] |
『Blind Willow, Sleeping Woman』 (クノップフ社、2006年7月) |
あらすじ
[編集 ]氷男はスキー場のホテルのロビーの隅でひとりで静かに本を読んでいた。「ねえ、あれが氷男よ」と友人が「私」に小声で教えてくれたのだ。「私」は四日後に思い切って氷男に話しかける。二人は東京に帰ってから何度か会い、週末になるといつもデートをするようになった。
二人は結婚した。誰にも祝福されない結婚だったので、結婚式は挙げなかった。氷男は戸籍を持たなかったので入籍さえしなかった。自分たちは結婚したのだと決めただけだった。
ある日「私」は夫に気分転換にどこか旅行に行こうと誘う。一旦は南極が行き先に決まるものの、「私」は南極を持ち出したことを後悔し始める。氷男に向かって、やっぱりやめましょうよと言う。しかしその願いは聞き届けられない。
南極の人たちはみんな氷男に好意を持って接している。南極語で冗談を言ったり議論をしたり歌を歌ったりしている。しかし「私」の語る言葉は南極に住む人たちにはひとことも理解できない。二人を運んだ飛行機が飛び立ったあと、飛行場に着陸する飛行機はもう一機としてなかった。滑走路はやがて硬い氷の下に埋もれてしまう。
脚注
[編集 ]- ^ 『村上春樹全作品 1990〜2000』第3巻、講談社、2003年3月、261頁。
- ^ FICTION ICE MAN BY HARUKI MURAKAMI. February 10, 2003The New Yorker