国外犯
国外犯(こくがいはん)とは、ある行為がある国の刑法典など刑事実体法において犯罪を構成すると定められている場合、その犯罪行為がその国の領域外において行われた場合についてもその国の刑法が適用されるよう定められた犯罪をいう。
日本
日本においては、刑法2条から4条の2までに規定がある[1] 。
- 刑法2条(すべての者の国外犯)
- 刑法3条(国民の国外犯)
- 刑法3条の2(国民以外の国外犯)
- 刑法4条(公務員の国外犯)
- 刑法4条の2(条約による国外犯)
- 日本国外において、第二編の罪であって条約により日本国外において犯したときであっても罰すべきものとされているものを犯したすべての者に適用する
なお、刑法以外の特別法違反でも、広く国外犯規定が適用される犯罪を定めている(人質による強要行為等の処罰に関する法律その他)[2] 。
刑法3条の2は、TAJIMA号事件を契機に作られた規定である[3] [4] 。
国外犯規定が適用された実際の事件として、イラク日本人外交官射殺事件 [5] 、ロス疑惑 [5] 、ISILによる日本人拘束事件 [6] 、在ペルー日本大使公邸占拠事件 [6] 、ダッカ・レストラン襲撃人質テロ事件 [7] 、長井健司殺害事件[8] 、村本博之殺害事件[9] 、アルジェリア人質事件 [10] 、中村哲殺害事件[11] などがある。
各国における類似の規定
中国
殺人と殺人未遂で国外犯規定がある。この規定により福岡一家4人殺害事件で死刑が執行された[12] 。
アメリカ
国外犯規定がありこれによりリベリアの元大統領チャールズ・テーラーの息子に対し有罪評決がなされた[13] 。
ブラジル
ブラジル国民が外国で犯罪を犯した場合処罰できる[14] 。2015年8月までに7つの事案について日本側からブラジル政府に逮捕、処罰の要請が行われた[15] 。
スペイン
スペイン国籍を持つ被害者がいるときなど自国に関係があると明白な時に外国で起こった人権侵害でもスペインの法で裁くことができる(普遍的管轄権)。2013年11月にこの権限を利用し江沢民などに対し逮捕状が出された[16] 。ただし中国側からの猛反発を受け管轄の規定の適用が厳格化され、事件発生時に被害者がスペイン国籍を持ち、被害者か検察のみが告発できるとしたため[17] 、要件を満たさなくなったこの事件の捜査は2014年6月、中止された[18] 。
ベルギー
かつて普遍的管轄権を設定していたが、湾岸戦争を実行したジョージ・H・W・ブッシュ、ディック・チェイニー、コリン・パウエルらが告訴され、米国側の圧力で撤廃された[19] 。
脚注
- ^ 刑法第一章 総務省、2016年8月8日閲覧。
- ^ 人質による強要行為等の処罰に関する法律第5条 総務省、2016年8月8日閲覧。
- ^ 1・6 TAJIMA号事件の公判結果について 日本船主協会、2016年8月8日閲覧。
- ^ 過去の国会提出法律案(平成10年3月から平成20年3月までに提出されたもの) 法務省、2016年8月8日閲覧。
- ^ a b 刑法の国外犯規定 コトバンク、2016年8月8日閲覧。
- ^ a b 警視庁など「国外犯規定」捜査も 現地情勢で高いハードル 産経ニュース、2016年8月8日閲覧。
- ^ 4都県警が合同捜査へ=バングラ人質殺害事件時事通信、2016年10月17日閲覧。
- ^ ミャンマーで死亡の長井健司さん、遺体が帰国朝日新聞、2016年10月17日閲覧。
- ^ タイの邦人カメラマン死亡、警視庁も捜査日本経済新聞、2016年10月17日閲覧。
- ^ 殺人などの疑い、日本の警察捜査 アルジェリア人質事件、朝日新聞、2013年5月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年10月17日閲覧。
- ^ 福岡県警が捜査へ 中村哲さん殺害容疑で 2019年12月6日 西日本新聞
- ^ 毒ギョーザ事件の犯人,中国で逮捕中村国際刑事法律事務所、2016年10月17日閲覧。
- ^ テイラー・ジュニア被告に有罪評決:拷問の国外犯事件 米国で初の裁判ヒューマン・ライツ・ウォッチ、2016年10月17日閲覧。
- ^ 国外犯処罰規定コトバンク、2016年10月17日閲覧。
- ^ 「日伯司法協力」 在ブラジル日本大使館、2016年10月17日閲覧。
- ^ チベットの大虐殺容疑で江沢民氏らに逮捕状=スペイン裁判所 WSJ、2016年8月9日閲覧。
- ^ 「江沢民氏への逮捕状」スペイン、対中配慮で司法権自己規制 産経ニュース、2016年8月9日閲覧。
- ^ スペイン、江沢民氏の訴追中止へ産経ニュース、2016年8月9日閲覧。
- ^ 「江沢民氏ら手配」の表と裏 西田令一産経ニュース一筆多論、2016年8月9日閲覧。
関連項目
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