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横断歩道橋

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横断歩道橋(兵庫県 佐用町)

横断歩道橋(おうだんほどうきょう)は、人道橋の一種で、車道または鉄道を跨ぐように架けられた歩行者自転車専用のである[1] 歩道橋とも呼ばれる[2] 。横断歩道橋と地下横断歩道を合わせて「立体横断施設」と言う[1]

概要

車椅子用エレベーターを装備した中国楼閣風の歩道橋(金山嶺橋)
誰でも利用できるエレベータ4基を十字路の各隅に設けた歩道橋、国道14号 亀戸駅
昇開式歩道橋(茨城県 日立市の水木歩道橋)

交通量が多く幅の広い道路では、歩行者が道路を横断する横断歩道を多数設定すると、信号機が複数必要になり、結果として渋滞が増加してしまう。信号によらず道路を横断できる横断歩道橋は、渋滞緩和の手段として設置されることが多い。

また、周辺に幼稚園保育園小学校病院などがあり、交通弱者が多く横断する道路に、交通事故の予防手段として横断歩道橋が設置される場合もある。その他、駅前に大きな交差点や幹線道路が隣接しており、隣接する商業施設などとの間に上層階で連絡通路を設定できる場合、横断歩道橋と連絡通路を折衷したタイプのものが設置される場合もある。

しかし、横断歩道橋の設置により、橋脚や階段の存在が死角となって、車道側から歩行者が見えづらくなるなど、安全を妨げている事例がある[3] 。また、景観との調和が問題となることがある[4]

人道橋

詳細は「人道橋」を参照

人道橋(じんどうきょう)は、歩行者(と多くの場合自転車)が通り、川・海・くぼ地などを渡る橋である。特に鉄道の上を渡る場合、跨線人道橋(こせんじんどうきょう)という。人道橋であっても、行政機関が「歩道橋」と命名することがある(例えば、本渡瀬戸歩道橋)。また自動車が通る橋において、車道部分に隣接してかけられる歩道用の橋を側道橋と称する[5]

ペデストリアンデッキ

仙台駅西口のペデストリアンデッキ(宮城県)
詳細は「ペデストリアンデッキ」を参照

車道から分離された歩行者用の通路をペデストリアンデッキ(pedestrian deck)と呼ぶ場合がある。通常「ペデストリアンデッキ」と言った場合、車道の上空を平面的に移動できるようした建物と一体化した構造物を指し、車道を跨いで超えることを前提とした横断歩道橋とは区別される場合が多い。「車道を横断する」というよりむしろ「車道をはさんだ建物同士を連結する」という意味合いで用いられる。

欧米の歩道橋

歴史的な歩行者専用の人道橋としてはパリのセーヌ川に架けられた芸術橋(ポンデザール、Pont des Arts)などがある。

しかし、横断歩道橋はヨーロッパでは市街地の街並みに調和しないものと考えられており設置例は多くはない[4] 。日本が交通渋滞緩和のために参考にしたとされる1960年ローマオリンピックの横断歩道橋もあくまでも五輪期間中の仮設構造物であった[6]

日本の歩道橋

歩道橋の設置

日本では安全性の観点から横断歩道橋が多く設置されている。日本の歩道橋は、道路から通常470 cm以上空けて建造されている。

歩行者の利用のみを考慮した階段状の物が主であったが、幅の狭いスロープをつけて自転車も利用可能となっている物、スロープのみの物もある。現在設置されている横断歩道橋の大部分は昭和40年代に建設されたもので、当時は前述の通り通学途中の児童等の安全確保の為に重宝されたが、道路横断のための負担を通行者に多く強いるものであることから、バリアフリーの精神、交通弱者優先の精神に反する建造物であるともいえる。このため一部ではエスカレーターエレベーターの設置も行われている。歩行者に負担を強いるため、横断歩道橋を設置した交差点では、道路をそのまま横断してしまう人の数が増えるという事例もある[3]

その他にも、少子高齢化によって児童の数が減少したり、学校の統廃合で横断歩道橋のある道が通学路から外れるなど、児童の交通量が減少したこと、従来技術的にできなかった信号機による細かな制御が可能となったことなどから、老朽化を機会に撤去する自治体も増えてきている[3]

茨城県 日立市には、同市内にある日立製作所で製造された大型の発電機などの輸送の際に障害にならないよう昇開式可動橋になっているものがある。同様のものが川崎市 川崎区にもあるが既に利用する工場はなく稼動することはない。

道路法上は、「道路の付属物」として道路の一部という扱いになっており、横断される側の道路の管理者が建設・管理を行う。横断デッキ上に構造物が設置され、周辺施設と一体化している六本木ヒルズ正面の66プラザは例外的な存在である。

同様の趣旨で作られたものとして地下横断歩道(地下道)がある。特に雪国では路面のすべり防止や吹雪対策のために歩道橋に代えて横断地下道の設置が検討されることがある[7]

2013年、静岡県 榛原郡 吉田町に、「歩道橋型の津波避難タワー」2基(道路上では全国初のもの)が完成した。平時は一般的な横断歩道橋として活用されるという[8]

歩道橋の歴史

日本では昭和30年代の高度経済成長期において、モータリゼーションが進展し自動車の保有台数は急増したが、交通事故死者数は1万人を超えて「交通戦争」と呼ばれる状況に陥り、なおも死者数は増加する傾向にあった[9] 。交通弱者である歩行者を事故から守るために歩行者と自動車の各々の交通を分離(歩車分離)出来る歩道橋も設置されるようになった。

日本初の歩道橋(愛知県西枇杷島町横断歩道橋)

1959年(昭和34年)6月27日愛知県 清須市 西枇杷島町に日本で初めての歩道橋「学童専用陸橋」(西枇杷島町横断歩道橋)が設置された[10] [11] [12] 名古屋市に隣接する西枇杷島町は、当時全国有数の交通量があった国道22号(現・県道名古屋祖父江線)が町の中心を貫いており、交通事故が毎日のように発生し、通学児童も被害に遭うことが少なくなかった。そのため、全国初の横断歩道橋が建設させる運びとなり、鉄筋コンクリート製の横断歩道橋が完成したときには町長をはじめ、全町民をあげて渡り初め式(学童専用陸橋竣功式)も執り行われた[11] 。この西枇杷島町横断歩道橋は、2010年(平成22年)4月10日に老朽化のため取り壊された[13] [14]

ただし、大和ハウス工業が建設して大阪市に寄贈した大阪駅前の歩道橋が日本初と見なされた[10] ことから、同歩道橋が完成した1963年(昭和38年)4月25日に因んで4月25日が「歩道橋の日」とされている[15]

日本に横断歩道橋が登場した当時、自動車を優先した人間軽視の施設だとして苦情も続出したといわれる[12] 。日本初の横断歩道橋・西枇杷島町横断歩道橋は、交通戦争とよばれた時代のなかで交通安全施設としての絶大な効果が評価されて、1962年(昭和37年)ごろから隣接する岐阜市や、そのほかの各大都市でも歩道橋の建設がはじまるに至った[9]

東京都では、東京オリンピック1964年(昭和39年)に開催することが決まった1959年(昭和34年)、学童擁護員(緑のおばさん)を導入して子供たちの交通事故を防ごうとした[10] 。しかし、より安全な歩道橋を導入することになり、東京オリンピックの約1年前にあたる1963年(昭和38年)9月10日五反田駅前に都内初の歩道橋が設置された[10] 。また、西枇杷島町横断歩道橋が出現する3年前の1956年(昭和31年)に、渋谷駅前に全長95 m、幅8 mの道路上をまたぐ歩廊が完成しているが、駅舎から商業ビルとその近くの道までを連絡することを目的として民間企業が建設したものであることから、日本の横断歩道橋第1号とは見なされていない[9]

横断歩道橋は交通事故防止のために大きく貢献してきたが、身体障害者や高齢者に対して不自由なものであったことからバリアフリー化が叫ばれるようになり、1993年(平成5年)に日本で最初のエレベータ付き横断歩道橋が神奈川県川崎市の国道15号(第一京浜)と市役所通りの交差点で誕生した[16] 。58 mと55 mの2本の歩道が中央で交差するスクランブル方式でエレベータを4基備えた横断歩道橋は「ハローブリッジ」と名付けられ、幅員7 mとゆとりあるものである[16] 。近年では高齢化社会を反映して、大都市を中心にエレベータ付き歩道橋が普及するようになっている[16]

2017年4月2日には、埼玉県 行田市本丸の行田市諏訪町歩道橋(忍城跡、諏訪神社、行田市役所付近)で、柵の隙間を抜けたことが原因とみられる1.5歳女児の転落事故が発生している[2]

脚注

  1. ^ a b 第12章 立体横断施設 1.4 立体横断施設の定義及び種類 (PDF) (山梨県)
  2. ^ a b "1歳女児、歩道橋の最上部から転落 柵の隙間をすり抜けたか/行田". 埼玉新聞. (2017年4月2日). http://www.saitama-np.co.jp/news/2017/04/03/02_.html 2017年5月10日閲覧。 
  3. ^ a b c "静かに始まる歩道橋「リストラ」 札幌市、一部撤去へ". 日本経済新聞 . (2014年11月13日). http://www.nikkei.com/article/DGXMZO78989130Y4A021C1000000/ 2015年2月11日閲覧。 
  4. ^ a b 猪木武徳、マルクス・リュッターマン『近代日本の公と私、官と民』NTT出版、2014年、398頁
  5. ^ 鋼管矢板基礎工/歩道橋(側道橋)架設工 (PDF)
  6. ^ 加藤晃、竹内伝史『都市交通論』鹿島出版会、1988年、195頁
  7. ^ 第65回国会・交通安全対策特別委員会・第3号議事録
  8. ^ 「歩道橋型」津波避難タワー完成 「トラフ」備え...静岡県吉田町 - 読売新聞、2013年9月24日
  9. ^ a b c ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 214.
  10. ^ a b c d 空中の歩廊 -横断歩道橋-(社団法人 日本土木工業協会 CE建設業界・2009年6月号「[フォトエッセイ] 昭和の刻印」)
  11. ^ a b 浅井建爾 2001, p. 230.
  12. ^ a b ロム・インターナショナル(編) 2005, p. 213.
  13. ^ 日本初の歩道橋 50年ありがとう(リンク切れ)(読売新聞 2010年(平成22年)2月5日)
  14. ^ "日本初" の歩道橋見納め / 半世紀の歴史に幕、愛知(四国新聞 2010年(平成22年)3月12日)
  15. ^ 日本で最初の歩道道橋?(三栄工業株式会社)
  16. ^ a b c 浅井建爾 2001, p. 231.

参考文献

関連項目

ウィキメディア・コモンズには、横断歩道橋 に関連するカテゴリがあります。

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