求人倍率
求人倍率(きゅうじんばいりつ)とは、経済指標のひとつ。求職者(仕事を探している人)1人あたり何件の求人があるかを示すもので、たとえば求人倍率が 1.0 より高いということは、仕事を探している人の数よりも求人のほうが多いということである。一般に求人倍率が高い社会は、企業がより多くの労働者を求めており、つまりそれだけ経済に活気があると考えられる。
種類
求人倍率は、求人数を求職者数で割ることによってもとめられる。以下の種類がある。
種類 | 公表機関 | 新規学卒者(以下、新卒)の扱い |
---|---|---|
新規求人倍率(しんききゅうじんばいりつ) | 厚生労働省(職業安定業務統計 ) | 含まない |
有効求人倍率(ゆうこうきゅうじんばいりつ) | 厚生労働省(職業安定業務統計 ) | 含まない |
中学、高校新卒の求人倍率 | 厚生労働省(新規学卒者(高校・中学)の職業紹介状況) | 含む(中学、高校新卒を対象) |
大卒の求人倍率 | リクルートワークス研究所(ワークス大卒求人倍率調査) | 含む(大学新卒を対象) |
なお、職業安定業務統計は公共職業安定所(愛称:ハローワーク)を通じた求人・求職情報を利用する。そのため、いわゆる求人情報誌等の求人情報は含まれない。求職者登録が取り消されるのは、採用が決まった事を公共職業安定所に届け出た場合、1年程度公共職業安定所で紹介状の発行を受けていない場合。
新規求人倍率
新規求人倍率(しんききゅうじんばいりつ)とは、公共職業安定所で扱った新規求人数注1を新規求職者数注2で割ったもの。
- 注1:新規求人数
- 当該月に新たに受け付けた求人数の合計
- 注2:新規求職者数
- 当該月に新たに受け付けた求職者数の合計
有効求人倍率
有効求人倍率(ゆうこうきゅうじんばいりつ)とは、公共職業安定所で扱った月間有効求人数注3を月間有効求職者数注4で割ったもの。
景気動向を見るために作成される景気動向指数の一致系列に採用されている。
- 注3:月間有効求人数
- 先月から繰り越した求人数に、当月新たに発生した求人数を合計したもの
- 注4:月間有効求職者数
- 先月から繰り越した求職者数に、当月新たに発生した求職者数を合計したもの
新規求人倍率と有効求人倍率の関係
新聞報道や経済分析等で労働環境を見る場合には、有効求人倍率が広く使われている。ただし、日本の労働 制度は、労働者の地位と権利を擁護するために解雇にきびしい制約が課されている事から、企業は将来の増産等の見通しがないと求人を出さない。このため、新規求人の動向は企業の足元の景気感を示しており、労働情勢をみるには、その経済指標としての特性を考慮しつつ、新規求人倍率も併せてみる必要がある。
地域による求人倍率の違い
各地域ごとに産業構造、人口等の違いがあるため、地域によって求人倍率には差がある。一般的に都市部では高く、地方では低い傾向がある。
公共職業安定所及び学校で取り扱った求職、求人情報を利用して作成する。
大学卒業生の求人倍率
リクルートワークス研究所が調査、推計した求人総数と民間企業就職希望者数で求める。詳細は報告書の推計方法を参照されたい(報告書ホームページ)。
求人倍率の推移
新規求人倍率及び有効求人倍率
全国計の新規求人倍率及び有効求人倍率の推移は以下のとおり。雇用形態は正社員、パートタイマー、アルバイト、契約社員、期間工、労働者派遣事業(登録型派遣、常用型派遣)、請負、嘱託等が全て含まれる。常用型派遣は労働者派遣事業社の正社員と表記される事もある。なお、上述したとおり新卒は含まれていない。
年 | パートタイム を含む |
パートタイム を除く |
パートタイム |
---|---|---|---|
1963年 | 0.99 | - | - |
1964年 | 1.12 | - | - |
1965年 | 0.88 | - | - |
1966年 | 1.04 | - | - |
1967年 | 1.32 | - | - |
1968年 | 1.36 | - | - |
1969年 | 1.54 | - | - |
1970年 | 1.61 | - | - |
1971年 | 1.29 | - | - |
1972年 | 1.51 | 1.50 | 1.39 |
1973年 | 2.14 | 2.15 | 2.03 |
1974年 | 1.40 | 1.41 | 1.28 |
1975年 | 0.97 | 0.96 | 1.25 |
1976年 | 1.02 | 1.00 | 1.41 |
1977年 | 0.85 | 0.84 | 1.13 |
1978年 | 0.91 | 0.90 | 1.26 |
1979年 | 1.11 | 1.09 | 1.60 |
1980年 | 1.07 | 1.05 | 1.58 |
1981年 | 0.96 | 0.93 | 1.45 |
1982年 | 0.87 | 0.84 | 1.36 |
1983年 | 0.89 | 0.86 | 1.54 |
1984年 | 0.96 | 0.92 | 1.61 |
1985年 | 0.97 | 0.93 | 1.58 |
1986年 | 0.91 | 0.86 | 1.53 |
1987年 | 1.08 | 1.01 | 1.99 |
1988年 | 1.53 | 1.40 | 3.16 |
1989年 | 1.85 | 1.69 | 3.93 |
1990年 | 2.07 | 1.90 | 3.74 |
1991年 | 2.05 | 1.91 | 3.27 |
1992年 | 1.61 | 1.52 | 2.26 |
1993年 | 1.20 | 1.14 | 1.62 |
1994年 | 1.08 | 1.00 | 1.54 |
1995年 | 1.06 | 0.97 | 1.65 |
1996年 | 1.19 | 1.07 | 1.92 |
1997年 | 1.20 | 1.05 | 2.12 |
1998年 | 0.92 | 0.77 | 1.75 |
1999年 | 0.87 | 0.72 | 1.72 |
2000年 | 1.05 | 0.85 | 2.14 |
2001年 | 1.01 | 0.81 | 2.12 |
2002年 | 0.93 | 0.74 | 1.94 |
2003年 | 1.07 | 0.86 | 2.10 |
2004年 | 1.29 | 1.11 | 1.98 |
2005年 | 1.46 | 1.31 | 1.96 |
2006年 | 1.56 | 1.40 | 2.08 |
2007年 | 1.52 | 1.35 | 2.04 |
2008年 | 1.25 | 1.08 | 1.78 |
2009年 | 0.79 | 0.64 | 1.24 |
2010年 | 0.89 | 0.74 | 1.29 |
2011年 | 1.05 | 0.91 | 1.42 |
2012年 | 1.28 | 1.10 | 1.75 |
2013年 | 1.46 | 1.26 | 2.04 |
2014年 | 1.66 | 1.44 | 2.21 |
年 | パートタイム を含む |
パートタイム を除く |
パートタイム | 正社員 |
---|---|---|---|---|
1963年 | 0.70 | - | - | - |
1964年 | 0.80 | - | - | - |
1965年 | 0.64 | - | - | - |
1966年 | 0.74 | - | - | - |
1967年 | 1.00 | - | - | - |
1968年 | 1.12 | - | - | - |
1969年 | 1.30 | - | - | - |
1970年 | 1.41 | - | - | - |
1971年 | 1.12 | - | - | - |
1972年 | 1.16 | 1.15 | 1.26 | - |
1973年 | 1.76 | 1.75 | 2.16 | - |
1974年 | 1.20 | 1.20 | 1.28 | - |
1975年 | 0.61 | 0.60 | 1.06 | - |
1976年 | 0.64 | 0.62 | 1.29 | - |
1977年 | 0.56 | 0.55 | 0.95 | - |
1978年 | 0.56 | 0.55 | 1.00 | - |
1979年 | 0.71 | 0.69 | 1.35 | - |
1980年 | 0.75 | 0.73 | 1.35 | - |
1981年 | 0.68 | 0.66 | 1.20 | - |
1982年 | 0.61 | 0.59 | 1.23 | - |
1983年 | 0.60 | 0.57 | 1.40 | - |
1984年 | 0.65 | 0.61 | 1.53 | - |
1985年 | 0.68 | 0.64 | 1.50 | - |
1986年 | 0.62 | 0.58 | 1.44 | - |
1987年 | 0.70 | 0.64 | 1.83 | - |
1988年 | 1.01 | 0.90 | 3.08 | - |
1989年 | 1.25 | 1.11 | 3.93 | - |
1990年 | 1.40 | 1.26 | 3.27 | - |
1991年 | 1.40 | 1.28 | 2.60 | - |
1992年 | 1.08 | 1.01 | 1.75 | - |
1993年 | 0.76 | 0.71 | 1.18 | - |
1994年 | 0.64 | 0.59 | 1.07 | - |
1995年 | 0.63 | 0.56 | 1.14 | - |
1996年 | 0.70 | 0.62 | 1.31 | - |
1997年 | 0.72 | 0.62 | 1.44 | - |
1998年 | 0.53 | 0.44 | 1.16 | - |
1999年 | 0.48 | 0.39 | 1.11 | - |
2000年 | 0.59 | 0.46 | 1.41 | - |
2001年 | 0.59 | 0.46 | 1.42 | - |
2002年 | 0.54 | 0.41 | 1.32 | - |
2003年 | 0.64 | 0.51 | 1.46 | - |
2004年 | 0.83 | 0.69 | 1.47 | - |
2005年 | 0.95 | 0.84 | 1.36 | 0.58 |
2006年 | 1.06 | 0.94 | 1.46 | 0.63 |
2007年 | 1.04 | 0.92 | 1.43 | 0.61 |
2008年 | 0.88 | 0.76 | 1.24 | 0.54 |
2009年 | 0.47 | 0.38 | 0.77 | 0.28 |
2010年 | 0.52 | 0.43 | 0.79 | 0.30 |
2011年 | 0.65 | 0.56 | 0.89 | 0.39 |
2012年 | 0.80 | 0.69 | 1.08 | 0.48 |
2013年 | 0.93 | 0.80 | 1.24 | 0.55 |
2014年 | 1.09 | 0.96 | 1.38 | 0.67 |
出典「職業安定業務統計」(厚生労働省)、「一般職業紹介状況」(e-Stat) 平成 25 年の有効求人倍率と過去との比較
求人倍率の信頼性
マスコミなどにおいては、求人倍率のみを見て、売り手市場(求職者側に取って、求人が豊富な状態)・買い手市場(求人側に対して、求職者が豊富な状態)、景気や雇用の回復・悪化が判断されがちである。
しかし、求人倍率には以下のごとき問題があり、倍率だけ見て、売り手・買い手市場、景気不景気、雇用の良し悪しを判断できるものではない。
狭義すぎる分母
求人倍率の分母をなすのは、職安に登録した求職者数だけである。
職安に登録せずに、求人広告、求人雑誌、求人サイト、企業の求人申込ページを活用する求職者は含まれていない。
これでは、求人数が求職者数を下回っていても(本当は求人倍率1倍以下であっても)、職安発表では"求人倍率1倍以上"という数値が出てしまう。
(大学新卒の求人倍率の場合、就活の意志ありと就職課に報告した学生の数のみが分母に入っている為、氷河期ですら新卒の求人倍率は1倍以上になってしまう)
実質倍率に非ず
受験倍率の場合、競争率は、"見掛け倍率(志願者数÷定員)"と"実質倍率(実際の受験者数÷実際の合格者数)"の二種類によって表されるが、
求人倍率の場合、競争率は、"定員(求人全体)÷求職者数"でのみ表される。
これは"見掛け倍率"だけを算出しているに等しく(受験倍率における"見掛け倍率"が信用に当たらない事と同じく)、信頼できる数値とは言い難い。
雇用のミスマッチ
求人倍率が1倍の場合、1人の求職者に対して1件の求人があることになる。
しかし、これはあくまで計算上の話に過ぎず、以下のごとき求人側と求職者側のミスマッチにより、必ずしも1人に対して1件の求人があるとは言い難い。
1.スキルのミスマッチ
例えば、求人の多くがIT技術者を求めているのに対し、求職者側の多くがIT技術を持っていないのであれば、求人倍率1倍であっても、採用にあり付けるのは一部の求職者だけである。
2.キャリアのミスマッチ
失業後、自身のキャリア(実務経験)が通用しない別職種へ転職した場合、就労後、一から仕事を覚えなおさねばならず、また経験者加算も得られない為に、低い賃金待遇を受ける事となる。その為、求職者は自然と、自身のキャリアが評価される同職種への就職を希望する事が多い。
また求人側も、即戦力を得る為に"要経験者""経験者優遇"の条件を付けて募集するケースが多々見られる。
仮に、求人側の多くが営業職を募集しているのに対し、求職者側の多くが営業職のキャリア持たないのであれば、求人倍率が1倍であっても、求人へのスムースな応募は生じず、また求職者へのスムースな採用は行われない。
3.年齢のミスマッチ
求人側の多くが若い人材を求めているのに対し、求職者側の多くが中高年であれば、求人倍率1倍であっても、採用にあり付けるのは一部の若者だけである。
平成19年10月より、求人に年齢制限を設ける事が禁じられたが、依然と履歴書には年齢欄があり、職安の求人には「年齢不問」と明記していても自社のHPの採用ページには「○しろまる○しろまる歳以下」と明記している企業は少なくない。
4.勤務地のミスマッチ
例えば、求人の多くが工業地帯に集中しているのに対し、求職者の多くが工業地帯から遠く離れた地域に在住し、かつ地元での就労を希望している場合、これも求人倍率が1倍であっても、求職者の多くは求人にありつく事ができない。
質は分からない
例え、分母に全ての求職者が含まれ、実質倍率で計算され、雇用のミスマッチも起きないようになったとしても、求人倍率の高さは、必ずしも雇用回復の判断には繋がらない。
なぜならば、前述3つの問題を克服した求人倍率が1倍以上であっても、その求人(採用時)の平均年収が200万以下(ワーキングプア)であれば、到底、雇用が回復しているとは言い難いからである。
離職率が高い場合
求人倍率が高いのに対し、その求人の過半数を"離職率の高い業種"が占めている場合。
これは、簡単に就職できるが、同時に直ぐに離職せざる得ない状況が発生しているという事であり、この場合、求人倍率が高ければ高いほど、雇用はむしろ不安定である。
関連項目
外部リンク
- 職業安定業務統計(一般職業紹介状況)について(厚生労働省ホームページ)
- 都道府県別の正社員有効求人倍率
景気 |
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消費 |
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雇用 | |
賃金 | |
物価 | |
金利 | |
生産 | |
企業/設備投資 | |
貿易 |
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その他 | |
*印の付く物は業界統計 |
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