住民基本台帳カード
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住民基本台帳カード(じゅうみんきほんだいちょうかーど、略称:住基カード)とは、その者に係る住民票に記載された氏名及び住民票コード等が記録されたICカードである。交付を希望した住民に対し、市町村が有償で交付する。住民基本台帳ネットワークシステムの第2次サービスの一つ。
概要
住民基本台帳法(昭和42年法律第81号)第30条の44第1項に次の規定がある。
- (住民基本台帳カードの交付)第30条の44 住民基本台帳に記録されている者は、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長に対し、自己に係る住民基本台帳カード(その者に係る住民票に記載された氏名及び住民票コードその他政令で定める事項が記録されたカードをいう。以下同じ。)の交付を求めることができる。
カードのICチップ内には住基アプリケーションと公的個人認証アプリケーションが事前登録されている。この他、空エリアに様々なアプリケーションをインストールすることができるように設計されており、健康保険証など、今後、多目的カードとして共用化が検討されている。
交付に要する手数料は2005年度現在おおむね500円である。有効期限は発行後10年。ただし、カードは発行した市区町村から転出すると無効になる為、転出・転入時にはカードを返却し、改めて新規発行手続きが必要となる(一度取得すれば済むというわけではない)。転出時に返納できない場合、紛失届が必要な場合がある。
カードの交付は2003年 8月25日に開始された。総務省は交付開始前、初年度(2003年度、2004年3月31日まで)の交付枚数を約300万枚と予測していたが、同年12月には84万枚程度と予測を下方修正している。結果として、初年度末時点での交付枚数は251,551枚と予測をさらに下回るものであった。
なお、2006年3月31日現在の交付枚数は914,755枚であり、住基人口当たりの普及率は0.7%となっている(交付枚数はいずれも総務省発表)。
利用可能なサービス
- 転入出手続き
- 本人確認情報の検索
- 公的個人認証サービスの鍵の格納
外観・券面
カードには写真なしのタイプ(A)と写真のあるタイプ(B)があり、発行時に選択できる。写真のあるものは個人の身分証明書としても利用できる。
公的機関の身分証明書としてはパスポート以外では珍しく有効期限が西暦で表記されている(有効期限が10年間のため、元号が変わった際も使用できるよう)。ただし、生年月日は元号(戸籍上の生年月日は元号で表記されているため)で表記している。
- 大きさ:85.60 mm ×ばつ 53.98 mm (ISO 7810)
- カードの表面の記載内容
- Aバージョン(様式第一):氏名、有効期限、交付地市町村名。
- Bバージョン(様式第二):氏名、有効期限、交付地市町村名、住所、生年月日、性別、写真。
カード表面に関しては記載内容は決まっているものの各自治体によりデザインは異なる。 なお、Bバージョンのカードには券面の偽造等を防止するための対策を講ずることが定められている(総務省告示の技術的基準)。その後、偽造変造防止のために平成17年2月21日発行分からAバージョン・Bバージョンともに幾何学的模様を入れることになった。
カードの裏面にはサインパネルがあり、同じ市町村内で移転した場合や氏名が変更になった場合に新しい事項を記載する為に使用する。
チップ内情報
- 住民票コード(11桁) - 本人確認情報の検索のため
- 暗証番号(数字4桁) - 本人確認のため
- 認証用鍵 - 偽造カードの防止のため
- 輸送鍵 - カード発行時の盗用防止のため
仕様
カード仕様は財団法人地方自治情報センター(LASDEC)が管理している「住民基本台帳カード仕様書(TypeI)」と「住民基本台帳カード仕様書(TypeII)」の2種類がある。仕様書は申請した者のみに開示され一般には概要のみが公開されている。
ISO/IEC15408について
総務省告示の技術的基準には次のように記されている
- 第2 住民基本台帳カードのセキュリティ対策等
- 3 国際標準化機構及び国際電気標準会議の規格第15408の認証
- 住民基本台帳カードは、国際標準化機構及び国際電気標準会議の規格第15408の認証を受けたカードを用いること。
- ただし、当分の間は、国際標準化機構及び国際電気標準会議の規格第15408の評価を受け合格した設計書に基づいて作成されたカードを用いることができるものであること。
- 住民基本台帳カードは、国際標準化機構及び国際電気標準会議の規格第15408の認証を受けたカードを用いること。
- 3 国際標準化機構及び国際電気標準会議の規格第15408の認証
従って、当分の間は設計書の確認のみでカード自体は評価を受けていないものが使用される可能性がある。ISO/IEC15408の認証を受けたカードは、脆弱性評価としてハードやソフトに認定時に既知であった問題がないかを評価機関が実際にテストを行い、問題点があれば修正を行っていることが期待できるが、この評価を受けていないカードにはそれらの問題点が残存していないか不安がある。
仕様関連文書
総務省 告示
- 「住民基本台帳カードに関する技術的基準」 平成15年5月27日[2]
官邸
- 「公的分野における連携ICカード技術仕様(改定)」 平成16年3月12日[3]
国立印刷局(財務省印刷局)
- 「連携ICカード券面の偽造防止技術ハンドブック」 平成14年7月20日[4]
ニューメディア開発協会
住基カードの展開
- 2003年8月25日 配布開始。
- 2003年9月16日 他人に成りすまして、佐賀県鳥栖市にて、住基カードを不正に取得。2004年2月2日に忘れ物で発覚。2004年2月5日報道。
- 2003年11月 福島県相馬市にて、他人名義で住基カードを不正取得。金融機関から融資を受ける。2004年3月1日に逮捕されて報道。6月に実刑判決。
- 2004年1月29日 公的個人認証サービスのための鍵の格納が開始される。
- 2004年3月8日 住民基本台帳法施行規則・事務処理要領の改正(本人確認の厳格化)
- 2004年3月末 偽造住基カード(東京都新宿区が1月末に交付)を身分証明として携帯電話を購入しようとした事件が発生。7月下旬に告発。10月10日に報道。氏名と生年月日が書き換えられていた。
- 2004年3月末 同日現在の住基カード交付枚数は251,551枚、住基人口当たり普及率は0.2%。
- 2004年5月3日 偽造住基カード(佐賀県伊万里市が3月に交付)を使って、携帯電話を購入。9月27日に逮捕されて報道。氏名、住所、生年月日を書き換えていた。
- 2004年7月12日 福島県原町市にて、他人名義で住基カードを不正取得。9月に発覚。10月8日に報道。
- 2004年8月末 同日現在の住基カード交付枚数は361,420枚。
- 2004年10月6日 大日本印刷 が製造し、日立が納入した住基カードに不具合が見つかり、交換を行うことが発表された。地方公共団体に約18万6000枚納入されており、約3万枚のカードが交付済みと推定されている。
- 2005年3月末 同日現在の住基カード交付枚数は544,708枚、住基人口当たり普及率は0.4%。
- 2005年12月15日 東京都渋谷区にて拾った保険証を使って住基カードを不正取得。2006年7月報道。
- 2006年1月20日 東芝 が製造した住基カードに搭載されているソフトウェア(公的個人認証用)に不具合が見つかり、256回に1回の確率で正しい署名が生成されないことが判明した。7市町村、約8200枚が対象となる。
- 2006年3月17日 「住民基本台帳カードの利活用手法等に関する検討会報告書」が公表される[1] 。
- 2006年3月末 同日現在の住基カード交付枚数は914,755枚、住基人口当たり普及率は0.7%。
- 2006年4月 東京都足立区にて他人の身分証明書を使って、住基カードを不正取得。2006年10月逮捕。
- 2007年3月8日 NTTコミュニケーションズ が納入した住基カードに搭載されているソフトウェア(公的個人認証用)に不具合が見つかり、3万2769回に1回(約2^15回に1回)の確率で認証に失敗することが判明した。718市町村、9万2000枚のカードが対象となる。[2]
- 2007年3月末 同日現在の住基カード交付枚数は1,413,770枚(累計)。
- 2007年5月 名古屋市東区にて、顔写真を偽造した住基カードを提示して、携帯電話2台を購入。2008年1月に逮捕。
- 2008年1月6日 2007年度に、偽造住民基本台帳カードの使用による、携帯電話の不正取得や銀行口座開設などの犯罪が少なくとも16都府県27自治体で50件判明していることが報道された。2006年度には7件確認されていた。他の種類のカードに比べて偽のカードを作り易いとの指摘も有り総務省ではその対策を考えている。
統一的な身分証明書としての実用性
これまで国内での一般的な身分公証書類としては写真付きである運転免許証が一般的であったが、免許証を持たない者(未成年者、高齢者等)にとっては身分証明等の場面で一部不自由を強いられる場面があった。住民基本台帳カードの登場により、写真付きで低廉価格であり、住民基本台帳に登録されている者=日本人なら誰もが取得できる統一的な身分証として評価することもできる。
しかし使い道があまり無いのが難点。住民基本台帳ネットワークシステム#住基ネットを利用する手続・方法、住民基本台帳ネットワークシステム#住基ネットに対する問題提起を参照。
住基カードの分類
インタフェースはコンビ型と非接触型の2種類である。 カードOSはJavaカード、MULTOS、独自(または非公開)の3つある。 メモリは32KByteが多い。 暗号はRSA・トリプルDESの他にAESや楕円暗号をサポートしたカードがある。 安全性(耐タンパ性)についての情報は少ない。
コンビ型
独自or非公開
- NTTデータ Xaica-α XA-NT1-H2014
- 機能面:コンビ型、DES・T-DES・AES・RSA
- 安全性:「ICチップは、ISO/IEC 15408 EAL4+の認証取得済」[7]
- 群馬県:渋川市・榛名町・群馬町・玉村町・新田町
- 宮城県:亘理町・利府町
- 凸版印刷 Smartics-AD
- 機能面:コンビ型、EEPROM32KByte、DES・トリプルDES・RSA・AES
- 群馬県:沼田市・富岡市
- 栃木県:鹿沼市
- 静岡県:裾野市
- 愛知県:大府市、一宮市
- 三重県:上野市
- 大阪府:貝塚市
- 兵庫県:尼崎市
- 宮城県:古川市・名取市・多賀城市・柴田市・大和町・富谷町・矢本町
- 島根県:益田市
- 福岡県:柳川市・八女市・宇美町・新宮町・中間市・筑紫野市・須恵町・前原市
- 鹿児島県:上屋久町
- マクセル精器 コンビタイプICカード IE-32(MU2)
- 機能面:コンビ型、32KByte、Triple-DES・RSA
- 福岡県:那珂川町
- 共同印刷 KDカード MC3200G-JK
- 機能面:コンビ型
- 王子製紙 PRINCE CARD JUKI MODEL II
- 機能面:コンビ型
- NTTコミュニケーションズ eLWISE(1Mb) cc(LSI:sharp)
- 機能面:コンビ型、16bitCPU、ROM8KByte、RAM8KByte、FLASH1MByte、DES・T-DES・RSA(1024-1152bit)・楕円暗号(160-256bit)・ESIGN(1152bit)等
- 北海道:滝川市
- 群馬県:前橋市・桐生市・伊勢崎市・太田市・館林市・藤岡市・安中市・大胡町・宮城村・粕川村・松井田町・境町・大泉町
- 宮城県:角田市
- 福岡県:福岡市・苅田町・甘木市・福間町
- NTTコミュニケーションズ eLWISE(512kb) E16R05N
- 機能面:フラッシュが512Kbyte
- 群馬県:北橘村・赤城村・富士見村・新里村・黒保根村・(勢)東村・倉渕村・箕郷町・子持村・小野上村・伊香保町・榛東村・吉岡町・新町・鬼石町・吉井町・上野村・神流町・妙義町・下仁田町・南牧村・甘楽町・中之条町・(吾)東村・吾妻町・長野原町・嬬恋村・草津町・六合村・高山村・白沢村・利根村・片品村・川場村・月夜野町・水上町・新治村・昭和村・赤堀町・(佐)東村・尾島町・藪塚本町・笠懸町・大間々町・板倉町・明和町・千代田町・邑楽町
- 宮城県:仙台市・塩竈市・白石市・岩沼市・蔵王町・七ヶ宿町・大河原町・村田町・川崎町・丸森町・山元町・松島町・七ヶ浜町・大郷町・大衡村・色麻町・加美町・松山町・三本木町・鹿島台町・岩出山町・鳴子町・涌谷町・田尻町・小牛田町・南郷町・築館町・若柳町・栗駒町・高清水町・一迫町・瀬峰町・鶯沢町・金成町・志波姫町・花山村・迫町・登米町・東和町・中田町・豊里町・米山町・石越町・南方町・河北町・雄勝町・河南町・桃生町・鳴瀬町・北上町・女川町・牡鹿町・志津川町・津山町・本吉町・唐桑町・歌津町
- 神奈川県:川崎市
- 愛知県:東海市、岡崎市、豊明市
- 岐阜県:高山市
- 奈良県:広陵町
- 和歌山県:和歌山市
- 福岡県:北九州市・岡垣町・直方市・行橋市・筑後市・田川市
MULTOSカード
- 日立製作所 MULTOSデュアルウェイカード HT-2998-H1B3DJ
- 機能面:コンビ型、MULTOSカード
- 安全性:ITSEC E6の認定を受けたMULTOSカードをベースに開発されている
- 群馬県:高崎市
- 福岡県:久留米市・豊前市・太宰府市
- 宮城県:石巻市・気仙沼市
- 日立製作所 MULTOSデュアルウェイカード HML48C256HRXB
- 機能面:コンビ型
- 岡山県:新見市
- 大日本印刷 MULTOS 2WAYアクセスカード (LSI:AE45X-b 4.032Xb)
- 機能面:コンビ型、16bit CPU、36KByte、DES・TripleDES・SHA-1・RSA、MULTOS 4.0
- 安全性: ITSEC Granted (CESG)
非接触
Javaカード
- 松下電器 BN-1M2N004A1(LSI:MN103S41H)
- 機能面:32bitRISC CPU、ROM160KByte、RAM12KByte、EEPROM32KByte、RSA(1024bit)・楕円暗号(224bit)・DES・トリプルDES・AES、JavaCard 2.1.1・カードマネジャ(住基カード仕様CM)
- 安全性:「セキュリティは業界最高水準」との記述あり [8]
- 島根県:出雲市、安来市
- 東芝 TOSMART CQ-3006
- 機能面:独自16bitCPU、ROM128KByte、RAM4KByte、不揮発メモリ32KByte、DES・RSA、JavaCard2.1.1
- 安全性:ISO/IEC15408に基づいたチップとファームの評価は今後の課題(東芝レビューVol.58 No.8, 2003年8月)
- 大阪府:東大阪市
独自or非公開
- 小林記録紙 住基カード JKD-001-01
- 福岡県:飯塚市
- 島根県:松江市、浜田市、大田市
- トッパン・フォームズ アガスティアT1 TFN-T1-002
- 福岡県:篠栗町・粕屋町
- 王子製紙 PRINCE CARD JUKI MODEL I
- 富士通 JF216a 0131411
ベンダ
非接触ICカード普及センター(CLIC)による非接触ICカードとリーダライタの互換性試験結果によると、ICカードベンダには次の7社がある。
- NTTコミュニケーションズ(E16R10N、E16R05N) コンビ
- NTTデータ(Xaica-α) コンビ
- 東芝(CQ-3006) 非接触
- 日立製作所(HT-2998-H1B3DJ) コンビ
- 松下電器産業(BN-1M2N004A1) 非接触
- マクセル精器(IE-32(MU2)JUKI) コンビ
- 凸版印刷(Smartics-AD) コンビ
一部の市町村では、公的個人認証サービスの利用に必要となるICカードリーダライタを知らせる為に、調達したカードの型名を公開している。次のカードがある。
- eLWISE(1Mb) E16R10N NTTコミュニケーションズ
- eLWISE(512kb) E16R05N NTTコミュニケーションズ
- Xaica-α XA-NT1-H2014 NTTデータ
- Smartics-AD 凸版印刷
- MULTOSデュアルウェイカード HT-2998-H1B3DJ 日立製作所
- MULTOSデュアルウェイカード HML48C256HRXB 日立製作所 コンビ
- コンビタイプICカード IE-32(MU2)JUKI マクセル精器
- Panasonic住基カード BN-1M2N004A1 松下電器産業 (非接触)
- TOSMART CQ-3006 東芝、 (非接触)
- KDカード MC3200G-JK 共同印刷
- 住基カード JKD-001-01 小林記録紙、 (非接触)
- PRINCE CARD JUKI MODEL II 王子製紙
- MULTOS 2WAYアクセスカード 大日本印刷
- アガスティアT1 TFN-T1-002 トッパン・フォームズ (非接触)
- PRINCE CARD JUKI MODEL I 王子製紙 (非接触)
- JF216a 0131411 富士通
脚注
- ^ [1] 総務省 報道発表「住民基本台帳カードの利活用手法等に関する検討会報告書」の公表
- ^ 不具合が見つかった住基カードを採用する、主な自治体と全区町村は以下の通り。函館市、青森市、盛岡市、仙台市、秋田市、山形市、福島市、足利市、前橋市、さいたま市、市川市、千代田区、港区、文京区、墨田区、江東区、豊島区、北区、荒川区、足立区、葛飾区、横浜市、川崎市、新潟市、金沢市、岐阜市、浜松市、京都市、大阪市、堺市、和歌山市、鳥取市、岡山市、広島市、高松市、北九州市、福岡市、佐賀市、佐世保市、那覇市。
町村を含む全市区町村は下記の「別紙」に示される。- 公的個人認証カードアプリケーションの不具合について、 4.対象地方公共団体、「別紙」](PDF)を参照。
- 全国718市区町村で採用する「住基カード」に不具合発覚、交換へ
関連項目
参考文献
- 山根信二 『住民基本台帳カードをベースとした連携ICカード導入の技術的問題点』 反住基ネット連絡会、2003年2月16日。
- 山根信二・村山優子共著 『公的連携ICカード導入のリスク評価における課題』
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このテンプレートは分野別のスタブテンプレート(Wikipedia:スタブカテゴリ参照)に変更することが望まれています。