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アンチヒーロー

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アンチヒーローとは、典型的なヒーロー(英雄)の型に収まらないが、ヒーロー同様に扱われる人物のことである。常識的なヒーロー、すなわち「社会が求める正義のため、優れた人格をもって事に当たる人物」とは部分的にあるいは大きくかけ離れている事が多い。しかし、それ故に普通のヒーローと同等、乃至、それ以上に強い共感や支持を得る場合が非常に多い。

アンチヒーローの例

どのような人物がアンチヒーローと見なされるかは、おおむね以下のように例を挙げることが出来る。

自分自身の目標の実現のためなら手段すら選ばない場合

このタイプでは、『機動戦士ガンダムSEED』のフレイ・アルスターが代表例といえる。彼女は、アンチヒロインとでも呼ぶべきキャラクターである。フレイは、コーディネイターとナチュラルの争いの中父親を殺され、コーディネイターを憎むようになり、コーディネーターの絶滅を願った。そして、コーディネイターそのものであるキラ・ヤマトを誘惑し利用しようとするなど手段を選ばなかった。しかし結果的にその行動は彼女以上に危険なブルーコスモスラウ・ル・クルーゼ等に利用されることになった。また、同作品に登場するムルタ・アズラエルパトリック・ザラもこれに該当すると思われる。
機動戦士ガンダム』のギレン・ザビは悪役であるが、彼自身の理想のための強靭な行動力と、卓越した演説の妙、そして目標のために手段を選ばない点で一部に共感を得ている。そのような者からみれば、彼もこの類型に当てはまると言える。同様の例に、『機動戦士ガンダム0083』のアナベル・ガトーが挙げられる(徹頭徹尾ジオン公国への忠誠を貫いた彼は、デラーズ・フリートの一員として地球連邦軍の観艦式襲撃やコロニー落としなどの破壊活動(身も蓋もない表現では、テロ活動)に従事している為。)。
東方Project』の博麗霊夢も、このタイプに挙げられる。主人公である彼女は妖怪などの存在が大規模な『異変』を起こした際、退治しに行くのだが、その際「障害となりえる者は理由もなく排除する」という傾向があり、劇中でも仄めかされている。また『異変』を起こす側であるレミリア・スカーレットや西行寺幽々子などの最終ボス格キャラも、手段を選ばないと言える。とはいえ戦いが終わったら例外なく和解しているなど、冷酷であるから手段を選ばないとは言い難い部分もある。似たようなタイプに『星のカービィシリーズ』のデデデ大王も、住民から食べ物を奪うなどの悪行を行う事もあるが、善玉な部分も見受けられ、どこか憎めない。
歴史上の人物の中で評価が分かれがちな軍人・政治家・武将などの中には、このタイプの人物設定のモデルにされている例が多いと考えられる(実在の人物での例としてはチェーザレ・ボルジア曹操織田信長斉藤道三タレーラン=ペリゴールオットー・フォン・ビスマルクアドルフ・ヒトラーなどが挙げられる)。織田信長の場合には、壮年期がこのタイプに充てられ、青年期が後述の「現体制への反抗」のモデルに充てられることがあるため、境界例とも言える。
なおこのタイプのキャラクターはその手段も選ばない冷酷さが逆にカルト的人気を博し、場合によっては主人公より人気がでるケースが多いという。

仲間の裏切り、非情な掟、社会からの冷酷な仕打ちによって絶望に打ちのめされ、闇に堕ちてしまった場合

この類型に当てはまるものは、主に「同情すべき強力な敵」として描かれることが多い。近年の作品では、仮面ライダーシリーズの『仮面ライダーカブト』の登場ライダーである矢車想(仮面ライダーキックホッパー)と影山瞬(仮面ライダーパンチホッパー)がこの部類に入る。ZECTと呼ばれる組織のライダー『仮面ライダーザビー』として、社会の正義と平和の為に尽力しながらも、彼らはライダーとしての資格を失ってしまった事で、上司のみならず、それまで自分を慕っていた部下達からも不協和音として掌返しを喰らってしまった。零落れてしまった彼等は、後にホッパーという新たなライダーの力を手に入れるが、かつての仲間達の醜い本性を見たことから、他者のみならず自分達も信じられなくなってしまい、かつて信じていた正義と決別するかのごとく、正反対の生き方をしていく事になってしまう。他の平成ライダー作品では、仮面ライダー龍騎に登場する仮面ライダーの一人、東條悟(仮面ライダータイガ)が該当すると思われる。
他の例としては、『北斗の拳』の聖帝サウザー、『地獄先生ぬ〜べ〜』の無限界時空、『機動戦士ガンダム0083』のシーマ・ガラハウ、『ムヒョとロージーの魔法律相談事務所』の円宙継(エンチュー)などが挙げられる。この類に含まれる者達には、結果主義を信奉していることが多い。
時代小説時代劇でもこの類型は多い。著名であり最典型とされるのは小池一夫原作の劇画『子連れ狼』の拝一刀親子である。柳生一族の陰謀のために妻を殺され、拝家を潰された拝一刀とその子大治郎は、その仇である柳生一族を滅ぼすために非情の「冥府魔道」に生きる決意を固め、怨念の旅、そして凄絶な死闘を続けてゆく。

悪行と知りながら復讐の為に非合法な手段を採る場合

機動戦艦ナデシコ -The prince of darkness-』のテンカワ・アキトがその部類に入る。ユリカ奪還に自分とラピスの復讐の為に火星の後継者を追いかけるアキトだが北辰との戦闘の巻き添えや無関係な相手を排除したりと自分の行動が悪であると自覚しながらも、それを実行するタイプ。
手塚治虫鉄の旋律およびそのリメイクであるダイモンズでも主人公は怨念をエネルギーに妻子の仇に復讐をする。
古くから、悲劇を伴う英雄譚にこのタイプが認められ、例には巌窟王のエドモン・ダンテス、忠臣蔵大石内蔵助など、枚挙に暇がない。

愛する者を失いたくない故に、悪行に手を染めてしまった場合

仮面ライダー龍騎』に登場する秋山蓮(仮面ライダーナイト)がこれにあたる。恋人である小川恵理が不幸な事件によって植物状態に陥ってしまい、寿命まで半年僅かと追い詰められた事で、蓮は人としての道を外した行為であると自覚しつつも、神崎士郎の誘いを承諾し、ライダー同士で戦いあうバトルロワイヤルに参戦してしまっており、作中においても自分自身を見失ってしまう事も度々あった。
これとよく似た形にあるのは、スターウォーズに登場するダースベイダー(アナキン・スカイウォーカー)にあたる。予言によって愛する妻、パドメを失ってしまう事を知ったアナキンは、後に銀河帝国の皇帝となるパルパティーンの誘惑に乗ってしまい、ジェダイ騎士からシスに堕ちる。その結果、自らの全身殆どを失うだけでなく、自らの怒りによって愛するパドメを殺してしまう事になり、自らの手で予言を実現させてしまう事になった。

社会から求められる正義を実現するために、非合法な手段を採る場合

同名のアメリカンコミックの主人公・『デアデビル』ことマット・マードックが挙げられる。昼は盲目の弁護士として法律を武器に悪と戦い、夜は超感覚を持つ戦士として悪党達と戦う。『パニッシャー』でも主人公は容赦なくマフィアを射殺する。社会から求められる正義というのが大衆の物である場合、鼠小僧のような、いわゆる義賊はこのタイプに当てはまると考えられる。社会から求められる正義というのが政府や既存体制の物の場合、『ONE PIECE』のCP9などが当てはまる。また、ルフィ海賊団そのものも、実態は冒険者的な側面が大きいが、海賊という行為が社会的に悪とされる(政府側の視点)ため、アンチヒーローに当てはまる。
近年では漫画:『アクメツ』の主人公が挙げられる。
中村主水(必殺シリーズの主人公)は、このタイプの側面をもつとともに、ギャグメーカーの要素も備えており、複合した例と言えるかもしれない。

人格者とは言えないような性格や、行動様式の持ち主である場合

クリント・イーストウッドの当たり役・『ダーティハリー』や24 -TWENTY FOUR-のジャックが挙げられる。規則は破る、上司の命令は無視する、犯罪を検挙するためには暴力も厭わないというとんだ問題刑事ではあるが、そんな彼でなければ解決できなかった事件は多かった。両津勘吉(こちら葛飾区亀有公園前派出所の主人公)も、連載前期はこの類型であった。

法律や社会の常識にとらわれず、自分自身の掟(コード)のみに従って行動する場合(コードヒーロー)

ゴルゴ13がこのタイプの代表例と言える。ゴルゴ13は「相手との約束は必ず守る。その代わり、相手にも約束を必ず守ることを求める(相手が約束を破れば、抹殺する)。」という彼自身のルールに従って行動する。一般社会の常識とかけ離れた行動様式をもつため嫌悪感をもたれることが多いが、逆にその独特の美学や正義感に対し、一部の視聴者が強い共感を感じることも多い。このタイプには、他に木枯し紋次郎、味沢匠(ザ・シェフ)、ブラック・ジャック、雲盗り暫平などが挙げられる。
このタイプは、フィクションの世界で作られたキャラクターの類型であり、現実にはこれに類する人物は存在しないと言われている。ただし、自分自身の掟を、自分たちの掟と置き換えるなら、「幕府からの指示は受けるが、実際の行動は仲間内の厳しい掟にのみ従う」とし団結を図った新撰組などは、このタイプのモデルになったと言えるかもしれない。

外観や能力の源が、本来は「悪」に属するものである場合(ダークヒーロー)

黄金バット妖怪人間ベムデビルマンスポーンゴーストライダーなどが代表例である。このタイプは、外見が悪に由来する設定を補強するために、本来は悪に属する勢力の実力者が正義に転じたとの設定をもつことがあり、2の類型(本来正義であったが闇に堕ちた場合)と正反対の例と言える。これにはデビルマンスポーンゴーストライダーヘルボーイなどが当てはまり、昭和仮面ライダーシリーズの主人公もこのタイプに該当する者が多い。斬魔大聖デモンベインの主人公・大十字九郎の場合、自身の戦う動機は正義そのものであるが、彼の魔道師としての力の源は外道の知識の集大成ネクロノミコンに由来する。この他、ナチスをイメージさせる外見のブロッケンJr.(キン肉マンのキャラクター)や、戦闘スタイルが残虐性をもつラーメンマンもダークヒーローに分類されると考えられる。これはフィクションの世界でつくられたキャラクターの類型であるが、古くから存在する民話や伝承にも、それまで悪者と思われていたもの(人間・非人間問わず)が実は正義の味方であった、との筋をもつ話が多くある。民話や伝承には、実際の出来事を口伝したものが多いため、このタイプにはモデルとなる人物がいるとの考えもできるだろう。
ダークヒーローが子供番組の主人公である場合には、そのような設定を知らない、あるいは理解できないPTAによって、番組に苦情が殺到したり、一方的に有害番組に指定され子供の視聴が禁じられることもある。

行為も目的も社会的に悪であるが、生き様などが一部の共感を得る場合(ダーティーヒーロー)

フィクションでは、大藪春彦の描いた主人公(伊達邦彦・小島恵美子など)やジョジョの奇妙な冒険のDIOなどの例が挙げられる。実在した人物をモデルにした例には、ボニーとクライド(『俺たちに明日はない』の主人公)がいる(ただし相当に美化されているともいわれる)。
タイムボカンシリーズの悪者三役(マージョ・グロッキー・ワルサー)は悪役でギャグメーカーでありながら、この側面ももっており、非常に特殊な類型と言えるかもしれない。作品によっては、ゲッターロボシリーズの主人公、流竜馬もこれに該当するといってよい。
このタイプの人物設定には、歴史上の人物がモデルとして用いられることがある。その例としてはアル・カポネ石川五右衛門松永久秀などが挙げられる。また、アドルフ・ヒトラーは、この例と上述例との境界例とも言える。

物語の主部では賞賛される行動を取るが、普段は侮蔑される行動を取る人物である場合

弱虫や意気地なしが突発的な事件に巻き込まれ、意識的あるいは無意識的に活躍する場合や、普段はドジで間抜けな人物が実は高い潜在能力をもっており活躍する場合などが、このタイプに分類される。代表例としては、『ドラえもん(映画版)』の野比のび太が挙げられる。ほかには『地獄先生ぬ〜べ〜』の鵺野鳴介特命係長・只野仁の只野仁などもこのタイプに分類されると言えるだろう。
指輪物語に登場する「ホビット」と呼ばれる種族は子供程度の身長しかなく戦力として数えられなかったが、世界の運命を決める戦いにおいて重要な役割を担い、すばらしい勇気で困難に打ち克つ。ファンタジー小説においては最も力のないものが、戦いの趨勢を決めることがしばしばある。
このタイプの類似例として、ストーリーを主人公の成長物語として構築するために、物語初期の主人公の設定をこのタイプにすることがある。そのタイプの代表例としてはキン肉マンが挙げられる。このタイプは少年漫画などに多いが、美味しんぼの山岡士郎など、青年誌にも認められる(ただし山岡は連載前期の性格の方が好まれていたとの意見もある)。
このタイプにおける実在のモデルは多いが、代表例に坂本龍馬が挙げられる。

現状の体制を良しとせず、反体制の姿勢を取る場合

このタイプは、主にプロレスギミックとして用いられることが多い。新日本プロレス蝶野正洋は、体制(会社)の方針に異を唱えて対立するキャラを演じ、タイトルマッチに関する反対を示している。これによって、反体制のキャラとして観客からの共感を得ることができる。格闘技のファン層には反体制のキャラを受け入れ易い者が多いため、K-1MAXに出場する魔裟斗のように、特に運営体制に不満を表明したりはしていないが、「反逆のカリスマ」とニックネームを付けることによって人気を高めるギミックが用いられることもある。アメリカンプロレスでは、WWFスティーブ・オースチンが代表例として挙げられるだろう。
歴史上の人物ではチェ・ゲバラが代表例である。日本では織田信長(主に桶狭間の戦いまでの青年時代)、前田慶次などが挙げられる。
アニメなどでは太陽の牙ダグラムのクリン・カシムやコードギアス 反逆のルルーシュのカレンなどが代表例と言える。銀河英雄伝説ラインハルト・フォン・ローエングラムコードギアス 反逆のルルーシュの枢木スザクもこのような側面をもつが、体制を覆して"新体制"を構築したこと、その新体制が民衆の支持を得たこと、そして容姿が美形であること等から、アンチヒーローに分類されることは少ない。
漫画では『ONE PIECE』のモンキー・D・ドラゴンも該当する。

また、一般に、これらの要素が複合して使われるケースも多い。

代表的なアンチヒーローの一覧

アニメ

目的の為なら、手段を選ばない
絶望に打ちのめされ、闇に堕ちてしまった
悪と知りつつ、復讐する
愛する者を失いたくない為、悪になる
非合法的手段で正義を実現
ダークヒーロー
ダーティーヒーロー
普段は侮蔑される
現状を憂い、反体制となる
複合型

漫画

目的の為なら、手段を選ばない
絶望に打ちのめされ、闇に堕ちてしまった
悪と知りつつ、復讐する
非合法的手段で正義を実現
コードヒーロー
ダーティーヒーロー
普段は侮蔑される
複合型

アニメ及びドラマ化等した漫画

目的の為なら、手段を選ばない
絶望に打ちのめされ、闇に堕ちてしまった
悪と知りつつ、復讐する
愛する者を失いたくない為、悪になる
非合法的手段で正義を実現
人格者でない
コードヒーロー
ダークヒーロー
ダーティーヒーロー
普段は侮蔑される
現状を憂い、反体制となる
複合型

ゲーム

目的の為なら、手段を選ばない
絶望に打ちのめされ、闇に堕ちてしまった
悪と知りつつ、復讐する
愛する者を失いたくない為、悪になる
非合法的手段で正義を実現
人格者でない
コードヒーロー
ダークヒーロー
ダーティーヒーロー
普段は侮蔑される
現状を憂い、反体制となる
複合型

映画

目的の為なら、手段を選ばない
悪と知りつつ、復讐する
非合法的手段で正義を実現
愛する者を失いたくない為、悪になる
人格者でない
コードヒーロー
ダーティーヒーロー
複合型

小説

目的の為なら、手段を選ばない
人格者でない
コードヒーロー
ダーティーヒーロー
現状を憂い、反体制となる
複合型
  • 巌窟王』のエドモン・ダンテス

特撮

目的の為なら、手段を選ばない
悪と知りつつ、復讐する
絶望に打ちのめされ、闇に堕ちてしまった
愛する者を失いたくない為、悪になる
人格者でない
コードヒーロー
ダークヒーロー
ダーティーヒーロー
現状を憂い、反体制となる
複合型

実在の人物

目的の為なら、手段を選ばない
悪と知りつつ、復讐する
非合法的手段で正義を実現
コードヒーロー
ダーティーヒーロー
普段は侮蔑される
現状を憂い、反体制となる(ギミックを含む)
複合型

関連項目

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