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テトロドトキシン

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テトロドトキシン

別名テトロドトキシン
分子式 C11H17N3O8
分子量 319.27
CAS登録番号 4368-28-9
SMILES C([C@@]1([C@@H]2[C@@H]3[C@H](N=C(N[C@@] 34C([C@@H]1O[C@@]([C@H]4O)(O2)O)O)N)O)O)O

テトロドトキシン (tetrodotoxin, TTX) は化学式 C11H17N3O8 で表され、ビブリオ属シュードモナス属などの一部の真正細菌によって生産される化合物である。一般にフグとして知られ、他にアカハライモリツムギハゼヒョウモンダコスベスベマンジュウガニトゲモミジガイもこの毒をもっている。習慣性がないので鎮痛剤として医療に用いられる。分子量319.27、CAS登録番号4368-28-9。

毒性

  • マウス経口 LD50 0.01 mg/kg
  • マウス皮下 LD50 0.008.5 mg/kg

テトロドトキシンは300°C以上に加熱しても、分解されないので注意が必要である。ヒトの経口摂取による致死量は2–3mgで、経口摂取では青酸カリの850倍の毒性を持つ。

テトロドトキシンは神経細胞筋線維細胞膜に存在する電位依存性ナトリウムチャネルを抑制することで、活動電位の発生と伝導を抑制する。そのため、フグ毒の摂取による主な症状は麻痺である。麻痺は急速に進行し24時間以内に死亡する場合が多い。

最初は舌や唇がしびれ、指先のしびれに繋がる。頭痛・腹痛・嘔吐などを起こし、歩行や発声が困難になる。重度の場合、血圧の低下などが起き、呼吸困難・意識障害になり死亡に至る。まれに仮死状態に陥ることがある。通常は、摂取後数十分から数時間で症状が現れる。

処置方法

最も有効な処置は、毒を口から吐き出させることで、次に人工呼吸などを行う。これは呼吸系の障害が起きるためである。2007年現在、解毒方法は見つかっていない。ただし、処置さえ間違わなければ救命率は高いといわれる。

経口摂取の場合は全身に毒が回るまでに時間を要するので、適切な応急処置を施せば助かる可能性は高い。しかし血液中に直接毒が入った場合、全身に毒が回る速さが経口の場合の最大100倍になるといわれる。

単離・構造決定

1907年、田原良純(東京帝国大学)によりテトロドトキシンが世界で初めて単離された。しかしその複雑な構造や化学的不安定性から構造決定は難航した。

1964年、平田義正(名古屋大学)、津田恭介(東京大学)、ロバート・バーンズ・ウッドワード(ハーバード大学)の3グループが独立に構造決定を行った。同年京都で開催されたIUPAC国際天然物化学会議において、この3者が同時に同じ構造を発表している。

全合成

1972年岸義人がD,L-tetrodotoxin(ラセミ体)の全合成に成功した。2003年には磯部稔西川俊夫(名古屋大学)らと J. Du Bois(スタンフォード大学)が別々に初の不斉全合成を達成している。

フグの毒

フグ毒の成分はテトロドトキシンで、もともと細菌が生産したものが餌となる貝類を通して生物濃縮され、体内に蓄積されたものと考えられている。餌の種類を変えて養殖すると、同じ種であってもフグ毒が少なかったり、全くない場合があることからこのように推定されている。このことから2005年に佐賀県の業者が河豚毒の発生しない養殖法を開発し、河豚肝を食用として提供出来るよう特区申請をしたが100%の保証が現時点では出来ないと判断され却下されている。河豚毒の仕組みの正確な解明により河豚肝を提供出来るように早期の研究が求められている(ただし、食通の中には無毒であれば河豚肝を食べる意味がないとする者もいる)。

しかし無毒の養殖フグの群れの中に、毒を持つ天然種を放流すると無毒の群れも毒性を帯びることもある。フグ毒についてはまだまだ解明されていない部分が多いのが実情である。

フグはテトロドトキシンに対し高い耐性を持っているため、フグ自身が中毒することはない。これは自然に蓄積する濃度のテトロドトキシンに耐えられるという意味で、作用点となるイオンチャネルの形が他の動物と違うのである。しかし人為的に高濃度のテトロドトキシンを与えれば中毒する。


関連項目

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