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2011年8月27日 (土) 17:06時点における版
夢(ゆめ)とは、
本記事ではまず睡眠中の夢について解説し、将来への願望についてはその後に解説する。
概説
視覚像として現れることが多いものの、聴覚・触覚・味覚・運動感覚などを伴うこともある[2] [1] 。通常、睡眠中はそれが夢だとは意識しておらず、目覚めた後に自分が感じていたことが夢だったと意識されるようになる[2] 。
夢とは何なのか?ということについては、古代からある信仰者の理解、20世紀の心理学者の理解、現代の神経生理学者の理解、それぞれ大きく異なっているので、それらを区別しつつ解説する。
古代から現代までの信仰と夢の理解
古代
未開人や古代人の間には、睡眠中に肉体から抜け出した魂が実際に経験したことがらが夢としてあらわれるのだ、という考え方は広く存在した[3] 。
神のお告げ
夢は神や悪魔といった超自然的存在からのお告げである、という考え方は世界中に見られる[3] [4] 。古代ギリシアでは、夢の送り手がゼウスだとかアポロだと考えられていた[3] 。『旧約聖書』でも、神のお告げとしての夢は豊富に登場する[3] 。有名なところでは、例えばアビメレクの夢のくだりなどがある[3] 。中世の神学者トマス・アクィナスは夢の原因には1精神的原因、2肉体的原因 3外界の影響 4神の啓示の四つがある、とした[3] 。
解釈
バビロニアにおいては夢の解釈技法が発達し、夢解釈のテキストまで作られていた[3] 。
古代の北欧でもやはり人々は夢解釈に習熟しており、ある種の夢に関しては、その解釈について一般的な意見が一致していたという[3] 。たとえば、白熊の夢は東方から嵐がやってくる予告だ、と共通の認識があったという[3] 。
ユダヤ法典には、エルサレムに12人の職業的夢解釈家がいたことが書かれている[3] 。
ネイティブアメリカンの部族の中には、夢を霊的なお告げと捉え、朝起きると家族で見た夢の解釈をし合うという習慣がある。
古代ギリシャにおいて夢は神託であり、夢の意味するものはそのままの形で夢に現れているため「解釈を必要としない」(アルテミドロス)と考えられていた[5] 。
夢占い
夢占い(あるいは夢判断)では、夢は見た者の将来に対する希望・願望を指すか、これから起き得る危機を知らせる信号と考えられている。また、夢でみた現象がそのまま実現する夢を予知夢と呼び、可能性がある夢を詳細に検討する場合もある。
東洋で古来からの夢占いの解説書として用いられてきたものに真書、偽書などの諸説はあるものの、周公解夢全書や神霊感応夢判断秘蔵書(伝、安倍晴明著)などがあり、日本での夢占いの分野における参考書的存在や底本として用いられる場合がある。
心理学における夢の理解
深層心理学においては、無意識の働きを意識的に把握するための夢分析という研究分野がある。
夢分析の古典としてはジークムント・フロイトの研究、あるいはカール・ユングの研究が広く知られている。そこでは夢の中の事物は、何かを象徴するものとして位置づけられている。これらは神経症の治療という臨床的立場から発展しており、夢分析は心理的側面からの神経症の治療を目的とした精神分析のための手法の一つである[6] 。
フロイトは『夢判断』で、人が体験する夢を manifest dream(顕在夢)と呼び、それは無意識的に抑圧された幼児期由来の願望と、この願望と結びついた昼間の体験の残滓からなる夢のlatent thought(潜在思考)が、検閲を受けつつdream work夢の仕事によって加工され歪曲されて現れたものだ、とした[7] [8] 。
ただし、フロイトによる夢分析に限ると、性的な事象に紐付けられた説明があまりに多く、そのまま現代人や日本人に適用するのは無理がある、とする説も多い(例えば、銃が男性器を、果実が女性器を、動物が性欲や性行為を象徴するなどとされたりした。これには、当時の禁欲的な世相が反映されているとする説や、フロイト自身が抑圧された性的願望を抱いていたために偏った解釈をしているとみる説が多い)。
カール・ユングは、夢は、意識的な洞察よりもすぐれた智慧をあらわす能力があるとし[3] 、夢は基本的に宗教的な現象だとした[3] 。ユングによると、人間の無意識のさらに深い領域には全人類に共有されている集合的無意識があり、古代から継承されたアーキタイプ(元型)が宗教・神話・夢といった象徴の形で現れる[3] とされる。
エーリッヒ・フロムは、象徴というのは人類がかつて使っていた言語だが現代人はそれを忘れてしまっているのであって、夢というのはその象徴という言語で語られる無意識の経験であるとし[3] 、象徴の解釈によりその真の意味を理解することが可能だとする[3] [9] 。
現在では夢分析も改良され、広く現代人の実情を考慮した分析が多い。自分で自分の夢分析をするためのガイドブックや事典なども出版されており、何がしらの自己分析・自己発見の役に立つことも多いようである。
神経生理学における夢の理解
現代の神経生理学的研究では、「夢というのは、主としてレム睡眠の時に出現するとされ、睡眠中は感覚遮断に近い状態でありながら、大脳皮質や(記憶に関係のある)辺縁系の活動水準が覚醒時にほぼ近い水準にあるために、外的あるいは内的な刺激と関連する興奮によって脳の記憶貯蔵庫から過去の記憶映像が再生されつつ、記憶映像に合致する夢のストーリーをつくってゆく」と考えられている、と言う[7] 。
睡眠時に起こる外的現象
睡眠時は本来ならば何も感じていないと考えられる大脳が覚醒時と同様な活動状態を示す脳波になる。時にはその活動に刺激されて反射運動がみられる場合がある。この反射運動には、寝ている状態で手足を動かす、声を発する(つまりは寝言)などある。寝言の中には歌を歌いだすという報告もある。
反射行動の中には日常生活では見られない行動、奇異であり不思議な行動が見受けられる。フロイトの報告によれば、普段聞きなれているのだが、発音できなかった(もしくは上手でない)外国語を突然、流暢に喋りだすという事例がある。また、睡眠中に突然起き上がり歩き回るが覚醒時にはその記憶が残っていないなど、その行動が顕著な場合に夢遊病と呼ぶことがある。
夢は人間に限られた現象ではなく、ほとんどの恒温動物が見るとされる。人間同様に睡眠中に、覚醒活動状態の脳波を示したり、反射運動である尻尾をふる、鳴き声をあげる発現などが確認されている。
夢のメカニズム
メカニズムについては不明確な部分が多く、研究対象となっている。 例えば、浅い眠りに陥るレム睡眠中に見るとされ、ノンレム睡眠時は発現されないと考えられていた。 しかし、最近ではノンレム睡眠時にも夢を見ることが確認された[要出典 ][いつ? ]。たとえば、フラッシュバック性の悪夢はノンレム睡眠時に起こることで知られる。だが、夢が現出してくるルートが比較的解っているのは、レム睡眠時で、PGO波という鋸波状の脳波が、視床下部にある端網様体や、後頭葉にかけて現れる。このPGOが海馬などを刺激して記憶を引き出し、大脳皮質に夢を映し出す[要出典 ]、と考えられている。
夢を見る理由については現在のところ不明である。 夢の存在意義を定めようとする説はさまざまあるが主に
の二つが有力である。
夢の知覚
夢は、人によってさまざまであり、同一の人でも知覚する現象が千差万別である。
ただし、睡眠時の肉体が感じている外的な知覚が覚醒時より大きく夢に影響することが知られている。寝ている人の顔に短時間、ハンカチを被せた所、夢の中で顔に何らかのものを押し付けられる目にあったと[要出典 ]いう複数の報告がある。特に尿意が夢に反映されやすいのは良く知られており、排泄に関わる夢を見て目が覚めたら、膀胱が限界に近かったという事例は非常にありふれている。
夢の知覚には、性別や年齢によって傾向があるといわれる。男性より女性の方が色が付いた夢を見やすい[要出典 ]、などがあげられる。
夢では視覚だけではなく、聴覚・触覚・味覚・嗅覚においても何らかの刺激を感じるといった報告がある。上記の通り、どの感覚においても、人によってさまざまであり、同一の人でも時には感じないこともある。ただし、触覚のひとつである痛覚については、ほとんどの事例で「感じない」とされている。感じる、という場合も、夢の中でなく、実際に何かを感じている(例えば、夢の中で「足が痛い」という場合、本当に足を壁にぶつけていた、など)ことが多いといわれる。[要出典 ]
夢には時間軸が存在せず主観時間でのみ知覚している[要出典 ]とも考えられている[誰? ]。これは、目が醒めた時点で記憶されている夢の多くは覚醒前20分以内に見た物とされている[要出典 ]が、夢の中では実際の睡眠時間よりも長い、数時間〜数日に感じたというケースが多いことによる[要出典 ]。
覚醒や意識レベルと夢との関係
寝ながら見る夢では、その人の普段は抑圧されて意識していない願望などが如実に現れるケースも多いとされる。ただ、それらは誇張されていることも多く、結果的に現実としては不可解な現象で表現されることが多い。
また、普段の生活から興味がある現象について夢を見やすいといわれている。具体的には色に興味がある人は色が付いた夢を見る、などである。
覚醒時に考えていた(悩んでいた)事が影響するケースも多く、考えていたテーマに新しい着想を夢の中より得た事例もある。科学史研究者の間ではこのエピソードは後に創作されたもので事実ではないという見解が定説になりつつあるが、ベンゼン環の分子構造を解明したドイツの科学者フリードリヒ・ケクレは、夢の中で尾を咥えた蛇を見たことが解明の糸口となったと述べている。文学に於いてはブラム・ストーカーがカニを食べ過ぎて悪夢を見て、これを元に吸血鬼ドラキュラを書き上げている。[要出典 ] この他にも、重要な発見や発明、芸術作品など、夢で得たイメージを元としている事例は多い。
明晰夢
通常、夢を見ているときには自分で夢を見ていると自覚できないことがほとんどであり、覚醒するまでは夢であることが分からない。これに対し、夢の中でも自覚している現象を明晰夢と呼び、その場合には夢の内容をコントロールすることも可能であると言われる。このため、望むままに夢が変化することも多いため、願望を(現実ではないが)叶えることができるとされる。
白昼夢
白昼夢(白日夢)とも呼ばれる。目覚めていながら夢を見ているかのように現実から離れて何かを考えている状態をいう。夢を見ている自分を自覚できること、夢の内容を自分でコントロールすることができるという点で、通常の夢とは異なる。
夢と行事・習慣
- 1月1日の夜から2日の朝にかけて見る夢または、2日から3日の朝にかけて見る夢を初夢という。
- 寝言に返事をしてはいけないという俗信がある。答えてしまうとその人は目を覚まさないといわれている。[要出典 ]
将来への希望・願望としての夢
夢という語は、将来実現させたいと思っていることも指す。 日本語のこのような意味で「夢」を表すのは比較的新しく、明治時代に「Dream」の訳語として出てきたのが広義の願望などといった例にも適用された表現である[要出典 ]。
はかないこと
夢には、はかないこと、たよりないこと、という意味もある[2] [1] 。
「夢物語」と表現は、夢のようなはかない物語、という意味である[2] [10] 。フィクション、つくりごと、という意味をこめた「物語」と合わせて、現実からほど遠いことが強調されている。その内容があまりに現実から遠く、はかないことを形容するためにしばしば用いられている。
夢を主たるテーマにした作品
睡眠時に見る夢と、あるいは将来への願望を意味する夢のどちらかを主題(主たるテーマ)にしている作品の一覧である。
- 文学作品
- 映画
- 絵画
- 音楽
- 「夢想曲」(クロード・アシル・ドビュッシー)
- 「ヴァイオリン・ソナタ ト短調(悪魔のトリル)」(ジュゼッペ・タルティーニ、18世紀)
- 「夢織り人」 (ゲイリー・ライト)
参考文献
- 『宗教学辞典』東京大学出版会、1973
- 『岩波 哲学思想事典』1998
- 川嵜克哲『夢の分析-生成する<私>の根源』講談社、2005年。ISBN 978-4062583190。
出典・注
- ^ a b c d デジタル大辞泉【夢】
- ^ a b c d e f 広辞苑第五版 p.2729【夢】
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o 『宗教学辞典』pp.733-734【夢】
- ^ 超自然的存在からのお告げ、という概念に関しては、啓示、預言、天啓などの項目も参照可
- ^ 川嵜 (2005) 112-113頁。
- ^ 川嵜 (2005) 28-31頁。
- ^ a b 『岩波 哲学思想事典』pp.1628
- ^ 川嵜 (2005) 42-46頁。
- ^ Fromm, The Forgotten Language, 1951
- ^ 広辞苑第五版に【ゆめがたり】に同じ、とあり、【ゆめがたり】で、表記の説明がある。
関連文献
- 河東仁 『日本の夢信仰』宗教学から見た日本精神史 玉川大学出版部 ISBN 4472402645
- バリー・ストラウド 永井均 監訳、岩沢宏和、壁谷彰慶、清水将吾、土屋陽介 訳 『君はいま夢を見ていないとどうして言えるのか』現代哲学への招待 Great Works哲学的懐疑論の意義 春秋社 ISBN 4-393-32312-2
- 論文等
- 鈴木博之(2005)「夢とREM, NREM睡眠 : 夢はいつ起こっているのか(<特集>眠り) 」[1]
- 松田英子(2006)「 P-2318 快適夢見睡眠とパーソナリティに関する心理生理学的研究」[2]
関連項目
この項目は、心理学に関連した書きかけの項目 です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めています(PJ 心理学)。