「アルカリマンガン乾電池」の版間の差分
2010年10月26日 (火) 12:25時点における版
アルカリ・マンガン乾電池(アルカリ・マンガンかんでんち、Alkaline Manganese Battery/Alkaline Battery、中国語:碱性電池/碱性电池)は、一次電池の一種で、正極に二酸化マンガンと黒鉛の粉末、負極に亜鉛、水酸化カリウムの電解液に塩化亜鉛などを用いた乾電池である。単にアルカリ乾電池ともよばれる。
アルカリ・マンガン乾電池は電解液が水溶液であるため、使用時でなくても亜鉛の自己放電と水素発生反応が同時に進行する。
化学式
アルカリ乾電池はマイナス極に亜鉛粉(表面積を増やす事により反応性を高める為である)、プラス極に二酸化マンガンを使用する。亜鉛-炭素電池が電解質に塩化アンモニウムや塩化亜鉛を使用するのに対してアルカリ乾電池は電解質に水酸化カリウムを使用する。
それぞれの電極での化学反応は:[1]
- Zn (s) + 2OH− (aq) → ZnO (s) + H2O (l) + 2e−
- 2MnO2 (s) + H2O (l) + 2e− →Mn2O3 (s) + 2OH− (aq)
サイズ
円筒形(単1形 - 単5形)、角型(006P)など、各種の形状が生産されている。
用途
マンガン乾電池に比べ高いエネルギー密度を持ち、モータ駆動用、エレクトロニックフラッシュなど連続的に大きな電流が流れる各種携帯機器に使用されているが、内部抵抗が比較的大きいため、デジタルカメラなどのように短時間に大きな電力を消費するような機器には向かない(ただし、乾電池でデジタルカメラを使う場合には、消費電力からエネルギー密度の小さいマンガン乾電池では対応できないため、エネルギー密度の大きいアルカリ乾電池を使わざるを得ない)。
また、時計やリモコンなどのように、微弱な電力を長期間にわたって消費するような機器や、懐中電灯のように長期にわたって保管されるような用途にはマンガン乾電池が適している。
近年の事情
日本メーカー製のアルカリ乾電池はほぼマンガン乾電池の上位互換となっており、たいていの用途でマンガン乾電池よりも長寿命を発揮することができる。しかし、その時間は適した用途では5 - 10倍になるが、適さない用途では1.5 - 3倍程度にとどまる。
時計ではマンガン乾電池が適していると前述しているが、近年普及してきた電波時計では、少数・小型の電池で、時計、受信機、時刻調節機構のすべてを動かす為、アルカリ乾電池の方が適している。但し、カシオの一部の製品(例:IDC-500J-7JF)などはマンガン乾電池を使用するようにと公式サイトやカタログ、説明書に記載している。
従来、マンガン乾電池に対する短所であった自己放電や液漏れの問題はほぼ克服されており、その万能性から、非常用の備蓄には適しているといえる。
また、大電流を要求する用途での電圧降下が始まる頃になっても、エネルギー密度ではマンガン乾電池の半分程度を残している為、ミニ四駆やRCカー等のモーター機器で充分な性能が発揮できなくなった個体を、主に時計に流用して使い切る方法もある。
最近はアルカリマンガン乾電池に代わり、パナソニックのオキシライド乾電池のようにデジタルカメラに適した電池が開発されている。ただし初期電圧が高いためマンガン乾電池の用途では一部使えないものがあるので、アルカリ乾電池ほど万能ではない。また、2008年4月26日に同じくパナソニックから、アルカリ乾電池でありながらオキシライド乾電池を超える性能をもつ「EVOLTA」(エボルタ)が発売された。事実上オキシライド乾電池の後継商品であり、オキシライド乾電池の生産は大幅に縮小の後、終了した。
電圧
歴史
1959年、アメリカのエバレディ・バッテリー(現 エナジャイザー・ホールディングス (en:Energizer Holdings)) のカナダ人ルイス・アリー (en:Lewis Urry) が開発し、1964年に松下電器産業(現・パナソニック)から発売された。
1963年(昭和38年)、日立マクセルが 国産として初めてアルカリ乾電池を製造。
メーカー
開発元のエナジャイザー・ホールディングスは現在Energizerなどの商品名でアルカリ乾電池を販売している。またデュラセル(en:Duracell)もアメリカで広いシェアを持つ。日本ではパナソニック(パナソニック エナジー社)、ソニー(ソニーエナジー・デバイス)、東芝(東芝電池)、富士通(FDK、旧・富士電気化学)、富士フイルム、日立マクセルなどが広いシェアを持つ。
アルカリ乾電池の充電
実際には大半のアルカリ乾電池は充電できる。しかし一般的には充電できるようには設計されておらず実際に充電することは危険を伴う。特に充電する前に本体などに書かれた電池に関するメーカーの説明を読む事は重要である。大半のメーカーの一次電池は充電禁止を明記している。それでも前述のようにアルカリ乾電池は充電できる場合がある。市場で売られている充電器にはアルカリ乾電池への充電が出来ると表示されているものもある。但し、その効果は予測不可能である。
概要
アルカリ乾電池の充電は80%のデューティー比の40 - 200Hzのパルス式充電器で充電する。パルス式充電は電解質(水酸化カリウム)の漏洩の危険性を減らす。充電時の電流は通常急激なガスの発生による電池の破裂を避ける為に極低電流を流す。もし電池が腐食や液漏れなど破損していた場合は廃棄して二度と使用すべきではない。
安全性
放電済みのアルカリ乾電池に充電した場合容器内でガスが発生する。一般的に容器は密封されているので高圧に達する。密封が破裂すると水酸化カリウム水溶液を含む電解液が漏れたりひどい場合は破裂する。電池が内圧により膨らむ事は危険な兆候である。充電により発熱する。発熱により炎上、破裂により怪我をする場合がある。
水酸化カリウムは腐食性で目や皮膚に触れると怪我に繋がり機器内の電池の端子を腐食する。いかなる電池を充電時する場合でも保護めがねを着用することが望ましい。
電池の材料は土壌汚染等の環境汚染を引き起こすので回収に出すべきである。このため、いくつかの地域では電池の廃棄は違法となっている。
動作
アルカリ乾電池は放電により内部に化学物質が生成される。しかしながら、化学物質が一度不動態になると反応は停止してその電池は使用不能になる。逆方向から電池に電流を流す事により不動態から元の活物質に戻る。異なる電池に異なる活物質が用いられる。いくつかの反応は可逆的であるがいくつかは可逆的ではない。多くのアルカリ乾電池の反応は後者に分類される。[2] [3] [4]
充電式アルカリ電池
充電式のアルカリ電池の第一世代はカナダのバッテリーテクノロジー社がピュアエナジー (Pure Energy) 社、エンバイロセル (EnviroCell) 社、レイオバック (Rayovac) 社、そしてグランドセル (Grandcell) 社にライセンスを与えた。 後続の特許と進んだ技術が導入された。単3や単2型等や9Vの006P型がある。充電式アルカリ電池は多くのニカド電池やニッケル水素電池が90日で自己放電するのに対して[5] 年間に渡って充電を維持する。適切に生産されれば充電式アルカリ電池は環境にやさしいエネルギー保管方法である。
化学組成
充電式とそうでないアルカリ電池の組成の主な違いは材料の組成と充電に適した構造であるかである。化学組成の改良なくしては複数回の充電を維持できない。電池はこれまでのアルカリ電池や充電式電池以上の液漏れ対策が施されている。
適切な使用と耐久性
標準的な電池の用途に対応している。テレビのリモコン等低消費電流で長期間使用する用途に適する。
充電問題
アルカリ充電池は比較的安く容量が大きいがそれらの充電容量は放電量によって異なる。
- もし25%以下の放電の場合、100回充電でき、約1.42Vである。
- もし50%以下の放電の場合、数10回ほぼ完全に充電でき、約1.32Vである。
- 深放電の後は高容量充電した場合、数回だけである。
環境問題
電池によっては環境汚染物質である水銀 (Hg) やカドミウム (Cd) が含まれているので廃棄時には注意を要する。しかしながら、2007年8月時点でほとんどの日本の会社は毒物や重金属を含まない電池を製造している。
ほかの乾電池
関連項目
脚注
- ^ Battery FAQ at www.powerstream.com
- ^ Afroman's guide to recharging alkaline batteries 充電の実験
- ^ Charging the unchargeable
- ^ Potassium hydroxide MSDS from JTBaker
- ^ エネループ等一部のニッケル水素電池はさらに長期間維持する。