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「外来語」の版間の差分

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== 制限論 ==
== 制限論 ==
ある言語の中に極めて大量の借用語がある場合、言語の[[自立]]性が損なわれるとの意見が、[[保守派]]や[[民族主義]]者を中心に唱えられることがある。日本でも、外来語の多用は意味が分かりにくいとして、漢字を用いた語に言い換えようとの動きもある。[[国立国語研究所]]「外来語」委員会 は「オンデマンド」を「注文対応」のようにカタカナ語を漢字に置き換える例を提案している。一方外来語だけでなく、日本語すべてをカタカナにすべきとする、団体「[[カナモジカイ]]」(1920年発足)もあった。
ある言語の中に極めて大量の借用語がある場合、言語の[[自立]]性が損なわれるとの意見が、[[保守派]]や[[民族主義]]者を中心に唱えられることがある。日本でも、外来語の多用は意味が分かりにくいとして、漢字を用いた語に言い換えようとの動きもある。[[国立国語研究所]]「外来語」委員会 は「オンデマンド」を「注文対応」のようにカタカナ語を漢字に置き換える例を提案している(追記) <ref>国立国語研究所「外来語」委員会編『わかりやすく伝える外来語言い換え手引き』[[ぎょうせい]]、2006年6月30日 ISBN 4-324--7958-7 </ref> (追記ここまで)。一方外来語だけでなく、日本語すべてをカタカナにすべきとする、団体「[[カナモジカイ]]」(1920年発足)もあった。


無論、あらゆる言語は他の言語からの借用語を含むものであり、このような主張は、言語の自然な変化というものを無視した意見であるとされることが多い。しかし中には革命後の[[トルコ]]のように、[[アラビア語]]、[[ペルシャ語]]等からの借用語の追放などを行って言語を純化した例もある。
無論、あらゆる言語は他の言語からの借用語を含むものであり、このような主張は、言語の自然な変化というものを無視した意見であるとされることが多い。しかし中には革命後の[[トルコ]]のように、[[アラビア語]]、[[ペルシャ語]]等からの借用語の追放などを行って言語を純化した例もある。

2008年9月24日 (水) 20:31時点における版

ウィキペディア ウィキペディアにおける外来語の表記については、Wikipedia:外来語表記法をご覧ください。

外来語(がいらいご)とは、日本語における借用語のうち、漢語とそれ以前の借用語を除いたものである。主に西洋諸言語からの借用であり、洋語(ようご)とも呼ばれる。

種類

  • 室町期以前に中国語サンスクリット語などの中国経由で入ってきた漢字を用いた語は、漢語と呼んで区別し、外来語に含めない。洋語のほか、アジアなど欧米以外の外国の言語から入った語も外来語とされる。
  • 中国語から取り入れた語であっても、現代中国語音や現代広東語などの方言音による語、例えばメンツワンタンなどは 外来語に入れる。また借用の時期が古い、「馬(うま)」や「梅(うめ)」などは漢語にも外来語にも入れず、大和言葉として扱う。
  • 古い朝鮮語との類似が指摘される「カササギ」、「寺(てら)」などの語は、借用語であったとしても、外来語には含めない。
  • アイヌ語ニブヒ語(ギリヤーク語)のように日本本国内またはかつて本国だった地域に土着する少数民族の言語由来の単語は普通、外来語に含めない(「ラッコ」「トナカイ」「クズリ」などがある)。
  • 英語などの音訳に漢字を当てたものは、一般に外来語と見なされない。画廊 (gallery)、簿記 (bookkeeping, booking からという説も) などがある。また、日本語に入った年代の古い語や日本人生活文化に深く浸透したものを指す語の一部(「タバコ」「イクラ 」など)も、外来語と認識されないことが多い。
  • 古くは16世紀にポルトガル語から入ってきたタバコ、パン江戸時代にオランダ語から入ってきたガラスなどがある 。しかし、本格的に西洋語が日本に入ってきたのは明治維新以降である。各分野それぞれにおいてドイツイギリスアメリカの3国を中心に、次いでフランスからの技術輸入が多かった為、例えば鉄道用語はイギリス英語医学用語はドイツ語、芸術用語はフランス語起源のものが多く使われている。
  • 外国語に借用された日本語の単語を、「外来語」の逆として、「外行語」と呼ぶ場合がある。
  • 外来語が日本人になっている例もある。山口県を中心に見られる煙草谷(たばこだに)姓はその一つといえる。
  • 戦後の日本語では、和語(大和言葉)や漢語が同義の洋語に置き換えられるか、同義の洋語が和語や漢語より優勢になる場合もある。「ちち(、飲用の)→ミルク(milk)」「はいいろ(灰色)・ねずみいろ(鼠色)→グレー(gray/grey)」「葡萄酒→ワイン」「収集(蒐集)→コレクション(collection)」などの例がある。一方で現在でも、「バスタブ」に対する「ゆぶね(湯船)」「浴槽」のように和語または漢語が同義の外来語よりどちらかといえば優勢な例もある。
  • 外来語でも戦後の日本語では、英語からの語彙がより古くから借用されたポルトガル語・オランダ語等からの同義の語彙より優勢になったか、優勢になりつつある場合もあり、「ズック (蘭: doek) →カンバス・キャンバス (canvas)」「ビロード (葡: veludo) →ベルベット (velvet)」などの例が挙げられる。

外来語の表記

  • 日本語の場合、一般に外来語はカタカナで表記して区別されるが、「瓦斯」(gas)、「米」(meter)などのように漢字を当てる場合や、「頁」(page)のように訓読みになっている場合もある。ほかに、外来語との認識の薄い語がひらがなで表記される場合もある(「タバコ 」を「たばこ」など)。また、2文字以上の漢字で表記されて熟字訓で読まれることのある語もある(「メリヤス」を「莫大小」、「タバコ」を「煙草」)。また、外来語を表記するために、国字(和製漢字)が作られた例もある(「ブリキ」を「錻力」または「錻」)。
  • 綴り文字発音においても、外来語のみにしか使われない特別なものが出来る事がある。英語では"j",語頭の"v"(以上フランス語起源),[k]と発音される"ch"(古典ギリシャ語、イタリア語)などが該当するが、日本語については以下でこれを説明する。
  • 拗音風に仮名2文字を使うことがある。「シ」「ジ」「チ」以外の「い段」音の仮名に「」をつけて「イェ」「キェ」等と表記したり、「い段」音以外の仮名に「」「」「」「」「」または「」「」「」のうちの1文字をつけて表記する。これらは、下表では、外来語の表記に含めた。
  • 第1字が「イ」または「ウ」である場合はそれが半母音化し、それが頭子音となる。
  • [t]または[d]に始まる音の第1字は「」「」「」「」で書かれる。
  • 日本語の「い」段音はすべて硬口蓋化しているため、「さ」行、「た」行、「ざ」行、「だ」行の頭子音に母音[i]をつけた日本語には存在しない硬口蓋化していない「い」段音とも言うべき外来音、即ち[si]、[ti]、[zi]、[di]を表すのに、「スィ」、「ティ」、「ズィ」、「ディ」といった表記が一般に行われる。ただし、「さ」行、「た」行、「ざ」行、「だ」行以外の行については、上記のように硬口蓋化していない「い」段音を通常の硬口蓋化している「い」段音と区別して表記する一般的な表記法は存在しない。
  • 用例 イェ/ツァ・ツィ・ツェ・ツォ/ティ・テュ・ディ・デュ/トゥ・ドゥ/ファ・フィ・フェ・フォ/ウィ・ウェ・ウォ/ヴァ・ヴィ・ヴェ・ヴォなど
  • 拗音風の外来語の表記は、できるだけ本来の外国語の発音に近づけるために1モーラで発音することを期待した表記であるが、なかには日本語母語話者には発音が困難であったり、従来からの慣用があるため、下記のように2モーラに発音したり、別の1モーラに置き換えて発音することがある。特に、「シ」「チ」「ジ」を除く「い段」直音に「ェ」を付した「イェ」「キェ」「ニェ」などや円唇化された子音を頭子音に持つ「ウィ」「クァ」「グァ」「スィ」などで表現される語の場合、日本語母語話者の多くは日常会話では、その2文字目を普通文字で表記した2モーラの「イエ」「ウイ」「クア」などで表現される語とは、意味上はもちろん、発音の上でもその違いをほとんど認識することはなく、その発音の可否にかかわらず多くの場合、いずれも2モーラに認識する(例:イェス/イエス、ウェハース/ウエハース、クェスチョン/クエスチョン、グァテマラ/グアテマラ、スェーデン/スエーデン/スウェーデン)。外来語の中には、これまでに慣用の表記と発音がすっかり定着してしまっているため、拗音風の外来語の表記・発音がほとんどあるいはまったく使われないものもある(例:エチケット/エティケット、ラジオ/ラディオ/レイディオ)。平成3年に内閣告示された『外来語の表記』では、このうち国語化の程度が高い語に使われる仮名は第1表に、国語化の程度がそれほど高くない語、またはある程度外国語に近く書き表す必要のある語に使われる仮名は第2表に収められている。
    • イェロー(yellow 英:黄色)→イエロー
    • イェル(yell 英:学生などの応援の叫び)→エール
    • ウィーク(week 英:週)→ウイーク
    • ウェイト(weight 英:重量)→ウエイト
    • ヴァイオリン(violin 英:弦楽器の1種)→バイオリン
    • クォーツ(quartz 英:石英)→クオーツ
    • グァム島(Guam 英:太平洋上の米領の島の1つ)→グアム島、ガム島
    • スィン(グ)(sing 英:歌う)→シング
    • スウィン(グ)(swing 英:揺れる、揺する)→スイング
    • デュース(deuce 英:庭球等の競技用語)→ジュース
    • トゥ(two、to 英:2、〜へ)→ツー

一覧表

   『外来語の表記』(平成3年、内閣告示)の第1表に挙げられたもの。これらの仮名は国語化の程度の高い語を表すことができるもので、その発音は日本語音韻として定着したものが使われ、1文字目の頭子音+2文字目の母音で発音される。なお表される外来音と発音される日本語の音は全く同じとは限らず、音声学的には微妙に異なる場合がある。
   『外来語の表記』第2表にあげられたもの。これらの仮名は、国語化の程度がそれほど高くない語、ある程度外国語に近く書き表す必要のある語(特に地名・人名の場合)に使われる。その表される音は日本語の音韻として定着していない場合が多く、2モーラで発音されたり、他の音で発音されることが多い。この場合、外来音に対しては表音主義的であるが、日本語音に対しては表音主義的ではない。
   『外来語の表記』の表に挙げられていないもの。特殊な音を表し、『外来語の表記』では取り決めが行われず、自由とされている。
/a/ /i/ /u/ /e/ /o/ 表記される外来音 /a/ /i/ /u/ /e/ /o/ 表記される外来音



イェ(  /ye)
/j/
ウァ(wa) ウィ(  /wi)
ウェ(  /we) ウォ(  /wo) /w/



キェ(kye)
/kj/


ギェ(gye)
/gj/
クァ(kwa) クィ(kwi)
クェ(kwe) クォ(kwo) /kw/ グァ(gwa) グィ(gwi)
グェ(gwe) グォ(gwo) /gw/



シェ(sye/she)
/ʃ/


ジェ(zye/je)
/ʒ, ʤ/

スィ(  /si)


/s/
ズィ(  /zi)


/z/



チェ(tye/che)
/ʧ/


ヂェ(zye/je)
/ʤ/
ツァ(  /tsa) ツィ(  /tsi)
ツェ(  /tse) ツォ(  /tso) /ʦ/

ティ(  /ti) トゥ(  /tu)

/t/
ディ(  /di) ドゥ(  /du)

/d/
テャ(  /tya)
テュ(  /tyu)
テョ(  /tyo) /tj/ デャ(  /dya)
デュ(  /dyu)
デョ(  /dyo) /dj/



ニェ(nye)
/nj, ɲ/
ファ(  /fa) フィ(  /fi)
フェ(  /fe) フォ(  /fo) /f/ ヴァ(  /va) ヴィ(  /vi) ヴ(  /vu) ヴェ(  /ve) ヴォ(  /vo) /v/
フャ(  /fya)
フュ(  /fyu)
フョ(  /fyo) /fj/ ヴャ(  /vya)
ヴュ(  /vyu)
ヴョ(  /vyo) /vj/



ミェ(mye)
/mj/



リェ(rye)
/rj, lj/

外来語と方言

他の言語との接触頻度や形態に地域差がある場合、一部の地域においてのみ借用が行われることがある。

日本語における方言特有の外来語の例をいくつか挙げると、朝鮮語で「友達」を意味する「チング」は長崎県山口県の一部など、朝鮮半島と距離的に近い地域で日常的に使用されている。[1] 長崎県郷土料理ハトシ」は広東語からの、鹿児島弁などで「黒板消し」を意味する「ラーフル」はオランダ語からの外来語と考えられる。また琉球方言には中国語由来の外来語が多く見られる。

派生語

外来語の浸透にともなって、和製英語を含む和製外来語など、外来語からの造語も用いられるようになった。また、「テレビジョン」を「テレビ」、「コンビニエンスストア」を「コンビニ」というなど、独自の略語も用いられている。中には「コスチュームプレイ」から派生した「コスプレ」の様に、外国に逆輸入される単語も存在する。

制限論

ある言語の中に極めて大量の借用語がある場合、言語の自立性が損なわれるとの意見が、保守派民族主義者を中心に唱えられることがある。日本でも、外来語の多用は意味が分かりにくいとして、漢字を用いた語に言い換えようとの動きもある。国立国語研究所「外来語」委員会 は「オンデマンド」を「注文対応」のようにカタカナ語を漢字に置き換える例を提案している[2] 。一方外来語だけでなく、日本語すべてをカタカナにすべきとする、団体「カナモジカイ」(1920年発足)もあった。

無論、あらゆる言語は他の言語からの借用語を含むものであり、このような主張は、言語の自然な変化というものを無視した意見であるとされることが多い。しかし中には革命後のトルコのように、アラビア語ペルシャ語等からの借用語の追放などを行って言語を純化した例もある。

脚注

  1. ^ 『日本方言大辞典』ISBN 4-09-508201-1のp1495では、この他に島根県益田市香川県 伊吹島を掲載。
  2. ^ 国立国語研究所「外来語」委員会編『わかりやすく伝える外来語言い換え手引き』ぎょうせい、2006年6月30日 ISBN 4-324--7958-7

関連項目

ウィクショナリーに関連の辞書項目があります。

外部リンク

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