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「MSX」の版間の差分

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RAMはもちろん、BASICやOSの収められたシステムROM、ゲーム等のROMカートリッジ、そして各社の独自拡張による周辺機器(ハードウェア)もこのスロットを用いて管理する。周辺機器にも必ず拡張BIOSが付随し、BIOSは起動時に初期化ルーチンを呼び出され、ベクタをワークエリアに自動的に登録して組み込まれる仕組みが整えられており、ユーザーがドライバの組み込みや設定等の作業を行う必要は無かった。
RAMはもちろん、BASICやOSの収められたシステムROM、ゲーム等のROMカートリッジ、そして各社の独自拡張による周辺機器(ハードウェア)もこのスロットを用いて管理する。周辺機器にも必ず拡張BIOSが付随し、BIOSは起動時に初期化ルーチンを呼び出され、ベクタをワークエリアに自動的に登録して組み込まれる仕組みが整えられており、ユーザーがドライバの組み込みや設定等の作業を行う必要は無かった。
I/Oは基本的に[[メモリマップドI/O]]方式が推奨された。このため、たとえ複数の周辺機器でI/Oアドレスが重複したとしても、アクセスの際にBIOSコールの時点でスロット切り換えを伴い、これによって自動的にマッピングが変更されるため、原理的に拡張機器間の競合が抑止されるというメリットもあった。
I/Oは基本的に[[メモリマップドI/O]]方式が推奨された。このため、たとえ複数の周辺機器でI/Oアドレスが重複したとしても、アクセスの際にBIOSコールの時点でスロット切り換えを伴い、これによって自動的にマッピングが変更(追記) メモリ空 (追記ここまで)されるため、原理的に拡張機器間の競合が抑止されるというメリットもあった。


このスロットとBIOSを組み合わせ、互換性はBIOSレベルでのみ保証することによって、実際のハードウェア的な実装は各メーカーに一任され、多様化や低コスト化を可能とする一方、高い拡張性と柔軟性、ユーザビリティを実現していた。
このスロットとBIOSを組み合わせ、互換性はBIOSレベルでのみ保証することによって、実際のハードウェア的な実装は各メーカーに一任され、多様化や低コスト化を可能とする一方、高い拡張性と柔軟性、ユーザビリティを実現していた。
この設計思想によって、プラグ&インストール&プレイではなく(削除) 、 (削除ここまで)文字通りの[[プラグアンドプレイ|プラグ&プレイ]]を実現できていた、歴史上ほぼ唯一と言ってよいパーソナルコンピュータでもあった。
この設計思想によって、プラグ&インストール&プレイではなく文字通りの[[プラグアンドプレイ|プラグ&プレイ]]を実現できていた、歴史上ほぼ唯一と言ってよいパーソナルコンピュータでもあった。


拡張ハードウェアの増設用に、スロット機構に接続する[[コネクタ]]が最低(削除) 一つ (削除ここまで)は装備された。多くの機種では差しこみ口が筐体上面や前面などに配置されていたため、ゲームカートリッジを交換する感覚で手軽に増設機器の差し替えができた。ただし電源投入時の着脱防止機構は搭載されていない。
拡張ハードウェアの増設用に、スロット機構に接続する[[コネクタ]]が最低(追記) 1基、多く (追記ここまで)(追記) 2基 (追記ここまで)装備された。多くの機種では差しこみ口が筐体上面や前面などに配置されていたため、ゲームカートリッジを交換する感覚で手軽に増設機器の差し替えができた。ただし電源投入時の着脱防止機構は搭載されていない。


「[[ファミリーコンピュータ|ファミコン]]」等の当時一般的だったゲーム機と同様に、カートリッジによるソフトウェアの供給も行われた。本体内部に搭載されたBIOSや[[Random Access Memory|RAM]]、また上記のコネクタによって接続されたカートリッジ内の[[Read Only Memory|ROM]](ゲームソフトである場合も、増設ハードウェアや拡張ボードの[[ファームウェア]]である場合もある)も、システム上では全て等価で扱われる。
「[[ファミリーコンピュータ|ファミコン]]」等の当時一般的だったゲーム機と同様に、カートリッジによるソフトウェアの供給も行われた。本体内部に搭載されたBIOSや[[Random Access Memory|RAM]]、また上記のコネクタによって接続されたカートリッジ内の[[Read Only Memory|ROM]](ゲームソフトである場合も、増設ハードウェアや拡張ボードの[[ファームウェア]]である場合もある)も、システム上では全て等価で扱われる。


上記のようにスロットは周辺機器拡張の他、メモリの増設にも用いられた。しかし(削除) 、それ単独で (削除ここまで)は「(削除) 切り替え可能な (削除ここまで)アドレス(削除) に制限がある」「メモリ (削除ここまで)マッピングができない」「1スロット(削除) 上 (削除ここまで)に64KBを越え(削除) た (削除ここまで)メモリを配置できない」といった(削除) 難点も (削除ここまで)あった。そのため、MSX2規格制定(削除) 以降 (削除ここまで)にRAMの(削除) マッピングが可能な (削除ここまで)"メモリマッパー"が(削除) 規格で制定 (削除ここまで)され(削除) 、ま (削除ここまで)(削除) 後にメガROMも規格に準拠した機器として広く用 (削除ここまで)(削除) られた (削除ここまで)。これら(削除) は (削除ここまで)前述の(削除) 、 (削除ここまで)スロット(削除) での (削除ここまで)メモリ拡張の(削除) 難点 (削除ここまで)をクリアできたが、(削除) 複数の別仕様の手法が並存したことで、フル活用しようとすれ (削除ここまで)ばメモリ管理が煩雑(削除) に (削除ここまで)なった。また、メモリマッパー対応のRAMはROMと同一スロット上に置けない欠点もあった。
上記のようにスロットは周辺機器拡張の他、メモリの増設にも用いられた。しかし(追記) スロット (追記ここまで)は「(追記) ページ間の (追記ここまで)アドレス(追記) 空間の移動や再 (追記ここまで)マッピングができない」「1(追記) つの (追記ここまで)スロットに(追記) 4ページ (追記ここまで)64KBを越え(追記) る (追記ここまで)メモリ(追記) 空間 (追記ここまで)を配置できない」といった(追記) Z80に由来するメモリ空間・アドレッシングに依存した制約が (追記ここまで)(追記) り、特にワークエリアとスタックが置かれるページ3の切り替えには若干の困難が伴 (追記ここまで)った。そのため、MSX2規格制定(追記) 時 (追記ここまで)(追記) は拡張規格として (追記ここまで)RAM(追記) ページ (追記ここまで)(追記) 拡張を行う (追記ここまで)"メモリマッパー"が(追記) 追加 (追記ここまで)された(追記) (搭載は必須ではな (追記ここまで)(追記) ) (追記ここまで)。これら(追記) の手段を用いることで、 (追記ここまで)前述のスロット(追記) による (追記ここまで)メモリ(追記) 空間の (追記ここまで)拡張(追記) にまつわる制約 (追記ここまで)(追記) 多く (追記ここまで)をクリア(追記) することが (追記ここまで)できたが、(追記) メモリマッパーはいわ (追記ここまで)(追記) スロットによる (追記ここまで)メモリ(追記) ・ページ空間を「建て増し」する仕様であり、 (追記ここまで)管理が(追記) やや (追記ここまで)煩雑(追記) と (追記ここまで)なった(追記) 点があることは否めない (追記ここまで)(追記) <!--メモリマッパーに対応しないソフトウェアからは、メモリマッパーの置かれたスロットは単に4ページ64KBのRAMに見えるだけです。4ページのRAMで埋められたスロットにROMが共存できないことはスロットの制約であり「メモリマッパーに固有の制約・欠陥」ではありません: (追記ここまで)また、メモリマッパー対応のRAMはROMと同一スロット上に置けない欠点もあっ(追記) た。-->後に登場したメガROM(1Mbit=128KBの容量を持つROM。MSXおよびZ80のメモリ空間ではリニアにアクセスすることはできない)の一部にも、このメモリマッパー規格を応用し、酷似した仕様でROM空間の切り替えや拡張を行う製品が登場し (追記ここまで)た。


これら独自の特徴を持つ一方、安価で広範なメーカーが参入できるという目標<ref>「本体が5万円台で買えて、一般家庭に普通にある機器とつなげばシステムとして完成できる」事が必須だったとされる</ref>から、MSX1においてはその構成に専用品を用いず、その時点で市場に供給されていた利用実績の豊富な既存の汎用半導体製品を採用している([[MSX#MSXの主な仕様|後述]])×ばつ192ドットの解像度だったことと合わせて、「先進的でない」と批判する意見もあった。<ref>工学社『[[I/O_(雑誌)|I/O]]』[[1983年]]12月号</ref>
これら独自の特徴を持つ一方、安価で広範なメーカーが参入できるという目標<ref>「本体が5万円台で買えて、一般家庭に普通にある機器とつなげばシステムとして完成できる」事が必須だったとされる</ref>から、MSX1においてはその構成に専用品を用いず、その時点で市場に供給されていた利用実績の豊富な既存の汎用半導体製品を採用している([[MSX#MSXの主な仕様|後述]])×ばつ192ドットの解像度だったことと合わせて、「先進的でない」と批判する意見もあった。<ref>工学社『[[I/O_(雑誌)|I/O]]』[[1983年]]12月号</ref>

2008年2月1日 (金) 05:34時点における版

MSX(エム・エス・エックス)とは、1983年アメリカのソフトウェア会社マイクロソフトと日本のソフトウェア会社(当時)アスキーによって提唱された、家庭用コンピュータハードウェア、およびソフトウェアの共通規格の名称である。またこの規格に則って作られたコンピュータ群の総称として使われることもある。

ソニーのMSX 1 コンピュータ 「HiT BiT」

概要

1980年代初頭、8ビットパソコンでは、BASIC言語インタープリタが実質的にOSとしての役割を果たしており、国内ではシャープを除くほとんどのメーカーがマイクロソフト製のBASICインタープリタを採用していた。それにも関わらず、各メーカーのパソコン間ではBASICによって書かれたソフトウェアでさえ互換性が低く、またハードウェア・アーキテクチャが異なることからBASICはもとよりマシン語レベルでもバイナリは機種依存したものとなり、結果的にソフトウェアは各機種専用に用意され、しかも同じメーカーでも機種が変われば互換性は著しく低かった。 当時、アスキーはマイクロソフトの極東代理店で大半の機種の開発に関わっており、多くのメーカーと繋がりがあったため、NECシャープ富士通パソコン御三家に対して出遅れた家電メーカーの大同団結を背景として、アスキーが主導権を握る形でMSX規格は制定された。そして、 家電メーカーなど、家庭用パソコン市場に参入した経験を持つ企業、または参入を計画していた多くの企業が賛同し、そのうちNECやシャープ(日本国内)などのパソコンの自社ブランドを確立しているところを除いた企業が製品を発売した。

MSX規格は、日本国内のみならず、世界的に普及した(→英語版MSXなど)。出荷台数の総累計は全世界で400万台以上[1] と、ファミコンなどのゲーム専用機や後に普及したPC/AT互換機NECPC-9801シリーズ等の16bit/32bitパーソナルコンピュータ、また北米や欧州を中心に隆盛を誇ったコモドールコモドール64等とは桁が違うものの、単一規格のコンピュータとしては、その実績は世界でも有数のものとなっている。 MSXは、当初はマイクロソフトの商標だったが、アスキーとの提携解消後はアスキーに、そして2002年からはMSXアソシエーションに、2007年以降はMSXライセンシングコーポレーションに商標権が移り現在に至っている。

特徴

MSXは、パーソナルコンピュータとして当時の技術水準の枠内で様々な可能性を与えるために設計され、これは当時隆盛を誇った8ビットパソコン(ホビーパソコン)の中でも、際立って特徴のあるアーキテクチャーだった。

一般的な特徴

MSXは、子供に買い与えられる安価なパーソナルコンピュータ、コンピュータの学習に繋げられるパーソナルコンピュータの実現を目的の一つとして、「ホームコンピュータ」を指向して設計された。 このため、単にゲームマシンとして見た場合には同時代のゲーム専用機の表現力から数段見劣りするものの、8bitコンピュータとしては非常によく考えられたアーキテクチャとして設計されている。

何よりもまず一般家庭への普及を目指すため、家庭用途向けに画面表示や音声出力などの機能が調整されている。家庭用テレビに出力でき、専用モニタを必要としないことは、低価格でパソコンの使用環境を構築できる点において魅力的と考えられた。

また、当時の一般的なホビー用パソコンと同様にBASICインタープリタ(MSX-BASIC)を搭載、さらにMSX-DOSと呼ばれるCP/Mシステムコール互換OSも供給され、既存のCP/Mアプリケーションの多くがファイルシステムをコンバートすることによりほぼそのまま動作した。これによって、CP/M環境で整備された豊富な開発環境を利用した、アセンブリ言語や、C言語PascalCOBOLFORTRAN等の各種言語の習得や開発の学習のみならず、欧文ワープロ表計算等の実務アプリケーションの実行も可能だった。

このように、MSXは単に子供に買い与えゲームやBASICで遊ばせる「入門機」としての側面のみではなく、その後本格的なコンピュータ(ソフトウェア)の学習にも繋げて行くことが可能な、総合的なホームコンピュータとして設計されている。この点がとくに日本以外の諸国では評価され、普及に繋がることとなった。

ただし、MSX1の時点においては、半角文字の80カラム(1行80桁)表示が不可能だった。また、漢字の表示に関しても当初は統一仕様が無く、漢字ROMの仕様はあったものの標準搭載機はごく限られていた。さらにはフロッピーディスクドライブ、機種によってはプリンタインターフェースさえもオプションだった。高解像度表示を長時間閲覧する際に最低限必要となるRGB出力端子を搭載しているマシンも少なく、後付けも不可だった。
特にフロッピーディスクドライブはMSX本体の価格に匹敵するほど高価なものとなり、CP/M(MSX-DOS)環境を目当てに購入するユーザーは少なかった。表現力の面でも同時期の既存のゲーム機(端的にはファミコン)と比較すると劣っていたことから、日本国内ではもっぱら「中途半端な子供の玩具」として受け取られていた点は否めない。

この評価は、のちに表現力を増し、フロッピーディスクドライブを搭載していれば最低仕様のままでMSX-DOSの動作も可能となるMSX2の登場をもって、一時的には解消されることとなる。しかし、その後MSX2の市場は熾烈な低価格化競争に突入し、安価な一体型MSX2マシンが普及したため、最終的に「子供向け」「ゲームマシン」との見方を返上するには至らなかった。

このような事情から、「MSXは、当初よりMSX2仕様で開始すべきだった」「FDD搭載の高級機を併売すべきだった」と、後々まで語られることになる。

技術的な特徴

MSXといえば、まず「統一規格」という言葉が語られる。これは単にCPUや、VDPなどのI/Oデバイス、メモリマップやI/Oマップ等を規定するレベルに留まらず、一部の例外を除きハードウェアへの直接アクセスを禁じ、オペレーティングシステム(BASICおよびDOS)と密接に連携したBIOSレベルで互換性をとるアーキテクチャを制定したことが、最大の特徴と言える。

これを受けて、当時の8ビットコンピュータとしては異例とも言える、豊富かつ強力なBIOS群を整備し、オペレーティングシステムとしてBASICとMSX-DOS(のBDOS)がこれらのBIOSを共用し、一貫して高い相互互換性を実現していた。

強力ゆえにコードの絶対量が増加しがちな豊富なBIOS群を、64KBというZ80の限られたメモリ空間内で実現するため、また有効に活用し拡張を容易にするために、当時の水準としては柔軟な、スロットと呼ばれるリソース管理手法を採用した。

RAMはもちろん、BASICやOSの収められたシステムROM、ゲーム等のROMカートリッジ、そして各社の独自拡張による周辺機器(ハードウェア)もこのスロットを用いて管理する。周辺機器にも必ず拡張BIOSが付随し、BIOSは起動時に初期化ルーチンを呼び出され、ベクタをワークエリアに自動的に登録して組み込まれる仕組みが整えられており、ユーザーがドライバの組み込みや設定等の作業を行う必要は無かった。 I/Oは基本的にメモリマップドI/O方式が推奨された。このため、たとえ複数の周辺機器でI/Oアドレスが重複したとしても、アクセスの際にBIOSコールの時点でスロット切り換えを伴い、これによって自動的にマッピングが変更メモリ空されるため、原理的に拡張機器間の競合が抑止されるというメリットもあった。

このスロットとBIOSを組み合わせ、互換性はBIOSレベルでのみ保証することによって、実際のハードウェア的な実装は各メーカーに一任され、多様化や低コスト化を可能とする一方、高い拡張性と柔軟性、ユーザビリティを実現していた。 この設計思想によって、プラグ&インストール&プレイではなく文字通りのプラグ&プレイを実現できていた、歴史上ほぼ唯一と言ってよいパーソナルコンピュータでもあった。

拡張ハードウェアの増設用に、スロット機構に接続するコネクタが最低1基、多くは2基装備された。多くの機種では差しこみ口が筐体上面や前面などに配置されていたため、ゲームカートリッジを交換する感覚で手軽に増設機器の差し替えができた。ただし電源投入時の着脱防止機構は搭載されていない。

ファミコン」等の当時一般的だったゲーム機と同様に、カートリッジによるソフトウェアの供給も行われた。本体内部に搭載されたBIOSやRAM、また上記のコネクタによって接続されたカートリッジ内のROM(ゲームソフトである場合も、増設ハードウェアや拡張ボードのファームウェアである場合もある)も、システム上では全て等価で扱われる。

上記のようにスロットは周辺機器拡張の他、メモリの増設にも用いられた。しかしスロットは「ページ間のアドレス空間の移動や再マッピングができない」「1つのスロットに4ページ64KBを越えるメモリ空間を配置できない」といったZ80に由来するメモリ空間・アドレッシングに依存した制約があり、特にワークエリアとスタックが置かれるページ3の切り替えには若干の困難が伴った。そのため、MSX2規格制定時には拡張規格としてRAMページの拡張を行う"メモリマッパー"が追加された(搭載は必須ではない)。これらの手段を用いることで、前述のスロットによるメモリ空間の拡張にまつわる制約の多くをクリアすることができたが、メモリマッパーはいわばスロットによるメモリ・ページ空間を「建て増し」する仕様であり、管理がやや煩雑となった点があることは否めない。後に登場したメガROM(1Mbit=128KBの容量を持つROM。MSXおよびZ80のメモリ空間ではリニアにアクセスすることはできない)の一部にも、このメモリマッパー規格を応用し、酷似した仕様でROM空間の切り替えや拡張を行う製品が登場した。

これら独自の特徴を持つ一方、安価で広範なメーカーが参入できるという目標[2] から、MSX1においてはその構成に専用品を用いず、その時点で市場に供給されていた利用実績の豊富な既存の汎用半導体製品を採用している(後述)×ばつ192ドットの解像度だったことと合わせて、「先進的でない」と批判する意見もあった。[3]

MSXでは、半角(1Byte文字)でカタカナだけでなく、ひらがなの表示も可能だった事も特徴としてあげられる。これにより、MSXは漢字ROMなしでもカタカナとひらがなの使い分けが可能だった。また、特定の漢字(日月火水木金土・大中小・時分秒)は罫線などと共に半角記号(グラフィック文字)の中に入れられていた。なおMSXで半角ひらがなに割り当てられていたコード領域は、現在のSHIFT JISコードで使用されている。また、MSXにはPCG機能が用意されており、テキストモード(SCREEN0・1)では全ての文字形状をユーザーが自由に定義して使うことが出来た。

その他のコネクタ類としては、アタリのゲーム機と同様のポートを2ボタン仕様に拡張した汎用の9ピンコネクタ(主にジョイパッドマウスの接続用)が搭載され、オプションでセントロニクス仕様の14ピンプリンタインターフェースも搭載された。汎用的な仕様のコネクタを採用したことは、のちに電子工作の接続・制御用途として重宝された。上記のスロットコネクタに関しては、電子部品を扱う店で電子工作用の汎用基板が入手できた。

キーボードの配列には、JIS配列と50音順配列(かな配列)の両方が規格にあり、ソフトでモードを切り替えることもできた。なおキーボードはパラレル入力で、同時押しもできたが、一部のキー以外にはダイナミックスキャンの回りこみ防止用のダイオードが入っていない(全部のキーにダイオードが入っていた機種があったかは不明)。なお、規格の上では、いくつかの特定の組み合わせを除いて、3つ以上のキーが同時に押下された場合の入力の整合性は保証されていない。また、セパレートタイプキーボードの規定は無いため、キーボードのコネクタは統一されていない。

MSXコンピュータの製造者

MSXの規格

MSX (MSX1)

最初に発表された規格は、後に発表された上位互換のものと区別するために「MSX1」(エムエスエックス・ワン)とも呼ばれる。

MSXの主な仕様

  • CPU
    ザイログ社 Z80A相当品(クロック周波数3.579545MHz、割り込みはモード1)
  • ROM
    32KB(キロバイト) BIOS、MSX-BASIC
  • メインメモリ(RAM)
    8〜64KB(キロバイト)
  • 画面制御(VDP)
    テキサス・インスツルメンツ社 TMS9918相当品、VRAM16KB(キロバイト)
  • 画面モード
    ×ばつ24文字(×ばつ8ピクセル) 文字・背景とも固定16色中1色 スプライト使用不可
    ×ばつ24文字(×ばつ8ピクセル) 文字・背景とも固定16色中1色 単色スプライト使用可能
    ×ばつ192ピクセル 固定16色(横8ドット内2色まで) 単色スプライト使用可能
    ×ばつ48ピクセル 固定16色 単色スプライト使用可能
  • サウンド
    ゼネラル・インスツルメンツ社 PSG(AY-3-8910)
  • PPI(周辺機器インターフェース)
    8255相当品

(注記)PSGはジョイスティック端子の汎用I/O機能、PPIは1ビットサウンドポートの役割を兼ねる。

  • 拡張スロット
    最低1個

CPUやVDPが同じであるため、カタログスペックではソード M5セガ SC-3000に似ている。当時の、ゲーム機との兼用の安価なパソコンとしては標準的な仕様といえる。

MSX1の以下の特徴は、日本にてある程度の普及につながった。

  • 当時の一般的なパソコン(PC-8801など)と比べ、遥かに安価に入手・使用できた。
  • ゲームがカートリッジで手軽に遊べ、パソコンにゲーム専用機が共存したようなマシンだった。

しかし画面表示ではファミコンや同時期の他のパソコンに見劣りし、特にファミコンには普及台数で大きく水を空けられることになった。これを受けて次のMSX2が開発されることになる。

MSXに参入したメーカーと発売した主な機種

カシオMX-15
キヤノンV-20
シャープHOTBIT
  • カシオ計算機
    • PV-7、PV-16、MX-10、MX-15、MX-101
      MSX最後発メーカーながら低価格で勝負した。MSXとしては最もゲーム機寄りとされ、全ての機種の本体に1プレイヤー用のゲームパッドが一体化されていた。
  • キヤノン
    • ベガ:V-8、V-10、V-20
      シンプルでまとまりの良い筐体デザインが専門誌で評価され、広告でも「ハンサムMSX」を謳い文句にしていた。
  • 三洋電機
    • WAVY MPC-3、MPC-10、MPC-11
      WAVYは「MSXはマイコンの第3の波になる」という思いから名付けられた。MPC-10と11はライトペン標準装備。11は加えて、スーパーインポーズ機能・2階調ビデオデジタイズ機能を搭載。
  • 三洋電機特機
    • PHC-27、PHC-30、PHC-30N、PHC-33
      MSX以前からパソコンを製造・販売していた三洋電機のグループ会社製。仕様や筐体デザインはWAVYシリーズとは全く異なる。データレコーダーを標準搭載(音声出力はモノラル)。月刊アスキー等の総合誌では記事・広告が載っていたが、MSX専門誌では殆ど取り上げられる事が無かった。
  • ソニー
    • HiTBiT HB-55、HB-75、HB-101、HB-701
      MSX内でトップシェアを誇ったと言われる。
  • 東芝
    • パソピアIQシリーズ
      HX-20系はワープロソフト内蔵だった。
  • 日本ビクター
    • HCシリーズ
      オプションでVHDプレイヤーと接続可能。ヤマハ製MSXと同じくミツミ電機から部品提供を受けて作られ、筐体も殆ど一緒。但し、最初の機種はヤマハ機と同じスロットコネクタがあったが、後続機種では背面の増設用端子が無くなっている。
  • パイオニア
  • 日立製作所
    • MB-H1、MB-H2
      両機ともキャリングハンドル付きで持ち運びを想定していたようだが、3kg以上あり、他の機種と比較しても決して軽くはない。MB-H1はLPジャケットサイズ、初期型と後期型ではカーソルキーの配置が異なる。MB-H2はカセットデッキ搭載(音声出力はステレオ)、拡張BASICから再生・停止・巻き戻し・早送り等の操作が可能。
  • 富士通
    • FM-X
      FM-7を接続し、増設RAMとして使用可能。また、FM-7側でもFM-XをZ80ボード代わりに出来る。
  • ゼネラル(現富士通ゼネラル)
    • PAXON(パクソン)
      テレビ内蔵型MSX。映像出力端子が無い、標準ではキーボードが付属しない、等、かなり特殊な仕様。カセットテープで供給されるゲームソフトを動かすために、チャンネルに並んでCLOAD、RUNボタンがある。
  • 三菱電機
    • ML-8000
    • Let us(レタス)シリーズ
  • 松下電器
    • キングコング CF-3000、CF-3300
  • 日本楽器(現ヤマハ)
    • YIS(ワイズ)シリーズ、CXシリーズ
      YISはAV機器、CXは楽器の流通で販売された(他に月販事業部からも"YIS-MAN"という機種の発売が予定されていたが発売されなかった)。筐体色以外はほぼ同一の仕様。オプションで専用スロットにFM音源とMIDI端子を搭載可能。当時一世を風靡していたシンセサイザDX7等との連動が最大の売り。通常スロット・専用スロットの他に、背面にスロットコネクタ増設用端子がある。筐体の大半はミツミ電機製。
      ヤマハは全メーカー中最初にMSX参入を公式発表したが、筐体写真の発表もこのシリーズが全機種中最も早かった。
  • 大宇電子(韓国、日本国内での発売は無し)
    • DPC-180、DPC-200
  • 金星電子(ゴールドスター。現LG電子韓国、日本国内での発売は無し)

なお、シャープも1983年7月にMSXへの参入を発表するが、ブラジル法人が現地向けにMSX1「HOTBIT」を発売したのみに終わっている(ブラジル法人の機種・型番等は未詳。他の海外専用機も含めて詳述求む)。

MSXへの参入を検討したメーカー

MSX2

1985年に発表された、MSXに様々な機能を強化した上位互換の規格。

MSX2の主な仕様

V9938(Ver.C)
  • CPU
    MSX1準拠
  • VDP
    ヤマハ V9938
  • 画面モード
    ×ばつ26文字(×ばつ8ピクセル) 文字・背景とも16色パレット中1色 スプライト使用不可
    SCREEN1〜3:MSX1準拠(但し固定16色ではなく512色中16色を選択可能)
    ×ばつ192ピクセル 512色中16色(横8ドット内2色まで) ライン単位色指定のスプライト使用可能(以下の画面モードも同じ)スプライト機能以外はSCREEN2と同一。
    ×ばつ4画面 512色中16色 ((注記)VRAM64KBの機種では2画面)
    ×ばつ4画面 512色中4色 ((注記)VRAM64KBの機種では2画面)
    ×ばつ2画面 512色中16色 ((注記)VRAM64KBの機種では使用不可)
    ×ばつ2画面 固定256色 ((注記)VRAM64KBの機種では使用不可)
    SCREEN9:韓国版MSX2にのみ搭載(ハングル文字表示用のモードで、国内版には搭載されていない)
  • メインメモリ
    64KB〜
  • VRAM
    128KB(一部機種は64KB)VDP自体は更に64KBのバッファを搭載可能。
  • サウンド
    MSX1準拠、オプションでMSX-AUDIO。
  • PPI
    MSX1準拠

メイン・メモリが最小でも64KBと規定された。また、スロットとは別に、メイン・メモリをバンク切り替えで増設するメモリ・マッパーがオプションで規格に加えられ、これを用いることで最大4MBまでのRAMを搭載することもできた。 メモリマッパはRAMページのみを拡張する仕様で、スロットとは異なりメモリマッパ上のページを任意のスロットに割り当てることが可能な柔軟性を持つ点が、スロット上に配置されたROMやメモリマッパ非対応RAMとの最大の違いである。 海外ではメモリマッパを内蔵している機種が標準とされたが、日本では内蔵していない機種もあり、メモリマッパを想定していないソフトウェアも存在する。MSX-DOSおよびBASICとしてはサポートされないが、メモリマッパはスロットへ割り当てられるため、複数のマッパーメモリを直接操作することで、最大32MBに及ぶメインメモリの実装、管理も理論上は可能である。

小容量ながら乾電池によるバックアップ機能も付加され、RTCや起動時の画面モードの保存、起動時パスワードの保持、Beep音の設定保存などに排他的に使用された。

VDPはTMS9918とソフトウェア的な互換性を保ちつつ、ビットマップ画面の追加やスプライトの拡張などの性能の向上を図った V9938へと変更された。これらにより、本格的なパソコンとしての性格を強めた。VRAMの容量は64KBまたは128KB(機種ごとに固定、拡張不可)、システムの起動時には縦スクロールして大きいMSXロゴが現れ、規格内のVRAM搭載容量が表示された。 起動時に設定されるカラーパレットのデフォルト色はMSX1に近いものに設定されたが、カラーテーブルに完全な互換性が無いため、実際にテレビに写る色は厳密には微妙に異なるものとなっている。

一方で、V9938はスプライトの同時表示枚数が強化されていない・ビットマップの描画があまり速くない・PCGも強化されていない・横方向のハードウェアスクロールには対応していない、など、本格的なアクションゲームを作るには不向きだった(例えば、面ごとの多彩なスクロールが持ち味であるコナミ魂斗羅」のMSX2移植版は画面切り換え方式になっていた)。作るとしても、VRAMの使用量が比較的少なく速度的に余裕がある、16色横256ドットのモードが使用されることが多かった。CPU速度が非力なまま据え置き、かつメインRAMも標準ではVRAMに比して小容量だったことも大きかった。 後に横スムーススクロールについては表示位置の補正機能を用い、ソフトウェア的に実現するソフトウェアが現れる。

高解像度モードも、横512ドットで、他のパソコンの640ドットに比べてドット数が不足していた。一方で、256色同時発色のモードは、少色・高解像度一辺倒だった当時のパソコンの中では異彩を放つ、充分にインパクトのある仕様だった。この後にシャープから256色表示のMZ-2500が、富士通から4096色表示のFM77AVが発売されるなど、当時の傾向に一石を投じたと言える。

なお、SCREEN5以降のモードでは、2画面切り替えでインターレース表示をする事で、縦方向の解像度を見かけ上、倍にする事が出来た。標準のBASICでは設定ができるのみで活用されてはいなかったが、後に発売された漢字BASICでは正式に使用された他、一部のゲームソフトやグラフィックツールでも使われていた。これにより、漢字表示の文字数などでは当時の他のパソコンにほぼ並ぶ事が出来た。但し、「家庭用テレビにつなげる」はずのMSXにあっては、いささかばかり環境もしくはユーザーを選ぶものだった(アナログRGB入力端子つきのテレビ・モニタを所有しているか、さもなくばRF・ビデオ出力では目立ってしまうちらつきを許容できるかどうか)感は否めない。

サウンドではオプションとして、文字多重放送キャプテンシステムに対応したFM音源/ADPCM音源チップMSX-AUDIO(Y8950)等も発売されたが、高機能でこそあるものの、本体価格に比して高価で、かつ対応ソフトも殆ど発売されず、普及しなかった。標準ではMSX1据え置きであり、この頃からFM音源をオプションとして用意、もしくは標準搭載され始めた他のパソコンに遅れを取っていた。この状態は1988年に松下電器から安価なFM音源カートリッジFM-PAC(MSX-MUSIC)が発売されるまで続いた。

このような要因もあり、MSX2になってもゲームマシンとしてはファミコンに遠く及ばず、パソコンとしても8ビット御三家などからグラフィックを書き直して移植されたものが大多数で、MSX2オリジナルのパソコン然としたソフトは少なかった。漢字ROMがオプションだったことも移植に影響した。またMSXのバンク切り替えを多用する規格上の制約からフロッピーディスクドライブなどの転送中はCPUの割り込み処理を止めざるを得なかったため、サウンドの再生が途切れる等の演出上の制約も、"チープさ"に拍車をかけていた側面は否定できない。

S1985 MSX-SYSTEMII

MSX2は当初、MSX1と並行して販売され、マーケティング上の差をつけるためにFDD・漢字ROM・マッパーメモリ(128KB〜256KB)を搭載し、さらに本体・キーボードが分離するセパレートタイプで「本格的なパソコン型」の高価な製品が多かった。 これには、新規設計されたMSX-SYSTEMMSX-SYSTEMIIV9938などの周辺チップ搭載や、8ビットパソコンとしては破格の大容量メモリを搭載する必要があったこと等から、製造原価を押し上げてしまったという事情もある。

こうして発売後しばらくは「2〜6万円のMSX1」・「10万円クラスの標準的MSX2」・「FDD・漢字ROM内蔵、キーボードセパレートタイプで20万円程度の高級MSX2」の3路線のマシンが併売された。当時はワープロ専用機の全盛期でもあり、ワープロソフトを内蔵または付属した製品は数多く、10万円クラスの製品にはプリンタと一体化した製品も存在した。

MSX2発売当初はまだメガROMカートリッジは存在せず、FDDの無い標準的仕様のMSX2ではグラフィック機能を有効に用いられる事が難しかった。また高級機は、一般向けには他の独自仕様ホビー・ビジネス機と対象が重なり、16ビット機の台頭も著しかったことから、その性能の大きな変貌とは裏腹に、一般ユーザーのMSX2への移行は緩やかなものとなった。

MSX1規格のコンピュータをMSX2規格相当にする拡張アダプタも存在したが、それを用いてMSX2化したマシンとMSX2とでは、VDPが接続されるI/Oポートのアドレスが異なる。MSXの規格ではVDPを拡張したコンピュータの事情も考慮してアプリケーション側でその差を検出して吸収することになってはいたものの、後期のゲームソフト等では僅かな高速化のために拡張アダプタでMSX2化した環境での動作を諦めたものも少なくない。ただ、拡張アダプタ発売の可能性はMSX2規格発表当初からアナウンスされてはいたものの実際に発売されたのは1986年の夏、しかも直後には拡張アダプタよりも安価なMSX2本体が出てしまい、すぐさま存在理由を失っていたので、この割り切りも無理からぬところではある。

1986年秋、松下電器とソニーが本体・キーボード一体型の低価格機として、それぞれFS-A1シリーズとHB-F1シリーズを発売する。定価はいずれも3万円程。これは前出のMSX-SYSTEMやMSX-SYSTEM II、V9938の製造設備の償却が終了し単価が大幅に下げられたことと、他社16ビットパソコンの普及でメモリの価格が低下していたこと等の相乗効果による。その直前にメガROMカートリッジが登場したこともあり、安価に高機能グラフィックを楽しめるようになり、高額な他社のMSX2や表現力で劣るMSX1を抑え、主にゲーム機として小中学生を中心に普及した。

1987年、この両シリーズの後継モデルであるFS-A1F/HB-F1XDが登場。1基のFDDを内蔵して、定価はいずれも5万円程だった。ようやくソフトの供給メディアでは他機種と同列に並び、移植ゲームが多数発売された。また、ユーザーがそのグラフィックを中心としてデータを自由に扱える環境が整い、その後のMSX2規格を牽引していった。 両シリーズが普及したことで、MSX2以降も「キーボード一体型の、安価なオモチャのパソコン」というイメージが定着した。

一方、ソニー、松下電器、三洋電機、三菱電機以外の各社は、MSX/MSX2規格からは撤退していった。ホビーパソコンの市場は既に8ビットから16ビットの転換期にあり、パソコンから撤退したメーカーや、16ビットのAX規格にも参入するメーカーもあった。

MSX1に対応するソフトも、ROMカートリッジで供給されるゲームを中心に、MSX2+が登場する頃までは地道に作り続けられた。特にコナミなどには「MSX2に匹敵するグラフィック」を実現したソフトもあった。

MSX1・MSX2は合わせて、世界的には400万台が出荷されたと公称されている。

MSX2に参入したメーカーと発売した主な機種

(太字はVRAM64KB、斜体は本体・キーボード分離型のセパレートタイプ)

  • キヤノン
    • V-25,V-30F
  • 三洋電機
    • WAVY25F,WAVY25FD,WAVY25FK,WAVY25FS,WAVY-77
      WAVY-77はプリンタ搭載。
  • ソニー
    • HB-F5,HB-F500,HB-F700,HB-F900,HB-T7,HB-T600,HB-F1,HB-F1mk2,HB-F1XD,HB-F1XDmk2
      HB-F1シリーズは漢字ROM非搭載、スピコン(CPU速度を遅くする機能)・連射ターボ(スペースキーを連射化する機能)・ポーズキー(CPU動作を停止)付き。
      HB-F900はRAM256KB、FDDが2基で本体色は白または黒、別売の専用デジタイザ(HBI-F900、色は黒のみ)を接続可能。
      HB-T7とHB-T600には通信モデムと漢字ROMが搭載されている。HB-T600は株式ターミナルとして発売されていたため株式パッドが同梱され、キーボードがオプション扱いとなっていた。
  • 東芝
    • HX-23、HX-33、HX-34
      RGBコネクタは独自仕様。
  • 日本ビクター
    • HC-80,HC-90,HC-95
      HC-90,HC-95(HC-90のFDD2基版)は3.58MHzのZ80Aの他に、日立のZ80上位CPUHD64180を搭載し、 6.144MHzの高速動作にする「ターボモード」が存在する。PSGの音程はそのままだが、ほとんどのゲームソフトはスプライトがちらついたり画面が崩れたりと正常に動作しない。スーパーインボーズ機能と、VHDカードなどが挿せる独自のJVCスロットを外部に2基、独自の内部拡張スロットを4基備える。標準仕様のスロットは1基。MSX2+登場以降も業務用途に販売が続けられ、時期により前面パネルやキーボードコネクタ、標準搭載するメインRAM容量が異なる(前期64KB、後期256KB)。RGBコネクタは独自仕様のD-Sub25pin。
  • 日立製作所
    • MB-H3,MB-H70
      MB-H3には改造でVRAMが128KBにできるものもあった。
  • 三菱電機
    • メルブレイン ML-G10,ML-G30,ML-TS2,ML-TS2H
      ML-TSシリーズは松下A1・ソニーF1等の同時期に販売のモデム内蔵低価格機。ML-TS2Hは電話器が付属。他社のMSX2通信パソコンと違って第2水準漢字ROMも搭載されている。
  • 松下電器
    • FS-4500,FS-4600F,FS-4700,FS-5000F,FS-5500F,FS-A1,FS-A1mk2,FS-A1F,FS-A1FM
      FS-4500,4600F,4700はワードプロセッサー内蔵モデルで感熱式プリンターが内蔵されている。
      A1シリーズのうちA1/A1mk2は漢字ROM非搭載。A1FMにはモデムが搭載されている。モデムとFDDを同時に搭載しているため価格が比較的高かった。
      FS-A1以降はPanasonicブランド、それ以前はNationalブランドで発売。
  • 日本楽器(現ヤマハ)
    • YIS604/128,YIS805/256,CX-7/128
  • 大山工業(ダイセン)
    • MX30A,MX30B
      業務用途向けで機器組み込みを前提とした機体。
  • NTT
    • Captain Multi Station
      キャプテンシステムの端末。
  • 大宇電子(韓国、日本国内での発売は無し)

この他、業務用(店頭端末用・工場などでの制御用・キャプテンシステムビデオタイトラー)の特殊な製品も存在する。

MSX2への参入を検討したメーカー

MSX2+

1988年に発表された、MSX2規格の映像機能を中心に強化した規格。

MSX2+の主な仕様

V9958
  • CPU
    MSX1準拠
  • VDP
    ヤマハ V9958
  • 画面モード
    SCREEN0〜9:MSX2準拠
    ×ばつ2画面 固定12,499色(ドット単位の色指定不可)+512色中16色(ドット単位に色指定可能)
    ×ばつ2画面 固定19,268色(ドット単位の色指定不可)
  • メインメモリ
    64KB〜
  • VRAM
    128KB
  • サウンド
    MSX1準拠、オプションでMSX-MUSIC
  • PPI
    MSX1準拠

この規格では、VDPにV9938を小改修して横スクロール機能と自然画モードが追加された、上位互換のV9958を搭載した。また、漢字ROMが標準搭載とされた。

さらに規格上はオプションのままだが、内蔵の辞書ROMを使った日本語入力(MSX-JEなど)の採用、詳細は各社でまちまちだったフロッピーディスク・ドライブ(MSX DISK-BASIC)の規格や内部スロット配置の標準化、松下電器の開発したFM音源YM2413(OPLL)カートリッジ・FM-PACの規格の取り込み(MSX-MUSIC)が行われた。CPUやVDPなどの処理速度の向上は、規格上では行われなかった。

システムの起動時には左右から横スクロールで大きいMSXロゴが現れ、メインメモリの搭載容量がKB表記で表示された。市販された製品は64KB搭載のものだけだったが、拡張すればその分も加えての表示となる。

また、MSX2の一部機種で、メインメモリのチップのCMOS化によりバイパスコンデンサにより内容が保持されてしまい、電源を切っても5分近く内容が消えず、裏RAMに起動可能なROMイメージをコピーするとBASICなどが起動出来なくなる問題が起きたことから、起動時にメインメモリのROM識別IDに該当するエリアをクリアするようになった。またVRAMは、MSX2では消えていなかったSCREEN5のページ1が、起動時のスクロール処理に使用されるためクリアされた。

その他、平仮名など一部の8ドットフォントを変更し、SCREEN0で横2ドットが切れて読み辛くなる問題を改善した。なお、漢字モードではシフトJISコードを使用するため、ひらがなやグラフィック文字などのMSXフォントは文字化けする。

MSX2+規格に参入したのは、ソニー、三洋電機、松下電器の3社だけとなった。ヤマハはVDPとFM音源、東芝はZ80カスタムCPU(MSX-ENGINE2)などの部品を提供するのみになった。

発売された機種は全てキーボード一体型となり、セパレートタイプのマシンは発売されなかった。また、規格の上では必須ではないが大半の機種でFDDを1〜2基搭載していたことから、供給ソフトのメディアの主流は完全にROMから価格の安いFDへと置き換わった。

MSX2の拡張オプションの標準実装化が多い規格のため、MSX2に各種オプションカートリッジを実装することで、VDP以外はほぼMSX2+相当の機能に出来た。VDPの新機能も、自然画モードは写真などの静止画に特化した仕様のため有効活用される場面は少なく、横スクロール機能もMSX2でも制限・制約付きながら実現されており、MSX2+のアドバンテージは然程大きくなかった。そのためMSX用ソフトウェアは2+発売以降も(「要・漢字ROM」等の但し書き付きの)MSX2対応がメインとなり続け、MSX2+専用ソフトは殆ど発売されなかった。

MSX2+に参入したメーカーと発売した機種

  • 三洋電機
    • WAVY70FD、WAVY70FD2、WAVY35
      BASICコンパイラ(「MSXべーしっ君ぷらす」相当)を内蔵。単漢字変換で、MSX-JEは内蔵しない。
      WAVY35はFDD非搭載(日本国内の一般向けのモデルではない)。70FD2はフロッピーディスクドライブを2機搭載。
  • ソニー
    • HB-F1XDJ、HB-F1XV
      ゲーム開発ツールをディスク付属、筐体はMSX2のHB-F1XDシリーズから流用。MSX-JEを内蔵。XDJは1年ほど使用しているうちにFM音源の音が小さくなるという回路の不具合があり、メーカーでコンデンサ交換による対応を取っていた。
FS-A1WX
  • 松下電器
    • FS-A1WX、FS-A1FX、FS-A1WSX
      Wシリーズはワープロ内蔵、FXはFM音源・MSX-JEなし。WSXはS端子を付けた代わりにカセットテープ端子を削除(改造して後付けすることは可能)。I/O操作でCPU5.38MHz駆動可能(BASICコマンド:OUT 65,154)、ただしPSGの音程が上がる。内蔵ワープロはこのモードで動作していた。

MSXturboR

1990年に発表された、Z80上位互換の内部16ビットRISCライクCPU、R800 を搭載した規格。turboRのRは、RISCに由来する。

MSXturboRの主な仕様

R800 CPU
FM音源(OPLL) YM2413
MSX-ENGINE2 T9769
(写真はVer.C)
システムLSI S1990
  • CPU
    MSX1準拠+アスキー R800
  • VDP
    MSX2+準拠
  • 画面モード
    MSX2+準拠
  • メインメモリ
    256KB〜 (MSX-MIDI搭載時は512KB〜)
  • サウンド
    MSX1準拠+ヤマハ YM2413
  • PPI
    MSX1準拠

R800は16ビットとはいっても、命令は乗算が追加された程度で、機能的には実質8ビットのままだった。またturboRでのR800の入力クロック周波数は28.636360MHzだが、実動作クロック周波数はそれを内部で1/4に分周した7.15909MHzだった。ただしR800は基本命令が、同じクロック周波数のZ80の4倍速設計なので、カタログでは「Z80換算で28MHz相当」という巧妙な記述がなされた。

turboRは従来のMSXとの互換性を維持するために、Z80相当品(MSX-ENGINE2)と、R800使用時におけるZ80バスサイクルエミュレーション機能を搭載するシステムLSI S1990を実装している。R800自身もメモリ管理なども含め拡張されたCPUであるが、互換性等を考慮し、高速なZ80という使われ方をしている。システムではソフト切り替えで2つのCPUを排他的に使用するようになっているが、従来のソフトは自動的に互換モード(Z80)で動作するようになっていた。ソフト切り替えが可能だったことから、ディスクのソフトを強制的に高速モードで動作させるツールもあり(正常動作は保証されない)、これを用いて高速化できる場合があった。turboRリリース後に発売されたゲームの中には、起動時にチェックを行いturboRなら高速モードで動作し、MSX2/2+でも従来通りの機能でプレイできるゲームもあった。

MSXturboRはメモリ・マッパ機能を使用してメインメモリを拡張し、日本語対応のMSX-DOS2を内蔵した。しかし、新VDPの採用は見送られ、V9958による表示が著しく足をひっぱる形となり、VDPアクセスにいたってはウェイトが増加する状況だった。そのため、描画を行わないソフトウェアでは高速な動作をするものの、描画処理が増えるほど旧機種との見た目の差は埋まってしまい評価としては低いものになってしまった。起動画面はMSX2+とほぼ同じだが、スクロールが速くなっていた。

音源ではMSX MUSICが標準搭載になったほか、8ビットのPCMの録音再生機能もついたが、PCMの使用中はBIOSレベルではCPUの他の処理を止めてしまうため、他のPCM/ADPCM搭載機のように音楽を奏でるのに使うのには著しく難があり、利用例は多くなかった。しかし、後年にはVDPの走査線割り込みを利用することで並列再生させたソフトもあった。もっともMSXには元々1ビットD/Aのサンプリング機能を持ち、またPSGを使用しての4ビットPCM再生をさせたソフトも存在した事から、それほど注目はされなかった。

MSXViewというGUI環境がオプション規格として用意された。これは1987年HAL研究所から発売されたMSX2向けのGUI環境のHALNOTEというソフトを発展させたもので、3.5インチディスクと漢字ROMカートリッジを同梱してアスキーから1991年に発売された。MSXturboR本体のみでもMSXVie×ばつ12ドットのフォントが収められた漢字ROMカートリッジがあれば、内蔵フォントを圧縮するための負荷がなく、より軽快に表示することが可能になっていた。このFD版とA1GTに搭載されたROM版があったが、前者は頻繁にシステムディスクを要求されるため、シングルドライブ環境ではとても実用的とは言えなかった。MSXView向けのソフトは、表計算ソフトのViewCALCやフリーソフトウェアがいくつかある程度で終わっている。

また、細かいところではカセットテープ端子が操作用BIOSもろとも規格から削除され、旧仕様の完全な「上位互換」ではなくなった。

対応機を発表したのは松下電器のみで、まず「FS-A1ST」が、続いて翌年の1991年に「FS-A1GT」が発売された。多機能化が図られた結果、設定価格は消費税込みで10万を超え、当時の他の16ビット機種と比べて価格の優位性を示せるものではなくなっていた(当時のPC9801互換機で最廉価のものは12万円台だった)。その後、松下の開発チームも解散し、これが日本で市販されたMSXシリーズの最終機となった。

なお、松下のMSX2+/turboRは、FS-A1WXからFS-A1GTに至るまですべて、筐体のデザインを流用していた。

MSXturboRに参入したメーカーと発売した機種

  • 松下電器
    • FS-A1ST、FS-A1GT
      搭載ワープロはR800のおかげで速くなり、より実用的になった。A1GTはMIDI機能が追加され、MSXViewをROMで内蔵、メインメモリをさらに拡張した。

これでMSXの市場はほぼ終焉したものの、後に残されたMSXの専門誌は形態を変えてしばらくは細々と発刊を続けた。また、ユーザーによるハード製作などの活動が、活発に行われるようになった。 その後、1995年をもって全てのMSX規格対応コンピュータは生産を終了した。また、「家庭用テレビにつないで使う」という発想のパソコンも、若干の例外を除けばこれにて潰える事となった(FM TOWNS マーティー等もあったが、MSXよりも早く製造終了している)。

MSXの現在

今日、MSXユーザはシェア・ベースでは目立った勢力ではないが、依然として活発なユーザが存在しており、インターネットなどのネットワーク上でMSXにまつわる様々な活動が今なお繰り広げられている。2002年には商標システムソフトウェアなどの管理を行う任意団体「MSXアソシエーション」が発足し、公式のエミュレータMSXPLAYerも公開された。また現在、1chipMSXが製品化されている。ただし、これを「MSXパソコン」と称して良いかは意見が分かれる。今のところメーカーも、「1chipMSXパソコン」とは呼んでいない。

他にも、非公式ではあるものの有志の手によりゲームボーイアドバンスPSPなどでエミュレーターが開発され、開発に携わった西の想定していた「持ち歩けるMSX」のようなコンセプトは有志の手により現実のものとなりつつある。

MSXPLAYer (エムエスエックス・プレイヤー)

Marat FayzullinのMSXエミュレータ fMSXをベースにして、MSXアソシエーションが開発した公式エミュレータ。MSX turboR相当。Windows版とPocketPC 2002版が存在する。これは現在多く発表されている公式エミュレータによるレトロゲーム配信の草分けとなった。MSXマガジン永久保存版の付録CD-ROMにMSXPLAYerが入っている。限定生産されたUSB接続の「MSXゲームリーダー」を使用することでMSX用のROMカートリッジのゲームを楽しむことができる。MSXマガジン永久保存版2号ではBASICコンパイラ「べーしっ君」の命令も使用できる。MSXマガジン永久保存版3号が後期バージョンでMSX実機の再現度も高くなっている。

正式名称は「MSXPLAYer」で「MSX」と「PLAYer」の間に文字は入らないとされる。

なお、MSX規格の規定によりMSXロゴを使用することができないため、MSXロゴをベースにした独自のロゴマークを使用している。このような過去のハードやソフトを「公式の」エミュレーターとして販売した事例は2002年当時ではきわめて珍しく、後のエミュレーターによるソフト販売や旧ハードソフトウェアのリメイクなどの企画に大きな影響を与えている。

1chipMSX

1Chip MSX

似非職人工房からMSXアソシエーションによってMSXをチップ化する似非プロジェクトが引き継がれFPGA(Field Programmable Gate Array)による大胆なアーキテクチャの変更が行われた。当初はMSX1相当1スロット機の仕様で製品化が検討され、アスキーのWEBサイト上にて2005年 5月20日より2005年 8月20日まで予約注文が行われたが、予約数が最低目標の5000に満たなかったため、2005年 8月26日、アスキーによる製品化は見送られた。

その後の動向が注目されていたが、2006年8月11日、MSX2相当の仕様に改められた試作機が一般公開され、同年11月に発売された。発売元はD4エンタープライズ、価格は20790円。通販での購入にはクレジットカードが必要。実店舗で扱っている店もあるため、クレジットカードが無い場合、そちらで購入するという手段もある。

本体は上面に拡張スロットを2つと電源・リセットスイッチを、手前にジョイスティック端子2つなどを配し、カートリッジ使用ゲーム機のような見た目をしている。拡張スロット2つは近接しており、スペースを大きく占有する機器ではスロット1つだけ使用可能。筺体はブルーのスケルトン仕様で、アルテラのチップが大きく目立つ。出荷時の設定ではMSX2相当の回路になっており、MSXパソコンのように使える。記憶媒体としてSDメモリーカードまたはマルチメディアカードが使用可能。将来性を見据え、拡張用にUSBも2つ備えているが、現時点ではダミーポートである。出力はビデオS映像の他、VGA端子でディップスイッチの切り替えにより15kHz(実機とは同期のタイミングが異なる)/31kHzに対応する。キーボードはPS/2仕様のものを使用する。CPU速度は3.58MHzの他、非公式設定で10.74MHz相当にも変更可能。DISK-BASIC(SD/MMC用、ディップスイッチで切離し可能)、JIS第一水準の漢字ROM、MSX-DOS2、MSX-MUSICとSCC互換の拡張WAVE音源の機能も搭載する。メインRAMは1Mバイト、VRAMは128Kバイト。クロックICは無い。速度コントロール不可ではあるもののデータレコーダの接続も可能である。ただし、フロッピーディスクドライブはMSX用の物が別途必要となる。RTCの時刻、SRAMに保持される内容等は電源断と共に消失する。

プログラミングや改造によって回路変更を行うことで、さまざまな用途に活用したり、さらには「夢のMSX3」を自身で設計できると言った趣旨の仕様となっているが、チップの規模から空いている空間は少なく、現状から大きな拡張をするのは困難とされる。2007年現在、FPGAを書き換えてMZ-700化した例もある。開発には別途PCが必要となる。2007年3月、4000台を出荷した[要出典 ]エラー: タグの貼り付け年月を「date=yyyy年m月」形式で記入してください。間違えて「date=」を「data=」等と記入していないかも確認してください。

バーチャルコンソール

2006年、Wiiの価格発表の場において、旧来のゲームマシン・パソコンで供給されていたゲームソフトをインターネット上からダウンロード販売する「バーチャルコンソール」へのMSXソフトの投入が発表された。i-revoなどで多くのMSXゲームの版権を所有するD4エンタープライズが参入したことによって実現した。この計画では新作のソフトを配信することも計画されているために、有名メーカーからの新作MSXゲームや試作品や体験版のみにおわったMSXゲームの完成版などが配信される可能性もある。

ただ、現在のところWii上でのMSX BASICの動作などは発表されておらず、今後の配信計画に注目が集まる。

ソフトウェアの配信開始は2007年春の予定だったが、延期が続いている。 配信第一弾となるタイトルは、ボーステックが1985年に発売したアクションゲーム「EGGY」と、コンパイルが1988年に発売したシューティングゲームALESTE」で、いずれも配信元はD4エンタープライズ。「EGGY」は700Wiiポイント、その他のソフトも700〜800Wiiポイントでの提供を予定している。

MSXに関するトピックス

MSX の名称の由来

マイクロソフト説

諸説存在するが、アスキーの創業者でマイクロソフトの副社長でもあった西和彦1984年に語ったところによれば、由来はMicroSoft eX の略とされる。Xには「eXchangeable」「eXpandable」「eXtended」などの意味が含有され、また日本語訳のときにXは拡張性が無限に広がるという意味もこめて未知数のXであるとされている。後年のDirectXActiveXXboxなど、マイクロソフトの「X好き」はこの頃から現れていると指摘する声もある。

松下電器とソニー説(MSX販売当時)

MSX2+以降、参入メーカーが、松下電器産業(松下電器)、ソニー三洋電機、と、頭文字が軒並みMとSだった事から、そのうちの代表格と言えるメーカーから「Matsushita(松下)・Sony(ソニー)・Xの略では?」などと、当時のユーザーや雑誌編集者が冗談混じりに語る事もあった(三洋電機も略称内に含める事もあった)。この冗談は、統一規格を謳いながらも限られた会社からしかハードが発売されなくなってしまった状況の変化を皮肉ったものだった。

同様の説を、やはり冗談だと断った上で、単に家電メーカーの代表格が松下とソニーであるという趣旨で紹介した書籍もある。[5]

松下電器とソニー説(規格発表以前)

主に後年になって語られるようになったものであるが、規格構想時は確かに「松下電器とソニーのMSX」であり、それが後に建前上の理由から「MicroSoftX」に変化した、との説も存在する。書籍により語られるようになった後、当事者が当時を振り返っての公演・発言をする際に同様の趣旨の事が言われるようになった。

曰く、MSXの初期の構想時にはマイクロソフトは関与しておらず、西和彦と、規格の推進役かつ後ろ盾だった松下電器の前田一泰のイニシャルから、当初はMNXと呼ばれていた。だがこの名称は既に商標登録されていたため、ソニーが話に加わった事でMSXと改まった。しかし日本のメーカーが提唱する規格の基本ソフトがアメリカのマイクロソフトだという点に通産省からクレームがついたことで、松下とソニーは前面に立つわけにいかなかったため、名称はそのままに、「マイクロソフトのMSX」と説明した、という経緯とされる。

この事はある書籍[6] に初めて書かれた後、規格発表当初はマイクロソフトから取ったと語った西和彦も同様に語るようになった。2000年のイベント「電遊ランド2000」の講演会で、この説について質問された際もそう受け取っても構わないと答えたという。翌2001年の「電遊ランド2001」での前田一泰の講演でも、同様の趣旨の発言がされている。

候補に上がった名称

規格発表以前の段階では、MSXや前述のMNXの他に、西和彦の名からNSX、アスキーから取られたASXなどが候補に上り、商標登録された。

MSXロゴマーク

MSX仕様に準拠したハードウェアとソフトウェアにはMSXのロゴマークがつけられた。MSXマークがついていればMSXで動くと分かるように、ホームビデオのVHSを参考に発案・デザインされた。以後、MSX2、MSX2+、MSXturboRとMSXがバージョンアップする度にロゴは作られて、MSX2からは起動画面にMSXロゴが表示されるようになった。公式MSXエミュレーターMSXPLAYerにおいてもMSXのロゴは踏襲された。デザインは全て西和彦が元になるアイデアを出している。

このロゴマークのついたMSX仕様のソフトウェアを発売する際にロイヤルティーは不要。これはMSX発表当時、対抗規格を打ち出して来た日本ソフトバンク(現ソフトバンク)の孫正義と西和彦のトップ会談によって決定されたものである。

MSXの応用例

MSXは単価が安く、またカートリッジスロットからZ80のメモリバス、アドレスバスをそのまま引き出すことが出来るため、Z80の付随回路としてシンプルに設計でき、拡張や工作が容易である。80系/Z80系の環境では標準とも言えるCP/M互換のMSX-DOSという原始的なOSや開発環境も整っており、既存のCP/M環境やMS-DOS環境からのクロス開発も容易だったため、組み込み用や制御用にも多く流用されていた。

一部の市販ビデオタイトラーやビデオテックス(キャプテン)システム、また公共施設等に設置されたビデオ端末や簡易ゲーム機などにもMSXを流用したハードウェアが内蔵され、稼動していた例も少なくない。観光地の記念メダルの刻印機として2007年現在、今なお稼働している機体も存在する。

特にビデオタイトラーでは、SonyブランドのXV-J550/J770/T55FシリーズやPanasonicブランドのVW-KT300などの家庭用タイトラーのハードウェア構成は明らかにMSXを応用・流用したものである。ただし、これらの機種では基本はMSXシステムをベースとしていても独自の実装がなされており、特にBIOSなどは大幅に簡略化されMSXとしての機能は望めないなど、簡単な加工程度では汎用のMSXシステムとして使うことは不可能である。ただそれらのMSXベースのタイトラーは安価なビデオタイトラーとしてはかなり普及していた時期があり、一時期は小規模なビデオ関連の作品(企業VPや解説ビデオやインディーズAVなど)などにはMSXの漢字ROMフォントとまったく同じフォントを用いたテロップを多く見かけることが出来た。これらのビデオ作品は一部では2006年現在でも流通している。

日本国外のMSX

当時のホビー用パソコンにはBASICインタープリタをROMで搭載することが一般的であり、MSXでもこれを踏襲する一方、MSX-DOSと呼ばれるCP/M互換OSも供給され、既存のCP/Mアプリケーションの多くがほぼそのまま動作する等、アセンブリ言語やC、Pascal等を用いた本格的なソフトウェアの学習・開発や、豊富なCP/Mアプリケーションを用いた実務なども可能だった。

このように、MSXは単に子供に買い与えゲームやBASICで遊ばせる「入門機」としての側面のみではなく、その後本格的なコンピュータ(ソフトウェア)の学習にも繋げて行くことが可能な、総合的なホームコンピュータとして設計されている。また、2bytesで処理し表示にも高解像度が必要な漢字を使う日本とは異なり、アルファベットを使う諸国ではMSX1の表示能力でも十分という事情もあった。こうした点が日本以外の諸国では評価され、普及に繋がることとなった。

既にApple IIコモドール64などの8ビットパソコンが普及していたアメリカでは発売されることはなかったものの、ヨーロッパ南アメリカ韓国などを中心にMSXマシンは日本から輸出され、現地企業でも生産された。旧共産圏などにおいてMSXは学校などに多数納入され、初等教育の現場でも応用されていた。韓国ではゲームマシンとしても利用され、MSXソフトが動作するもののキーボードがないなどMSX仕様を満たさないZEMMIXというメーカーの家庭用ゲーム機も発売されてる。韓国向けではハングルアラブ諸国向けにアラビア文字を使えるなど、現地向けに仕様がローカライズされていた。

MSXと冷戦

冷戦時代のソビエト連邦を中心とする共産圏の国々では、対共産圏輸出統制委員会(ココム)の禁輸品目の中にコンピュータを含む電子機器も含まれており、16ビット以上のコンピュータは輸入することが出来なかった。 そのため、低性能のため対象外とされていた8ビット機を大量に輸入し、またコピーして使用していた。

これらの中にはMSXも含まれ、特にMSXはその拡張性や互換性のとりやすさ等が評価された結果、初等教育のみならず各分野で大いに応用され、また教育用には独自に簡易ネットワークシステムまで構築して利用していた例もある。またそれらが宇宙開発や軍事目的にも転用された。

ちなみに軌道宇宙船ミールに搭載され、研究モジュールの制御に使われていたコンピュータは、SONYのMSX2・HB-G900だった。これはミールの廃棄と運命をともにした。 また一部の戦闘機を近代化改修した折には、コックピットに搭載されたCRTの制御に、MSX1と同等のTMS9918相当品が用いられていた。

イメージキャラクター

1980年代当時パソコンは、一般への普及を標榜していたため、テレビCMや雑誌・新聞広告に知名度の高い芸能人やキャラクターを起用する事が多かった。MSXも多分に漏れず、数々のキャラクターでのCMを展開していた。

  • アスキー
    • MSX坊や
      特定機種ではなく、規格としてのMSXのマスコットキャラクターとして作成。MSX1〜MSX2初期にかけて雑誌広告やアスキー発行の専門誌で使用された。
  • ソニー
    • 松田聖子
      TVCMの露出も多く、ソニーがMSXでトップシェアを勝ち得た事にかなり貢献したとされる。
  • 三洋電機特機
    • 宮本武蔵
      PHC-30が本体のみでROMカートリッジ・カセットテープの両メディアが使える機種だった事から、「二刀流」が謳い文句だった。
  • 三菱電機
    • (名称不明)
      最初の機種・ML-8000の広告には、カエルに似たオリジナルキャラクタがマスコットとして用いられた。Let usシリーズの広告では一般の女子大生を起用、以降はCMキャラクター無し。
  • 東芝
  • 日立製作所
    • 工藤夕貴
      MB-H1の頃は月変わりで雑誌広告を展開、セーラー服姿の工藤がパソコンを持って色々なところを闊歩するシリーズが1年間続いた。以降撤退までは機種毎に固定の写真が使われた。
  • 松下電器
    • キングコング
      MSX1及びFS-A1以前のMSX2を担当。同社MSXマシン自体のブランド名にも「キングコング」の名称が使われた。
    • アシュギーネ
      MSX2のA1シリーズを担当。MSX2用ゲームの主人公に使われた他、漫画にもなった。
    • スパーキー
      MSX2+以降を担当。「デザインにルーカスフィルムが関わった、スターウォーズ世界の住人」という振れ込みだった。
  • 富士通
    • タモリ
      他のFMシリーズから続けての起用。
  • カシオ計算機
  • 日本ビクター
    • 小泉今日子
      同社MSXが"IO"(イオ)というブランド名を使用した頃に起用されていた。

パソコン通信

MSX向けの商用パソコン通信サービスとしては、1986年12月からアスキーが運営したアスキーネットMSX、および松下電器系のネットワーク企業・日本テレネットが運営するTHE LINKS(ザ・リンクス)が有名である。

アスキーネットMSXは、MSXを所有していることが使用の条件であり、実際に使えるマシンはMSXに限らなかった。NHK学園のパソコンの通信講座で使われたこともあった。

対してTHE LINKSはMSX専用だった。画像通信やゲーム配信をサポートした独特のサービスで、対応機種をMSXに限定、モデムも専用ソフト搭載のカートリッジのみとする事で、他のパソコン通信サービスにはないカラフルなコンテンツの提供や画像配信、動くメールなども実現していた。MSXによる日本語表現の特徴の一つである半角ひらがなやグラフィック文字はJISの規格外で、機種によって全く別のキャラクタが定義されており、MSXに限らず多機種混在のパソコン通信では使わないのが常識となっていたが、THE LINKSはその逆にJISやシフトJISの2bytes文字の日本語は書き込むことができず、1byteのMSX文字でコミュニケーションを取ることになっていた。THE LINKSのためだけの専用通信ソフトが必要で、通信ソフトが内蔵されたTHE LINKS専用モデムカートリッジがあった他、松下電器のモデムカートリッジに通信ソフトが内蔵されていた。

当初は通信速度300bpsのモデムカートリッジが発売され、後には1200bpsの物も出た。MSXturboRが発売された時期にはパソコン通信も9600bpsを超える速度のモデムが一般化し、MSXでもRS-232CカートリッジとPCモデムを使用するユーザーが増えた。

それ以外にもPC-VANNIFTY-SereveにMSXに関係するSIGやフォーラムが設けられた。また、MSXの話題を扱う草の根BBSが全国に開設されており、MSX専門誌が休刊し、商業的にMSXが衰退した後は同人活動とともにパソコン通信での活動によって培われたコミュニティがMSXを支えた。パソコン通信で発表されたフリーソフトウェアは、MSX専門誌のMSX・FANに付録ディスクに収録されたり、ソフトの自動販売機TAKERUで販売されたりもした。

その他にMSXを用いたネットワークサービスには、囲碁のネット対戦「GO-NET」や株式投資などがあった。

通信ソフトにはアスキーから発売されたMSX-TERMの他、フリーソフトウェアのmabTermやRAETERMが使われた。MSX向けのネット運営用ホストプログラムはMSXマガジンが開発した「網元さん」が多く用いられた。

周辺機器

ROM/RAMカートリッジ

  • ロムカセット
    ページ先頭に書かれているヘッダによって、起動時の初期化(拡張BASIC等)や自動起動(ゲームソフト等)が可能。通常はマスクROMが使用されたが、ソフトベンダーTAKERU用のEPROMカートリッジもあった。
    • メガROM
      内部にバンク切り替え機能を搭載した、1メガビット(128KB)超のROMカートリッジ。『グラディウス』で初使用、その後、長方形を斜めに3つ連ねた統一マークが定められた。コナミによるものとアスキーによるものの2種類の仕様があった。同様の物は特に名称はついてないものの、ファミコンなどの家庭用ゲーム機でも見られる。
    • BEE CARD
      アダプタカートリッジ「Bee Pack」と組み合わせて使用する。セガ・マークIIIマイカードPCエンジンHuCARDと同様のもの。
  • 増設用RAMカートリッジ
    MSX1の16KBなどの機種で32KB/64KBにするためのものや、MSX2以降でメモリマッパとして利用できるもの、など。
  • SRAMカートリッジ
    MSX1発売開始当初は、一般家庭での需要を見込んだ、家計簿ソフトなどのデータ保存用に発売(もしくは本体に同梱)された。その後は主にゲームデータの保存用にシフトした。PAC(パナ・アミューズメント・カートリッジ)、FM-PAC、新10倍カートリッジ、など。

入力装置

キヤノンVJ-200
ソニーJS-55
  • キーボード
    キーボードが本体と分離しているマシン用に各社独自仕様の物が用意された他、スロットコネクタやジョイスティック端子を介してつなぐテンキーパッドが市販されたり、専門誌の電子工作コーナーに作例掲載されたりした。
    なお、MSX規格では「キーボード接続専用の標準端子」のような物は定められていない。
  • 鍵盤
    ヤマハ・SFG-01/05専用の物が発売された。
  • ジョイスティックジョイパッド
    8方向入力スティック+押しボタン1〜2個を備える。当初は据え置きタイプは操縦桿型、手持ちタイプはスティック付きの物が多かったが、徐々にアーケードゲーム型・方向ボタン付きの物に移行した。
    • ハイパーショット
      押しボタン2個のみ・方向入力は無し。コナミ「ハイパーオリンピック」「ハイパースポーツ」シリーズ専用の入力機器。
    • アナログジョイスティック
      電波新聞社メガドライブ用に発売した物。2軸スティック+1軸スティック+押しボタン12個。MSX等でPSGのレジスタにアクセスして使用する方法も公開され、ごく一部の市販ソフトで隠し機能として対応した。
  • マウストラックボール
    ジョイスティック端子に接続する。トラックボールはソニー・HAL研究所等が発売。後にマウスとともに正式に規格に取り込まれた。規格上での扱いには幾分かの差異があり、マウス用ソフトでトラックボールを使っても操作できない場合がある(逆も同様)。
    マウスはMSX規格準拠と同じ物がPC-8801mkIISR以降のバスマウスや富士通FM-TOWNS用としても採用された。
  • パドル・タブレット
    前者はブロック崩しゲーム等で用いられるダイヤル状の物、後者は透明な板をペンでタッチするポインティングデバイスで現在のタッチパネルペンタブレットに近い。ともにジョイスティック端子に接続して使用。マウスやトラックボールよりも早く、MSX1発表当初から規格に組み入れられていたアナログ入力装置だが、機器・対応ソフトともほとんど無く、知る人ぞ知る存在。turboRでは非サポート(対応BIOS・関数を呼び出しても必ず-1が返る)。
    なお、MSX2用ソフト「アルカノイド」等に同梱されたパドルはMSX規格準拠ではなく独自仕様である。
  • ライトペン
    三洋のMSX1・WAVY-10とWAVY-11に標準添付、専用の端子に接続。他機種用にカートリッジスロットに接続する物が発売されたが、映像出力をカートリッジに経由させる必要があったため一部機種では使用できない。MSX2から規格化されたが、MSX2以降の画面モードに対応した機器は発売されていない。パドル等と同様にturboRでは非サポート。
  • 光線銃(ライトガン)
    • PLUS-X ターミネータレーザー
      中東諸国で流行したゲーム用光線銃。ジョイスティック端子に接続。対応ソフトも中東で流通していたMSX1対応の物がほぼそのまま売られていた。
  • マイク
    turboRには音声取り込み用の物が本体に付属。それ以前にも(規格でサポートされていた訳ではないが)1ビットサンプリング用に市販品が使用された。
    • 「シャウトマッチ」付属マイク
    ビクター音楽産業製の同名ゲーム専用の物。ジョイスティック端子に接続。感知できるのは音量のみ。

記録装置

  • データレコーダ
    プログラムや画像データを「音」に置き換える事で、「音」を扱える機器を外部記憶装置として用いていた。記録速度は1200bpsと2400bpsを選択でき、インターフェースは大半の機種に装備。カシオ PV-7などではオプション、松下FS-A1WSXとMSXturboRでは削除。日立MB-H2など一部の機種にはカセットデッキが内蔵された。
    このフォーマットでプログラムを記録・媒介するメディアとしては以下のような物があった。
    • コンパクトカセット
      FDDのない環境では標準的な外部記憶メディアとして使われた。読み出し・書き込みの双方が可能。
    • レコード
      データレコーダと同じフォーマットで音声記録。アニメの主題歌とドラマが納められたレコード『みゆきメモリアル』(キティレコード)に特典としてMSX用プログラムが収録。内容はグラフィックス表示プログラムとゲーム。読み出し専用。
    • ビデオテープ
      データレコーダと同じフォーマットで音声記録。日本テレネット制作のプロモーションビデオ『ヴァリスクラブ』(日本ソフトバンク)に特典としてMSX用プログラムが収録。読み出し専用(書き込みも可能ではあるが実績の程は不明)。
    • テレビラジオ
      データレコーダと同じフォーマットの音声を放送で流した番組がいくつか存在した。読み出し専用。
    (注記)なお、レーザーディスクもデータのフォーマット自体は同一だが、プログラムが映像や通常の音声と連動するメディアなので後述とする。
  • フロッピーディスクドライブ(3.5インチ1DD,2DD・3インチ1DD)
    当初はソニーなどが3.5インチ、日立などが3インチのドライブを開発していたが、国内では1984年5月の発売前に3.5インチに一本化された。インターフェースカートリッジとドライブとの別売、またはセットで提供された。後年にはドライブがインターフェースと一体化した形状の物も発売。使用にはメインメモリが最低32KB必要。MSX DISK-BASICとMSX-DOS(要RAM64KB以上)が使用でき、両者のファイルフォーマットには互換性がある。MSX2末期以降は大半の機種に内蔵された。
  • クイックディスクドライブ
    ミツミ電機製、カシオブランド及びロジテックブランドから発売。安価なFD代用メディアを標榜するも普及せず。
  • ハードディスクドライブ
    SASI規格のインターフェースカートリッジ「MSX HD Interface」が1989年7月にアスキーより市販された。40MBまでしかサポートしていないSASI規格が廃れると、有志の手でSCSIIDE対応のインターフェースカートリッジが製作された。似非職人工房「MEGA-SCSI」、海外製の「Sunrise MSX ATA-IDE」など。
  • ビデオディスク
    当時は3種類あったが日本のMSXで使えたのは下記の2種類。
    • レーザーディスク
      通常の映像の他に、MSX側からのコントロールプログラムも格納されていた。アナログ音声トラックにデータレコーダと同じフォーマットで音声記録されたデータを読み込む仕組みで、後のレーザーアクティブによるLD-ROMとは全く異なる。MSX-BASICを拡張したP-BASICでレーザーディスクを制御した。パイオニア製MSXでは標準で、他社MSX1ではオプション機器で接続可能。MSX2以降では使用不可。
      対応ソフトとしてはセガアストロンベルト」、コナミバッドランズ」等が移植された。
    • VHD
      VHD言語という異機種間共通の言語仕様が用意され、中間言語でVHDディスクにデジタル記録されたプログラムを、MSX側に用意されたインタプリタで実行した。但し、実行速度の都合から一部、各機種個別のソフトをディスクと別売で用意した物もあり。VHD言語はコードがVHD上にある前提からユーザー開発は想定しておらず、自作プログラムでVHDプレイヤーをコントロールする場合は、(VHD言語ではなく)拡張BASICを使う。MSX2規格で標準化したが、MSX2対応VHD言語インタプリタは出なかった。
      対応ソフトはデータイーストサンダーストーム」、タイトータイムギャル」等(どちらもVHD言語非対応)。また、ユーザーがプログラムから制御する前提で、「ゼビウスマップ」も発売された。
  • CD-ROMドライブ
    MSX2の1987年頃に東芝が外付け型、ソニーが内蔵機を試作したという報道があったが、商品化には至らなかった。後に有志の手によりSCSI経由で利用できるようになった。

拡張音源

カートリッジスロットにモノラルの音声信号の端子があり、内蔵音源とミキシングして出力できた。

  • FM音源カートリッジ
    • MSX-AUDIO
      同名規格準拠の拡張音源カートリッジ。松下電器製・東芝製・フィリップス製の物が存在する。音源チップはY8950。対応ソフトは少ない。形状が横長で、搭載可能な拡張スロットが限られるという難点がある。
    • FM-PAC(松下電器)
      音源チップはYM2413。MSX-MUSIC仕様準拠の音源とゲーム用バックアップRAMを1カートリッジにまとめた物。バックアップ管理ツール、FM音源デモ演奏、MSXを鍵盤楽器として用いる隠し機能なども搭載。発売時、MSXマガジンのソフト売り上げランキングでトップを取っている。長らく絶版になった後、ユーザーの希望多数により再販がなされた。
  • SCC音源カートリッジ(コナミ)
    コナミのゲームソフト「スナッチャー」「SDスナッチャー」に付属(ゲーム本体は2DDディスク)。SCC音源の他にゲームのワークエリア用らしきDRAMも搭載していた。後に制御の方法が雑誌上で公開され、いくつかの(フリーソフトを含む)音楽ソフトで対応が行われた。なお、コナミの音楽ツール「新世SIZER」にはSCC音源と似たチップが搭載されており、これをSCC音源の原点とする説がある。
  • PCM音源カートリッジ
    • とーくまん(エミールソフト)
  • MIDIカートリッジ
    • SFG-01/05(ヤマハ)
      MIDI-IN/OUT端子の他、FM音源(音源チップは共にはYM2151)も搭載。
      SFG-01はMSX用FDDの仕様決定前に発売され、ワークエリアがMSX用FDDとバッティングしていた。それを変更してデータ保存先にFDを指定できるようにした物がSFG-05。
      ヤマハ製MSX独自スロットに接続する。一部の日本ビクター製マシンでも(動作保証は無いが)同様に使用できた。他のMSXで使用する場合は要・専用アダプタ。
    • MIDIサウルス(ビッツー)
      専用ソフト同梱で発売されたDTMツール。

プリンタ

パソコン通信用

  • RS-232Cカートリッジ
    モデムの接続のほか、CP/Mのディクスが読めないMSX-DOSにソフトをコンバートするための他機種との接続などにも用いられた。
    • 各社発売のカートリッジ
    • ASCII MSX SERIAL-232
    • 似非職人工房 はるかぜ
  • モデムカートリッジ
    • 各社発売のモデム(300bps〜1200bps程度)
    • THE LINKSモデム
      MSX専用のパソコン通信サービス"THE LINKS"専用モデム。300bps・半二重という当時の他のモデムではあまり見かけない仕様だった。THE LINKS利用者に事実上無償貸与されていた。

その他

  • 拡張スロットユニット
    MSX本体のプライマリスロットに接続して4つのセカンダリスロットを供給する。各種拡張機器の併用や、複数スロットを使う周辺機器の使用に用いられた。MSX仕様準拠(MSXマーク付き)の物が、東芝など複数のメーカーから発売。
    • EX-4(NEOS)
      MSX向けの製品だが、厳密にはMSXの仕様を満たさないため、MSXマークは付いていない。
  • 映像ユニット
    • MPC-X(三洋電機)
      ×ばつ192ドット、512色中8色を使用可能、ビデオデジタイズ機能付き。一時期のMSXマガジンの表紙CGはこの両機の組み合わせで作成されていた。
    • HBI-V1(ソニー)
      MSX2以降用のビデオデジタイザ。ビデオ映像をMSX2のSCREEN8・MSX2+以降のSCREEN10〜12の画像に変換する。
    • VHDインターフェース(日本ビクター)
      VHD PC接続端子及びMSX1用VHD言語インタプリタを搭載、スーパーインポーズ機能つき。日本ビクター製MSXの独自スロットに接続する。ヤマハ製マシンでも同様に使用可能(但し動作保障は無し)。他のMSXで使用する場合は要・専用アダプタ。
    • 拡張グラフィックプロセッサER-101(パイオニア)
      パイオニア製以外のMSXにLDプレーヤーを接続して使うための機器。スーパーインポーズ機能つき。MSX2以降では使用不可。
  • バージョンアップユニット
    • MSX2バージョンアップアダプタ(NEOS)
      MSX1をMSX2にバージョンアップする事が出来る。2スロット使用、要・RAM64KB。MSX2+やturboRに挿入すると、MSX2にバージョンダウンする。
    • μ・PACK(ビッツー)
      FS-A1GTで拡張された機能を他のMSXturboRでも使用できるよう用意された。MSX-MIDIと拡張マッパーRAMを同時搭載。同一スロットに並存できないマッパーRAMとROMとを1カートリッジ内に収めるために、内部でプライマリ→セカンダリへのスロット拡張を行っており、セカンダリスロットに挿入した場合は動作しない。
  • 日本語処理カートリッジ
    • MSX-WriteII(アスキー)
      MSX2用日本語処理ワードプロセッサーソフトでMSX-JE連文節変換機能つき。
    • HBI-J1(ソニー)
      MSX2用日本語処理カートリッジ。このカートリッジを挿すだけでMSX2でも漢字BASICがサポートされる。対応のワープロソフトは別売、FDDで供給。
  • GUI
    • HALNOTE(HAL研究所)
      MSX2以降向けのMSX-DOSにGUI環境を提供するソフト。カートリッジにMSX-JEと漢字ROM、キャッシュメモリとなるSRAMを内蔵。対応アプリケーションはMSXViewでも動作可能。

関連メディア

専門誌

(注記)すべて創刊時は月刊、毎月8日発売

  • Oh!HiTBiT(日本ソフトバンク)
    季刊・1984年4月創刊→1986年12月休刊。創刊号の題号のみ、Bが小文字表記になっていた。
    MSXの、ではなくソニーのパソコンの専門誌(ソニー独自マシン・SMCシリーズも扱っていた)。ソニーMSXには独自拡張されている部分が少なかったため、掲載内容は他社MSXにもそのまま応用できた。
    • なお、MSX発売メーカーの機種の専門誌としては他にOh!FMOh!PASOPIAがあるが、どちらもMSXは発売時に紹介された程度の扱いしかされていない。

ディスクマガジン

同人の物は省略

参考資料

  • 竹内あきら、湯浅敬、安田吾太『MSXホームコンピュータ読本』(1984年、アスキー) - 表紙には「OFFICIAL MSX HANDBOOK」。「MicrosoftX」の記述や、メーカーの参入が記された「MSX月報」など。
  • 平田渥美『パソコンでVHDを楽しむ本』(1985年、工学社)
  • 小林紀興『西和彦の閃き孫正義のバネ-日本の起業家の光と影』(1998年光文社)
  • MSXマガジン永久保存版』(2002年、アスキー) - MSXのロゴ。

脚注

  1. ^ Mマガの歴史
  2. ^ 「本体が5万円台で買えて、一般家庭に普通にある機器とつなげばシステムとして完成できる」事が必須だったとされる
  3. ^ 工学社『I/O1983年12月号
  4. ^ アスキー書籍編集部編『みんながコレで燃えた!NEC8ビットパソコン PC-8001・PC-6001 永久保存版』(2005年、アスキー)
  5. ^ 那野比古・著『アスキー 新人類企業の誕生』(1988年文藝春秋社) - 当時アスキーに在籍していた塚本慶一郎の発言。
  6. ^ 滝田誠一郎・著『電脳のサムライたち-西和彦とその時代』(1997年、実業之日本社) - 初出は雑誌『実業の日本』1996年5月号から連載の『電脳のサムライたち』。

関連項目

外部リンク

ウィキメディア・コモンズには、MSX に関連するメディアがあります。

公式

資料

1チップ MSX

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