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「自撮り棒」の版間の差分

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[[File:Group shot with selfie stick atop Pyramid of the Sun, Teotihuacan.jpg|thumb|200px|自撮り棒を使って自撮りをしている様子]]
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'''自撮り棒'''(じどりぼう)とは、[[カメラ]]やカメラを内蔵した[[スマートフォン]]に取付けて、[[自分撮り]]を行うための長さ1 [[メートル|m]]ほどの[[棒]]状の器具である<ref name="wsj">{{Cite news |title=スマホ「自撮り棒」、韓国で規制強化 未認定品販売に刑罰|newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]|date=2014年11月24日|author= |url=http://jp.wsj.com/articles/SB12021915100590764698404580295770978348004|accessdate=2014年12月05日}}</ref>。
'''自撮り棒'''(じどりぼう)とは、[[カメラ]]やカメラを内蔵した[[スマートフォン]]に取付けて、[[自分撮り]]を行うための長さ1 [[メートル|m]]ほどの[[棒]]状の器具である<ref name="wsj">{{Cite news |title=スマホ「自撮り棒」、韓国で規制強化 未認定品販売に刑罰|newspaper=[[ウォール・ストリート・ジャーナル]]|date=2014年11月24日|author= |url=http://jp.wsj.com/articles/SB12021915100590764698404580295770978348004|accessdate=2014年12月05日}}</ref>。


== 概要 ==
== 概要 ==
1980年代初頭に[[日本]]で(削除) [[ (削除ここまで)(削除) 明]] (削除ここまで)され世界で発売されたがあまり普及せず、1990年代半ばには日本の珍発明の1つとして揶揄された。しかし、[[2014年]]のヒット商品の1つとして[[タイム (雑誌)|TIME誌]]が紹介するなど、発明から約30年をかけて世界的に広まった。
(追記) 市販品としての自撮り棒は、 (追記ここまで)1980年代初頭に[[日本]]で(追記) 開 (追記ここまで)発され世界で発売されたがあまり普及せず、1990年代半ばには日本の珍発明の1つとして揶揄された。しかし、[[2014年]]のヒット商品の1つとして[[タイム (雑誌)|TIME誌]]が紹介するなど、発明から約30年をかけて世界的に広まった。


[[ミノルタ|ミノルタカメラ]](現・[[コニカミノルタ]])が、世界で初めて[[1983年]]に発売した時の商品名は「エクステンダー」であった<ref name="Tokusengai198308">特選街(マキノ出版、大人気カメラ特集号、1983年8月)</ref>。現在は「'''自撮り棒'''」「自分撮りスティック」「自撮り[[一脚]]」「手持ち一脚」のほか、[[英語]]で自分撮りをセルフィーと言うことから「'''セルフィースティック'''」({{Lang-en-short|selfie stick}})や「セルフィー棒」、韓製英語(コングリッシュ)で自分撮りをセルフカメラ({{lang-ko-short|셀프카메라}})と言うことからその略のセルカを用いて「'''セルカ棒'''」とも呼ばれている。
[[ミノルタ|ミノルタカメラ]](現・[[コニカミノルタ]])が、世界で初めて[[1983年]]に発売した時の商品名は「エクステンダー」であった<ref name="Tokusengai198308">特選街(マキノ出版、大人気カメラ特集号、1983年8月)</ref>。現在は「'''自撮り棒'''」「自分撮りスティック」「自撮り[[一脚]]」「手持ち一脚」のほか、[[英語]]で自分撮りをセルフィーと言うことから「'''セルフィースティック'''」({{Lang-en-short|selfie stick}})や「セルフィー棒」、韓製英語(コングリッシュ)で自分撮りをセルフカメラ({{lang-ko-short|셀프카메라}})と言うことからその略のセルカを用いて「'''セルカ棒'''」とも呼ばれている。
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「エクステンダー」の発売当初から、人混みの中で頭越しに周囲を撮影したりなど、自分撮り以外の使用法も提案されてきた<ref name="ascii">{{Cite web|title=自撮り用セルフィー棒は日本でも大流行なるか? 検証した結果|publisher=[[週刊アスキー|週アスPlus]]|date=2014年09月07日|url=http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/254/254590/|accessdate=2014年12月05日}}</ref>。使用・所持に関しては、[[凶器]]への転用可能との考えから一部のコンサート会場やスポーツ施設への持ち込みが禁止になったり<ref>[http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/25274/2 英国でスポーツ・アリーナに続きコンサート会場でも "セルフィースティック" (自撮り棒)禁止]([[ビルボード#日本におけるビルボード|billboard JAPAN]] 2015年1月20日)</ref><ref>[http://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20150108/268279.html アーセナルとトッテナム、安全対策のため自撮り棒の持ち込みを禁止に](サッカーキング 2015年1月8日)</ref>、そもそも撮影補助機材の持ち込みを禁止している[[テーマパーク]]があったり<ref>[http://news.mynavi.jp/news/2015/01/19/116/ ディズニーランドではセルカ棒禁止! - その理由を広報部に聞いた]([[マイナビニュース]] 2015年1月19日)</ref>、Bluetooth搭載型では国内での使用に限られていたり([[#法規制|参照]])するため注意が必要である。
「エクステンダー」の発売当初から、人混みの中で頭越しに周囲を撮影したりなど、自分撮り以外の使用法も提案されてきた<ref name="ascii">{{Cite web|title=自撮り用セルフィー棒は日本でも大流行なるか? 検証した結果|publisher=[[週刊アスキー|週アスPlus]]|date=2014年09月07日|url=http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/254/254590/|accessdate=2014年12月05日}}</ref>。使用・所持に関しては、[[凶器]]への転用可能との考えから一部のコンサート会場やスポーツ施設への持ち込みが禁止になったり<ref>[http://www.billboard-japan.com/d_news/detail/25274/2 英国でスポーツ・アリーナに続きコンサート会場でも "セルフィースティック" (自撮り棒)禁止]([[ビルボード#日本におけるビルボード|billboard JAPAN]] 2015年1月20日)</ref><ref>[http://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20150108/268279.html アーセナルとトッテナム、安全対策のため自撮り棒の持ち込みを禁止に](サッカーキング 2015年1月8日)</ref>、そもそも撮影補助機材の持ち込みを禁止している[[テーマパーク]]があったり<ref>[http://news.mynavi.jp/news/2015/01/19/116/ ディズニーランドではセルカ棒禁止! - その理由を広報部に聞いた]([[マイナビニュース]] 2015年1月19日)</ref>、Bluetooth搭載型では国内での使用に限られていたり([[#法規制|参照]])するため注意が必要である。


== (削除) 沿革 (削除ここまで) ==
== (追記) 歴史 (追記ここまで) ==
自撮り棒の歴史は少なくとも[[1925年]]まで遡ることができる。この年、イギリス中部に住む新婚カップルが自家製の自撮り棒を使って撮影した写真が残されている。この頃のカメラは手持ちの距離では自分自身に焦点が合わず、自撮りするには[[リモートレリーズ|レリーズ]]を使うか自撮り棒を使うしかなかったが、件のカップル写真には偶然にも自撮り棒が写り込んでいたためにその証拠写真となった<ref>{{cite journal|url=http://www.bbc.co.uk/news/blogs-trending-30550998|title=Does this 90-year-old photo show the world's first 'selfie stick'?|work=BBC Trending|last= Wendling|first=Mike|date=February 19, 2014|access-date=July 31, 2015}}</ref>。
[[1977年]][[11月30日]]に[[コニカ|小西六写真工業]](現[[コニカミノルタ]])が世界初の[[オートフォーカス]]カメラ'''コニカC35AF'''(ジャスピンコニカ)を発売すると、1980年代には全自動撮影可能で重量300 [[グラム|g]]程度の[[コンパクトカメラ]]が[[先進国]]で普及した。また[[1982年]]に[[コダック]]が発表したディスク状の[[フィルム]]を用いた[[ディスクカメラ]]は、軽量化の1つの方法として数社で取り入れられた。このようなカメラの軽量化と全自動撮影という技術革新の上に、世界で初めて[[日本]]で自撮り棒が[[発明]]された<ref name="MottoKorea20141207">[http://mottokorea.com/mottoKoreaW/Special_list.do?bbsBasketType=R&seq=14892 セルカ棒、最初の開発者は日本人...米国だけで特許登録](もっと!コリア 2014年12月7日)</ref><ref name="Chindogu">101 Unuseless Japanese Inventions: The Art of Chindogu({{仮リンク|川上賢司|en|Kenji Kawakami}}著、{{仮リンク|W. W. Norton & Company|en|W. W. Norton & Company}}、1995年11月1日発行)</ref>。

また、フィクションの世界では[[1969年]]製作・[[1970年]]公開の[[チェコスロバキア]]の[[サイエンス・フィクション|SF]]コメディ映画『[[:cs:Zabil jsem Einsteina, pánové!|Zabil jsem Einsteina, pánové!]]』("みなさん、私はアインシュタインを殺しました!")のワンシーンに自撮り棒と非常によく似た道具が登場する。そこでは男女二人が並んで立ち、女性が持つ[[指し棒]]状の道具の先端に二人が視線を合わせ、女性が手元を操作する。すると棒の先端でフラッシュが光り、即座にプリントされた二人の写真が持ち手の部分から繰り出される。棒の先端自体にカメラ機能があることや、印画紙が内臓されていること以外は今日の自撮りシーンと全く同じである<ref>http://www.theverge.com/2016/3/3/11157362/sci-fi-film-selfie-stick-1970</ref>。


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[[1983年]]7月、この日本の発明者が所属する[[ミノルタ|ミノルタカメラ]](現・[[コニカミノルタ]])から、ディスクカメラ「ミノルタ・ディスク7」(重量200g)のキットとして、[[リモートレリーズ]]付きの自撮り棒が発売された(発売当初からオプションのリモコンにより遠隔での撮影も可能であった)。このカメラ本体中央には、[[自分撮り]]する撮影者を映すための小型の[[凸面鏡]]が備えられた。同機種の販売台数は少なくなかった<ref group="注釈">[[ニッポン放送]]「[[垣花正のあなたとハッピー!]]」において、奈良県の発明者へ電話取材したところ、10万台販売されたとのこと。</ref><ref name="Happy">[http://www.1242.com/program/happy/2015/01/14/ 「森永卓郎が注目! 2015年飛躍する次世代産業とは?」 経済アナリスト・森永卓郎さんが登場!]([[垣花正]]のあなたとハッピー! 2015年1月14日)</ref>とも言われるが、ディスクカメラという分野は販売不振に陥り<ref group="注釈">ニッポン放送「垣花正のあなたとハッピー!」において、奈良県の発明者へ電話取材したところ、ディスクフィルム提供元のコダックが画質の問題などで2年間でディスクフィルムの生産をやめてしまったとのこと。</ref><ref name="Happy"/>、また、当時のコンパクトカメラに自撮り棒を付ける場合は、自分撮りの際に[[重心]]がカメラに寄り過ぎで不安定であったり、自分を映す反射鏡がない機種に取り付けた場合は単なる[[一脚]]にしかならなかったりなどの問題もあり、広く大衆に自撮り棒が普及するには至らなかった。自撮り棒は、[[1993年]]には[[アメリカ合衆国]]での[[特許]]も失効し<ref name="GooglePatents">[http://www.google.com/patents/US4530580 Telescopic extender for supporting compact camera](Google特許検索「United States Patent 4,530,580」)</ref>、[[1995年]]には"役立たず"でもない日本の珍発明品の1つとして同国で紹介された<ref name="Chindogu"/>。
(追記) <!--[[1977年]][[11月30日]]に[[コニカ|小西六写真工業]](現[[コニカミノルタ]])が世界初の[[オートフォーカス]]カメラ'''コニカC35AF'''(ジャスピンコニカ)を発売すると、1980年代には全自動撮影可能で重量300 [[グラム|g]]程度の[[コンパクトカメラ]]が[[先進国]]で普及した。また[[1982年]]に[[コダック]]が発表したディスク状の[[フィルム]]を用いた[[ディスクカメラ]]は、軽量化の1つの方法として数社で取り入れられた。-->1980年代になると、カメラの軽量化と全自動撮影という技術革新が進み、 (追記ここまで)[[1983年]](追記) に市販の製品としては世界で初めての自撮り棒が[[日本]]で[[開発]]・販売された<ref name="MottoKorea20141207">[http://mottokorea.com/mottoKoreaW/Special_list.do?bbsBasketType=R&seq=14892 セルカ棒、最初の開発者は日本人...米国だけで特許登録](もっと!コリア 2014年12月7日)</ref><ref name="Chindogu">101 Unuseless Japanese Inventions: The Art of Chindogu({{仮リンク|川上賢司|en|Kenji Kawakami}}著、{{仮リンク|W. W. Norton & Company|en|W. W. Norton & Company}}、1995年11月1日発行)</ref>。 (追記ここまで)
(追記) この年の (追記ここまで)7月、(追記) <!-- (追記ここまで)この日本の発明者が所属する(追記) --> (追記ここまで)[[ミノルタ|ミノルタカメラ]](現・[[コニカミノルタ]])から、ディスクカメラ「ミノルタ・ディスク7」(重量200g)のキットとして、[[リモートレリーズ]]付きの自撮り棒が発売された(発売当初からオプションのリモコンにより遠隔での撮影も可能であった)。このカメラ本体中央には、[[自分撮り]]する撮影者を映すための小型の[[凸面鏡]]が備えられた。同機種の販売台数は少なくなかった<ref group="注釈">[[ニッポン放送]]「[[垣花正のあなたとハッピー!]]」において、奈良県の発明者へ電話取材したところ、10万台販売されたとのこと。</ref><ref name="Happy">[http://www.1242.com/program/happy/2015/01/14/ 「森永卓郎が注目! 2015年飛躍する次世代産業とは?」 経済アナリスト・森永卓郎さんが登場!]([[垣花正]]のあなたとハッピー! 2015年1月14日)</ref>とも言われるが、ディスクカメラという分野は販売不振に陥り<ref group="注釈">ニッポン放送「垣花正のあなたとハッピー!」において、奈良県の発明者へ電話取材したところ、ディスクフィルム提供元のコダックが画質の問題などで2年間でディスクフィルムの生産をやめてしまったとのこと。</ref><ref name="Happy"/>、また、当時のコンパクトカメラに自撮り棒を付ける場合は、自分撮りの際に[[重心]]がカメラに寄り過ぎで不安定であったり、自分を映す反射鏡がない機種に取り付けた場合は単なる[[一脚]]にしかならなかったりなどの問題もあり、広く大衆に自撮り棒が普及するには至らなかった。自撮り棒は、[[1993年]]には[[アメリカ合衆国]]での[[特許]]も失効し<ref name="GooglePatents">[http://www.google.com/patents/US4530580 Telescopic extender for supporting compact camera](Google特許検索「United States Patent 4,530,580」)</ref>、[[1995年]]には"役立たず"でもない日本の珍発明品の1つとして同国で紹介された<ref name="Chindogu"/>。


日本では、1990年代に高校生を中心に自分撮りが広まった。この時期、超[[広角レンズ]]と反射鏡を持つ[[レンズ付きフィルム]]も発売されたが、[[1995年]]7月には[[プリント倶楽部]](プリクラ)が、[[1999年]]9月には世界初の[[カメラ付き携帯電話]]「[[VP-210]]」([[PHS]][[端末]])が発売され、2000年代はプリクラと[[携帯電話]]が自分撮りの中心となった。一方で、当時の携帯電話のカメラの画質は低く設定されており、被写体を遠ざけて撮影すると不鮮明となった。そのため自撮り棒を使った撮影は普及しなかった。それでも、専用機である[[デジタルカメラ]]において、画質向上、自動撮影技術([[手ぶれ補正機構]])の向上、軽量化、低廉化が進んだため、[[2004年]]から[[2013年]]まで自撮り棒に関する特許出願件数は、日本では15件、アメリカ合衆国では13件あった<ref name="MottoKorea20141207"/>。
日本では、1990年代に高校生を中心に自分撮りが広まった。この時期、超[[広角レンズ]]と反射鏡を持つ[[レンズ付きフィルム]]も発売されたが、[[1995年]]7月には[[プリント倶楽部]](プリクラ)が、[[1999年]]9月には世界初の[[カメラ付き携帯電話]]「[[VP-210]]」([[PHS]][[端末]])が発売され、2000年代はプリクラと[[携帯電話]]が自分撮りの中心となった。一方で、当時の携帯電話のカメラの画質は低く設定されており、被写体を遠ざけて撮影すると不鮮明となった。そのため自撮り棒を使った撮影は普及しなかった。それでも、専用機である[[デジタルカメラ]]において、画質向上、自動撮影技術([[手ぶれ補正機構]])の向上、軽量化、低廉化が進んだため、[[2004年]]から[[2013年]]まで自撮り棒に関する特許出願件数は、日本では15件、アメリカ合衆国では13件あった<ref name="MottoKorea20141207"/>。
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{{See also|[[:en:List of selfie-related injuries and deaths|List of selfie-related injuries and deaths]]}}
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[[File:JR Sign Danger No Selfie Sticks on the Platform.jpg|thumb|200px|ホームでの自撮り棒使用禁止のサイン(JR西日本)]]
自撮りに夢中になって周囲への注意が疎かになるといった危険もある。
自撮りに夢中になって周囲への注意が疎かになるといった危険もある。
たとえば、列車を背景に撮影している時に高圧電線に触れてしまう、人ごみの中使用し他者に怪我をさせてしまう、世界遺産を背景に撮影しようとして自撮り棒が接触し、遺産を破損してしまうといった事例が挙げられる。
たとえば、列車を背景に撮影している時に高圧電線に触れてしまう、人ごみの中使用し他者に怪我をさせてしまう、世界遺産を背景に撮影しようとして自撮り棒が接触し、遺産を破損してしまうといった事例が挙げられる。

2017年3月21日 (火) 10:43時点における版

自撮り棒を使って自撮りをしている様子
スマートフォンを取り付けた自撮り棒(中央)と撮影操作に用いるリモコン(右)。棒状部は伸縮可能。

自撮り棒(じどりぼう)とは、カメラやカメラを内蔵したスマートフォンに取付けて、自分撮りを行うための長さ1 mほどの状の器具である[1]

概要

市販品としての自撮り棒は、1980年代初頭に日本で開発され世界で発売されたがあまり普及せず、1990年代半ばには日本の珍発明の1つとして揶揄された。しかし、2014年のヒット商品の1つとしてTIME誌が紹介するなど、発明から約30年をかけて世界的に広まった。

ミノルタカメラ(現・コニカミノルタ)が、世界で初めて1983年に発売した時の商品名は「エクステンダー」であった[2] 。現在は「自撮り棒」「自分撮りスティック」「自撮り一脚」「手持ち一脚」のほか、英語で自分撮りをセルフィーと言うことから「セルフィースティック」(: selfie stick)や「セルフィー棒」、韓製英語(コングリッシュ)で自分撮りをセルフカメラ(: 셀프카메라)と言うことからその略のセルカを用いて「セルカ棒」とも呼ばれている。

現在流通している自撮り棒は、セルフタイマーを用いることを前提としたものと、グリップ内蔵または本体とは別にあるリモコンで撮影操作を行うものに大別でき、後者では無線のBluetoothまたは有線を使用している[3]

「エクステンダー」の発売当初から、人混みの中で頭越しに周囲を撮影したりなど、自分撮り以外の使用法も提案されてきた[4] 。使用・所持に関しては、凶器への転用可能との考えから一部のコンサート会場やスポーツ施設への持ち込みが禁止になったり[5] [6] 、そもそも撮影補助機材の持ち込みを禁止しているテーマパークがあったり[7] 、Bluetooth搭載型では国内での使用に限られていたり(参照)するため注意が必要である。

歴史

自撮り棒の歴史は少なくとも1925年まで遡ることができる。この年、イギリス中部に住む新婚カップルが自家製の自撮り棒を使って撮影した写真が残されている。この頃のカメラは手持ちの距離では自分自身に焦点が合わず、自撮りするにはレリーズを使うか自撮り棒を使うしかなかったが、件のカップル写真には偶然にも自撮り棒が写り込んでいたためにその証拠写真となった[8]

また、フィクションの世界では1969年製作・1970年公開のチェコスロバキアSFコメディ映画『Zabil jsem Einsteina, pánové!』("みなさん、私はアインシュタインを殺しました!")のワンシーンに自撮り棒と非常によく似た道具が登場する。そこでは男女二人が並んで立ち、女性が持つ指し棒状の道具の先端に二人が視線を合わせ、女性が手元を操作する。すると棒の先端でフラッシュが光り、即座にプリントされた二人の写真が持ち手の部分から繰り出される。棒の先端自体にカメラ機能があることや、印画紙が内臓されていること以外は今日の自撮りシーンと全く同じである[9]

画像外部リンク
ミノルタDisc-7および自撮り棒のキット(1983年7月発売)
本体とキット
自撮り棒を装着した状態
延ばした状態の自撮り棒

1980年代になると、カメラの軽量化と全自動撮影という技術革新が進み、1983年に市販の製品としては世界で初めての自撮り棒が日本開発・販売された[10] [11] 。 この年の7月、ミノルタカメラ(現・コニカミノルタ)から、ディスクカメラ「ミノルタ・ディスク7」(重量200g)のキットとして、リモートレリーズ付きの自撮り棒が発売された(発売当初からオプションのリモコンにより遠隔での撮影も可能であった)。このカメラ本体中央には、自分撮りする撮影者を映すための小型の凸面鏡が備えられた。同機種の販売台数は少なくなかった[注釈 1] [12] とも言われるが、ディスクカメラという分野は販売不振に陥り[注釈 2] [12] 、また、当時のコンパクトカメラに自撮り棒を付ける場合は、自分撮りの際に重心がカメラに寄り過ぎで不安定であったり、自分を映す反射鏡がない機種に取り付けた場合は単なる一脚にしかならなかったりなどの問題もあり、広く大衆に自撮り棒が普及するには至らなかった。自撮り棒は、1993年にはアメリカ合衆国での特許も失効し[13] 1995年には"役立たず"でもない日本の珍発明品の1つとして同国で紹介された[11]

日本では、1990年代に高校生を中心に自分撮りが広まった。この時期、超広角レンズと反射鏡を持つレンズ付きフィルムも発売されたが、1995年7月にはプリント倶楽部(プリクラ)が、1999年9月には世界初のカメラ付き携帯電話VP-210」(PHS 端末)が発売され、2000年代はプリクラと携帯電話が自分撮りの中心となった。一方で、当時の携帯電話のカメラの画質は低く設定されており、被写体を遠ざけて撮影すると不鮮明となった。そのため自撮り棒を使った撮影は普及しなかった。それでも、専用機であるデジタルカメラにおいて、画質向上、自動撮影技術(手ぶれ補正機構)の向上、軽量化、低廉化が進んだため、2004年から2013年まで自撮り棒に関する特許出願件数は、日本では15件、アメリカ合衆国では13件あった[10]

スマートフォンOS別販売台数推移

2010年代に入って高画質・高機能・軽量のカメラ付きスマートフォン(重量:100グラム前後)が普及し始めると、同分野のグローバル市場で大きなシェアをとったサムスン電子が本社を置く大韓民国においても、2011年より自撮り棒(セルカ棒)の関連特許の出願が始まった[10]

2012年、「自分撮り (Selfie)」にあたる日本語インターネット検索数はアメリカ合衆国の50倍にも上った[14] 台湾語中国語韓国語における「自分撮り (Selfie)」にあたる用語も同様に高まりを見せた[14] 2013年 11月18日オックスフォード辞典Word of the year(今年の単語)として "selfie"(セルフィ、自分撮り)を選んだ[15]

2013年末、インドネシアジャカルタで近年の自撮り棒の流行が始まった[16] 。このブームは、マレーシアフィリピン・日本・韓国などのアジア各国や欧米にまで広がっていった[16] 2014年11月、タイム誌(アメリカ合衆国)が "The 25 Best Inventions of 2014"[注釈 3] のひとつに自撮り棒を選定した。

年表

法規制

電波法

技適マークの表示例

日本では、技適マークが付いていないBluetooth搭載機器の輸入、売買、所持に対する罰則はない[26] 。しかし、技適マークが付いていない、または、もともと付いていた同シールが剥がれてしまったBluetooth搭載機器を使用すると罰せられる可能性がある[注釈 4] [26] 。さらに、技適マークが付いていても、国外での使用の際には罰せられる可能性がある。自撮り棒もBluetooth搭載タイプであれば、同様の扱いを受けるため注意が必要。

韓国では、Bluetooth搭載タイプの自撮り棒は電磁波適合認証を受ける必要がある。しかし、認証を受けずに販売している商品が見られるため、取り締まることを明らかにした。対象は製造・販売業者で、最高で3年以下の懲役または3000万ウォン以下の罰金に処される[3]

その他

[icon]
この節の加筆が望まれています。
ホームでの自撮り棒使用禁止のサイン(JR西日本)

自撮りに夢中になって周囲への注意が疎かになるといった危険もある。 たとえば、列車を背景に撮影している時に高圧電線に触れてしまう、人ごみの中使用し他者に怪我をさせてしまう、世界遺産を背景に撮影しようとして自撮り棒が接触し、遺産を破損してしまうといった事例が挙げられる。 このようなことから、一部の施設やイベントなどでは自撮り棒の使用を禁止している所がある。日本国内では、西日本旅客鉄道(JR西日本)では北陸新幹線ホームで自撮り棒の使用を禁止していたが、2015年9月19日以降在来線・新幹線問わずホームでの自撮り棒の使用を全面禁止とした[27] 。この他、東日本旅客鉄道(JR東日本)・北海道旅客鉄道(JR北海道)でもホームで自撮り棒を使用しないように呼びかけている。日本国内のイベントなどでは「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」や「サマーソニック」などの音楽祭(ロック・フェスティバル)での持参禁止が挙げられる[28] 。海外では、アメリカニューヨーク近代美術館メトロポリタン美術館フランスヴェルサイユ宮殿イギリスナショナルギャラリーなどで使用を禁止している施設がある[29]

脚注

注釈

  1. ^ ニッポン放送垣花正のあなたとハッピー!」において、奈良県の発明者へ電話取材したところ、10万台販売されたとのこと。
  2. ^ ニッポン放送「垣花正のあなたとハッピー!」において、奈良県の発明者へ電話取材したところ、ディスクフィルム提供元のコダックが画質の問題などで2年間でディスクフィルムの生産をやめてしまったとのこと。
  3. ^ a b 日本語訳は「2014年の発明品ベスト25」となるが、同年に流行したり生活を良くしたりした新製品や改良品を紹介しているランキングである。
  4. ^ 電波法第110条1号の違反:1年以下の懲役または100万円以下の罰金。

出典

  1. ^ "スマホ「自撮り棒」、韓国で規制強化 未認定品販売に刑罰". ウォール・ストリート・ジャーナル . (2014年11月24日). http://jp.wsj.com/articles/SB12021915100590764698404580295770978348004 2014年12月5日閲覧。 
  2. ^ a b c d e f g h 特選街(マキノ出版、大人気カメラ特集号、1983年8月)
  3. ^ a b "セルカ棒規制...韓国政府「周辺機器に影響」、企業「被害事例ない」". 中央日報日本語版. (2014年11月30日). http://japanese.joins.com/article/347/193347.html 2014年12月5日閲覧。 
  4. ^ "自撮り用セルフィー棒は日本でも大流行なるか? 検証した結果". 週アスPlus (2014年9月7日). 2014年12月5日閲覧。
  5. ^ 英国でスポーツ・アリーナに続きコンサート会場でも "セルフィースティック" (自撮り棒)禁止(billboard JAPAN 2015年1月20日)
  6. ^ アーセナルとトッテナム、安全対策のため自撮り棒の持ち込みを禁止に(サッカーキング 2015年1月8日)
  7. ^ ディズニーランドではセルカ棒禁止! - その理由を広報部に聞いた(マイナビニュース 2015年1月19日)
  8. ^ Wendling, Mike (February 19, 2014). "Does this 90-year-old photo show the world's first 'selfie stick'?". BBC Trending. http://www.bbc.co.uk/news/blogs-trending-30550998 July 31, 2015閲覧。. 
  9. ^ http://www.theverge.com/2016/3/3/11157362/sci-fi-film-selfie-stick-1970
  10. ^ a b c セルカ棒、最初の開発者は日本人...米国だけで特許登録(もっと!コリア 2014年12月7日)
  11. ^ a b c 101 Unuseless Japanese Inventions: The Art of Chindogu(川上賢司 (英語版)著、W. W. Norton & Company (英語版)、1995年11月1日発行)
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  21. ^ Telescopic extender for supporting compact camera (United States Patent 4,530,580、July 23, 1985)
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  27. ^ ホームでの「自撮り棒」の使用を禁止させていただきます - 西日本旅客鉄道
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関連項目

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