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「感動ポルノ」の版間の差分

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'''感動ポルノ'''(かんどうポルノ、{{lang-en|Inspiration porn}}) とは、主に[[身体障害者]]が[[健常者]]に[[同情]]・感動をもたらすコンテンツとして消費されることを批判的に表した言葉<ref name=":4">{{Cite web|和書|title=<07>「感動ポルノの題材にされるのは、いい気はしない」 今求められる"安易な共感"の無効化 (×ばつロバート・キャンベル) |url=https://www.asahi.com/and/article/20190607/2916532/ |website=朝日新聞デジタルマガジン&[and] |access-date=2022年10月26日 |language=ja}}</ref><ref name="president-2022年08月27日">{{Cite web|和書|title=ビジネス的にやめる選択肢はない...偽善と批判される「24時間テレビ」を日テレがやめられないワケ なぜ出演者のギャラと募金の問題を説明しないのか |url=https://president.jp/articles/-/60939 |website=PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) |date=2022年08月27日 |access-date=2022年10月26日 |language=ja}}</ref><ref name=":0" /><ref name=":3" /><ref name=":5" /><ref name="nhk" /><ref name=":7">{{Cite web|和書|title=【イベントレポート】幡野広志「"感動ポルノ"にはしたくなかった」。『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』刊行記念 |url=https://store.tsite.jp/umeda/blog/humanities/8648-1756480731.html |website=梅田 蔦屋書店 |access-date=2022年10月26日}}</ref><ref name=":8">{{Cite web|和書|title=感動ポルノは御免だ。3年の余命宣告を受けた写真家が語る「自分で決める」の大切さ |url=https://ddnavi.com/interview/549816/ |website=ダ・ヴィンチWeb |access-date=2022年10月26日 |language=ja}}</ref><ref name=":10">{{Cite web|和書|title=川口春奈主演の『silent』が"感動ポルノ"ではと物議 「泣かせるネタになってる」とも|ニフティニュース |url=https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12156-1918271/ |archiveurl=https://web.archive.org/web/20221016044532/https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12156-1918271/ |website=ニフティニュース |access-date=2022年10月26日 |archivedate=2022年10月16日 |language=ja}}</ref>。特に、「まじめで頑張り屋」など特定の[[ステレオタイプ]]なイメージを押し付けられた障害者や、余命宣告者などの同情を誘いやすい立場の人を用いて視聴者を感動させようとする「お涙頂戴」のコンテンツがこのように呼ばれる<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=乙武洋匡「感動ポルノ」との決別 |url=https://bunshun.jp/articles/-/1540 |website=文春オンライン |access-date=2022年10月26日 |first=乙武 |last=洋匡}}</ref><ref name=":7" /><ref name=":8" /><ref name=":9">{{Cite web|和書|title=「感動ポルノ」超える? 知的障害者が演じる映画公開へ:朝日新聞デジタル |url=https://www.asahi.com/articles/ASMDS4CHKMDSUEHF00F.html|website=朝日新聞デジタル |date=2019年12月26日 |access-date=2022年10月26日 |language=ja |quote=だが、彼らの実際の言動が脚本やセリフに盛り込まれ、いわゆる「感動ポルノ」ではない明るくユーモラスな作品に仕上がっている。}}</ref><ref name=":10" />。
'''感動ポルノ'''(かんどうポルノ、{{lang-en|Inspiration porn}}) とは、障害者が障害を持っているというだけで、あるいは持っていることを含みにして、健常者が「感動をもらった、励まされた<!-- inspire -->」と感じる場面を表わす新語。[[2012年]]に[[障害者]]の[[人権擁護者|人権アクティヴィスト]]である[[ステラ・ヤング]]が、[[オーストラリア放送協会]]のウェブマガジン『{{en|Ramp Up}}』で初めて用いた言葉である<ref>{{cite web|url=http://www.abc.net.au/news/2012-07-03/young-inspiration-porn/4107006|title=We're not here for your inspiration - The Drum (Australian Broadcasting Corporation)|accessdate=2016年03月29日|date=2012年07月03日|publisher=Abc.net.au|last=Young|first=Stella|archivedate=2016年07月07日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160707104422/http://www.abc.net.au/news/2012-07-03/young-inspiration-porn/4107006}}</ref>。


== (削除) 概要 (削除ここまで) ==
== (追記) 定義・背景 (追記ここまで) ==
(削除) ステラ (削除ここまで)(削除) よれば、この言葉は (削除ここまで)、障害者(削除) が (削除ここまで)障害(削除) を持っているというだけ (削除ここまで)(削除) 、 (削除ここまで)ある(削除) いは持っていることを含みにして (削除ここまで)(削除) 「感動をもらった、励まされた<!-- (削除ここまで) (削除) inspire -->」と (削除ここまで)(削除) われる場面を表してい (削除ここまで)る<ref>{{cite web|url=http://www.(削除) ted (削除ここまで).(削除) com (削除ここまで)/(削除) talks (削除ここまで)/(削除) stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much?language=en (削除ここまで)|title=(削除) Stella (削除ここまで) (削除) Young: (削除ここまで) (削除) I’m (削除ここまで) (削除) not (削除ここまで) your inspiration(削除) , (削除ここまで) (削除) thank (削除ここまで) (削除) you (削除ここまで) (削除) very (削除ここまで) (削除) much (削除ここまで) (削除) &#124; (削除ここまで) (削除) TED Talk (削除ここまで)|accessdate=(削除) 2015 (削除ここまで)-(削除) 08 (削除ここまで)-(削除) 19 (削除ここまで)|date=|publisher=(削除) TED (削除ここまで).(削除) com|first=Stella (削除ここまで)|last=Young|archivedate=(削除) 2015 (削除ここまで)-(削除) 08 (削除ここまで)-(削除) 20 (削除ここまで)|archiveurl=https://web.archive.org/web/(削除) 20160820034625 (削除ここまで)/(削除) https (削除ここまで)://www.(削除) ted (削除ここまで).(削除) com (削除ここまで)/(削除) talks (削除ここまで)/(削除) stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much (削除ここまで)}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.salon.com/2015/02/02/inspiration_porn_is_not_okay_disability_activists_are_not_impressed_with_feel_good_super_bowl_ads/|title="Inspiration porn is not okay": Disability activists are not impressed with feel-good Super Bowl ads|accessdate=19 August 2015|author=Heideman, Elizabeth|date=2 February 2015|website=Salon.com|archivedate=2016年04月22日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160422002127/http://www.salon.com/2015/02/02/inspiration_porn_is_not_okay_disability_activists_are_not_impressed_with_feel_good_super_bowl_ads/}}</ref>。(削除) そこでは (削除ここまで)(削除) 障害を負った経緯やその負担、障害者本人の思いで (削除ここまで)(削除) なく、ポジティブな性格や努力する(=障害があってもそれ (削除ここまで)(削除) 耐え (削除ここまで)(削除) ・負けずに頑張る)姿がクローズアップ (削除ここまで)(削除) れがち (削除ここまで)であ(削除) る。「清 (削除ここまで)(削除) 正しい障害者 (削除ここまで)(削除) が懸命に何かを達成 (削除ここまで)(削除) ようとする場面 (削除ここまで)(削除) メディア (削除ここまで)(削除) 取り上げることがこの (削除ここまで)「感動ポルノ」(削除) とされることがある (削除ここまで)<ref>{{(削除) Cite (削除ここまで) web(削除) |date=2016年08月28日 (削除ここまで) |url=http://(削除) mainichi (削除ここまで).(削除) jp (削除ここまで)/(削除) articles (削除ここまで)/(削除) 20160829/k00/00m/040/091000c (削除ここまで) |title=(削除) 「障害者を感動話に」方程式批判 (削除ここまで) (削除) |publisher=毎日新聞 (削除ここまで) |accessdate=(削除) 2016 (削除ここまで)-08-(削除) 29}}</ref>。また紹介されるのは常に[[身体障害者]]であり、[[精神障害者]]・[[発達障害者]]が登場することがほとんどないとする指摘もある<ref>{{Cite (削除ここまで) (削除) web (削除ここまで)|(削除) author (削除ここまで)=(削除) イシゲスズコ (削除ここまで)|(削除) title (削除ここまで)=(削除) 「障害者の感動ポルノ」を巡る議論で、私たちが見落としていること (削除ここまで)|(削除) publisher (削除ここまで)=(削除) LITALICO発達ナビ (削除ここまで)|(削除) date (削除ここまで)=(削除) 2016 (削除ここまで)-(削除) 09 (削除ここまで)-(削除) 03 (削除ここまで)|(削除) url (削除ここまで)=https://(削除) h-navi (削除ここまで).(削除) jp (削除ここまで)/(削除) column (削除ここまで)/(削除) article (削除ここまで)/(削除) 35025715|accessdate=2016年11月24日 (削除ここまで)}}</ref>。
(追記) [[2012年]] (追記ここまで)に、(追記) [[ (追記ここまで)障害者(追記) ]][[人権活動家]]で自身も[[骨形成不全症]]による身体 (追記ここまで)障害(追記) 当事者 (追記ここまで)(追記) も (追記ここまで)ある(追記) [[ステラ・ヤング]]が (追記ここまで)(追記) [[オーストラリア放送協会]](ABC)のウェブマガジン『{{en|Ramp (追記ここまで) (追記) Up}}』の記事で用いた (追記ここまで)(追記) 葉であ (追記ここまで)る<ref>{{cite web|url=http://www.(追記) abc (追記ここまで).(追記) net.au (追記ここまで)/(追記) news (追記ここまで)/(追記) 2012年07月03日/young-inspiration-porn/4107006 (追記ここまで)|title=(追記) We're (追記ここまで) (追記) not (追記ここまで) (追記) here (追記ここまで) (追記) for (追記ここまで) your inspiration (追記) - (追記ここまで) (追記) The (追記ここまで) (追記) Drum (追記ここまで) (追記) (Australian (追記ここまで) (追記) Broadcasting (追記ここまで) (追記) Corporation) (追記ここまで)|accessdate=(追記) 2016 (追記ここまで)-(追記) 03 (追記ここまで)-(追記) 29 (追記ここまで)|date=(追記) 2012年07月03日 (追記ここまで)|publisher=(追記) Abc (追記ここまで).(追記) net.au (追記ここまで)|last=Young(追記) |first=Stella (追記ここまで)|archivedate=(追記) 2016 (追記ここまで)-(追記) 07 (追記ここまで)-(追記) 07 (追記ここまで)|archiveurl=https://web.archive.org/web/(追記) 20160707104422 (追記ここまで)/(追記) http (追記ここまで)://www.(追記) abc (追記ここまで).(追記) net.au (追記ここまで)/(追記) news (追記ここまで)/(追記) 2012年07月03日/young-inspiration-porn/4107006 (追記ここまで)}}</ref><ref(追記) name=":2" (追記ここまで)>{{cite web|url=http://www.salon.com/2015/02/02/inspiration_porn_is_not_okay_disability_activists_are_not_impressed_with_feel_good_super_bowl_ads/|title="Inspiration porn is not okay": Disability activists are not impressed with feel-good Super Bowl ads|accessdate=19 August 2015|author=Heideman, Elizabeth|date=2 February 2015|website=Salon.com|archivedate=2016年04月22日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160422002127/http://www.salon.com/2015/02/02/inspiration_porn_is_not_okay_disability_activists_are_not_impressed_with_feel_good_super_bowl_ads/}}</ref>。(追記) 後に (追記ここまで)(追記) ヤング (追記ここまで)(追記) [[TED (カンファレンス)|TED]] (追記ここまで)にて(追記) 「私は皆 (追記ここまで)(追記) んの感動の対象 (追記ここまで)(追記) は (追記ここまで)(追記) りません、どうぞよろし (追記ここまで)(追記) (I'm not your inspiration, thank you very much) (追記ここまで)(追記) と題 (追記ここまで)(追記) たスピーチ (追記ここまで)(追記) 行い、そこ (追記ここまで)(追記) も (追記ここまで)「感動ポルノ」(追記) の語を使用した (追記ここまで)<ref(追記) name=":1" (追記ここまで)>{{(追記) cite (追記ここまで) web |url=http://(追記) www (追記ここまで).(追記) ted.com (追記ここまで)/(追記) talks (追記ここまで)/(追記) stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much?language=en (追記ここまで) |title=(追記) Stella (追記ここまで) (追記) Young: I’m not your inspiration, thank you very much &#124; TED Talk (追記ここまで) |accessdate=(追記) 2015 (追記ここまで)-08-(追記) 19 (追記ここまで) |(追記) date (追記ここまで)=(追記) (追記ここまで)|(追記) publisher (追記ここまで)=(追記) TED.com (追記ここまで)|(追記) first (追記ここまで)=(追記) Stella (追記ここまで)|(追記) last (追記ここまで)=(追記) Young |archivedate=2015 (追記ここまで)-(追記) 08 (追記ここまで)-(追記) 20 (追記ここまで)|(追記) archiveurl (追記ここまで)=https://(追記) web (追記ここまで).(追記) archive.org (追記ここまで)/(追記) web (追記ここまで)/(追記) 20160820034625 (追記ここまで)/(追記) https://www.ted.com/talks/stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much (追記ここまで)}}</ref(追記) ><ref name=":3" / (追記ここまで)>。


ヤングは、この言葉を「障害者が障害を持っているというだけで、障害を持つ人々を用いた感情を扇情的にさせるビデオ・記事」を指すものとして使った。gastroporn([[フードポルノ]]。視聴者に食欲を誘発するコンテンツ<ref>{{Cite web|和書|title=英辞郎 on the WEB |url=https://eow.alc.co.jp/sp/search.html?q=gastroporn&pg=1 |website=eow.alc.co.jp |access-date=2022年10月27日}}</ref><ref>{{Cite web |title=飯テロって英語でなんて言うの? |url=https://eikaiwa.dmm.com/uknow/questions/4815/ |website=DMM英会話なんてuKnow? |access-date=2022年10月27日 |language=ja}}</ref>)のように、英語の「ポルノ(porn)」には、視聴者にある感情などを誘引させることを意図されて作られたコンテンツという意味もある<ref>[https://dictionary.cambridge.org/ja/dictionary/english/porn]</ref>。日本語圏では、ヤングが『ポルノ([[ポルノグラフィ]])』という表現を用いた理由を「このようなコンテンツが観る側の[[自慰行為]]であることを表すため」と論じられることもある<ref name="nhk"/><ref name=":6" /><ref name="synodos-2016">{{Cite web|和書|title=「感動」するわたしたち──『24時間テレビ』と「感動ポルノ」批判をめぐって/前田拓也 |url=https://synodos.jp/opinion/info/17888/ |website=SYNODOS |date=2016年09月14日 |access-date=2022年10月26日 |language=ja}}</ref>。
日本においては2016年8月28日に[[NHK教育テレビジョン|NHK ×ばつ感動』の方程式」で一例として[[日本テレビ放送網|日本テレビ]]の『[[24時間テレビ 「愛は地球を救う」]]』を取り上げた<ref>{{Cite news |title= 全盲記者・岩下恭士のユニバーサロン「感動ポルノ」は要らない /東京 |newspaper=[[毎日新聞]]地方版 |date=2016年09月17日 |author=岩下恭士 |url=http://mainichi.jp/articles/20160917/ddl/k13/070/006000c|accessdate=2016年09月17日}}</ref><ref>{{Cite web |author=[[今一生]] |date= |url=http://ironna.jp/article/3909 |title=24時間テレビを感動ポルノと批判した「バリバラ」の快挙 |publisher=iRONNA |accessdate=2016年09月17日}}</ref><ref>[http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/28/24hours_n_11756598.html 24時間テレビを障害者の「感動ポルノ」と指摘、NHKがパロディ裏番組生放送で真っ向勝負] [[ハフィントンポスト]]2016年8月29日</ref>。

感動ポルノにおいては、障害を負った経緯や障害による負担・障害者本人の思いではなく、積極的・前向きに努力する(=障害があってもそれに耐えて・負けずに、乗り越えようと頑張る)姿がクローズアップされがちである。「清く正しい障害者」が懸命に何かを達成しようとする場面をメディアで取り上げることが「感動ポルノ」とされる<ref name=":5">{{Cite web|和書|date=2016年08月28日 |url=http://mainichi.jp/articles/20160829/k00/00m/040/091000c |title=「障害者を感動話に」方程式批判 |publisher=毎日新聞 |accessdate=2016年08月28日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160829025553/http://mainichi.jp/articles/20160829/k00/00m/040/091000c|archivedate=2016年08月29日}}</ref>。また、紹介されるのは「テレビ受け」する[[身体障害者]]に限られるのが常であり、一見しただけでは健常者と判別困難である[[精神障害者]]・[[発達障害者]]が登場することはほとんどないとされる<ref name=":3">{{Cite web|和書|author=イシゲスズコ|title=「障害者の感動ポルノ」を巡る議論で、私たちが見落としていること|publisher=LITALICO|date=2016年09月03日|url=https://h-navi.jp/column/article/35025715|accessdate=2016年11月24日|archivedate=2016年11月24日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20161124035354/https://h-navi.jp/column/article/35025715}}</ref>。このような番組制作の姿勢について、[[百田尚樹]]は著書『大放言』の「チャリティー番組は誰のため?」において、「テレビ的に『絵になる』」障害者を取捨選択している<ref>[https://www.dailyshincho.jp/article/2018/08300620/?all=1 「吐き気がしそう」 百田尚樹氏が「24時間テレビ」を批判する理由]</ref>」、[[デーブ・スペクター]]は「障害を持つ方へのサポートを目的にしているはずなのに、実際は広告代理店と企業の利益とイメージアップのために続けられている<ref>[https://www.sanspo.com/article/20190826-Z34NH3FMG5NE5JGRG3DECTSL64/ デーブ・スペクター「24時間テレビは絶対見ない」「本当のボランティアとは何か」]</ref>」とそれぞれ批判している。

[[英国放送協会]](BBC)は[[1996年]]の時点で、障害者の「困難に耐えて頑張る」姿ばかりが描写されがちなことに対する抗議運動を受けて「障害者を"勇敢なヒーロー"や"哀れむべき犠牲者"として描くことは侮辱につながる」というガイドラインを制定している<ref name="nhk"/>。

== 日本における実例と評価 ==
日本では、[[NHK教育テレビジョン|NHK ×ばつ感動』の方程式<ref name="nhk">{{Cite web|和書|url=http://www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.html?i=239 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170104105402/http://www6.nhk.or.jp/baribara/lineup/single.html?i=239 |title=NHK バリバラ | 【生放送】 ×ばつ感動」の方程式 |publisher=NHK |accessdate=2023年08月29日 |archivedate=2017年01月04日 }}</ref>」と題した企画で感動ポルノを取り上げた。この企画は、[[裏番組]]の『[[24時間テレビ 「愛は地球を救う」|24時間テレビ]]』([[日本テレビ系列]])を明らかに意識した[[モキュメンタリー]]を放映した後、「感動ポルノ」の概念を紹介して「頑張る障害者像」に疑問を投げかける内容だった<ref name="synodos-2016"/><ref name=":6">{{Cite news |title= 全盲記者・岩下恭士のユニバーサロン「感動ポルノ」は要らない /東京 |newspaper=[[毎日新聞]]地方版 |date=2016年09月17日 |author=岩下恭士 |url=http://mainichi.jp/articles/20160917/ddl/k13/070/006000c|accessdate=2016年09月17日 |deadlinkdate=2023年08月28日}}{{リンク切れ|date=2023年8月}}</ref><ref>{{Cite web|和書|author=[[今一生]] |date= |url=http://ironna.jp/article/3909 |title=24時間テレビを感動ポルノと批判した「バリバラ」の快挙 |publisher=iRONNA |accessdate=2016年09月17日|archivedate=2016年09月18日|archiveurl=https://web.archive.org/web/20160918010619/http://ironna.jp/article/3909}}</ref>。この放送は大きな反響を呼び、これがきっかけとなって日本でも「感動ポルノ」について盛んに論じられるようになったともされる<ref name="president-2022年08月27日"/><ref name="synodos-2016"/>。

この放送を受けて、[[乙武洋匡]]は『24時間テレビ』が公共放送ではっきり否定されたことを高く評価し、自身も感動ポルノで作られた「マジメで頑張り屋のオトちゃん」という世間的イメージに苦しめられてきたこと、感動ポルノを「むしろ見下されている」と不快に感じてきたことを述べた<ref name=":0" />。また乙武は、かつて『24時間テレビ』でメインパーソナリティーのオファーを受けた際、「『かわいそうな人たちが、こんなに頑張っている』と障害者を扱ってしまうことに違和感を覚えた」「障害者に対する扱いがあまりに一面的だとは思う」という理由で断ったことを明かしている<ref>[https://www.rbbtoday.com/article/2012/08/28/93616.html 乙武洋匡さんがツイッターで暴露「24時間テレビのメインパーソナリティを断った」]</ref><ref>{{YouTube time|olWrjiNkvSw|【乙武が解説】24時間テレビの問題点とは!?}}</ref>。

全盲の記者である岩下恭士は、2016年の毎日新聞の記事で「感動ポルノは不要である」と非難している<ref name=":6" />。社会心理学者・スクールカウンセラーの[[碓井真史]]は、感動自体が悪いわけではないが、感動ポルノは無意識に対象を一段低く見る差別を生んでしまうことが問題だと評した<ref>{{Cite web|和書|title=「感動ポルノ」はダメなの?:24時間テレビとバリバラの間で:無意識の差別と障害者の教材化|url=https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/17d5fdcf8603bcfd41824ff65e27abbee5bfd476|website=Yahoo!ニュース 個人|author=[[碓井真史]]|accessdate=2021年03月13日|language=ja|date=2016年9月5日}}</ref>。福祉社会学者の前田拓也は、「感動ポルノは確かに批判されるべきだが、安易な批判はかえって障害者への露悪を助長するリスクがある(大意)」と論じている<ref name="synodos-2016"/>。

『バリバラ』以降のマスメディアでの利用例として、2019年に朝日新聞が『[[だれもが愛しいチャンピオン]]』を「いわゆる感動ポルノではない明るくユーモラスな作品に仕上がっている」と報じている<ref name=":9" />。また、2021年放送の弱視の女性が主人公でラブコメとしても楽しめる一方、視覚障害者の視点や心情、その周囲や親族の心情も描かれている漫画『[[ヤンキー君と白杖ガール|恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜]]<ref>{{Cite web|和書|title=元木先生のつぶやき : [視覚障害]『ヤンガル』を教科書にして良かった |url=http://blog.tsurumi-u.ac.jp/.s/motoki/2020/10/post-ad8a.html |website=blog.tsurumi-u.ac.jp |access-date=2022年10月26日 |publisher= [[鶴見大学]]}}</ref>』のドラマ版は、障害を誇張した感動ポルノにしない作風で大ヒットした<ref name=":10" />。


== 脚注 ==
== 脚注 ==
14行目: 27行目:


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[ステラ・ヤング]]
*[[24時間テレビ 「愛は地球を救う」]]
* [[乙武洋匡]]
* [[ポルノグラフィ|ポルノグラフィ(ポルノ)]]
* [[障害者スポーツ]]
* [[貧困ポルノ]] - 感動ポルノが障害者を利用するのに対し、貧困を利用して同情や資金を集めるコンテンツ。
* [[フードポルノ]] - 食欲を誘発・刺激するコンテンツ。


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
* {{official website|(削除) http (削除ここまで)://web.archive.org/web/20141218111905/http://stellayoung.com/|stellayoung.com}} (Archived){{en icon}}
* {{official website|(追記) https (追記ここまで)://web.archive.org/web/20141218111905/http://stellayoung.com/|stellayoung.com}} (Archived){{en icon}}
* [https://www.ted.com/talks/stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much/transcript?language=ja ステラ・ヤング 私は皆さんの感動の対象ではありません。どうぞよろしく]{{ja icon}}
* [https://www.ted.com/talks/stella_young_i_m_not_your_inspiration_thank_you_very_much/transcript?language=ja ステラ・ヤング 私は皆さんの感動の対象ではありません。どうぞよろしく]{{ja icon}}
* 「感動」するわたしたち──『24時間テレビ』と「感動ポルノ」批判をめぐって(神戸学院大学現代社会学部教員 前田拓也)[http://synodos.jp/info/17888 1/2][http://synodos.jp/info/17888/2 2/2] - SYNODOS


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2024年9月2日 (月) 12:23時点における最新版

感動ポルノ(かんどうポルノ、英語: Inspiration porn) とは、主に身体障害者健常者同情・感動をもたらすコンテンツとして消費されることを批判的に表した言葉[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] 。特に、「まじめで頑張り屋」など特定のステレオタイプなイメージを押し付けられた障害者や、余命宣告者などの同情を誘いやすい立場の人を用いて視聴者を感動させようとする「お涙頂戴」のコンテンツがこのように呼ばれる[3] [7] [8] [10] [9]

定義・背景

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2012年に、障害者 人権活動家で自身も骨形成不全症による身体障害当事者でもあるステラ・ヤングが、オーストラリア放送協会(ABC)のウェブマガジン『Ramp Up』の記事で用いた言葉である[11] [12] 。後に、ヤングはTEDにて「私は皆さんの感動の対象ではありません、どうぞよろしく(I'm not your inspiration, thank you very much)」と題したスピーチを行い、そこでも「感動ポルノ」の語を使用した[13] [4]

ヤングは、この言葉を「障害者が障害を持っているというだけで、障害を持つ人々を用いた感情を扇情的にさせるビデオ・記事」を指すものとして使った。gastroporn(フードポルノ。視聴者に食欲を誘発するコンテンツ[14] [15] )のように、英語の「ポルノ(porn)」には、視聴者にある感情などを誘引させることを意図されて作られたコンテンツという意味もある[16] 。日本語圏では、ヤングが『ポルノ(ポルノグラフィ)』という表現を用いた理由を「このようなコンテンツが観る側の自慰行為であることを表すため」と論じられることもある[6] [17] [18]

感動ポルノにおいては、障害を負った経緯や障害による負担・障害者本人の思いではなく、積極的・前向きに努力する(=障害があってもそれに耐えて・負けずに、乗り越えようと頑張る)姿がクローズアップされがちである。「清く正しい障害者」が懸命に何かを達成しようとする場面をメディアで取り上げることが「感動ポルノ」とされる[5] 。また、紹介されるのは「テレビ受け」する身体障害者に限られるのが常であり、一見しただけでは健常者と判別困難である精神障害者発達障害者が登場することはほとんどないとされる[4] 。このような番組制作の姿勢について、百田尚樹は著書『大放言』の「チャリティー番組は誰のため?」において、「テレビ的に『絵になる』」障害者を取捨選択している[19] 」、デーブ・スペクターは「障害を持つ方へのサポートを目的にしているはずなのに、実際は広告代理店と企業の利益とイメージアップのために続けられている[20] 」とそれぞれ批判している。

英国放送協会(BBC)は1996年の時点で、障害者の「困難に耐えて頑張る」姿ばかりが描写されがちなことに対する抗議運動を受けて「障害者を"勇敢なヒーロー"や"哀れむべき犠牲者"として描くことは侮辱につながる」というガイドラインを制定している[6]

日本における実例と評価

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日本では、NHK Eテレの情報番組『バリバラ〜障害者情報バラエティー〜 ×ばつ感動』の方程式[6] 」と題した企画で感動ポルノを取り上げた。この企画は、裏番組の『24時間テレビ』(日本テレビ系列)を明らかに意識したモキュメンタリーを放映した後、「感動ポルノ」の概念を紹介して「頑張る障害者像」に疑問を投げかける内容だった[18] [17] [21] 。この放送は大きな反響を呼び、これがきっかけとなって日本でも「感動ポルノ」について盛んに論じられるようになったともされる[2] [18]

この放送を受けて、乙武洋匡は『24時間テレビ』が公共放送ではっきり否定されたことを高く評価し、自身も感動ポルノで作られた「マジメで頑張り屋のオトちゃん」という世間的イメージに苦しめられてきたこと、感動ポルノを「むしろ見下されている」と不快に感じてきたことを述べた[3] 。また乙武は、かつて『24時間テレビ』でメインパーソナリティーのオファーを受けた際、「『かわいそうな人たちが、こんなに頑張っている』と障害者を扱ってしまうことに違和感を覚えた」「障害者に対する扱いがあまりに一面的だとは思う」という理由で断ったことを明かしている[22] [23]

全盲の記者である岩下恭士は、2016年の毎日新聞の記事で「感動ポルノは不要である」と非難している[17] 。社会心理学者・スクールカウンセラーの碓井真史は、感動自体が悪いわけではないが、感動ポルノは無意識に対象を一段低く見る差別を生んでしまうことが問題だと評した[24] 。福祉社会学者の前田拓也は、「感動ポルノは確かに批判されるべきだが、安易な批判はかえって障害者への露悪を助長するリスクがある(大意)」と論じている[18]

『バリバラ』以降のマスメディアでの利用例として、2019年に朝日新聞が『だれもが愛しいチャンピオン』を「いわゆる感動ポルノではない明るくユーモラスな作品に仕上がっている」と報じている[10] 。また、2021年放送の弱視の女性が主人公でラブコメとしても楽しめる一方、視覚障害者の視点や心情、その周囲や親族の心情も描かれている漫画『恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜 [25] 』のドラマ版は、障害を誇張した感動ポルノにしない作風で大ヒットした[9]

脚注

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  1. ^ "<07>「感動ポルノの題材にされるのは、いい気はしない」 今求められる"安易な共感"の無効化 (×ばつロバート・キャンベル)". 朝日新聞デジタルマガジン&[and]. 2022年10月26日閲覧。
  2. ^ a b "ビジネス的にやめる選択肢はない...偽善と批判される「24時間テレビ」を日テレがやめられないワケ なぜ出演者のギャラと募金の問題を説明しないのか". PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2022年8月27日). 2022年10月26日閲覧。
  3. ^ a b c 洋匡, 乙武. "乙武洋匡「感動ポルノ」との決別". 文春オンライン. 2022年10月26日閲覧。
  4. ^ a b c イシゲスズコ (2016年9月3日). "「障害者の感動ポルノ」を巡る議論で、私たちが見落としていること". LITALICO. 2016年11月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年11月24日閲覧。
  5. ^ a b "「障害者を感動話に」方程式批判". 毎日新聞 (2016年8月28日). 2016年8月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月28日閲覧。
  6. ^ a b c d "NHK バリバラ". NHK. 2017年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年8月29日閲覧。
  7. ^ a b "【イベントレポート】幡野広志「"感動ポルノ"にはしたくなかった」。『ぼくたちが選べなかったことを、選びなおすために。』刊行記念". 梅田 蔦屋書店. 2022年10月26日閲覧。
  8. ^ a b "感動ポルノは御免だ。3年の余命宣告を受けた写真家が語る「自分で決める」の大切さ". ダ・ヴィンチWeb. 2022年10月26日閲覧。
  9. ^ a b c "川口春奈主演の『silent』が"感動ポルノ"ではと物議 「泣かせるネタになってる」とも|ニフティニュース". ニフティニュース. 2022年10月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年10月26日閲覧。
  10. ^ a b "「感動ポルノ」超える? 知的障害者が演じる映画公開へ:朝日新聞デジタル". 朝日新聞デジタル (2019年12月26日). 2022年10月26日閲覧。 "だが、彼らの実際の言動が脚本やセリフに盛り込まれ、いわゆる「感動ポルノ」ではない明るくユーモラスな作品に仕上がっている。"
  11. ^ Young, Stella (2012年7月3日). "We're not here for your inspiration - The Drum (Australian Broadcasting Corporation)". Abc.net.au. 2016年7月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年3月29日閲覧。
  12. ^ Heideman, Elizabeth (2 February 2015). ""Inspiration porn is not okay": Disability activists are not impressed with feel-good Super Bowl ads". Salon.com. 2016年4月22日時点のオリジナルよりアーカイブ。19 August 2015閲覧。
  13. ^ Young, Stella. "Stella Young: I’m not your inspiration, thank you very much | TED Talk". TED.com. 2015年8月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年8月19日閲覧。
  14. ^ "英辞郎 on the WEB". eow.alc.co.jp. 2022年10月27日閲覧。
  15. ^ "飯テロって英語でなんて言うの?". DMM英会話なんてuKnow?. 2022年10月27日閲覧。
  16. ^ [1]
  17. ^ a b c 岩下恭士 (2016年9月17日). "全盲記者・岩下恭士のユニバーサロン「感動ポルノ」は要らない /東京". 毎日新聞地方版. http://mainichi.jp/articles/20160917/ddl/k13/070/006000c 2016年9月17日閲覧。 [リンク切れ ]
  18. ^ a b c d "「感動」するわたしたち──『24時間テレビ』と「感動ポルノ」批判をめぐって/前田拓也". SYNODOS (2016年9月14日). 2022年10月26日閲覧。
  19. ^ 「吐き気がしそう」 百田尚樹氏が「24時間テレビ」を批判する理由
  20. ^ デーブ・スペクター「24時間テレビは絶対見ない」「本当のボランティアとは何か」
  21. ^ 今一生. "24時間テレビを感動ポルノと批判した「バリバラ」の快挙". iRONNA. 2016年9月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月17日閲覧。
  22. ^ 乙武洋匡さんがツイッターで暴露「24時間テレビのメインパーソナリティを断った」
  23. ^ 【乙武が解説】24時間テレビの問題点とは!? - YouTube
  24. ^ 碓井真史 (2016年9月5日). "「感動ポルノ」はダメなの?:24時間テレビとバリバラの間で:無意識の差別と障害者の教材化". Yahoo!ニュース 個人. 2021年3月13日閲覧。
  25. ^ "元木先生のつぶやき : [視覚障害『ヤンガル』を教科書にして良かった]". blog.tsurumi-u.ac.jp. 鶴見大学. 2022年10月26日閲覧。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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