福島県の激渋銭湯

【福島県】の激渋銭湯

鯖湖湯(飯坂温泉)★

福島市飯坂町湯沢32-イ →地図
【電話】 024-542-2121
【営業時間】 6:00〜22:00
【定休日】 月曜日
【入浴料】 大人200円


朝っぱらから風呂ゴー。JR福島駅から私鉄の福島交通線に乗って約30分、終点の飯坂温泉へ。
駅横の川沿いに温泉ホテルがズラリ並ぶ眺め印象的だが、ゆるい丘を覆うように広がる温泉街・住宅街にも8つの共同浴場が点在している。
その中でいちばん有名なのがここ。駅から歩いて5〜6分かな。



建物は新しいが、伝統的な木造建築が素晴らしい。
内部は撮影禁止とあったので撮ってないけど、入ってすぐに受付ふうの番台があり、壁を回りこむとすぐに脱衣スペース、そして2〜3段ほど下がったところからいきなり浴室になっている。脱衣場と浴室の間に仕切りのない別府スタイルだ。

内部もきっちりと伝統的な木造が貫かれている。脱衣場にロッカーはなくタナのみ。すぐに裸になって浴場部分へ。
浴室部分は広々しており、床は切石が敷かれている。中央に6〜7人サイズの長方形の湯船がひとつあり、向かいから湯がジョボジョボと注ぎ込んでいる。地元民らしき先客が2〜3人いる。
早朝の神々しい光景である。たまらんよこれは。

飯坂の湯は無色透明無味無臭の単純温泉だが、58.5度の源泉がじゃんじゃん注ぎ込まれてるもんだから飛び上がるほど熱い。前日に入った別の共同浴場では、湯船の湯はほとんど限界値で1分我慢できなかった。
ここも熱いのだろうと用心しつつかかり湯をしたら...おっと、ちょうどエエ具合の適温やおまへんか〜。
水でうめているのか? でも朝から激熱でなくてよかった〜。

どヴァーとお湯に浸かって見上げると、高い天井と湯気抜き部分の木組みがまた素晴らしい。
新しい建物だけど、なんかオーラっちゅーかこれを設計し建てた人間の執念を感じる。あと数十年か経てば道後や竹瓦のような風格が出るに違いない。

そしてお湯はうめられているっぽいわりに鮮度よさげで、なんの不満もない。
ていうか極楽。朝っぱらから贅沢極まりないんだよこのクソ貧乏人の分際で。ふは。ふは。ふはははははー。

ともかく、この浴室の雰囲気、そして朝日の中に立ち昇る湯気のシルエットの極楽絵巻ぶりはただごとじゃない。


(左)入り口の左右にある腰かけ段で休憩 (右)斜め向かいの神社から

しかし朝からこんな風呂に入れる人生、なんと幸福なんでしょう。(2010年8月10日)

よしの湯 《廃業》

東北大震災で被害を受け、廃業されました。
レポートは営業当時のものです。

郡山市本町2丁目6−1 →地図
【電話】 024-932-4234
【営業時間】 14:00〜21:00
【定休日】 毎月1日、15日


暑い中歩き回ったから、とにかくもう早く風呂へ入りたくて仕方がおまへん。
郡山の銭湯は2軒。駅に近いほうの激渋銭湯、不動湯は残念ながら定休日だったので、さらに5分ほど足を伸ばした。
郡山駅から南西へ約1km、国道4号線の「古館交番前」交差点のすぐ東に見えております。


(左)周囲はビル多いけどがんばってる (右)定休日が少なくて嬉しい

玄関部分の小屋根が印象的なミニ銭湯。
暖簾をくぐると下足室で、靴を脱いで戸を開けると番台におやじさんが座っている。福島県の銭湯料金400円のところを、「サービス期間中で」とのことでなんと300円にしてくださった。愛!

内部はあっさりとした感じで、とくに天井がどうとか壁がどうとかいうこともないけど、清潔感が心地よし。脱衣場には洗濯機もある。


(左)緑色ロッカー (右)浴室は東京式、天女のモザイク画あり

浴室も超シンプルで、深浅の浴槽が奥にひとつあるのみ。深は底から気泡が激しく噴出していて、こいつが疲れたマイ背マイ腰直撃でなかなかよろすい。その効能が賑々しく書かれたボードが壁に掲げられている。
男女壁には天女のモザイクタイル画がある。気泡に体を浮かせて腰を癒しつつ眺める天女の空中浮遊図。この安さがもうどうしようもなく銭湯ね。

両側に並ぶカランは外壁側だけシャワーつき。中央に島カランもある。
でも、俺が入った7時半前後は終始貸切状態だった。

清潔で、2時からやってて、料金サービス中で、月に2回しか休まないという頑張り銭湯。応援しよう! (2010年8月10日)

ぬる湯

田村郡三春町字八幡町55 →地図
【電話】 0247-62-2230
【営業時間】 16:00〜21:00
【定休日】 無休


郡山から磐越東線で2駅目の三春町というところに、レンガづくりの旅館兼業銭湯があるってぇ〜? 昭和2年に建てられたまんまってぇ〜?
横浜の旅館兼業銭湯みなと湯に泊まったならば、ここにも泊まらんわけにはいくまいて。

で三春駅で下車。
すでに夜だが、ここから2kmちょっとあるんよね。駅前に何台か並んでるバスの運転手さんに聞いたら、「近くを通る」とのことで乗せてもらった。貸し切りだ。
人けのまったくない橋のたもとで降り、歩いて1分ほど。
暗くてようわからんが、たしかにレンガ造りの建物が現れた。入口には色ガラスが入ってて、なにやらただごとでない激レトロなムード。
しかしこんなさみしい田舎にこんな古い銭湯が残っているとはなぁ。

とりあえず横の真新しい新館にチェックインし、2階のこぎれいな和室に通された。旅館というより民宿テイストの小さな宿ね。
荷物を置いてさっそく風呂へ。


(左)外から見た玄関 (右)内側から玄関方面を見る。右が風呂、左は居間


(左)下駄箱 (右)男女浴室の間

外来入浴の場合、玄関を入ったら正面に廊下がのびていて、その左にレンガづくりの銭湯、右に木造の旅館部旧館がある。
この廊下のディープさを言葉で言い表すのは難しい。まるで坑道かタイムトンネルのように空気が静止し、歴史のオーラが充満している。

風呂入口のガラス

宿泊者は新館から旧館の中を通ってこの廊下に出ることができる。
旧館も浴場棟に負けず劣らず渋いたたずまいだが、老築化のため現在旅館としては使われておらず残念。
銭湯と向き合った場所は経営者の居間になっているようす。ちょっとのぞいたら、おばあさんがテレビを見ながら熟睡しておられるようだった。この方が外来者から入浴料を徴収する係なのだろう。

だが浴場内へ入ると雰囲気は一変する。そこは改装された空間だった。震災でやられて修理されたのかも。

脱衣場こぢんまり


(左)浴室 (右)湯船のカラン

脱衣場は銭湯としては狭いが、この規模の小宿としては広いかな。ちゃんとロッカーに鍵がある。壁や天井はピカピカだ。
浴室も銭湯としては極小サイズ。壁や天井はつるんと改装されている。でも床面は細かい玉石タイルがびっしり張られ、傷んだところは別のタイルで補修されてパッチワーク状になっている。

深浅2槽の湯船も昔ながら。へりに木の板が張られている。
湯船の内側は白い塗料で塗られているのだが、それがめっちゃツルツル。一瞬ポリかと思うくらいだが、デコボコしてるから違うのね。デコボコなのにツルツル。あまり見たことがない。

洗い場はシャワーからはお湯が出るが、カランからはいつまでたっても水しか出なかった。ふつう(レトロ銭湯におけるふつう)と逆のパターンだ。

翌朝、ゆっくりと外観を眺めた。レンガの浴場棟は上部の装飾も凝っていて見ごたえ十分。屋根はフラットだそうだ。


(左)旧館の向こうに浴場棟。新館はこの右奥にある (右)浴場棟側から。立つ人はご主人


(左)釜場の奥の浴場外壁。かつてはこっちも入口だったのか (右)釜場は2段ほど低い

ご主人によると、東日本大震災による被害で浴場棟の雨漏りがひどくなり、屋根を修理しきれないので浴室と脱衣場全体を内側からくるむように改装したらしい。
またその2年前の水害では、前の川(桜川)が溢れて膝高まで水没したという。そのときも釜場などに大きな被害を受けたそうだ。

水害前の写真を見ると、ぬる湯の前の道はもっと狭く、川沿いの風情ある銭湯宿だった。今は道路もろとも大規模に河川改修されて風景が一変してしまった。

河川改修で広くなった桜川と道路

現在、銭湯利用の外来客は少数で、仕事による長期滞在客がほとんどのようだ。
外観と内部廊下の激渋さに比べて浴室は変哲なく、その点で銭湯ファンとしてはじゃっかん物足りなさを感じるかもしれない。

それでも、この小さな町で度重なる被害に遭いながら、レトロな姿のまま銭湯宿として継続しているのは奇跡的だ。経営者一家の愛情の賜物だろう。

ぬる湯旅館にはホームページあり。隣室との壁はフスマ式の可動板、トイレは1階だけ、館内に自販機なしという素朴なミニ宿だ。 (2013年4月30日)

竹の湯

会津若松市上町7−26 →地図
【電話】 0242-24-9007
【営業時間】 15:00〜21:00
【定休日】 7のつく日


大河ドラマ「八重の桜」は1回も見てへんけど、会津若松は気に入った。
まち全体がじつに渋い。そのうえ、たまたま覗いた蚕養国神社で庭掃除をしてた女の子がエライべっぴんさん。思わず「京都の蚕ノ社とここは関係あるんですか?」とかどうでもいいこと聞いてしもたわほほほ。

でその蚕養国神社から7分ほど南下したあたり(すでにその神社が基準)にあるのがこのお風呂屋さん。
トタン破風がなんともさりげなし。その下の電照箱看板には「超音波浴場」と赤字で書かれてある。超音波って、ようするにブクブクのことね。


(左)煙突が短い (右)くつろぎのロビーでレトロな消毒器に感涙!

中に入ると、幅広の大きな番台にほがらかなおかみさんが座っている。脱衣場の手前を仕切ったフロントロビー式だが、番台の位置と向きは古来の内向きだ。
でその正面に置かれた殺菌消毒器が激渋の逸品やで奥さん。どういう仕組みで殺菌消毒されるのか知らんが、とにかくこの中で貸タオルが殺菌消毒されているのである。めっちゃ清潔。

脱衣場もウッディ―調に改装されて美しい。板張りの床に畳ふうの上敷きが敷かれている。
棚に丸籠が並んでいるが、その半分がロッカーになっていて、なんと丸籠ごと入るサイズだ。これって京都式やん!
もしかして幕末に京都から流れ込んだのか!?

だが籠が丸いぶん、ひとつひとつのロッカーが巨大で、そのわりにロッカー内デッドスペースがたっぷり。この余裕がなんちゅーか田舎ならではというか。
ともかくロッカーが大きいのは旅行者にとって有難い。さっさと脱いで風呂へ。

丸籠ぶち込み式!

浴室はわりとこぢんまりしていて、奥に深・浅・気泡が並ぶ東京式。天井も東京ほど高くはないが2段式だ。
午後3時台の明るい浴室に、次々と顔なじみの常連客らがやってくる。
浴室は隅々まで掃除が行き届き、清潔度がきわめて高い。湯温もちょうどエエ按配。勢いのよいブクブクに身を委ね、目を閉じて極楽を味わうのみだ。

番台のおかみさんと客との楽しげな会話からも、この銭湯が地域の人々に愛されていることがわかる。俺も気に入った。こんど来た時もまた入りに来ようっと。 (2013年5月1日)

中の湯 しろさんかく《廃業》

2019年に廃業された模様。
(千葉県銭湯大使・後藤さん情報)
レポートは営業当時のものです。

会津若松市材木町2-6-14 →地図
【電話】 0242-27-8574
【営業時間】 17:30〜21:30
(若干ずれる場合あり)
【定休日】 7のつく日


西若松駅からなら5〜6分だが、鶴ヶ城から20分くらいかけて歩いてたら雨がポツポツきやがった。
古びた公営住宅の奥に、殺風景なネズミ色の建物発見。窓もなんもない。でも看板があるから風呂なんだろう。入口どこや?


(左)市営住宅のいちばん奥に (右)ん? ど、どっちから・・・


(左)まさかこのスキマ? (右)え・・・?

建物の向かって左側はどう見ても釜場だ。しかし向かって右側はどう見ても裏口みたいだが・・・銭湯に裏口なんかあったっけ?
ま、間違いない、こっちが入口だ。右側の建物とのスキマの通路だ!
この銭湯は正面から入口が見えないだけでなく、わざわざいちばん狭い猫の抜け道みたいなとこから入る構造になっているぞ!

パターンとしては別府の梅園温泉に似ているが、落ち葉の積もりっぷりが醸し出す廃墟オーラは、ここが客商売の銭湯であることを微塵も感じさせない。
通路奥の玄関とおぼしきサッシ戸を覗くと、営業時間は「15:30から」と書いてある。時すでに17:30。これはどう見ても廃業してるな。せっかく来たけど仕方がない。

あきらめて帰ろうと思い、来た道を戻りかけると、背後から声をかけられた。
「今おもでに居だの、おたくさん?」
振り返ると、一人の年老いた女性がいた。
「そうですけど」
「なんの御用でしょ」
「風呂入りたいと思って」

するとばあさまは少し驚き、慌てた様子で、
「もうすばらぐすだら沸ぐんだけど...」

わ、沸かしてるのか! 営業してるのか!

「あとどれくらいで沸きますか?」
「にじっぷんか・・・さんじっぷんぐらい・・・看板に電気が点ぐがら」
「わかりました。そのへん散歩して待ってます」

雨がポツポツ降り出した。傘もなければ雨宿りできそうなところもない。ひと気のほとんどない団地をウロウロ歩き、濡れながら待った。
30分を過ぎたころ、ようやく看板に灯りがともった。

これが暖簾がわり

看板に灯が入るほかに営業中を示すものは何もない。
入口のサッシ戸を開けると、狭いスペースにさらに男女のサッシ戸。そこを入ると、タタキに番台の脱衣場風景がある。
高齢のばあさまが一人でやってる銭湯だから、ギリギリの状態であることは察しがついた。入ってみると、察した通りの気配が濃厚に漂っている。


(左)なぜか学習机 (右)籠と棚のみ

浴室をフト覗き込んで驚いた。こ、これは・・・!


(左)奥壁にペンキ絵だ! (右)ば、磐梯山だ!

くすみも剥がれもない裏磐梯の見事な絵が描かれ、その下に広告板が4枚ついている。
思わずため息が出るほどだ。

女湯のほうも気になる! 誰もいなかったので見せていただいた。


(左)こちらも美品 (右)すばらしい!

女湯の絵は、鶴ヶ城にあるナントカ庭園らしいが、こちらも惚れ惚れするような作品だ。
まったくもって驚いた。これだから銭湯めぐりはやめられへんのよね・・・。

浴室は、奥に湯船がある東京式。そこへ行くまでの浴室中央には手すりがまっすぐ伸びている。
壁側のカラン列は機能しておらず、サビ水漏れを受ける容器が並んでいて、ちょっと凄絶な光景。設備的には完全に限界が来ている。
ここがどうあそこがどうといちいち書かないが、とにかくばあさまが力を振り絞って沸かしているギリギリの銭湯であり、これが現役で営業を続けていること自体が奇跡といえる。

湯船には、彼女がせっせと薪をくべたアツアツの湯が沸いている。設備はボロだが、いいお湯だ。
俺みたいな気まぐれなヨソ者がふらっと来て、この素晴らしい絵を眺めながら湯に浸かれるのも、ひとえに彼女のがんばりによるものだ。

「もうやめよと思でます・・・」
ばあさまはいろんな話を聞かせてくださった。胸に積もる思いがいろいろおありなのだろう。
途中で近所の中年客が一人来た。

銭湯世界の奥深さが凝集されていると言わざるを得ない。 (2013年5月1日)

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