籐職人さんのあざやかな手さばきに時を忘れて見とれていたところ、外からにぎやかな声が聞こえてきました。見ると手ぬぐいを頭に巻いたおじさんが、いらっしゃいいらっしゃいと声をかけています。その前には、お値段1個5円ナリ、10円ナリの駄菓子がずらり、100円玉ひとつあれば王様気分でお買物できそうです。いまどきの駄菓子だけではなく、お父さんが子どもだったころの駄菓子も健在で、なんでも年代問わずのダントツ人気は「酢イカ」だそう。なにより来園者が楽しみにしているのが、壺のなかで炭火でじっくり焼き上がっている「つぼ焼きいも」。なつかしいこの空間に似合うおやつがそろっています。
おや、店頭にはお菓子だけではなく、ベーゴマやロウセキも。「このロウセキなら地面に好きなだけ落書きしていいんだよ」とおじさん。なるほど、足元には人気アニメのヒーローたちが道いっぱいに描かれていました。歓声がわく中央の原っぱでは、「名人」と呼ばれるおじいさんと子どもたちがベーゴマの真剣勝負中。学校が終わると真っ先にここに駆けつける子どもも大勢いるようで、常連らしき小学生の男の子はコマにキュッとひもを巻きつけながら「テレビゲームも好きだけどベーゴマも好き」と言っていました。向こうのほうでは、いまやめったにお目にかかれない大きな「土管」が。子どもたちがくぐったりよじ上ったりして遊んでいたりと、まるで昭和の風景が展開しています。
それにしても、古い建物が展示されているなんて映画のセットみたいなのでは、という予想はみごと打ち砕かれました。ただ単に建物を「展示」しているだけではない、当時の空気ごと保存しているような活気が感じられるのです。その理由として、レプリカではなく本物であるということと、このたてもの園の「住人」のように、来客をあたたかく迎えてくれる地域のボランティアさんの存在があげられます。
ベーゴマや折り紙などむかしの遊びを教えてくれる先生、紙芝居を見せてくれる人、日本の伝統行事を教えてくれる人、建物についての質問に答えてくれる人など、大勢のボランティアさんと来客との交流が、この独特な空間に体温を与えているようです。
カラフルに彩色されたコマ。お正月じゃなくても、ここに遊びにくる子どもたちはコマ遊びに夢中です。
丹精された植木が並ぶ路地。夏には打ち水もするそうで、生活感が感じられる空間となっています。
古民家ではボランティアの方による、手作りの風車講習会が。自分で作った風車を手に、園内をうれしそうに走っている子どもたちがたくさんいました。
冬枯れの景色にひときわ映える都電7500形。廃車20年後、整備されここで保存されることに。中にも入れます。