講演概要
2012年は自然科学にとって忘れることのできない記念の年になるでしょう。10月には、山中伸弥教授(京都大学iPS細胞研究所)がiPS細胞発見に対するノーベル生理学・医学賞を受賞し、医学は再生医療という新しい時代に入りました。
7月には、欧州連合(EU)とアメリカ(と少数の日本人)のグループがスイスのジュネーブ近郊のスイス・フランス国境をまたぐ一周約27kmもの巨大な衝突型加速器(LHC)を用いた実験でほぼ確実にヒッグス粒子を見出した、と発表しました。二つの実験グループは、アトラス(ATLAS)とCMSが独立に行って同じ結果を得ています。各実験グループでは各々約2千人の科学者・研究者が日夜研究に従事しています。ただし素粒子物理学は超微細な(目で見ることのできない)素粒子を研究する超精密科学です。このため、7月以降は誤差を小さくするように最後の詰めの研究をしています。
そして11月から12月にはすべての物質を形づくる究極の粒子---素粒子と呼びます---の中でただ一つ見つかっていないヒッグス粒子がとうとう発見された、という公式ニュースが発表になる予定です。
この講演では自然の成り立ち、15個の素粒子(クォーク、レプトン、ヒッグス)の性質、どうしてたった15個の素粒子から万物がつくれるのか、という疑問を分りやすくお話しします。