実用的な暗号技術には、現代最高の情報処理技術を結集してもなお解読できないほどの高い安全性が求められます。暗号技術に関する「安全性証明」とは、現実的に解くのが困難とみられているある数学的問題を用いて、「暗号技術を攻撃して破ることができたとしたら、その問題が解けてしまう」(つまり、暗号技術を破ることはその非常に難しい問題よりもさらに難しい)という意味での安全性を数学的に証明することを指します。この様な安全性証明は、近年の実用的暗号技術(暗号化、電子署名、認証など)においては必須の性質とされています。
当研究グループでは、暗号理論に関する最先端の知見を基に、暗号技術の安全性評価に関する研究を深く幅広く行っています。例えば、世の中で使われているものや現在研究中のものなど幅広い暗号技術の安全性を分析し、安全性の数学的保証(安全性証明)を与えたり、安全でない場合には具体的な欠陥をいち早く指摘して設計の修正を促したりする研究を行っています。
また、暗号技術は、数学的に厳密な安全性証明を持っていたとしても、(1) 困難性を仮定した問題が簡単に解けることが示される、(2) 従来の安全性モデルが現実的な脅威を捉えきれていない、(3) 暗号技術の実装時のミス(バグなど)、などの理由により、安全性が保証されなくなってしまいます。これらの問題にも対処できるように、当研究グループでは、暗号技術の安全性の根拠とされる問題の困難性の評価、種々の暗号技術に関する安全性モデルを再検討してより現実に適合した形へ修正する研究、修正された安全性モデルを満たす暗号技術の開発、などの研究を進めています。