当グループでは、従来の暗号技術よりも高度な機能を提供する暗号技術の研究に取り組んでいます。ここでは、近年注目を浴びており、世界的に活発に研究されている関数型暗号と、完全準同型暗号を紹介します。
従来の暗号技術では、メッセージを送信する相手は特定の一人でした。言い換えると、従来の暗号通信は、送信者と受信者の一対一で行われるものでした。一方、関数型暗号では、一対多の通信が可能です。つまり、関数型暗号においては、メッセージの送信者は、特定の条件を満たすユーザだけが暗号文を復号し情報を復元できるように、暗号化を行うことが可能です。暗号化の際に指定できる条件は、例えば、(部長以上∨経理部)∧本社所属のような論理式で表現されます。当グループでは、より柔軟な運用が可能で、安全で効率的な関数型暗号の設計に向けて日々研究を行っています。
従来の暗号技術では、暗号化されたデータに加工や処理を施すことは基本的にほとんどできません。しかし、医療情報など機密性の高い情報を利活用する際には、情報を暗号化したまま統計処理などを行いたいという要望があります。この要望に応えうる暗号技術として、情報を暗号化したまま、任意の演算を行うことができる完全準同型暗号技術が近年活発に研究されています。しかし、現在知られている完全準同型暗号は、既存暗号技術に比べ非常に効率が悪く、複雑な演算処理を高速に行うことはできません。当グループでは、完全準同型暗号の効率改善に取り組み、日々研究を行っています。