十六夜や渡航のこころの整ひ来
山田弘子
春節
199503
十六夜の客らし庫裡に影法師
保坂加津夫
自在抄
199600
十六夜の砂洲うつそりと現はるる
南出律子
沖
199811
いさよひや砂浜続くところまで
竹内悦子
槐
199811
十六夜の硯池に水を足してをり
小澤克己
遠嶺
199812
十六夜や高館水の攻め残す
神蔵器
風土
199812
十六夜や覚めゐる牛の咀嚼音
西村梛子
馬醉木
199902
十六夜の狂気ひそかにぼんのくぼ
桐木榮子
船団
199903
雲間にもいざよふ月となりにけり
稲畑汀子
ホトトギス
199909
十六夜や濤のごとくに五百重山
長谷川翠
馬醉木
199912
十六夜や鯛の粗煮る匂ひして
松島不二夫
沖
199912
厄日すぎ十六夜の月のぼりけり
西山胡鬼
京鹿子
199912
校了やいさよふ月がすぐそこに
山田夏子
雨月
199912
十六夜の水見えなくて接吻す
中村安伸
海程
200001
十六夜の我もすなわち手毬唄
村井隆行
海程
200002
十六夜や小壜の海の砂透かし
新関一杜
京鹿子
200009
十六夜や太刀魚跳ねて水を噛む
山尾玉藻
火星
200010
十六夜の山に水質検査場
高松由利子
火星
200011
十六夜の電話不通をかこちけり
杉本寛
濱
200011
十六夜のロシヤ民謡雨なりき
金子篤子
濱
200011
夫に耳貸してをりけり十六夜
高尾豊子
火星
200012
十六夜の巽の影となりゐたり
竹内悦子
槐
200012
大雨去り十六夜の月冴えざえと
西村咲子
六花
200012
ミニチュアの洋酒揃へて十六夜
赤未真理
ぐろっけ
200102
川音のある十六夜の粟畑
岡井省二
槐
200106
いさよひの木の前に身の浮かびゐる
岡井省二
槐
200108
十六夜やこころまかせの筆のさき
山仲英子
狩
200110
十六夜や在りし日のごと夫の書架
福永みち子
馬醉木
200111
十六夜の直火珈琲などいかが
須山つとむ
船団
200111
十六夜の石空打ちの行者滝
黒坂紫陽子
馬醉木
200112
弟の忌十六夜の月真円なす
松崎鉄之介
濱
200112
十六夜や足す一滴のかくし味
中谷葉留
風土
200112
十六夜や安倍仲麻呂の歌碑に佇つ
鈴木ふくじ
風土
200112
十六夜やことこと噴ける杣の飯
木下玉葉子
酸漿
200112
十六夜や小切いろいろ継ぎ合す
川合八重子
酸漿
200112
十六夜や観劇終へし二人なる
小峯雅子
酸漿
200112
十六夜の二階の窓を開けておく
富田直治
春耕
200201
十六夜は尾花照らしつ更け行けり
寺田きよし
酸漿
200201
十六夜や憮然と余命少なきを
安陪青人
雨月
200201
十六夜や今日より育児日記かく
菊池共子
円虹
200201
十六夜の星ほのめける時刻かな
岩田沙悟浄
円虹
200201
十六夜の窓開かれてをりにけり
天野きく江
槐
200201
十六夜やひとり芝居の声通り
大和あい子
百鳥
200201
十六夜の水輪ゆつたり拡ごれり
橋本良子
遠嶺
200201
十六夜の卓に小さな砂糖壺
宮澤さくら
遠嶺
200201
十六夜のひかりを散らす水車
大塩千代
狩
200201
暗々といさよふ月に星消ゆる
松田欽吾
雨月
200201
十六夜や湯桶からころから使ひ
山仲英子
狩
200210
十六夜の筆のまよひの山水画
小澤克己
遠嶺
200212
十六夜の薪小屋に薪積まれあり
杉浦典子
火星
200212
十六夜やすこしかさね着して町へ
吉弘恭子
あを
200212
十六夜やさらに孤立の座を浄む
小澤克己
遠嶺
200212
十六夜の雲のいけずに雨戸閉づ
石岡祐子
苑
200301
十六夜や内緒話のやうに寄る
加藤峰子
鴫
200301
十六夜の鯉の背びれの昇りつめ
小林あけみ
鴫
200301
十六夜の魚町橋を渡りけり
井口ふみ緒
風土
200301
点滴のとり外されて十六夜
佐々木悦子
帆船
200301
十六夜や水白々と堰を落つ
井関祥子
酸漿
200301
ひんがしの窓にいさよふ月明かり
大井貞一
京鹿子
200302
右に寄るクルマの習ひ十六夜
岡正実
鴫
200312
仰向きに落ちし芋虫十六夜
浜口高子
火星
200312
十六夜や真珠筏の黒々と
林裕子
風土
200312
十六夜の髪乾かしてゐたりけり
平田紀美子
風土
200312
十六夜の携帯マナーモードとす
高橋将夫
槐
200312
十六夜の凱旋門をくぐりけり
谷口佳世子
槐
200312
十六夜や子は子の家に帰りゆき
落合絹代
雨月
200401
忌ごもりに十六夜の雲底びかり
鳴海清美
六花
200401
通夜の家出て十六夜の月仰ぐ
柄田喜美枝
築港
200401
十六夜や髪の長さの稚くて
土生逸磨
河鹿
200401
十六夜の五位啼きわたる旅前夜
平山風鳥
河鹿
200402
狂言の鼓いざよふ月を待つ
安西静
帆船
200409
十六夜のあのことはもう時効です
田中藤穂
あを
200410
十六夜のいづこめ人形まなこ濡る
卜部黎子
春燈
200411
誰がための紅花染や十六夜
田嶋洋子
春燈
200411
十六夜や酒の梯子の癖がまた
伊藤白潮
鴫
200411
十六夜の芒を括り直しけり
内藤ゑつ
ゑつ
200411
十六夜の月欠くるごと母逝けり
野坂民子
馬醉木
200412
十六夜の雲居に仰ぐ流離かな
平野加代子
春燈
200412
十六夜の光に濡れて友を待つ
林敬子
酸漿
200412
十六夜の壷提げて来る妻の客
戸栗末廣
火星
200412
十六夜や病後の髪へ櫛浅く
岡本眸
朝
200412
十六夜や誰にも電話つながらず
ことり
六花
200501
十六夜や白髪の客送り出す
田原陽子
鴫
200501
ためらひつ借る十六夜の男傘
望月晴美
沖
200501
書を措きて十六夜のさと徘徊す
内田稔
遠嶺
200501
十六夜の雲を忘れてゐたりけり
上薗櫨夫
河鹿
200501
十六夜や母を泣かせし日のありぬ
尾堂?Y
河鹿
200501
十六夜や島に隠れて島ひとつ
椎名和代
狩
200502
十六夜や海の底より平家琵琶
成瀬櫻桃子
春燈
200504
十六夜の蛸を唐揚げしてゐたる
竹内悦子
槐
200511
十六夜を暈せる雲のうす衣
丸山けさ乃
四葩
200512
十六夜や明日逢ふ人へ電話して
松村越子
馬醉木
200512
十六夜の己が影よぎる影のあり
中野京子
槐
200512
携帯に月を掲げる十六夜
瀬下るか
鴫
200512
十六夜や若者多き町の闇
桑久保奈美子
酸漿
200512
十六夜や十八階の宙に住み
堀田清江
雨月
200512
十六夜の不意の客ある立居かな
田中藤穂
あを
200512
十六夜の上がり框の濡れてゐる
栗栖恵通子
槐
200601
十六夜や雲ひとつ来てとどまりぬ
石川英利
百鳥
200601
十六夜や筑波二峰の相倚れる
河内桜人
京鹿子
200601
門限に遅れいざよふ月仰ぐ
村上和子
ぐろっけ
200601
十六夜の月うすうすと雲まとふ
稲畑汀子
ホトトギス
200609
十六夜の湯に会ふツアーコンダクター
山尾玉藻
火星
200611
十六夜の皓々浮雲あそびをり
阿部ひろし
酸漿
200611
十六夜の月言の葉をかがよはせ
山田天
雨月
200612
十六夜の虫の音ほそりゐたりけり
鈴木幾子
酸漿
200612
十六夜の水底までもさざ波す
椿和枝
鴫
200701
十六夜の海鳴りはるか眠り初む
勝見玲子
鴫
200701
十六夜の光の束は水溶性
高田令子
鴫
200701
十六夜やガラスの護符を並べをり
環順子
遠嶺
200701
十六夜の庭に音なく風もなく
稲嶺法子
遠嶺
200701
叢雲の十六夜ならばなほ愛し
伊藤希眸
京鹿子
200701
十六夜の月を掲げし坂の町
家塚洋子
酸漿
200701
十六夜の月仰ぎつつ帰りけり
天田美保子
酸漿
200701
十六夜や点滴替ゆるかけそき音
苑実耶
空
200701
十六夜の月に落ちゆく鮎ならむ
今井千鶴子
ホトトギス
200702
十六夜の月を見るべく小買物
風間邦子
狩
200702
十六夜の篁一処ゆれてをり
今井松子
遠嶺
200702
十六夜や詩歌を詠むに声あげて
斎藤ふき
朝
200702
十六夜の点てて貰ひし薄茶かな
松本文一郎
六花
200702
十六夜や昨日の晴をつなぎたく
稲畑汀子
ホトトギス
200710
侏儒ら出て踊りはじむる十六夜
伊藤白潮
鴫
200711
越後よりいもうと迎ふ十六夜
榎本文代
万象
200712
十六夜の月浮べたる露天風呂
熊岡俊子
雨月
200712
十六夜のテトラポットの睦むなり
大山文子
火星
200712
十六夜や薄き暦を照らしをり
小滝奈津江
酸漿
200712
十六夜や風の運べる母の声
林八重子
馬醉木
200801
十六夜を待ちて庵に小半時
佐々木新
春燈
200801
後より声かけらるる十六夜
土井三乙
風土
200801
十六夜や飛騨のからくり舞上手
七種年男
沖
200802
十六夜やひとりひとりの寝る時間
金山雅江
春燈
200808
戸を繰るに十六夜の月残りをり
松崎鉄之介
濱
200811
十六夜の明るさにゐて声がすれ
山田美恵子
火星
200811
十六夜の机鳴らしてナイフ研ぐ
徳丸峻二
風土
200811
十六夜に墨磨る影のありにけり
市川玲子
春燈
200812
十六夜の少し長きは子のメール
山田暢子
風土
200812
十六夜の月盃に賜りぬ
橋添やよひ
風土
200812
十六夜や行かねばならぬ友の通夜
高村令子
風土
200812
もの思へとや十六夜のそれも雨
長山あや
ホトトギス
200902
雨そぼつより十六夜の酒となる
井上浩一郎
ホトトギス
200902
十六夜や一指欠けたる観世音
涼野海音
火星
200902
十六夜の旅路は帰路となりにけり
稲畑汀子
ホトトギス
200909
十六夜に果てし三日の月の旅
稲岡長
ホトトギス
200911
十六夜の新居を祝ぎて集ひけり
稲岡長
ホトトギス
200911
十六夜の月なつかしく集ひけり
稲岡長
ホトトギス
200911
十六夜の影ゆらゆらと編集長
小澤克己
遠嶺
200911
十六夜の月瀬戸内海なめ渡り
佐田昭子
ぐろっけ
200911
十六夜や沓脱ぎ石の濡れてをり
半澤正子
馬醉木
200912
十六夜や大和の国の石舞台
今井弘雄
春燈
200912
十六夜や籠屋は竹を細う細う
浜口高子
火星
200912
広縁に出て十六夜の月仰ぐ
伊藤いな栄
酸漿
200912
十六夜や女ひとりの縄のれん
江本路代
酸漿
200912
十六夜の光の中の散歩かな
小野タマ枝
酸漿
200912
十六夜の月をかかげて浮御堂
山口順子
苑
201001
十六夜の月浪速から大和から
中田禎子
槐
201001
長き文綴り終へたり十六夜
環順子
遠嶺
201001
恙持つ妻十六夜へ誘ひけり
倉科紫光
馬醉木
201001
十六夜の一句自づと浮かびけり
大室恵美子
春燈
201001
十六夜や有馬に入りて皆しづか
深澤鱶
火星
201001
十六夜の月中天にただ立てり
加藤千津
ろんど
201001
十六夜や畦つらぬきて土竜の径
池田光子
風土
201001
十六夜芯の尽きたる絵蝋燭
奥田茶々
風土
201001
十六夜や研いで並べる彫刻刀
宇都宮敦子
鴫
201001
南座に十六夜の月春団治
山崎里美
璦
201002
十六夜の風被て想ひ伝はらず
荻野千枝
京鹿子
201002
十六夜の瑕瑾なき月賞でにけり
中島知恵子
雨月
201002
十六夜や健やかに日を疲れ切り
渡邊孝彦
やぶれ傘
201002
雲間より十六夜の月白々と
杉本綾
璦
201012
十六夜や胸ををさめて書に耽ける
粟倉昌子
璦
201012
十六夜やひとつ灯のこす睡るまで
都丸美陽子
春燈
201012
十六夜や残日録の嵩みたる
田中藤穂
あを
201012
十六夜の淡雪羹や万歳楽
雨村敏子
槐
201101
十六夜の投函の音確かむる
濱上こういち
鴫
201101
十六夜や篳篥の音にゆらぎゐて
佐藤千恵
京鹿子
201101
十六夜やピアノ教師の影細る
園部早智子
ろんど
201101
十六夜や同じ歩幅の影連れて
阿部綾子
ろんど
201102
十六夜や娘の手紙胸元に
服部郁史
京鹿子
201103
ふり返る心は遠し十六夜へる
稲畑汀子
ホトトギス
201109
十六夜の月は雲間でありしかな
稲畑汀子
ホトトギス
201109
十六夜の櫂の音届く乳児院
海老根武夫
鴫
201111
十六夜を載せて重たき山の肩
曽根京子
春燈
201112
十六夜を入れて一人の食事かな
和田紀夫
鴫
201112
十六夜の雲を出入りしただ静か
福田かよ子
ぐろっけ
201112
十六夜の足拭ふ影支ふ影
北川英子
沖
201112
十六夜の月は生絹の雲まとひ
柿沼盟子
風土
201112
十六夜や泣きたくなれば唄ふ癖
ことり
六花
201112
十六夜の汐入川に鰡とべり
大坪景章
万象
201112
十六夜やモノクロ映画観て独り
杉山哲也
馬醉木
201201
十六夜や黒く鎮もる蔵の町
高橋泰子
峰
201201
十六夜は一合徳利空きしころ
松岡利秋
かさね
201201
十六夜の浜に出てみる車椅子
古林田鶴子
ぐろっけ
201201
十六夜の一番元気な人を欠く
入江節子
ろんど
201201
十六夜や河内山なる七五調
池端英子
ろんど
201201
十六夜の離陸となりし遠き旅
安原葉
ホトトギス
201202
黄の揺らぎつつ十六夜の月となる
今橋眞理子
ホトトギス
201202
十六夜の月を沈めし江津湖かな
山田閏子
ホトトギス
201202
十六夜の御殿屋台に道の川て
間島あきら
風土
201202
十六夜の波しろがねを畳みけり
大橋伊佐子
末黒野
201202
いざよひの更けて所在の高かりし
稲畑汀子
ホトトギス
201209
風渡る十六夜の空刻みつつ
稲畑汀子
ホトトギス
201209
十六夜のこほろぎを掃く畳かな
北崎展江
くりから
201209
十六夜の群青世界の塔ひとつ
雨宮桂子
風土
201212
十六夜の月光に憂さ忘れたり
藤田京子
ぐろっけ
201212
十六夜に電柱数多二階窓
長崎桂子
あを
201212
十六夜や玉こんにやくを煎りつけて
高橋道子
鴫
201301
十六夜のわたしや大津絵藤娘
中島陽華
槐
201301
十六夜や青白き雲とき放ち
熊切修
末黒野
201301
十六夜と気づかず銀座たもとほる
大久保白村
ホトトギス
201302
雲厚き憾み明月も十六夜も
中島知恵子
雨月
201302
十六夜やとほく埼玉スタジアム
有賀昌子
やぶれ傘
201302
十六夜にわが名噛ませしシユレッダー
石崎浄
風土
201311
十六夜や旅立ちし人送る人
大坪景章
万象
201312
十六夜の真赭の糸と吹かれをり
伊丹さち子
馬醉木
201312
十六夜のやつぱり今日も言はずじまひ
北川英子
沖
201312
明け遣らぬ十六夜月の白きかな
山口郁子
末黒野
201312
事多き来し方なりし十六夜
折橋綾子
鴫
201312
十六夜のまくら一つに姉妹
中山純子
万象
201312
十六夜の空き地に猫のもどりきし
小林成子
火星
201312
十六夜の昨夜に続く海の色
今澤淑子
火星
201312
十六夜の驕らぬひかり渡りけり
深澤鱶
火星
201312
十六夜や男はいつも漂ひて
山田ゆう子
馬醉木
201312
十六夜や転勤知らす子の電話
竹内悦子
璦
201312
十六夜や歩かうかてふ夫に蹤き
田所節子
沖
201312
十六夜や旅信に銀の紙ナイフ
小野恵美子
馬醉木
201312
十六夜を抱きひとりの旅枕
持田信子
春燈
201312
十六夜や朝会ふ人とすれ違ふ
小谷知里
京鹿子
201401
十六夜や湯ほてりの身をさらしをり
岡田史女
末黒野
201401
十六夜や葉ずれの音のつのりゆく
加藤静江
末黒野
201401
十六夜うてくもりをすこし梅の月
山田六甲
六花
201404
十六夜や端座女人の薩摩琵琶
正谷民夫
末黒野
201404
2021年10月17日
作成