法廷弁護士
権力に抵抗する人々を弁護した日々
アメリカには、黒人に限らず有色人種に対する白人による構造的な差別が存在する。法制度のうえでは、アメリカ合衆国憲法の下で「法の下の平等」が高らかに謳われている。しかしながら、実際には、司法へのアクセスや事実審理の場での根強い偏見、差別意識が厳然として存在している。そして、それが、あたかも当然の前提であるかのように市民にも浸透している。アメリカにおいて陪審裁判を担うのは、一般の市民である。当然に、市民の間に浸透している差別意識と被差別意識とがある。いかに制度的に偏見を有する者を陪審員から排除する方法を考案したとしても、市民の意識の中に深く根を下した差別意識を取り除くことは容易なことではない。
著者は、陪審裁判がさまざまな弊害を抱えた刑事司法制度であることを認めながらも、その枠内で可能な限り「真実」と「正義」に到達するために多くの創意工夫を試みる。そして、弁護技術ではなく、人間としてのありのままをさらけ出して陪審員を説得することが最も「真実」と「正義」にたどり着く道であるという教訓を強調する。
本書には、原著にはない多数の注釈を加えた(特に、わが国とは異なる法制度や法律用語については簡単な解説を書き加えた)。本書全体を通読すれば、民事・刑事を問わず、アメリカの陪審制による事実審理の流れがおぼろげながらでも理解できるであろう。
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著者の注記
日本語版読者のためのノート
序章
第1章 ジョニー・スペイン、デイヴィッド・メイヤー、そしてサン・クエンティン6人組
第2章 どんな事件もサン・クエンティン6人組事件と同じ――デイヴィッド・メイヤーと一緒の弁護活動
第3章 いつも、母親の言うことを聞きなさい
第4章 「ガーシュイン・ブラザーズ」事件
第5章 三連続の刑事事件
第6章 最高齢の依頼者、陪審裁判に臨む
第7章 ケニー・クレイジー
第8章 エスコート・サービス、それともコール・ガールの一味?
第9章 マリン郡の離婚裁判の王
第10章 医師、患者、そして性的いたずら
第11章 ハウスボートでの死
第12章 ドーラ、クライスラーに戦いを挑む
終章 またか、またか
謝 辞
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訳者あとがき
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