都市建築環境工学/グリーンアジア環境学 研究内容
主な3つの研究分野
当研究室では,建物およびそれらの集積体である都市空間を対象に 快適性を維持しつつ,必要最低限の化石エネルギーにより,人にとってより望ましい環境を創生するための挑戦を続けています. 二律背反する快適性と省エネルギー性を同時に達成するためには,建築−都市環境形成に関わる様々な基礎理論を習得するだけでなく, 実際の建築や都市におけるデザインスキームを社会に提示していくことが求められます. また,理学的または工学的な見地における研究や技術開発だけでなく、経済や税制など様々な社会システムの変革も必要となります. このような問題意識から,我々の研究室では右に示すような3つのカテゴリにおいて研究を行っています.
学生の出身分野と研究テーマ
本研究室の主なテーマは、都市気候学・風工学,建築環境工学,ゲーム理論・複雑系科学など、工学系の研究室としてはかなり広い領域に散らばっています。
他大学からの進学者でこうした分野を学んだ経験のある人はごく少数ですが,都市気候学・風工学、建築環境工学の基礎となるのは修士課程の大学院入試の 専門科目として指定されている流体力学,伝熱学,熱力学です。また,ゲーム理論・複雑系科学は、物理学,数理生物学,経済学,土木工学その他様々な 分野の研究者が参入する比較的若い研究分野です.よって,工学の基礎的素養と知的好奇心をパスポートにして,学部の専門分野,学科に関わらず誰でも チャレンジできるフィールドであると言えましょう。
都市気候学・風工学分野の研究
Keywords: 都市ヒートアイランド現象, 都市大気境界層, 風洞実験, Laser Doppler Velocimetry (LDV), 粒子画像計測法 (Particle Image Velocimetry PIV), 数値流体力学(Computational Fluid Dynamics, CFD), 粗面乱流
都市域には特有の気象現象がある事は古くから知られてきました。日本でここ数年来急速に認知度を増している「ヒートアイランド現象」もその一つです。都市に多くの人が暮らし、エネルギーを消費している現状を考えると、人間の快適性や安全性、地球環境問題の観点から「都市気候」は重要な研究の対象の一つと言えましょう。
この研究分野は学際的な色彩が強く、気象学、土木工学、水文学、建築工学、機械工学など様々な分野の研究者が集まっています。また、研究のターゲットも、よりきめ細かな天気予報の確立、エネルギー消費量やCO2排出量の問題をクリアするための都市・建築デザイン、汚染物質飛散の予測向上など、様々です。こうした都市域特有の気候現象、風環境、熱環境について、我々の研究室は次のようは課題、手法にてアプローチしています。
目 標
✔️ 都市気候の高精度予測
- ヒートアイランド・汚染物質の拡散問題・都市型集中豪雨に対する解答
✔️ 凹凸のある粗面境界層の乱流性状
- 粗面上の乱流構造形成メカニズムに対する物理的興味
課 題
(1)都市-大気間の運動量交換パラメータ
(2)都市-大気間の熱交換パラメータ
(3)都市-大気間の乱流輸送メカニズム
手 法
観測,実験,数値解析
以下に、研究テーマの例を挙げます。
- 都市形状が大気境界層の運動量・熱・スカラー輸送に与える影響に関する風洞模型実験
- 市街地気流場の流力パラメータ同定
- PIVによる都市キャノピーの流れ計測
- 都市キャノピー(建物群内外)の気流場に関する数値シミュレーション
- LES (Large eddy simulation) による都市上空の乱流の組織構造解明
- LESによる歩行者空間風環境と都市の換気効率の予測評価
都市・建築環境工学の研究
Keywords: パッシブな建築・都市デザイン、建物熱負荷計算 (Building Energy Simulation, BES), CFD, 建物の省エネルギーと低炭素
- 居住者行動の確率性を考慮したMonte Carlo Simulationによる都市域の高解像度熱電需要予測
- アジアのサステナブルな住宅デザイン模索のためのBES, CFD
- 水と緑とそよ風の建築・都市空間デザイン
複雑系科学・ゲーム理論分野の研究
Keywords: Cellular Automaton, 進化ゲーム理論, 交通流シミュレーション, 感染症流行の数理モデル, 社会-人間-環境の数値シミュレーション
人は周囲を取りまく環境からの影響を受けながら、折々の意志決定を下しています。その意志決定の結果、環境を積極的に変えることで、新たな影響を被ることもあるでしょう。さらに人間同士の相互作用も重要なファクターとなる局面もあるかも知れません。つまり、人間とそれを取りまく環境は、相互に影響を及ぼし合いながら、時間推移していくシステムであると考えなければならないわけです。
こうしたカオスに代表される複雑な振る舞いを見せる物理現象に対して、私たちは”複雑系の科学”、中でもマルチエージェント・シミュレーションと云うアプローチ法に大きな可能性をみています。
- セルオートマタと進化ゲーム理論による交通流動解析-「流れ場の物理」の裏側に潜む数理ジレンマを解く!
- Multi Agent Simulationによる社会システムにおける協調創発機構解明
- パンデミックを阻止するために-ワクチン接種ゲームと複雑ネットワーク上の感染ダイナミクスの連成解析