エネルギー流体科学 研究内容
地球環境保全の観点から,エネルギーの有効利用と公害抑制に関する技術開発を進めるためには,気体の流れを科学する流体力学の知識が必要になる. 本教育分野では,高速輸送機器の高効率化を念頭においた超音速流れで発生する衝撃波や波動伝播などの現象の解明,レーザーを用いた複雑流れの 最先端可視化計測法の開発,流れの制御,コンピュータを駆使した流れの数値シミュレーションなどの研究を行っている.
超音速ノズルから発生するtransonic toneに関する研究
超音速噴流は,溶射装置,スートブロア,ジェットクリーナ,ガスカッタなど各種工業分野で幅広く利用されている.しかし,各種流体機械の高速化に伴い,容易には対処できない流体騒音が問題となっている.ノズルの作動圧力比が非常に低い場合,つまりラバルノズルの末広部に衝撃波が発生する場合において発生する騒音(transonic tone)に関してはほとんど研究がされていない.本研究は,transonic toneの発生メカニズムを調査することを目的として研究を行っている.
長い管路内を伝播する圧力波の減衰と変形に関する研究
自動車用エンジンや近年の列車の高速化により,排気管で発生する高周波排気騒音や,新幹線などの高速鉄道用トンネル出口から発生する衝撃的騒音(微気圧波)が問題になっている.これらの騒音に対する適切な低減対策を講じるためには,管内を伝播する圧力波の波動特性を知ることが必要である.長さ100mの波動伝播シミュレーターを用いて,非常に長い管内を伝播する圧縮波の誘起する流れを差動干渉計により密度測定するとともに,非定常境界層を伴う流れの数値解析を行っている.
MTVを用いた超音速マイクロ噴流の構造解明究
近年,超音速マイクロ噴流の研究が工学の分野,特にMEMS(Micro Electro Mechanical Systems),MFD(Micro Flow Devices),航空宇宙の分野で重要になってきている.本研究では超音速マイクロ噴流の速度を計測するために,流れ場中の分子にレーザーで「タグ」をつけ,タグをつけた分子を追跡する.この手法をMTV(Molecular Tagging Velocimetry)と呼び,本研究ではMTVを適用して流れの構造の解明を目的として研究を行っている.
高速非定常流れに適用可能な感圧塗料(PSP: Pressure Sensitive Paint)の開発
感圧塗料は流れ内にある物体の圧力を「面」として計測できる.この塗料は,航空機や自動車などの輸送機,風洞実験における模型や管路の圧力計測に用いられる.現在,この感圧塗料を用いる上で解決すべき課題となっているのが塗料の高速応答化である.一般に感圧塗料で計測した圧力変化は実際の圧力変化に対してある遅れ時間を持つ.本研究では,この遅れ時間の短い感圧塗料を超音速流れなどの高速非定常流れに適用することを目的として研究を行っている.