反能力主義運動の射程
Anti-Ablism Movement, Its Range
立岩 真也/
立岩 真也(中文)/
다테이와 신야/
TATEIWA Shin'ya(English) 2002年03月10日 16h00
Perspectives franco-japonaises sur le handicap : Politiques et participation sociale /
日仏の視点から障害を考えるー社会福祉政策と社会参加 Zoom
◇プログラム →
[PDF]
(当初の、開始時間が違っているプログラム:
[PDF])
◇報告・動画(0304収録) →
[video]/
[voice]
※(注記)主催者側から事前の動画の提出を求められ提出しました。上記がそれです。
□しろいしかく主催者より
◆だいやまーくURLは以下です:
https://u-paris.zoom.us/j/89623621839?pwd=Q2ZacnA5ZU55LzRDa1VSY2I4SlR5dz09
(ID : 896 2362 1839 ミーティングパスワード : 584396)
3日間に壇者も参加者も同じZoom上に集います。
◆だいやまーくまた、同時通訳機能の仕方について
1)ミティーングのコントロールで、通訳をクリックします。
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■しかくI
能力主義(ablism)の否定をまじめに捉えるべきである。
言葉を言葉とおりに捉えるなら、ablismは「障害者差別主義」ではない。それは、「できること」から利益を得て当然とする社会のあり方であり、できることに大きな価値を与えることそのものである。それを基本的には否定すべきだと考える立場がある。私はその立場に立つ。
→立岩
『私的所有論 / On Private Property』(立岩[1997]→
[2013]〜
[English],
Tateiwa[2016])
だから、反・能力主義の運動は反体制・反近代社会的なものである
★01。むしろ、そうであるにもかかわらず、なぜ「障害者の権利条約(CRPD)」といったものが成立しうるのかの方を問うた方がよい。
一つには、「できないこと(dis-ability)」全般から狭い意味での=障害学が言うところの「障害(disability)」を取り出し特別のものとすることだ
★02。その部分について、その人自身の責任がないことは明らかだから、その部分については社会的に対応することについて理解が得られやすい。だから対応がされる。しかしそれは、場合によっては、社会全体については問わないということにもなりうる。
→このことについては立岩
『不如意の身体』(立岩[2018])。
もう一つは、社会が補えば人はできる、できようになると主張される場合のことだ。実際そのとおりのことがたくさんある。だから、それは運動が求めてきたものでもあった。しかし、それでも、できないものはできないという人たちは残る。両者は両立しうるが、しかし、時に
★01 日本の運動は、左翼運動、それも共産党を批判する新左翼の運動が関わってきた部分がある。これは1970年前後の反戦運動など社会運動・学生運動の関係があってきたことも関わる。発達させることをよしとする主張に対して、対置されたところがあった。
そして、障害が重く、教育の機会もなかった人たち、一般就労も困難と思われた人たちが運動の中心になったことが関係するだろう(それは英国や米国、また韓国の場合とも異なる)。さらに、その社会は現実には十分に能力主義的な社会でありながらも、それを正しいこととはしない思想――それは仏教思想のある転換として800年ほど前からは存在するものだ――があってきたことも関係するかもしれない(→
□しろいしかくIII・立岩[2022])
◇立岩 真也 2010年08月11日
「障害者運動/学於日本・1――始まり」,
[English]/
[Korean]/
[Chinese]
◇―――― 2010年08月12日
「障害者運動/学於日本・2――人々」,
[English]/a>/[Korean]/
[Chinese]
◇―――― 2010年01月19日
「ただ進めるべきこと/ためらいながら進むべきこと」 [English]/
[Korean],Special Education and Multi-Knowledge Convergence 於:韓国・大邱大学,
★02 社会モデルの議論はimpairmentという契機を無視あるいは軽視しているという指摘は間違っている。impairmentに関わって(1)「dis-ability」とともに(2)「身体の現われ、現われの差異」があり、それに対する否定的な価値付与がある。また病は(3)「苦痛を与える」もの、(4)「死を近づける「ものである。社会モデルが身体や苦痛を軽視しているという指摘は、社会モデルが基本的には(1)に照準していることに関わり、(2)(3)(そして(4))の契機があること――もちろんそれは存在する――を言っている。さらに感染等を含む(5)「加害性」があるとされる。以上5つの契機があることについて立岩[2018]。
■しかくII
そのうえで、経済、経済に関わる政治について。Iに述べた「できないこと(dis-ability)」に関わる部分についてだけ、考えていって様々試していって、そこに示されるのは、まったく普通の穏当な「福祉国家」の方向である。しかし、きちんと考えると、国家という単位は基本的には支持されないことを確認した上でだが、その道筋しかない。そして私たちの世界において、分配の度合を高め、それを維持することは容易なことではない。そのために、社会運動は永続的に求められることになる。
1)所得保障。(私は
『ベーシック・インカム / Basic Income』(立岩・齊藤[2010]〜
[English])という本を書いている。しかしそのことは、その言葉を使う人たちの多くの主張に全面的に同意しているわけではない。)。
2)1)によって追加的な給付を不要とする人が達成するはずの生活が可能であるだけの追加的な給付がなされるべきだとする。→
『差異と平等 / Differences and Equalities』(立岩・堀田[2012]〜
[English])。
その給付は個人に与えられる場合、具体的にはPA(Personal Assistance)もある。また公共財として提供されるのがよい場合もある。
3)労働の価値を高めず、しかし、フルタイムでない働き方を認め、効率を求めない組織のもあり方を認め、そして介助を得て働くことができるようにする。
日本の運動は、50年以上、これらを求めてきて、2)については一定の成果を得ている。
◇立岩 真也 2010年08月17日 "Disability Movement / Studies in Japan 3: To Use Public Fund to Organize Services by Themselves"(「障害者運動/学於日本・3――税を使い自ら運営する」)
[English]/
[Korean]/
[日本語]
◇―――― 2015年11月30日 "PA (Personal Assistance): Acquiring Public Expense and Seeking Self Management",
East Asia Disability Studies Forum 2015 at Beijing
[English]/
[日本語]
◇―――― 2022年02月26日
「東アジアは介助で恊働できる/PA: East Asia can Cooperate」,
障害学国際セミナー 2022,Zoom [voice]
◇立岩 真也・齊藤 拓 2010年04月10日
『ベーシックインカム――分配する最小国家の可能性 / Basic Income: Possibility of the Minimal State that Distributes』,青土社,329+19p. ISBN-10: 4791765257 ISBN-13: 978-4791765256 2310
[amazon]/
[kinokuniya]
◇立岩 真也・堀田 義太郎 2012年06月10日
『差異と平等――障害とケア/有償と無償 / Differences and Equalities: Disability and Care / Paid Work and Unpaid Work』,青土社,342+17p. 2400
[amazon]/
[kinokuniya]
■しかくIII
そうして得られるもの、得ようとするものはなにか? 「唯の生」であり、唯の生でしかない。関連して、2004年に、
『ALS』(立岩[2004]〜
[English] [Korean])を書き、2008年・2009年に
『良い死 / Good Death (?)』(立岩[2008]〜
[English] [Korean])、
『唯の生 / Sole Life』(立岩[2009]〜
[English] )を書いた。「良い死」はここで批判的な意味合いで使われている。そんなものを求めることはない。唯の生でよい。それを、思想によって、そして財の物理的な配置によって妨げるのが私たちの社会であるからそれを批判し、批判するだけでは仕方がないからIIを要求し、そして実現しようとする。
例えば、
Singer, Peter / ピーター・シンガーは各国の障害者運動によって批判されてきたが、そのことは多くの人たちに知られず、動物を擁護する人として肯定的に評価される。そのような思潮が世界のかなりの部分に広がっているように思う。今ある社会を批判し別の世界を描く思想がそんなものであってよいのか。それはよくないと私は考える。だから今また1冊の本(
立岩[2022])を用意している。歴史を記録し記憶することと、思考を進めること、両方が同時に必要なのだ。
■しかく0
その記録することを私たちの研究所として進めようとしている。→
×ばつ社会アーカイブの構築」
日本語のコンテンツしかない。記録の量は膨大なので、残念ながら翻訳する余裕はない。ただ自動翻訳の性能があがっているようだから、そうした道具を使って、見ていただくことはできるかもしれない。
最後に、その現実・社会の記述のあり方について。例えば
「生-権力 / bio-power / bio-pouvoir」といった言葉が使われ、様々なことが言われてきたが、私は基本的に上記のように捉えた上で、その身体とともにある本人とその周囲にいる様々な利害を有する人の利害・得失をまず測ることができるし、そこからかなりのことを説明できると考えている。そんな思いがあって、さきに紹介した『不如意の身体』を書き、また、日本の第二次大戦後に起こったことの断片を記述した『病者障害者の戦後――生政治史点描』(
立岩[2018])を書いたのでもある。
◇立岩 真也 2004年11月15日
『ALS――不動の身体と息する機械 / ALS: Immovable Body and Breathing Machine』,医学書院,449p. ISBN:4260333771 2940
[amazon]/
[kinokuniya]
◇―――― 2008年09月05日
『良い死 / Good Death (?)』,筑摩書房,374p. ISBN-10: 4480867198 ISBN-13: 978-4480867193
[amazon]/
[kinokuniya]
◇―――― 2009年03月10日
『唯の生 / Sole Life』,筑摩書房,424p. ISBN-10: 4480867201 ISBN-13: 978-4480867209
[amazon]/
[kinokuniya]
◇―――― 2018年12月20日
『病者障害者の戦後――生政治史点描』,青土社,512p. ISBN-10: 4791771206 ISBN-13: 978-4791771202
[honto]/
[amazon]/
[kinokuniya]
◇―――― 2022
『人命の特別を言わず*言う』,筑摩書房
>TOP
■しかく0123にお送りしたもの〜これは今回使わない。
◆だいやまーく「人命の特別を言わず*言う」
◆だいやまーく履歴
http://www.arsvi.com/ts/h.htm
1960 佐渡島生
1990 東京大学大学院社会学研究科博士課程修了
現在 立命館大学大学院先端総合学術研究科教授
専攻:社会学
◆だいやまーくタイトル:人命の特別を言わず*言う
◆だいやまーく要旨
現在、
優生保護法(Eugnic Protection Act)のもとでなされた強制不妊手術の被害者による訴訟が全国で行われている(この法律の撤廃のきっかけを作った
安積遊歩との対談の本を2022年に出版予定)。今のところその結果ははかばかしいものではないが、それでも、当時の実態についていくらかのことは明らかになりつつ、私たちもそれになんらかの寄与ができれればと考えている。
そうした研究・活動が大切である。ただそれとともに、人命の扱いについて何を私たちは間違えたのかを考える必要があると考える。私はその作業を立岩[1997]で行なった(その第2版が立岩[2013])。そして、「障害者は病人ではない」という主張を受け入れつつ――病人とされることで障害者の運動から遠ざけられてしまった(今ようやく繋がりつつある)人たちのことについて立岩[2018b]――、いくらか混乱している議論を整理し、例えば「障害者であり病人であることもある」ことを立岩[2018a]で述べた。そして、今また、人の命の肯定・否定について議論を整理し、私の考えを示そうとしている(立岩[2022])。例えば、ピーター・シンガーは障害者運動によって批判されたが、そのことは多くの人たちに知られず、動物を擁護する人として肯定的に評価される。それはよくないと私は考える。歴史を記録し記憶することと、思考を進めること、両方が同時に必要なのだ。
◆だいやまーく文献
立岩 真也 1997
『私的所有論』,勁草書房→2016
On Private Property,
Kyoto Books
―――― 2018a
『不如意の身体――病障害とある社会』,青土社
―――― 2018b
『病者障害者の戦後――生政治史点描』,青土社
―――― 2022
『人命の特別を言わず*言う』,筑摩書房
■しかくいただいたお知らせ
さて、セミナーの開催についてお知らせいたします。
新型コロナウイルスの影響でセミナーが2022年3月10・11・12日オンラインにて開催します。
この三日間のセミナーは、社会政策、社会運動と教育という3つのセッションに分けられています。そのセッションごとに、20分程度の発表と10分の疑応答の時間という流れで行われる予定です。
セッション1:09時00〜11時00(フランス)/ 16時00〜18時00(日本)
セッション2:11時30〜13時30(フランス)/18時30〜20時30(日本)
プログラムを構成するには、2022年1月14日までに以下のものをお送りください:
◇自己紹介(学歴など)
◇タイトル
◇概要(350文字)
◇参考文献(主題に関連する5つの参照)
また、通訳者用の原稿を2022年2月15日までに送っていただけたら幸いです。
詳細に関してはどうぞお気軽にご連絡ください。
皆様のご参加をお待ちしています。
ギヨーム・イヴァンカ
■しかくcf.
◆だいやまーくIvanka Guillaume(イヴァンカ・ギローム) 20191102
日本での調査について 於:御徒町・焼肉明月苑→アフリカ日本協議会事務所