この文章は本の改版(第2版)発行にあたり初版のために書いた以下の文章をすこし変えたものでず。その本(第2版、というか題名未定)は2016年中に出版されます。
◇立岩真也 2009年08月10日
「人工呼吸器の決定?」
川口 有美子・小長谷 百絵編
『在宅人工呼吸器ポケットマニュアル――暮らしと支援の実際』,医歯薬出版,pp.153-166
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出版されました。↓
◆だいやまーく川口 有美子・小長谷 百絵 編 20160625
『在宅人工呼吸器ケア実践ガイド――ALS生活支援のための技術・制度・倫理』,医歯薬出版,168p. ISBN-10: 4263236777 ISBN-13: 978-4263236772
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[kinokuniya] ※(注記) als. v03.
■しかく答は決まっているのではないか?
人工呼吸器はつけるものだと私は思う。どうしてか。
息が苦しくなるのなら、苦しくなるようにする。苦しくなった私は、もし言えるなら、「そうします」と言う。言わないでも、できるならそうする。周囲の人たちは、その人が苦しそうだったら、そうする。あるいは言葉が通じるのであれば、「そうしますね」、と言う。
基本はそういうことではないだろうか。前に付く言葉が「水に溺れてしまって」でも「餅が喉に詰まって」でもよいし、「病気が進行して」でもよい。それだけのことではないだろうか。
もちろんそれですまないやっかいなことがあるからやっかいなのではある。実際につけない人もいる。それは本人が決めることだとか、いろいろなことが言われる。すこし考えてみよう。
それを短く書いたら以下のようになる。さらに詳しく、長く、いくつかの本に書いてきたら読んでいただければと思う(それで注をつけた★01)。またここに書いたことを批判したい人もいるだろう。おおいにけっこうなことだ。しかし、ここではごく簡単に、たくさんを省略して書いているから、より詳しく書いた方を読んで、そして批判してもらいたい。
■しかく特別なことか?
■しかく「終末期」ではない
■しかくどんな道具なのか?
■しかく選んで決めることか?
■しかくつけることとはずすこと
■しかくわからないのに決める?
■しかく抵抗でなく迎合になってしまう
■しかく必要なものは必要と割り切ってみる
■しかく家族により大きな義務はない
■しかく意識的に他人を入れること
■しかく今よりは楽になるように制度は使える
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日本は福祉の制度が整っていないひどい国だと言われていて、それには当たっているところも多い。しかし、重度障害者の介護についてはそう捨てたものでもないところもある。今よりは楽になる方法が、ほとんどの場合に必ずある。→
重度訪問介護(重訪)
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■しかく注
★01 ALSについては、医学書院刊の拙著
『ALS――上動の身体と息する機械』(2004)がある。これは私が書いた本というより、ALSになった人たちがどうやって病気のことを知ったのか、人々に何を言われたのか、どう思ったのか、そして呼吸器を付けることについて、やはりどんなことを言われ、どんなことを考えたのか、悩んだのか、何が起こったのか、どのように使ってきたのか、その人たち自身が書いた文章を紹介しながら、つけるとかつけないとか、はずすとかはずさないとか、そんなことについても考えてみた本だ。
そして、「安楽死《「尊厳死《について考えた本として、筑摩書房刊の
『良い死』(2008)
『唯の生』(2009)がある。また青土社刊の
『弱くある自由へ』(2000)
『希望について』(2006)にもいくつか関連する文章が収録されている。(もちろん人工呼吸器を必要とする病・障害は他にも様々ある。あとで本文でも紹介するように「生存学」http://www.arsvi.com/→「人工呼吸器」に関連するページがいろいろとある。「生存学 人工呼吸器」で検索するとすぐに出てくる。)
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