『被災経験の聴きとりから考える――東日本大震災後の日常生活と公的支援』
土屋 葉・岩永 理恵・
井口 高志・田宮 遊子 20180228 生活書院,257p.
last update:20180315
■しかく土屋 葉・岩永 理恵・
井口 高志・田宮 遊子 20180228 『被災経験の聴きとりから考える――東日本大震災後の日常生活と公的支援』,生活書院,257p. ISBN-10:4865000763 ISBN-13:978-4865000764 2500+
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■しかく内容
内容紹介
東日本大震災及び福島原発事故の発生から七年...社会的関心がすでに失われた今だからこそ、 震災が弱者と呼ばれる人びとに与える中長期的な影響を考える!
障害のある人たち、介護を抱えた生活、母子世帯、中壮年ひとり暮らしの男性、 生活保護受給世帯、単身の高齢女性たち... 五年間にわたって調査に入り続け、震災以前からあった脆弱性、「被災のその日」、 そして「今の暮らし」のあり様を丹念に聴きとる中から、支援のあり方を考える、 四人の研究者の「共同」の仕事の成果。
災害研究、社会福祉、社会学、障害学、社会保障、貧困研究に関心のある読者必読の書。
著者について
土屋 葉(つちや・よう)
1973年岐阜県生まれ。愛知大学文学部准教授。
主な著書・論文に、
『障害者家族を生きる』(勁草書房、2002年)、「東日本大震災と障害をもつ人の「生」」(天田城介・渡辺克典編著『大震災の生存学』青弓社、2015年)など。障害学研究会中部部会の一員として編んだものとして『愛知の障害者運動――実践者たちが語る』(現代書館、2015年)がある。
岩永理恵(いわなが・りえ)
1977年東京都生まれ。日本女子大学人間社会学部准教授。
主要著書・論文に、
『生活保護は最低生活をどう構想したか――保護基準と実施要領の歴史分析(現代社会政策のフロンティア)』(ミネルヴァ書房、2011年)、「借り上げ仮設住宅から住宅手当へ――社会的弱者の「被災後」から「平常時」の生活を支える制度の探究」(『貧困研究』14、2015年)「『非日常』と『日常』をつなぐ普遍的な住宅政策を――東日本大震災、阪神・淡路大震災、生活保護から考える」(『世界』2017.7、2017年)など。
井口高志(いぐち・たかし)
1975年山梨県生まれ。奈良女子大学生活環境科学系准教授。
主な著書・論文に、
『認知症家族介護を生きる――新しい認知症ケア時代の臨床社会学』(東信堂、2007年)、「認知症の人の『思い』と支援実践――語りと現実との関係から問い直す臨床社会学」『N: ナラティヴとケア』6、2015年)、「「できること」の場を広げる――若年認知症と折り合いをつける実践の展開が示唆するもの」(『現代思想』43-6、2015年)など。
田宮遊子(たみや・ゆうこ)
1975年東京都生まれ。神戸学院大学経済学部准教授。
主要著書・論文に、
「親の配偶関係別にみたひとり親世帯の子どもの貧困率――世帯構成の変化と社会保障の効果」(『社会保障研究』2-1、2017年)、「高齢期女性の貧困――レスキュー事業利用者からみる生活困窮の実態」(『個人金融』11-3、2016年)、「母子世帯の最低所得保障」(駒村康平編『最低所得保障』岩波書店、2010年)など。
■しかく目次
- 序章 なぜ被災経験の聴きとりに出かけたか――本書の背景と目的
岩永理恵
- 1 はじめに――はしがきのような話
- 2 どのような調査研究か――本書の位置と意味
(1)災害研究に対する本書の位置 (2)震災後の「社会的弱者」に対する中長期的影響に関する研究 (3)災害研究「専門外」で被災地から遠い私たちが研究する意味
- 3 調査研究の概要
(1)調査研究の対象と方法 (2)二種類の調査 (3)調査の経過
- 4 聴きとり調査=「被災と生活困窮に関する質的調査」について
- 5 本書の構成・各章の要約
- 第1章 障害者世帯とケア――非常時における福祉サービスのあり方から
- 1 はじめに
- 2 事業所および福祉施設が果たした役割
(1)一時的な避難所としての役割 (2)施設の混乱・職員の疲弊 (3)在宅の障害者への対応
- 3 恒久的な生活の受け皿としての施設
- 4 サービス利用継続を前提とした生活再建のための画策
(1)「ここから動けない」 (2)生活基盤を崩したくない (3)将来の施設入所を見越して 5 まとめ
- コラム1 「少しの蓄えを崩していく」暮らし
- 第2章 介護生活と震災――インフォーマルな資源と住まいの選択に注目して
井口高志
- 1 高齢期の介護と震災後の生活
- 2 事例記述
(1)介護に伴う世帯全体への影響 (2)震災後二人のケア責任者になる (3)夫の介護に合わせた転居 (4)現在の居住地にいることで成り立つ介護生活 (5)残っている自宅への帰還に悩む生活
- 3 介護を抱えた震災後の生活
(1)外部サービスの硬直性と生活を支えるインフォーマル資源 (2)資源へのアクセス可能性と住まう場所
- コラム2 最後は私たちだけになった
- 第3章 母子世帯の仕事――なぜシングルマザーは震災で仕事を失わなかったのか
田宮遊子
- 1 母子世帯が被災すること
- 2 アンケート調査からみる被災母子世帯の状況
(1)年間収入、住居の状況 (2)仕事
- 3 聴きとり調査からみる被災シングルマザーの仕事
(1)聴きとり調査の対象者 (2)なぜ仕事を継続できたのか?――震災前から勤める働きやすい職場 (3)人手不足の産業での仕事とキャリアアップ (4)被災後の離転職
- 4 おわりに
- 第4章 障害者世帯と生活の立て直し――「しごと」をめぐって
- 1 はじめに
- 2 「戻ってはいないが、落ち着いた」――工藤さん
- 3 「ここ以外だったらどこに行っても同じ」――小泉さん
- 4 「気もち的に楽になった」――堀内さん
- 5 「自己決定」と「自立」をとりもどす――武藤さん
- 6 まとめ
- コラム3 東日本大震災後、県外で生活をしている今
小野和佳
- 第5章 中壮年ひとり暮らし男性――被災と退職後のくらし
田宮遊子
- 1 中壮年ひとり暮らし男性という脆弱性の高いグループへの着目
- 2 「二〇一三調査」結果からみる中壮年ひとり暮らし男性の特徴
(1)不安定な仕事と低所得 (2)家族とのつながりの弱さ
- 3 聴きとり調査結果からみる中壮年ひとり暮らし男性の特徴
(1)仕事 (2)頼れる相手の存在と近所づきあい
- 4 みえにくい中壮年ひとり暮らし男性の生活問題
- コラム4 想定とは異なる語りを聴く
岩永理恵
- 第6章 被災地の生活保護受給世帯――再認識する不自由
岩永理恵
- 1 被災地と生活保護受給の経験
- 2 被災地に住む6世帯からみる生活保護
(1)震災前から生活保護(医療)に支えられる暮らし――車があれば仕事で自立できるのに (2)震災前から生活保護受給、通院と介護生活――「切ない」思い (3)震災前から断続的に単身で生活保護受給――「やっばり人間というものは気持ちが小さい」 (4)震災後から生活保護受給――自立生活に向けて (5)震災後から生活保護受給――制度利用への高いハードル (6)震災後に生活保護廃止――娘の視点から震災後の母について
- 3 生活保護と「当たり前の生活」
- 第7章 単身生活する高齢女性たち――被災後を支える社会関係とその微細な変容
井口高志
- 1 単身で生きる高齢女性たち
- 2 どのように生き、この先をどのように考えているのか
(1)娘に迷惑をかけぬように生きる (2)娘たちからの支援と親子関係の変容 (3)親族関係の中で生き、一人で身を処す (4)いわきの中で生き、一人の最期を考える
- 3 単身の高齢女性たちの語りから見えてくるもの
- 第8章 脆弱性とリスク――被災者支援と社会保障
田宮遊子
- 1 被災後の生活の変化は、災害によるものなのか、他要因によるものなのか
(1)住居の変化 (2)仕事の変化 (3)所得、介護の必要度の変化
- 2 被災者への公的支援
- 3 おわりに
- 第9章 仮設住宅で暮らす世帯の悩みのリアリティ――「いわき市内被災者生活状況調査」の自由記述の分析から
井口高志
- 1 はじめに
- 2 二〇一三年夏から二〇一四年年末にかけてのいわき市の状況
- 3 用いるデータと分析の方針
- 4 自由記述の全般的な傾向
(1)自由記述へのラベル付与 (2)量的に多い記述 (3)その他のラベル――人間関係と原発に伴う地域問題
- 5 記述率の高い悩みの内実はどうなっているのか?
(1)経済ラベルの中身のバリエーション (2)実態と悩みの表出との関連
- 6 おわりに
- コラム5 個々の自由記述データをどう生かすか?
井口高志
- 資料1 いわき二〇一三調査と二〇一五追跡調査
田宮遊子
- 資料2 いわき調査自由記述の基礎的集計
井口高志
- おわりに
■しかく引用
■しかく書評・紹介
■しかく言及
*作成:岩?ア 弘泰