書店発売中のビジネスガイド6月号(日本法令)に拙稿「改正育児・介護休業法に関するQ&A」から読み解く実務への影響(上)」が掲載されました(こちら)。
今年2月に厚労省から示された「改正育児・介護休業法に関するQ&A」を解説するものです(同Q&A原文はこちら)。
上ということは下もある訳ですが、この下が大変、くせものです。ゲラが先日上がってきまして、今見直しをしているところですが、なかなか読み応えあるものになりそうです。来月号のビジネスガイド(7月号)に掲載予定ですので、ご期待ください。
また「パパ・ママ育休プラス」という難しい制度が新たに本年6月30日から施行されますが、これについては、労政時報6月上旬号に同解説が掲載される予定です。
改正育児・介護休業法については、さほど話題になることもなく、まもなく施行を迎える訳ですが、考えれば考えるほど、人事労務担当者にとって思わぬ盲点が多い法改正です。今後、従業員の活用が増大すれば、色々と難しい法的トラブルが増加する懸念を持っています。また機会があれば、同改正法について、もう少し踏み込んで検討したものをどこかで書きたいですね。
2010年5月19日水曜日
2010年2月4日木曜日
「改正労働基準法・育児介護休業法の対応業務チェックリスト」(日本法令)来週出版
2010年1月20日水曜日
里帰りのことなど(改正育介法)
先週末、久しぶりに北海道大学社会法研究会に里帰りし報告をさせていただきました。
「改正育児介護休業法施行に伴う企業対応をめぐる法的課題」というテーマで、1時間ほど報告をさせていただいた次第ですが、やはり「生まれ育った」研究会はいいものです。
道幸先生の的確なご指導、院生・会員同士のやりとりが本当に自由闊達で、ここで自分が育てられたことを実感させられました。どの程度、育っているかは疑問なしとしませんが・・(笑)。
同日の議論で焦点となったのが、短時間勤務措置義務化の「権利性」、同制度の適用除外対象者を労使協定で定めることの可否、短時間勤務措置の希望者に対する配転の可否および復職問題でした。研究会の議論を通じて、大分問題が見えてきた気がいたします。
雪祭りの準備が始まりつつある大通公園の雪景色です。
2009年12月14日月曜日
「人を活かす働きかた」発刊について
清水信義編著「人を活かす働きかた」(日本リーダーズ協会)が出版されました。ワークライフバランスとダイバーシティの実現に向けて、総論部分では清水先生そして各論において、多様な執筆者が論考を掲載しています。私も原稿を掲載していただきました。
「サービス残業克服に向けて」p134以下
いわゆるサービス残業問題について、社内OJTという切り口等から検討を行った論考です。最近も労災訴訟で技術士試験対策のための在宅学習と過重労働との関係が争われた事案なども登場しています。今後は、これらの裁判例の検討も踏まえて、もう少し検討を深め、実務対応策を考えていきたいと思うところです。
ワークライフバランスという言葉だけが一人歩きしがちな問題に対して、多様な観点から議論を深め、かつ実務対応上参考となる論考が多く盛り込まれている本著はぜひお勧めをしたい一書です。
「サービス残業克服に向けて」p134以下
いわゆるサービス残業問題について、社内OJTという切り口等から検討を行った論考です。最近も労災訴訟で技術士試験対策のための在宅学習と過重労働との関係が争われた事案なども登場しています。今後は、これらの裁判例の検討も踏まえて、もう少し検討を深め、実務対応策を考えていきたいと思うところです。
ワークライフバランスという言葉だけが一人歩きしがちな問題に対して、多様な観点から議論を深め、かつ実務対応上参考となる論考が多く盛り込まれている本著はぜひお勧めをしたい一書です。
2009年8月20日木曜日
男性の育児休業取得率10%(2017年)は達成困難な数値目標か
先日、新聞各紙で育児休業取得状況(厚労省発表 雇用均等基本調査)が報道されていました(nikkei news)。
報道では育児休業取得率に焦点があてられ、中でも男性の取得率が低調である上(1.23%)、前年比で減少したことが、大きく報じられておりました。
また取得期間の状況についても、女性の育児休業取得が10カ月から12カ月が3割近くを占める一方、男性は1ヵ月未満が大半である旨、報じられております。
実は、男性の育児休業取得率を2017年までに「10%」に引き上げることが、政府のWLB行動指針の数値目標(こちら)で明記されておりますし、企業によっては次世代行動計画を策定し、ここに男性の取得率の数値目標を明記した例も多いように思われます。
上記の調査結果からみると、数値目標達成が絶望的に見えるところですが、実は男性の育児休業取得「率」を向上させるヒントが、この調査結果に隠されているようにも思われます。それは取得期間です。前述のとおり、男性の取得日数は1ヵ月未満が大半を占めています。
恐らく、この中には、妻が出産した直後の産後休暇中(産後8週間(労基法65条))に、夫が育児休業を取得したケースが相当程度含まれているように思われます。本ブログでも前述したとおり(こちら)、これは労使協定で、専業主婦(夫)の配偶者がいる労働者を制度の適用除外と定めた場合においても、妻の産後休暇中は育児休業を取得可能です。
私の知る限りでは、このような取得例はあまり見聞きしておりませんでしたが、調査結果を見ると、まだ数は少ないとはいえ、上手に男性が育児休業を取得されている例があるのだなと感心した次第です。たしかに、妻が出産してから退院まで、そして生活が落ち着くまでは、いかに役立たずな旦那(私のことです)とはいえ、買い物・洗濯・掃除など少しは役に立つこともあるでしょう(笑)。また、その間(産後8週間内)、雇用保険からの育児休業給付があれば、会社からの補てんがなくても(あればなお良いですが)、1~2カ月程度は十分にやっていけるものと思われます。
また先般からお伝えしているとおり、改正育児介護休業法が成立しました(こちら)。施行は来年夏頃を予定しているようですが、同改正では、更に男性の子育てができる働き方の実現を促すべく以下の制度等が新設されました。
・父母がともに育児休業を取得する場合、1歳2カ月(現行1歳)までの間に、1年間育児休業を取得可能とする(パパ・ママ育休プラス)。
・父親が出産後8週間以内で育児休業を取得した場合、再度、育児休業を取得可能とする。
・配偶者が専業主婦(夫)であれば育児休業の取得不可とすることができる制度を廃止する。
(これにあわせて、育児休業給付についても所要の改正)
お父さんの中には、子が1歳になるまで何があるか分からないので、産後に育児休業を使うのはやめておこうと権利行使を控えていた方もいるやもしれません。また配偶者が専業主婦であるため、そもそも育児休業は使えないと誤解していた方も多いと思います(実はわたしめも・・)。今回の改正は、これらの障壁をなくすものといえ、上手に労使双方が利用することによって、男性の育児休業取得率が急激に増加する可能性を秘めていると思われます(1~2カ月の取得の限りにおいて、前言撤回)。
そのように考えていくと、政府のWLB行動指針の目標数値(男性の育児休業取得率)は、十分に達成できるのではないでしょうか。もちろん、男性の育児休業期間についても、産後1~2カ月に限らず、今回の改正を活かして、更に上手く活用されるべきでしょう。
2009年6月29日月曜日
改正育児介護休業法成立について
平成21年6月24日、参議院において改正育児介護休業法が成立しました。内閣提出法案に対し、衆議院で一部修正がなされたものが、参院において全会一致で可決成立したものです(成立法はこちら 参議院HP)
内閣提出法案における改正ポイントは以前ブログでご紹介しております。また厚生労働省HPに見やすい資料が示されています(こちら)ので、そちらを参照いただくとして、ここでは短時間勤務制度の適用除外と企業名公表制度について解説いたします。
1 短時間勤務制度・所定外労働免除制度について
まず本改正において、3歳未満の子を育てる労働者に対する短時間勤務制度と所定外労働免除制度の導入が新たに義務化されることとなりました。但し100人以下の労働者を雇用する事業主については、同改正の適用が猶予されています(公布日から3年以内に見直しの予定)。
本改正の適用を受ける企業は、自社の就業規則・運用を再確認し、上記2制度が未整備の場合、施行(来年夏予定)までに、その準備を行う必要が生じます。
その際、問題となるのが、同制度の適用対象労働者です。まず所定労働時間が3~4時間の労働者に対して短時間勤務制度導入の要があるかですが、厚労省審議会では1日6時間以下の短時間労働者は法令上、適用除外とすることが確認されています。
これに関連して、1日の所定労働時間短縮は、1日6時間を上回る分の短縮措置が求められることになりそうです。
次に職場の性質や実施体制等に照らして、所定労働時間短縮が困難な業務も想定されます。例えば国際線のキャビンアテンダントの業務などは、その性質上、所定労働時間短縮が困難といえます。あるいは流れ作業による製造業務などもその業務の性質や実施体制によっては、短時間勤務制度が困難である場合も考えられます。また労働者数が少ない事業場において、当該業務に従事し得る労働者数が著しく少ない業務なども、その実施体制上、短時間勤務制度の導入が困難なケースが想定されるでしょう。
今回の改正では、このような業務の性質あるいは、業務の実施体制に照らして制度の対象とすることが困難な業務について、「労使協定」を締結することを条件に、短時間勤務制度等の適用除外とすることを認めました(但し、その代わりとしての配慮措置は必要)。
本法改正への企業対応においては、同制度の導入準備とともに、上記理由から適用除外とする労働者層の検討と労使協定締結のための交渉が不可避ということになります。なお、審議会において、経営側から、時間的支障等から同労使協定が締結できない場合、特例として就業規則による適用除外制度を認めるよう主張されていましたが、厚労省事務局はこれを否定する回答を行っています。施行までに労使協定を結べない場合は、適用除外としたい労働者層含めて、本改正法が適用されることになるものです。
参考資料 短時間勤務について(論点) 審議会資料 (こちら)
第90回労働政策審議会雇用均等分科会議事録 (こちら)
2 育休切りへの対応
前述のとおり、衆院において同法案の一部修正がなされています。同修正において注目すべきは「企業名の公表制度」の前倒し施行です(政府案では公布日から1年以内とされていたものを、公布日から3ヶ月以内に修正)。
現行法においても、育児休業申し出・取得を理由とした解雇その他不利益取扱いは禁じられており(育介法10条)、これに反する事業主に対して、厚生労働大臣は助言、指導もしくは勧告を行えることとしています(同法56条)。今回の改正では、この勧告に従わない事業主に対して、公表制度が新たに設けられることになりましたが、これを前倒しで施行するということです。
この前倒し施行の背景には、「育休切り」といわれる育児休業等を理由とした解雇その他不利益取扱いの蔓延があるようです。厚労省が先日、公表した指導状況を見ても、その深刻さが伺えます(こちら)。
今回の改正では、これらの問題を踏まえて均等室の行政指導・労使紛争斡旋権限が大きく拡充されています。今後の均等行政の動きも、大変注目されるところです。
2009年6月15日月曜日
改正育児介護休業法案の審議動向
先週末(6月12日)、衆議院厚生労働委員会で育児介護休業法案が可決され、衆議院本会議に上程されることが決定しました。今週中には衆議院を通過する見込みです(毎日新聞報道はこちら)
同報道によれば、内閣提出法案に一部修正が入ったものが全会一致で可決されたとのこと。衆院はもちろん参議院においても、特段問題なく可決され、法案成立するものと思われます。
まだ成立していませんが、同法の施行は来年4月1日を予定している上、企業・労働組合も相応の準備が求められる改正法案といえます。もうそろそろ情報収集の上、対応の準備を進められるべきと思われます。
過去ブログについて
改正育児介護休業法案の動向(労働開発研究会HP)(こちら)
育児介護休業法案の国会提出について(こちら)
育児休業法トリビア(こちら)
WLBと労使自治(こちら)
追伸
育児介護休業法案のとりまとめに尽力しておられた村木局長の逮捕の報を聞きました。大変残念な話といわざるをえません。
2009年4月16日木曜日
改正育児介護休業法案の国会提出について
昨年末、審議会から建議が出されていた「改正育児介護休業法案」ですが、昨日(4月15日)、法律案要綱が審議会に示され、同日「おおむね妥当」との答申が出されました(時事通信)。改正内容については、おおむね同報告書建議を法律要綱に取りまとめたものです(報告書の概略はこちら)。
法律案要綱において新たに明らかにされた点としては、改正項目に対する中小企業への適用猶予があります。従業員100人以下の事業主等については、今回新たに新設される所定労働時間の短縮、所定外労働の免除、介護休暇等は当面、適用しないこととされるようです。
厚労省・内閣が急きょ国会に育児介護休業法案の提出に踏み切った背景には、衆院解散が遠のいたとの情勢判断があるように思われます。同法案については、昨日の審議会において見られたとおり、労使双方に先鋭な対立がなく(もちろん不満は残る面は双方にあろうかと思いますが)、国会においても与党・野党間の激しい対立はさして生じないところと予想されます。すでに提出済みの改正派遣法案の前に、同法案を審議入りするのであれば、本国会での成立の成算は高いと思われるところです。
同法案が成立した場合、施行は来年度(4月1日?)を予定しています。同改正法への対応準備も相当程度、必要になるものと思われます。
法律案要綱において新たに明らかにされた点としては、改正項目に対する中小企業への適用猶予があります。従業員100人以下の事業主等については、今回新たに新設される所定労働時間の短縮、所定外労働の免除、介護休暇等は当面、適用しないこととされるようです。
厚労省・内閣が急きょ国会に育児介護休業法案の提出に踏み切った背景には、衆院解散が遠のいたとの情勢判断があるように思われます。同法案については、昨日の審議会において見られたとおり、労使双方に先鋭な対立がなく(もちろん不満は残る面は双方にあろうかと思いますが)、国会においても与党・野党間の激しい対立はさして生じないところと予想されます。すでに提出済みの改正派遣法案の前に、同法案を審議入りするのであれば、本国会での成立の成算は高いと思われるところです。
同法案が成立した場合、施行は来年度(4月1日?)を予定しています。同改正法への対応準備も相当程度、必要になるものと思われます。
2008年12月23日火曜日
(読書)「パリの女は産んでいる」中島さおり(ポプラ文庫)
「パリの女は産んでいる」中島さおり著(ポプラ文庫)
2006年、フランスの合計特殊出生率は2.0パーセントを超えました。日本から見て、その出生率の高さは驚嘆に値します。仮にここまで我が国の出生率が持ち直したとすれば、懸案の少子高齢化問題、年金問題の多くが解消されることになります。
では、フランスにおいてなぜ、これだけ合計特殊出生率が増加したのか。その疑問を「恋愛大国フランス」という観点から、ミクロレベルで描写したのが、本書です。実に読み応えがありました。日仏文化比較としても大変、勉強になります。特に「フレンチママのサポートシステム」、「大人中心のリラックス子育て」を紹介した4章、5章は考えさせるところ大です。
少子化問題については、育児休業あるいは児童手当拡充、WLBの促進などマクロレベルで論じられることが多いのですが、これらの政策も個人レベルに影響を与えてこそ意味があります。どうも本書を読んでいると、お金の問題(金銭給付)も重要ですが、それ以上に親が「子育て、大人としての生活、仕事、休息」の4者のバランスに満足しうるためのサポートこそが決め手となりうると感じた次第です。
この少子化問題については、答えはよその国にあるはずはなく、日本で見つけるほかありません。しかし、他国の取組や状況を知ることは、日本を相対化し、より深く問題への対応を考える上で有益ではないでしょうか。本書のような著作が多く読まれれば良いと思います。
2006年、フランスの合計特殊出生率は2.0パーセントを超えました。日本から見て、その出生率の高さは驚嘆に値します。仮にここまで我が国の出生率が持ち直したとすれば、懸案の少子高齢化問題、年金問題の多くが解消されることになります。
では、フランスにおいてなぜ、これだけ合計特殊出生率が増加したのか。その疑問を「恋愛大国フランス」という観点から、ミクロレベルで描写したのが、本書です。実に読み応えがありました。日仏文化比較としても大変、勉強になります。特に「フレンチママのサポートシステム」、「大人中心のリラックス子育て」を紹介した4章、5章は考えさせるところ大です。
少子化問題については、育児休業あるいは児童手当拡充、WLBの促進などマクロレベルで論じられることが多いのですが、これらの政策も個人レベルに影響を与えてこそ意味があります。どうも本書を読んでいると、お金の問題(金銭給付)も重要ですが、それ以上に親が「子育て、大人としての生活、仕事、休息」の4者のバランスに満足しうるためのサポートこそが決め手となりうると感じた次第です。
この少子化問題については、答えはよその国にあるはずはなく、日本で見つけるほかありません。しかし、他国の取組や状況を知ることは、日本を相対化し、より深く問題への対応を考える上で有益ではないでしょうか。本書のような著作が多く読まれれば良いと思います。
2008年12月10日水曜日
育児休業法トリビア(夫・妻双方が育休を取れる?)
(Question)A氏(男性、36歳会社員)は、妻(会社員)、3歳の長女の3人世帯で生活していたところ、先月、妻が三つ子を出産しました。明日には妻が退院し、6人家族となります。妻は産後休暇明け後、1年間の育児休業を取得しますが、先日、真顔で「私だけでは4人の子供の面倒は見れません。あなたも育児休業を取って、3歳の長女の面倒だけでも見てほしい」と言われました。
A氏も育児休業を取得することは可能なのでしょうか?なおA氏及びA氏の妻の会社には、育児介護休業法関係の労使協定がないことを前提とします。
先日、読売新聞の大津和夫さんに「改正育児介護休業法案の動向」について、セミナー講演を頂きました。その際、話題になった問題です。結論からいえば、A氏が育児休業を取得することはできます。会社はこれを拒むことはできません。
「そんなはずない」と思われた方が多いと思いますが、まず自社の労使協定をご確認ください。設問では労使協定がないことを前提としましたが、労使協定を締結し、「配偶者が専業主婦(夫)である場合、育児休業を取得させない」旨、明らかにしておけば、専業主婦(夫)のいる社員は育児休業を取得できなくなります。同協定は企業全体の7割で締結されているとのデータがあり、多くの企業ではあまり意識せずとも、そのような労使協定を根拠に、A氏の請求を拒むことが現状において可能です。
しかしながら、先日も本ブログで取り上げましたが、この労使協定による適用除外を撤廃すべきであるとの議論が、今回の育児介護休業法改正案において検討されています。同法案が国会に提出され、成立すれば、A氏(といいますが、A氏の奥様というべきか)の願いがかなうことになるものです。順調に来年度の通常国会で成立すれば、施行が平成22年4月1日を予定しているとのこと。
では法施行されれば、A氏含め、すべての社員が育児休業を取りだすかですが、実のところ、爆発的に増えることはないと思われます。育児休業中の所得保障の問題が残されているからです。雇用保険からの給付のみでやっていければよいのですが、給付水準が従前所得の5割程度にとどまることから、やはりどちらかが、働かざるを得ないと思います。あるとすれば、奥さんの退院後しばらく生活が落ち着くまで、あるいは長女長男の入学・入園時期などの短期間のみ双方が取得することは、ありうると思うところです。
最後にトリビアを一つ。
「奥さんの産後休業期間中(産後8週間まで)、夫は育児休業を取ることができる(労使協定があったとしても)」
※奥様が専業主婦であろうが、共稼ぎであろうが同じです。要はこの間は奥様も産後休業で休んでいるのであり、「育児休業」を取得している訳ではないので、夫が育児休業を取ることが当然可能となる)
私も実はよく知らなかったのですが(お恥ずかしい)、上記のとおりです。A氏もまず奥様の産後休業中、思い切って育児休業を取って、その後しばらく続く「激動の子育て期」における生活設計を金銭面含め、相談しておくことが良策と思います。 なおA氏は今のところ私のことではありません、念のため(笑)。
A氏も育児休業を取得することは可能なのでしょうか?なおA氏及びA氏の妻の会社には、育児介護休業法関係の労使協定がないことを前提とします。
先日、読売新聞の大津和夫さんに「改正育児介護休業法案の動向」について、セミナー講演を頂きました。その際、話題になった問題です。結論からいえば、A氏が育児休業を取得することはできます。会社はこれを拒むことはできません。
「そんなはずない」と思われた方が多いと思いますが、まず自社の労使協定をご確認ください。設問では労使協定がないことを前提としましたが、労使協定を締結し、「配偶者が専業主婦(夫)である場合、育児休業を取得させない」旨、明らかにしておけば、専業主婦(夫)のいる社員は育児休業を取得できなくなります。同協定は企業全体の7割で締結されているとのデータがあり、多くの企業ではあまり意識せずとも、そのような労使協定を根拠に、A氏の請求を拒むことが現状において可能です。
しかしながら、先日も本ブログで取り上げましたが、この労使協定による適用除外を撤廃すべきであるとの議論が、今回の育児介護休業法改正案において検討されています。同法案が国会に提出され、成立すれば、A氏(といいますが、A氏の奥様というべきか)の願いがかなうことになるものです。順調に来年度の通常国会で成立すれば、施行が平成22年4月1日を予定しているとのこと。
では法施行されれば、A氏含め、すべての社員が育児休業を取りだすかですが、実のところ、爆発的に増えることはないと思われます。育児休業中の所得保障の問題が残されているからです。雇用保険からの給付のみでやっていければよいのですが、給付水準が従前所得の5割程度にとどまることから、やはりどちらかが、働かざるを得ないと思います。あるとすれば、奥さんの退院後しばらく生活が落ち着くまで、あるいは長女長男の入学・入園時期などの短期間のみ双方が取得することは、ありうると思うところです。
最後にトリビアを一つ。
「奥さんの産後休業期間中(産後8週間まで)、夫は育児休業を取ることができる(労使協定があったとしても)」
※奥様が専業主婦であろうが、共稼ぎであろうが同じです。要はこの間は奥様も産後休業で休んでいるのであり、「育児休業」を取得している訳ではないので、夫が育児休業を取ることが当然可能となる)
私も実はよく知らなかったのですが(お恥ずかしい)、上記のとおりです。A氏もまず奥様の産後休業中、思い切って育児休業を取って、その後しばらく続く「激動の子育て期」における生活設計を金銭面含め、相談しておくことが良策と思います。 なおA氏は今のところ私のことではありません、念のため(笑)。
ラベル:
WLB
2008年11月29日土曜日
WLBと労使自治~育介法改正論議から~
昨日、厚労省労働政策審議会雇用均等分科会を傍聴しておりました。育児介護休業法改正案についての審議が山場を迎えています。審議会は予定調和的なものが大半ですが、さにあらず。労働側が席を立つそぶりをみせたり、あるいは公益委員と事務方が叩き台の解釈について、やり取りするなど、傍聴者としては、聞きごたえ十分の審議会でした(笑)。
その場で、個人的に最も聞き耳を立てたのは、表題の労使自治と育児介護休業法の両立支援との関係です。現行の育児介護休業法では、労使協定を締結することによって、専業主婦(夫)がいる従業員からの育児介護休業請求権を失わせることが可能とされています。大半の企業では、労使協定を締結し、これらの権利行使を排斥しているものですが、今回の改正法では男性の育児参加を促進するべく、同適用除外を撤廃する方向で叩き台が示されています。
同日、使用者側委員からは、労使自治を尊重する立場から、法による「撤廃」は望ましくないのではないか、従来どおり労使で話し合いの上で、認めるか否か決すればよいのではないかとする意見が示されました。
これに対して、公益委員の樋口先生が以下のような趣旨で見解を述べられました(近日中に厚労省HPに議事録が掲載されるものと思われます。以下は私のメモからまとめた要旨です)。
(佐藤先生からの育児介護休業法を取り巻く環境が大きく変わっているとの趣旨の発言を引き取った上で)
専業主婦(夫)を有する配偶者が育児休業を取り、子育てに参加したいという個人的な願いを、集団的な労使協定で排斥することには限界があるのではないか。労使自治は当然、大切ではあるが、それも法の枠内にあるものではないか。
労働法学では、以前から労働協約の規範的効力の限界が論じられてきました。樋口先生のご見解は、その際の議論(西谷敏先生など)を思い起こさせました。近年の労働法制は高齢者雇用延長制度など、労使協定を様々な形で絡ませる傾向があります。今回の育児介護休業法改正の議論は、これに対する反省をもたらす可能性があるのか関心を持ちました。
育児介護休業法改正案については、次回の審議会で事務方から「素案」が示される見通しです。昨年とは一変して、なかなか調整に難航しそうな雰囲気を感じた次第です。
その場で、個人的に最も聞き耳を立てたのは、表題の労使自治と育児介護休業法の両立支援との関係です。現行の育児介護休業法では、労使協定を締結することによって、専業主婦(夫)がいる従業員からの育児介護休業請求権を失わせることが可能とされています。大半の企業では、労使協定を締結し、これらの権利行使を排斥しているものですが、今回の改正法では男性の育児参加を促進するべく、同適用除外を撤廃する方向で叩き台が示されています。
同日、使用者側委員からは、労使自治を尊重する立場から、法による「撤廃」は望ましくないのではないか、従来どおり労使で話し合いの上で、認めるか否か決すればよいのではないかとする意見が示されました。
これに対して、公益委員の樋口先生が以下のような趣旨で見解を述べられました(近日中に厚労省HPに議事録が掲載されるものと思われます。以下は私のメモからまとめた要旨です)。
(佐藤先生からの育児介護休業法を取り巻く環境が大きく変わっているとの趣旨の発言を引き取った上で)
専業主婦(夫)を有する配偶者が育児休業を取り、子育てに参加したいという個人的な願いを、集団的な労使協定で排斥することには限界があるのではないか。労使自治は当然、大切ではあるが、それも法の枠内にあるものではないか。
労働法学では、以前から労働協約の規範的効力の限界が論じられてきました。樋口先生のご見解は、その際の議論(西谷敏先生など)を思い起こさせました。近年の労働法制は高齢者雇用延長制度など、労使協定を様々な形で絡ませる傾向があります。今回の育児介護休業法改正の議論は、これに対する反省をもたらす可能性があるのか関心を持ちました。
育児介護休業法改正案については、次回の審議会で事務方から「素案」が示される見通しです。昨年とは一変して、なかなか調整に難航しそうな雰囲気を感じた次第です。
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