十勝毎日新聞電子版
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2025年11月号

特集/おいしいチーズがある幸せ

お知らせ

10/28 Chai11月号発行〈特集/おいしいチーズがある幸せ〉

年少の子 遊び方探りながら〜あのね、こどもはね(6)滝澤真毅氏

音更大谷幼稚園で「雨」の遊びをする筆者と園児

5月のある日。短大の授業の合間に、隣の音更大谷幼稚園にお邪魔しました。その日は何やら楽しそうなことをやっていた年少組をのぞきにいきました。すると一人の女の子が目にとまりました。

その子はクラスの他の子どもたちがテープひもを裂いて「雨」を作っているときに、少し離れたところで一人で塗り絵をしていました。

私はこういう「集団から離れ気味の子」に、なぜか引かれるのです。私はその子が色を塗っている塗り絵を見ながら、その絵のこと、その子が選んだ色のことなどについて話しました。とは言っても、その子はとても無口で、私が話しかけてもほとんど声を出さずにうなずいたり首を振ったりするばかりでしたが。

その子の様子を見ていると、少し色を塗っては手を止めて「雨」作りをながめているように見えました。そこで私は、その子の塗り絵の手が止まったところで、「あっちで『雨』を作ってみる?」と聞いてみました。するとその子はうなずいて立ち上がり、私の手を握って、他の子が「雨」を作っている場所に移動しました。

そして私といっしょに「雨」を作りました。そのあとは他の子が「雨、ザーッ」と言いながらテープひもの「雨」を私の頭や体の近くでヒラヒラさせて、私が「あー、ぬれちゃった」と言ってタオルで拭くふりをする遊びに、少し遠慮がちに、でも笑顔で参加していました。

この子はまだ幼稚園でどんなふうに過ごすと楽しいのかを探っている段階なのだと思います。でも安心できる人に囲まれて、いろいろな楽しいことに出合って、この原稿が掲載される夏休み前のころには、すっかり「やりたいこと」がたくさんある幼稚園生活の主人公になっているんじゃないかな。(滝澤真毅)

<たきざわ・まさき>
帯広大谷短期大学社会福祉科教授。保育士。臨床発達心理士。音更大谷幼稚園アドバイザー。専門は発達と保育の心理学。北海道大学教育学部出身。釧路短期大学、山形短期大学(東北文教大学短期大学部)を経て2010年から現職。短大の仕事のほか、保育現場での研修や相談、自治体の乳幼児健診の発達相談なども担当している。

あのね、こどもはね

帯広大谷短期大学の5人の先生による寄稿。社会福祉科子ども福祉専攻 青木謙介教授(専攻長)、同 高橋由紀雄准教授、同 前田恵専任講師、同 滝澤真毅非常勤講師、看護学科 嶋田純助教。

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