洪水吐き拾弐景
《第七景》 志津見ダムの堤頂道路兼用型

解説:箱石 憲昭
写真提供:(株)大林組

下流面から見ると変わった顔つきをしている志津見ダム。天端橋梁がない。非常用洪水吐きに、これまでにない堤頂道路兼用型の越流頂が採用されているからである。道路橋として必要な高欄高さを確保した、車両が通行可能な特殊な形の越流頂となっている。設計越流水深は3.3mであり、ダム設計洪水流量流下時には厚さ約3mの水脈がこの越流頂を流れていくこととなる。採用にあたっては、土木研究所で様々な形状についての水理模型実験が行われ、基準を超える負圧が発生しない形状が求められ、放流能力が確認されている。

天端付近にある角のような構造物は、常用洪水吐きの吐口が越流水で覆われないように、水脈を分断するためのものである。志津見ダムの常用洪水吐きは高圧部分管路型となっており、堤体内の開水路を高速で流れ下る水脈に空気を供給するため空気管が設置される。通常その入口は天端橋梁のピアなど堤体下流面の非越流部に配置される。しかし、志津見ダムでは天端のほぼ全幅が越流頂であり、越流時には堤体下流面のほとんどが水で覆われてしまう。そこで、この構造物を利用して空気管の入口を配置している。この構造物の形状も、多くの形状の水理模型実験の結果見出されたものである。


(これは、「月刊ダム日本」からの転載です。)
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(2015年10月作成)
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