・洪水調節として、東条川では、分水堰地点の基本高水流量 185m3/sのうち67m3/sの洪水分水を行い、ダム地点では、計画高水流量 110m3/s(東条川からの導水量67m3/sを含む)のうち 101m3/sの洪水調節を行い、東条川及び小仁熊川沿川地域の水害を防ぐ。
・既得用水の安定化として、東条川及び小仁熊川沿川の本城村田屋地点下流の既得用水の補給と既得取水の安定化を図る。
・水道用水の確保として、本城村(人口約2300人)、坂北村(人口約2300人)に対し、ダム地点において、各々新たに最大 500m3/日の取水を可能とするものである。
・前述のように、東条川と小仁熊川の両流域を小仁熊ダムによって洪水調節を図っている。このため東条川の横溢流堰により分水、道水路(開水路)、さらに導水路トンネルを新設し、小仁熊川に分流工を設けて疎水している。小仁熊ダム周辺は、JR篠ノ井線、長野自動車道(平成4年全線開通)国道 403号線が錯綜しており、交通が便利な地域である。そのため、本城、坂北両村は、松本市のベットタウンとして、村から住宅分譲の開発を行ったという経過がある。このようにしてみてくると、小仁熊ダムは、東条川、小仁熊川沿岸一帯の洪水を防ぎ、一方水不足に対応した一層重要なダム造りであったといえる。
・筑北地域は年間降水量1000mm程度の少雨地帯であり、11ケ所の大型砂防ダムは全て水溜りダムとなっている。上記のように分水しているため、揚水ポンプを設置して、この貯留水を不特定用水として還元している。
・ダムサイトには、明治末から昭和30年代にかけて石炭が採掘されており、空洞によって一部湛水後の漏水経路となる可能性があることから、斜め坑トンネルを掘削し、コンクリートを充填することによって、カーテングラウトと合わせて止水対策を実施した。