長谷川豊 【公式ブログ】 長谷川豊のAMERICAN JOURNEY FINAL

カテゴリ: あの日の言葉


「なぁ、蘇りとか、来世とか、いろいろ言うやつ、いるけどさ、

多分、人生って、一回こっきりだと思うんだ。

その人生をどう生きるのかってのはさ、お前が判断したらいいと思うんだけどさ...」



バスが到着する時間が分かったようだ。

笠井さんが戻ってくる。


「長谷川さ、俺、思うんだけどさ、


お前の人生って

お前のためにこそあると思うよ?


お前の信じる道を前を向いて進んで、

そのお前を信じない子供はいないと思う。忘れるなよ、

お前の今は
たった一回しかないんだからな」


小声で、後悔するなよ、と言った時、
笠井さんは到着した。


呆然とした。

僕、これ程の男と一緒に仕事してたのか...。


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これが、フジテレビを迷いなく僕が辞めた理由。


一言の反論も出来なかった。


僕は、

後悔したくない。

そう思った。



3人の子供の父親だからこそ、

我慢して、理不尽を受け入れて、

ただ、悲しそうな顔をしてる父親を見せるのはなにか違う。

そう思った。


お世話になったフジテレビには最大限の感謝をしつつ。



でも、やっぱり、僕から
「表現すること」を奪ったら、

何も残らない。カスしか残らない。


分かってる。

こんな面倒くさいアナウンサー、誰も使わないって。


でも、

でも!

僕はナレーションだってできる。

実況だってできるぞ!

何より、僕は日本全国、1700箇所以上の取材を繰り返し、

2500以上のニュース伝えてきた!

どこかの局で、リポーターでも募集してないか?!


自分の体験をみんなに伝えることだってできる!

講演とかあれば、結構上手にしゃべれるぞ!


僕の培ったプレゼンテーションの力、

企業の研修とかで聞きたいところ、ないかな!?

怪しげなプレゼンコンサルタントなんかより、

間違いなく、僕の方がうまいぞ(たぶん)!


僕はアナウンサーではなくなった。

でも、僕の根幹にある、表現する力は

絶対に失われてなんかないはずだ。

会社員でなくなった以上、


僕の翼にはもう枷(かせ)はないと信じる。




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今、僕は無職です。


でも大丈夫。


僕の家族は、このブログを通じて、

今、笑ってます。


37歳、無職の家庭で、

こんなに明るい家庭、ないんじゃないか?


さぁて、取り返す旅に出るとするか。


フジテレビ社員の肩書は失ったんだ。


せっかくだ。

それ以外、全部取り返してやる!

名誉も、マイクも、信頼も、友人も!

その上で、家族も守ってやる!



「僕で良ければ行きましょうか?」


あの日、たった一言から始まった、

僕のジャーニー。


僕はあの日の言葉を全く後悔していない。


僕の第2の人生の冒険は...



きっと始まったばかりだ!!


さて、ハローワーク行って失業保険、申請してこよっと♪


「駄目だよ!ハセ!!お前さんには3人も子供がいるんだから」

笠井さんは変わらず、
大人で、正しい意見を言う人だった。

悔しい思い、
マイクを奪われた動揺...

処分を言い渡された直後、
僕は小倉さんや笠井さんと
バス停近くの静かな場所で話をしていた。


自分に起きたことを出来るだけ説明する。
でも、そもそも、何が何だかわからない部分も多い。

黙って聞いている小倉さん。
残念なんだろうな。
申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

僕のマイクに対する思いは十分に知っている笠井さん。
そして、
我が家に子供が3人いることも知ってる笠井さん。
笠井さんの家も、お子さんは3人だ。

僕が早まったことをしないか、と心配してくれていた。


「しっかりと処分を受け入れて、まずは大人しくすることだよ!」

「おとなしくしていれば、人は、きっとハセの話も聞いてくれるようになるよ!」


笠井さん、どれだけ今まで迷惑かけてきたろうか。

こんなに心配かけて...

自己嫌悪に陥る。



小倉さん、ほとんどしゃべらないなぁ...。

昔から人見知りで、シャイだからなぁ。


でも、忘れもしない、

初めて、とくダネ!について、デビューした日だ。



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「今日が初登場!長谷川君です!よろしく!」

「はい!お伝えします!!」


テレビ上では見えなかったろうが、

僕は足と手が震えていた。


いかん。

緊張とかいう状態を超えてる...。

手足の先がしびれてきた。

どんだけ?


視聴率はおよそ10%。

日本人の人口を...1億2000万人として...

うわ...

1200万人の前で、僕、しゃべってるのか...。

それってすごい。


いったんCMに入る。

どっと噴き出す汗。

何か月分かのカロリーを消費した気分だ。


うわ!

小倉さん、席から立ち上がった!

怒られる!


「おーい、マネージャー、たばこ」


当時、小倉さんはタバコを吸っていた。

珍しい。

このCMではいつもタバコなんか吸わないのに。


小倉さん、

僕の肩をポンとひとたたき。


ん?


「だいじょうぶだよ。どれだけミスしても、絶対うまくひろってやるから安心してしゃべりな」


あの時、小声で言われたひとことは、

僕の耳にまだ残ってる。


照れ隠しで、

タバコ吸うふりをして。

僕の後ろを通りながら、こっそり言ってくれた。


佐々木恭子さんも、

そんな小倉さんの性格を知ってた。

ふふ、と黙って微笑んでた。



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あれから14年。



どんなに頑張っても、

うまくひろえん状態になっとるがな(涙)!


なにしてんだ!?僕は!

恩返しをしたくて!

一回りでも成長したくて、

新しいアメリカの地に行って!!


結局、迷惑、かけてんじゃん!


悔しくて、たまらなくなる。



バスの時間が近づく。

成田空港に到着する時間を確かめに笠井さんが時刻表のところまで走っていってくれた。


じっとしてられないんだろうな。


色々と話してくれたけど、

笠井さんも動揺してるのは明らかだった。


その時、

ほとんど口を開かなかった小倉さんが

じっと僕の目を見つめて話し始めた。





「なぁ...」


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