「ニート株式会社」の形態及び、理念に対する批判
- 2013年12月24日
- 社会
- NEET株式会社
- 2 comments
- 高木克俊
知り合いの古谷経衡さんがBLOGOSで『「ニート株式会社」の気持ち悪さ』という記事を書いていて面白かったので、私なりの「ニート株式会社」の問題点を解説してみたいと思います。
先日、日本全国のニートからなる「NEET(ニート)株式会社」というモノが出来、12月10日に設立記者会見を開いたという。正直な処、第一印象でこのニート株式会社に感じるのは「気持ち悪さ」しかない。日本中のニート達が集まってその全員が取締役に就任した、ということらしい。搾取・被搾取の上下関係を造らないためだとか。(中略)
ともあれ、このニート会社に感じる気持ち悪さというのは、同社の設立理念を謳ったこの部分。
「ぬるくて気だるい、成熟し閉塞した日本の社会を少しでも面白くしていくには、現状に違和感を抱きはみ出してしまったアブノーマルでマニアックな少数派が、新しいビジネスやワークスタイルを実験的に模索していくことが必要」(マイナビニュースより引用)
彼らの言いたいことは分かる。しかし、彼らが最も勘違いしているのは、"成熟し閉塞した日本の社会"というのが自分たちの外側の、ここではない、どこか遠くに存在するもので、自分たちはその中に包摂されていない存在であるか、若しくはその"成熟し閉塞した日本の社会"の犠牲者こそが自分達である、という隠しきれないニュアンスが含まれていることだ。これこそがニート株式会社が抱える最大の矛盾であり自己欺瞞だ。
何故なら、"成熟し閉塞した日本の社会"が産み出したものこそが彼らニートであり、"成熟し閉塞した日本の社会"の分身こそが彼らそのものだからである。成熟社会とか閉塞社会と、ニートは不可分ではない。彼らは戦後空間という日本のある種の成熟が産み落とした申し子そのものだからである。
ここまでの意見に関してはほぼ100%同意である。おおよそ、現代におけるニートの存在というものは、「現状に違和感を抱きはみ出してしまったアブノーマルでマニアックな少数派」ではなく、むしろある種の現代におけるニヒリズムの象徴的な一形態である。孤独な群衆つまり、バラバラに分断された個人の寄せ集めである社会集団において、仕事には社会参加にも意義を見いだせなくなって、社会参加から撤退した人間ではあっても、なお彼らは現代社会の病理を象徴する存在であって、吐き出されたどころか非常に強力にそこに埋め込まれている存在で有り続けています。無論、ビジネス社会の文化にどっぷり浸かっている人間にとってもそこからの脱却が極めて困難ではありますが、ニートに関して言えば、自立の手段を持ち得ないという意味では、ビジネス社会の文化にどっぷり浸かって「エイエイオー!!」とやっている人間以上に現代社会の抱えるある種の業から逃れ難く組み込まれていると言ってよいのではないでしょうか
さらに言えば、彼らは現代社会の中に自分たちが深く組み込まれている意識すらない時点で、まったくもって救いがたいように思えます。現代社会の抱える閉塞感や違和感から少しでも逃れたい、距離を置きたいと願う全ての人にとって、まず重要なことは、自分自身がその現代社会の持つ価値観やそこから生じる病理にどっぷりと骨の髄まで浸かりきっているのだという謙虚な自覚と、その価値観や病理がどのような構造を持っているのかを冷静に見極めるだけの知性であると思います。その意味では、自分たちは現代社会の病理に染まらず、その枠外から閉塞した社会の違和感を眺めているなどといった錯覚が まずもって最初の段階でつまずいているように思えるのです。
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