要するに「ミソジニー」などというものはない。合点していただけたでしょうか?
博士:だからと言って、女性を差別していいことには――!!
妹:また別な時、伊集院はラジオのスタッフにブスな女性がいる、という話をしていたことがあったの。その女性は「お前ブスだなあ」と言うと、「そうなのよぉ、私ブスなの」と笑いながら返してくるような性格のいい女で、ラジオのコントなんかでちょっとしたエロネタをやる時、「うっふ〜ん(はぁと)」みたいな声が必要になると、ノリノリで演じてくれると......*2。
助手:え? だ......だから?
妹:わからないの? 伊集院は、「できれば女性と仲よくやりたい」と言っているの。「デブ」に「ドブス」が対置されているのもそれで、底辺同士と認めあった上で、仲よくケンカがしたい、と。上の『トムとジェリー』の例えはそんな心情の表れよ――むろん、その企てがうまく行くかどうかはまた、別問題だけど......*3。
博士:そもそも人間の美醜に囚われること自体が、悪しきジェンダー構造の――。
妹:そうしたレトリックも、きっと欧米の苛烈なカップル文化に対する、一種の緩衝材としてなら意味を持つのかも知れないわね。
助手:確かにフェミって欧米被れ、って感じがするよな。
妹:アメリカのカップル文化も、「恋愛せざるは人にあらず」というある種の文化的圧力であり、いい面ばかりじゃないと思うわ。でもだからこそ、底辺は底辺同士でくっつく、という文化にもつながってるんじゃないかしら。そして上の伊集院の理想も、これに近い気がするの。
助手:で......でもそれは、本田透が批判した、恋愛資本主義社会*4では.........!?
妹:むろん、下手をすればそうした抑圧的なものにもなるでしょうね。ただ、本田の批判したバブル期の恋愛資本主義は、徹底的に男性性を否定して、男性を女性に尽くすものとした上に成り立っていたところに問題があったんだと思うわ。
「ある程度の男女平等」をフォーマットにして形作られたカップル文化は、私たちが「異性にモテたい」という煩悩を捨てきれないと前提するならば、そんなに悪くない落としどころのような気がするんだけど......。
博士:し......しかし、女性をバカにすると言うのはじゃな――。
妹:あぁもう、うるさいわね......こういうのはどう?
視聴率があまりに悪いので、呪いが解けましたという設定で交代させられる、モモレンジャー役のドブス
2009年9月21日放送
妹:これを読み上げながら、伊集院が泣き笑いだったことが、非常に印象的だったわ。
助手:そうそう「非道すぎる!」って言ってた。新モモレンジャーが仲間に「そんなに可愛かったんだ」「非道い呪いをかけられてたもんだ」と口々に言われるシーンにまで、トークを広げて。
妹:「だから、伊集院はブスの味方だ」と言うつもりはないわ。でも、こうしたネタっていうのは「自虐」、うぅん、伊集院風に言えば自らの格好悪さを笑う、「自ギャグ」のできる知性があってこそなの。
博士:う......うむ......百歩譲って、伊集院はいいとしよう。しかしそれはネットにのさばるミソジニーとは......。
妹:まず、あなたたちの言う「ネットにおけるミソジニー」というものの実態が、私にはわからないわ。「女性の気に入らない発言はみなミソジニー」じゃ、女性に関する全ての発言がそうだと言えてしまうものね。
でも、そんな風に好ましくない発言を圧殺することを考えるよりは、伊集院みたいに「発露させ、昇華する」ことを考えた方が前向きだと思わない?
助手:え? つまり、ネタにすることでルサンチマンをも昇華していこう、ってこと?
妹:えぇ。伊集院の中に、そうしたモチーフがあるのは明らかよ......。
博士:あ......あのぅ......その、ホモソーシャル......。
妹:あぁもう、うるさいわね。それについては次回以降。
*2 これは記憶で書いているので、実際のトークとは細部で異なっているかも知れません。
*3 例えどんな風采の上がらない男であろうと、「ミスタードーナツ」の店長になれば、バイトの女子高生にモテモテになると言います。つまり、彼女ら目線の「エラい、大人の男の人」の位置にいるのがミスドの店長、ということですね。同様に伊集院がこの女性とうまくやっているのは、あくまでタレントである彼自身が「エラい」から......という側面もあり、そうなるとぼくたちが彼のやり方を真似てうまく行くかとなるとまた別、という気はします。
*4 80年代のバブル期以降、恋愛がカネにまみれたことを批判した言葉です。
■しかくこの記事に関連する動画はこちらご覧ください。
「毒舌な妹botの伊集院光教室(その1)(http://www.nicovideo.jp/watch/sm25354990)」
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