滑空砲
滑空砲(かっくうほう)とは、空中を滑空させて上空から砲撃を行う砲である。第二次世界大戦後に発明された。
なお、ウィキペディアにおいては「滑腔砲」と書いて「かっこうほう」と読むのが正しいとしているが、滑空する砲であるのだから「滑空砲」と書いて「かっくうほう」と読むのが正しい。この砲が日本で報道されたときに「空」を「腔」と誤植したために前述の誤りがウィキペディアの人も誤解するほどに広まってしまったと言われている。
概要[編集 ]
第二次世界大戦では、大規模な火砲の投入が行われた。その実戦経験から火砲にはより長い射程が求められるようになった。また、航空機や無線の発達により砲弾の発射位置が特定しやすくなり、砲兵部隊が敵の砲兵部隊や航空隊により反撃を受ける危険性が高まった。これらの問題に対する解決策のひとつが、砲そのものを滑空させ上空から砲撃を行うという方法だった。
滑空砲は一般的な野砲、榴弾砲と比べて軽量に作られた砲にグライダーと同様の翼をつけた構造となっている。初期の滑空砲は航空機から投下されて滑空し、時限装置で設定した時間になると発砲するというものだった。2発以上の弾丸を発射することはできず、命中精度も非常に悪い物であった。また、重量の制約がある以上、砲の口径は小さい物にならざるを得なかった。
その後、電子機器技術の発達により、目標への到達時刻をより正確に判定することが可能になり命中精度は高まった。さらに今日ではコンピューター技術の発達と航空技術の発達により、飛行中に目標を確認し翼により砲の姿勢を制御し目標に向けて砲弾を撃ち込むということも可能になった。砲自体の大口径化(当然最新の通常の砲には劣る)、軽量化も進み、複数弾の発砲が可能な砲も登場している。ただし、一度発砲すると通常の砲とは違い地面に固定されていないために反動で大きく姿勢が変わってしまうので、複数弾発射可能なのは比較的反動の小さい小口径の砲に限られている。
滑空させる手段[編集 ]
砲を滑空させる手段としてはグライダー同様に航空機により曳航して上空で切り離すのが一般的である。もっと簡便な手段としてはウインチで曳航する方法がある。滑空距離は短くなるものの航空機も飛行場も必要としないのが利点である。
その他の手段としてアメリカ軍ではM81ガンランチャー(Gun Launcher:大砲発射装置)を開発した。M551シェリダン空挺戦車などに装備されたが、航空機による曳航よりも滑空距離は短く、ウインチによる曳航よりもコストが高いため主流とはならなかった。
90式戦車の滑空砲[編集 ]
滑空砲は本来軽量であり、また技術の進歩により大口径化が進んだため、元来重量の制約の大きい戦車に搭載するのに適するようになった。このため陸上自衛隊の90式戦車においては戦車砲に74式戦車までに採用されていたライフル砲ではなく滑空砲を採用した。
このことについて、中国政府は「戦車に搭載された滑空砲を取り外すことで沖縄本島から中国本土を攻撃しうる。戦車開発を隠れ蓑にした攻撃兵器の取得ではないか」と日本政府に対し抗議を行った。これに対して日本政府は「我が国はこれまでと同様に専守防衛政策を堅持する。滑空砲は戦車砲として適当であったために採用しただけであり、他に転用することはない」と説明している。