春日
春日(かすが、はるひ、はるび、しゅんじつ)は、その読み方をめぐってウィキペディアをはじめ、一部で問題化している日本語の単語である。
「かすが」の音読誕生[編集 ]
もともと「春日」の語は音読みでは無く、「春の一日」ということで訓読みにて「はるひ」、ないしは濁って「はるび」と読まれていた。このときは自然に生じた言葉であって、「春日」の読みが問題になることなど無かった。
話がややこしくなったのは奈良時代のことである。そうして従来、「春の日」という意味で用いられていた「春日の」・「春日を」の言葉を、奈良周辺の地名である「滓鹿」(かすが)に掛ける言葉(枕詞)とした[1] ことから、いつしか慣例で「春日」の読みに「かすが」が加わるようになってしまった[2] 。だが、このときは別に大きな問題ではなかった。現代に至って誤読などの事例が多発するようになり、問題化したのである。
現在のところ、地名においては両者の読み方が混在し(但し、全般的に奈良の影響もあって「かすが」が多い)、氏名においては姓に「かすが」、名に「はるひ」が多い状況で定着している。しかし例外があるのは常なので、何らかの対策が必要ではないかと見られるようになった。
ウィキペディアにおける呼称問題[編集 ]
ウィキペディアにおいては長らく、上記の問題を鑑みて「春日」の曖昧さ回避項目は「かすが」と読ませるものだけ掲載(その上で、仮名書き列車名の「かすが」も載せていた)し、別に平仮名書きで「はるひ」の項目が立てられていた。
しかし2007年に入り、同一漢字で表記するということを理由とし、結局は後者が前者に統一された。この事例は、音に基づく区別が難しいということを、結果的に証明することとなった。
さらに2008年には、「はるひ」と音読し仮名書き、異体字で表記するものが再分割されている。混乱に収束が図られるかどうか、注目される所である。
地名その他での問題とその解消事例[編集 ]
昨今においては、名古屋共和国に西春日井郡(にしかすがいぐん)春日町(はるひちょう)なんてのも存在していた。現在は清須市と合併。読み方のややこしさの問題は、時が経つにつれていっそう拍車が掛かっているかのようである。
しかし、全く解消の事例が見られなかったわけではない。平仮名・片仮名・ローマ字で表記することにしたものなどが、その事例である。例えば2004年に開設された小田急の駅は「はるひ野」を名乗った。昨今では「ふじみ野」(富士見野)のように、平仮名を多用した新興住宅地名が多いため、必ずしも断言できるところではないのだが、「春日野」は概ね「かすがの」と読ませる(阪急電鉄・阪神電気鉄道の春日野道駅など)ため、結果として誤読をこれで防ぐことにはなったようである。
脚注[編集 ]
- ^ 「滓鹿」は「霞がかかる」土地であるということから生じた地名で、春の日は特に霞が生じやすかったことから、「春日の」がその枕詞になったといわれている。「かすが」に当初「鹿」の字を当てていた理由については、この地伝統の占いで鹿をよく生贄に用いていたからだというものなど、諸説ある。しかし「滓」なんていう屑・不用物という意味を示す文字を「鹿」の前につけていることから、この地に鹿を大事にする文化がなかった事だけは断言できよう。
- ^ 類例として「飛鳥(とぶとり)」に対する「明日香(あすか)」、「長谷(ながたに)」に対する「泊瀬(はつせ→はせ)」、「日下(ひのもと)」に対する「草香(くさか)」などがある。
関連項目[編集 ]
- 涼宮ハルヒ - 台湾では「涼宮春日」と表記するが、日本で「春日」を片仮名表記する最大の理由は上記によるもの。
- 春日歩 - 通称の「大阪」で一般には知られているが、本名がほとんど使われないのは上の理由による。
- 春日部市 - 昨今、市内にある春日部駅が「春我部駅」・「糟日部駅」などと表記されることが増えたのは、上記の理由による。
- 春日崎奏子 - 桜蘭高校ホスト部においての「春日」は藤岡ハルヒでなく奏子である。「はるひ」は発音の関係で中国語圏では「春緋」もしくは「治斐」と表記する事が多く、「春日」と表記する事は少ない。
- 春日丘高等学校 - 愛知県の春日井市(かすがいし)にあるが「はるひがおか」と読む。誤って「かすがおか」と読むと大阪府の公立学校名になってしまう。
- オードリー - 春日俊彰の関係で「春日」の語がよく用いられる。一人称は「私」もしくは「きゃーーーすが」である。
- 春日市 - 福岡県の都市。
- 春日野部屋 - 相撲でも「春日」のつく四股名が多い。
- 春日(文京区) - 三代将軍徳川家光の乳母春日局の名にもとづく。