研究・開発基本方針
当社グループは、顧客との価値創造を通じて、「未来に夢を提供する会社」を目指しています。
SDGsの重点領域6+1を軸に環境・社会・経済に貢献する研究開発を推進します。「ICT」「モビリティ」「ヘルスケア」「ライフイノベーション」の4分野に対して、基盤技術として培ってきた「材料設計」「加工・複合」「評価解析」によるイノベーションと全社一丸となって顧客ニーズ、社会課題を解決するための「One Sumibe活動」を融合し、未来価値を有する新商品・新事業を創生します。
One Sumibe活動とイノベーションを
融合し
未来価値を有する
新商品・新事業を創生する
イノベーションへの取り組み
プロジェクト体制と人材育成を両輪に、イノベーションによる持続的成長を目指す
常務執行役員
中西 久雄
当社グループの持続的成長には、「環境・社会価値を有する新商品」の創出が不可欠です。その実現に向けて、経営の重要課題である「イノベーション」では、将来性ある研究開発テーマをプロジェクトチーム化し、短期集中で開発を進める体制を構築しています。KPIとしてプロジェクト実施数を設定したのも、こうした取り組みが新商品の早期創出につながるためです。
2024年度には、継続テーマである樹脂化電動アクスル、電子調光デバイスに加え、新たにBMI(Brain Machine Interface)、熱硬化性樹脂のケミカルリサイクル、パワーモジュールに関する開発を推進しました。その結果、電子調光デバイスは事業化フェーズに移行し、熱硬化性樹脂のケミカルリサイクルは要素技術の確立に成功しました。また、樹脂化電動アクスルは当社の強みである熱マネジメント技術を活かし、パワーエレクトロニクスソリューション開発部として組織化されました。2025年度は、水素製造に貢献するアニオン交換膜(AEM)の量産化に向けた新プロジェクトも始動しています。
これらの取り組みの成功確率を高めるため、当社では過去の開発レビューをもとに構築したイノベーションマネジメントシステム(IMS)を運用しています。属人的であった評価基準を可視化・標準化することで、研究開発の成功確率向上と意思決定の迅速化を実現しています。また、イノベーション創出を持続可能なものとするため、人材育成や研究所間の交流、情報共有のしくみづくりにも取り組んでいます。開発者による自発的な企画を研修形式でサポートし、新事業の立ち上げを支援する新商品開発プログラム「SBinno」や、全社的な技術討論会、若手開発者の交流会など、多様な取り組みを通じて、新事業テーマの発掘と開発者の成長を促しています。
こうした活動を継続・深化させることで、2030年度までにイノベーションによる事業利益100億円の達成を目指してまいります。
将来性のある研究開発テーマ 〜プロジェクトチーム化による開発推進〜
熱硬化性樹脂ケミカルリサイクル実装プロジェクトチーム
分解・リサイクルが困難な熱硬化性樹脂成形品を分解し、再利用可能な原料化を行う技術。2024年度に要素技術を確立
BMI事業化プロジェクトチーム
医療、IT、ロボットなどのブレインテック分野で期待される脳波の利用を促すデバイスの開発
水素製造機能膜量産準備プロジェクトチーム
脱炭素社会に貢献するグリーン水素の低コスト生産を可能にするPFASフリーのイオン交換膜の開発
新たな価値を生む、基盤技術とIMS
研究開発活動では、SDGsへの貢献とカーボンニュートラルの実現に向けて、社会・顧客ニーズに応える研究テーマの構想・企画、技術開発を、スピード感を持ってシームレスに行うことを目指しています。
分子設計や触媒技術を用いて新たな機能を発現する「材料設計」、有機/無機の配合や成形などで従来の樹脂にない機能を発現する「加工・複合」、構造と機能の関連を解き明かす「評価解析」を基盤技術として、さらなる製品開発のスピードや質の向上を目指しデータ駆動型開発への移行を推進しています。
また、イノベーションを継続的に創出し続けるために、当社に適したIMSを構築・展開し、フィージビリティスタディを迅速に進めることで、新規事業への挑戦を続けています。
2024年度には、「TSV向け圧縮成形用エポキシ樹脂顆粒封止材」「パワーモジュール冷却器向け高放熱TIM2用Agシンタリング材」「広帯域メモリー(HBM)向け感光性絶縁材料」「モバイル表示体用高耐熱ポリシクロオレフィン」「十二指腸狭窄治療用ステント」「チップコンデンサ用カバーテープ」などの新製品を開発・上市しました。
●くろまる 研究開発費(2024年度)
地域ごとのニーズに応える国内外の開発体制
国内は、研究開発の中長期的視野に立ち、新製品やその要素技術の研究を担当するコーポレート研究所として、先端材料研究所およびバイオ・サイエンス研究所、生産技術開発を担当するコーポレートエンジニアリングセンターを有し、情報通信材料研究所、HPP技術開発研究所、フィルム・シート研究所、産業機能性材料研究所、SBカワスミ株式会社 殿町メディカル研究所の5つの応用研究所が新製品の商品化や既存製品の改良研究を担当するという体制をとっています。国外では、米国オハイオ州アクロンに設けたコーポレート部門の拠点をはじめ、半導体関連材料や高機能プラスチックの各研究拠点を、欧米・アジアの各国・地域にそれぞれ設けています。
各研究所間の研究開発の成果や課題を共有するために、研究所長が一堂に会して新たな協業の議論を行う研究所長会議や全社の研究テーマを議論しあう技術討論会・技術交流会、若手開発者の人事交流などの機会を通じてシームレスに研究開発を行い、新たな価値を創造しています。
●くろまる 研究開発組織
「環境・社会価値を有する新商品」の創出に向けた活動
「環境・社会価値を有する新商品」の創出にあたり、環境価値に関しては、3R(リデュース、リユース、リサイクル)、バイオマス原料へのシフトに注力、社会価値に関しては創エネ、蓄電といった領域での新テーマの発掘を進めています。コーポレート研究所、応用研究所で開発する技術に加えて、2024年度には、ヘルスケア分野やケミカル分野のベンチャーキャピタルへの出資を行いました。また、AIなどの先端半導体やパワーエレクトロニクスにかかわる半導体分野の新材料開発を目指して東北大学と次世代半導体向け素材・プロセス共創研究所を新たに設置するなど、外部機関との協業にも取り組んでいます。
社内のプロジェクトチーム活動では、2024年度に医療、IT、ロボットなどのブレインテック分野で期待される脳波の利用を促すデバイスの開発を推進するため、BMI事業化プロジェクトチームを立ち上げました。同プロジェクトでは、共同開発先とてんかん患者を対象とした臨床研究を推進しており、デザイン・使い勝手を考慮した在宅脳波計の開発を行いました。本製品は2027年度の国内販売開始を目指しています。また、2025年度には水素製造機能膜量産準備プロジェクトチームを新たに発足しました。本製品は、米国の研究所で開発された当社独自の素材ポリノルボルネンを用いた技術で、すでに試作品を開発し水電解装置メーカーでの評価を開始、2030年度の量産化を目指しています。
イノベーションを起こす人材の育成とグループ内の人材交流
開発者による自発的な企画を研修形式でサポートし、新事業の立ち上げを支援する新商品開発プログラム「SBinno」を2016年より行っています。毎年、新事業や新商品のアイデアを全社から募り、選定された開発者には応募した具体的なテーマの事業化に向けた調査や社内外の連携、投資などについて学んでもらいます。事業化の可能性が高いテーマはその後も検討を継続しており、2024年度にプロジェクトチーム化したBMIの構想は、このプログラムから生まれました。応募者がプロジェクトリーダーを務め、事業化を推進しています。
また、イノベーションを起こすには社内に有している技術情報をよく理解する必要があります。当社グループではこのために毎年、技術討論会を開催しており、全社の新技術について開発者が理解を深める場としています。2024年度は10月29日から11月1日まで開催し、延べ1400名以上が参加しました。最終日には特に優れたテーマについて10名が口頭発表を行いました。この場では、多くの開発者が自身の研究テーマや対象製品とのかかわりなどを意識しながら、ほかの開発者と交流を図ることができ、研究開発における「One Sumibe活動」として社内の活性化にも貢献しています。
戦略的な知財活動を 事業機会を いち早く捉える原動力に
当社グループでは、知的財産(以下、知財)活動を事業戦略や研究開発戦略に基づいて展開し、事業競争力の向上を目指しています。この目的を達成するために、以下の5つの基本方針を掲げています。
❶ 各事業部門において、主要製品に対する知財戦略を立案・実行し、事業競争力を強化する。
❷ 知財リスクへの対応を明確化し、事業リスクの低減を図る。
❸ 事業シナリオや研究シナリオを支援する予防法務を継続するとともに、提案型の予防法務を実施する。
❹ 住友ベークライトグループ全体(特に海外関係会社)の知財管理体制を維持・強化する。
❺ IPランドスケープを実践し、事業競争力の向上に寄与する。
さらに、研究開発のグローバル化に対応するため、海外関係会社と協力しながら知財関連規定の整備を進めています。
また、中期経営計画期間においては、以下の重点事項に取り組んでいます。
· 重要戦略商品に関する戦略的特許出願の推進
· 環境課題に対応する戦略的出願の推進
· 知財情報の活用を通じた新たな事業創出への貢献
●くろまる SDGs貢献製品・貢献技術に関連する特許申請数
2024年度の出願のうち、SDGs貢献製品・貢献技術に関連する出願は全体の44%でした。
●くろまる 国内特許の公開件数
●くろまる 海外特許の出願件数
●くろまる 事業部門別の国内外保有特許件数と比率(2025年3月末現在)
トピックス すべてを見る
- 2025年04月01日 研究開発 水素製造機能膜量産準備プロジェクトチームの発足について
- 2024年05月08日 研究開発 医療用レベルの脳波測定を簡便におこなうデバイスの開発とBMI事業化プロジェクトチームの発足について
- 2023年11月01日 メルマガ CARTALK+『「グリーンケミカルズ」によるカーボンニュートラルへの貢献(後編)』を配信しました
- 2023年10月20日 メルマガ CARTALK+『「グリーンケミカルズ」によるカーボンニュートラルへの貢献(前編)』を配信しました
展示会情報 すべてを見る
- 2025年01月22日 第17回 国際カーエレクトロニクス技術展
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