毎年11月から年末にかけて出回る鉢花の一つにシクラメンがあります。店頭で見かける園芸品種のほとんどはシクラメン・パーシカムという原種が品種改良されたもので、花の大きさで大輪系、中輪系、小輪系に分類されます。小輪系で花弁の長さが4cm以下のものはミニシクラメンとされ、そのうち耐寒性があり、庭の花壇でも楽しめるものはガーデンシクラメンと呼ばれます。大輪で平らな花弁のパーシカム種が一般的ですが、近年では、八重やフリンジといった特徴的な花型を目にすることも増え、花色についても定番の赤からピンク、白の他に黄や紫の品種が登場しています。
球根植物のシクラメンですが、交配して得た種を播くことで増殖します。前年の秋に種を播き、生育に合わせて植え替えが行われ、約1年の栽培期間を経てようやく出荷されます。つまり、今店頭で見かけるシクラメンは去年の秋から丹精込めて育てられてきたものというわけです。
そんなシクラメンも家での管理方法が分からないと購入するハードルが上がってしまいますよね。そこで、シクラメンを長く楽しむための基本の管理をご紹介します。購入後、開花中のシクラメンは日光のよく当たる窓際が置き場所に適しています。暖房の効いた部屋では葉が黄化しやすく、20°C以下で管理する方が長く楽しむことが出来ます。夜間の温度が2, 3°Cを下回る場合は、段ボールを被せるなど保温の工夫が必要です。水やりは表面の土が乾いたらたっぷり与え、底面給水鉢の場合は鉢皿の水がなくならないようにします。咲き終わった花や枯れた葉は放置すると病気の原因になるので摘み取ってください。手で花茎の根元からねじりながら引き抜けば傷口が小さく取り除くことが出来ます。
こまめな管理をしながら、次々に咲く花を見るのは楽しいものです。鉢花の管理に難しさを感じて手を出せていなかった方も、この冬、シクラメンで家を彩ってはいかがでしょうか。
【豆知識】
シクラメンの管理の1つに「葉組み」という特有の作業があります。
購入直後のシクラメンは花が中心に集まり、その周りを葉が囲んでいます。しかし、放っておくと球根の上部から新たに伸びた花と葉が混在し、乱れた草姿になってしまいます。そこで、優しく葉をかき分けて乱れた中心の葉を外側へ引っ張り、葉を放射状に広げて、株の中心が空くようにしましょう。こうすることで球根の上部に光が当たり、小さな蕾も生長するため、最後まで花を楽しむことが出来ます。また、「葉組みリング」という丸く折った針金や重しを使うことで、外側に移動させた葉が戻らないようにする方法もあります。球根へ光が当たりやすく、作業を省力化出来るため、生産現場でも利用されています。葉組みには株の通気性が良くなることで病害虫を予防する効果もあります。ぜひ挑戦して、健全で美しいシクラメンを長く楽しみましょう。
(写真:葉組み作業前後のシクラメンの様子。(左)葉組み前(右)葉組み後)
1