書籍
編集 | : 松村到/張替秀郎/神田善伸 |
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ISBN | : 978-4-524-23708-1 |
発行年月 | : 2025年10月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 340 |
在庫
定価11,000円(本体10,000円 + 税)
最新の治療シリーズの血液疾患版.血液領域の各疾患における標準的治療を網羅するとともに、最新の研究動向や新薬に関する話題を提供する .巻頭トピックスでは,「iPS血小板の臨床試験」「分子標的薬の薬物相互作用」「次世代CAR-T細胞療法」など注目の11テーマを取り上げ解説.巻末付録として日々の臨床に役立つ薬剤一覧も掲載した.
巻頭トピックス
1 備蓄・緊急投与が可能な人工赤血球製剤の実用化に向けて
2 iPS血小板の臨床試験
3 分子標的薬の薬物相互作用
4 補体と血液疾患
5 造血器腫瘍遺伝子パネル
6 造血器腫瘍に対する新規抗体薬物複合体
7 T細胞疲弊
8 次世代CAR-T細胞療法
9 血友病の遺伝子治療
10 造血幹細胞の代謝
11 白血病の免疫微小環境
?T章 主な血液疾患用薬剤の作用機序と適応
1 鉄剤・葉酸・ビタミンB12
2 造血因子
3 免疫抑制薬
4 抗癌薬
5 抗体医薬
6 抗凝固薬と抗血小板薬
7 止血薬と凝固因子製剤
?U章 赤血球系疾患
1 鉄欠乏性貧血
2 巨赤芽球性貧血
3 溶血性貧血
4 再生不良性貧血
5 後天性赤芽球癆
6 全身疾患に伴う貧血
?V章 造血系・リンパ系疾患
1 急性骨髄性白血病
2 急性前骨髄球性白血病
3 高齢者白血病
4 小児白血病
5 慢性骨髄性白血病
6 骨髄増殖性腫瘍
7 低リスク骨髄異形成症候群
8 高リスク骨髄異形成症候群
9 急性リンパ性白血病
10 Ph染色体陽性急性リンパ性白血病
11 慢性リンパ性白血病
12 MALTリンパ腫
13 濾胞性リンパ腫
14 びまん性大細胞型B細胞リンパ腫
15 血管内リンパ腫
16 中枢神経原発リンパ腫
17 Burkittリンパ腫
18 成人T細胞白血病/リンパ腫
19 マントル細胞リンパ腫
20 末梢性T細胞リンパ腫・非特定型,血管免疫芽球性T細胞リンパ腫,未分化大細胞リンパ腫
21 NK/T細胞リンパ腫
22 Hodgkinリンパ腫
23 多発性骨髄腫
24 原発性マクログロブリン血症
25 慢性活動性EBウイルス病
?W章 出血・血栓性疾患
1 先天性および後天性血管障害による出血
2 免疫性血小板減少症
3 血小板機能異常症
4 血友病
5 von Willebrand病
6 その他の先天性凝固因子欠乏症・線溶異常症
7 遺伝性血栓性素因
8 深部静脈血栓症
9 抗リン脂質抗体症候群
10 播種性血管内凝固
11 血栓性微小血管症/血栓性血小板減少性紫斑病と溶血性尿毒症症候群
12 ヘパリン起因性血小板減少症
?X章 造血幹細胞移植・免疫細胞療法
1 サイトカイン放出症候群・免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群の治療
2 造血幹細胞移植の前処置
3 GVHD予防法
4 急性GVHDの二次治療
5 慢性GVHDの二次治療
6 急性白血病に対する同種造血幹細胞移植後維持療法
?Y章 主な診断法・治療法
1 PET診断
2 フローサイトメトリー検査
3 遺伝子診断
4 輸血療法
5 放射線治療
6 感染症とその対策?@:細菌
7 感染症とその対策?A:真菌
8 感染症とその対策?B:ウイルス
付録:主な血液疾患用薬剤
索引
序文
近年,血液疾患領域における治療は,その基盤となる分子病態の解明の進展とともに著しい変化を遂げています.治療体系は,従来の化学療法中心の枠組みを超えて,分子標的療法,免疫療法,細胞療法などに多様化し,今後は遺伝子パネル検査を含めてさらに個別化医療の色彩を強めていくことが予想されます.
急性白血病においては,IDH阻害薬,Menin阻害薬,BCL-2阻害薬などの新規薬剤の臨床導入が進み,リンパ腫領域や骨髄腫に対しても,抗体薬物複合体(ADC),二重特異性抗体,CAR-T 療法が治療戦略に組み込まれるようになりました.良性疾患の領域についても,発作性夜間血色素尿症や寒冷凝集素症などに対する新規治療薬の承認が相次いでいます.また,人工赤血球製剤やiPS細胞由来血小板製剤の研究開発は,輸血医療や救急・災害医療の分野において新たな可能性を拓いています.
一方,治療手段の多様化は臨床現場における意思決定をより複雑にし,薬物相互作用や新規薬剤特有の毒性管理など,新たな課題も提起しています.また,ゲノム解析技術の進歩により疾患分類は細分化されつつありますが,その情報を臨床的意思決定にどう反映させるかは,依然として大きな課題です.
そこで,本書は,これら急速に進展する知見を体系的かつ実践的に整理し,日常診療の場で即座に活用できる情報を提供することを目的として編纂しました.構成は従来の版を踏襲しつつ刷新を加え,巻頭トピックスでは人工赤血球製剤やiPS細胞由来血小板製剤など,近年注目される研究開発など,11のテーマについて解説いただいています.
続く各章では,主要薬剤の作用機序と適応,副作用管理の留意点をまとめた?T章を皮切りに,?U章では赤血球系疾患,?V章では造血系・リンパ系疾患,?W章では出血・血栓性疾患について,それぞれ最新の治療方針と具体的な処方例を紹介しました.さらに?X章「造血幹細胞移植・免疫細胞療法」では移植技術の進歩と適応,?Y章「主な診断法・治療法」では診断技術の最新動向や支持療法の実際を取り上げ,診療現場で必要とされる知識を網羅する構成としています.
本書が,血液疾患診療に従事する医師諸氏にとって日々の臨床の支えとなり,また急速に変化する本領域の理解と実践に資することを願っています.最後に,多忙ななかで執筆をご快諾くださった各分野の諸先生方に御礼申し上げます.
2025年8月
松村 到
張替秀郎
神田善伸