教科書
理論と実践
編集 | : 日本ヘルスプロモーション理学療法学会 |
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ISBN | : 978-4-524-20351-2 |
発行年月 | : 2023年11月 |
判型 | : B5判 |
ページ数 | : 196 |
在庫
定価3,850円(本体3,500円 + 税)
疾病予防や介護予防,健康増進を含めた包括的な理学療法・作業療法であるヘルスプロモーション理学療法・作業療法について,身体機能,認知機能の評価方法から実践までを含めて平易に解説.改訂第2版では全体を最新の知見にアップデート.また「ヘルスプロモーションのための栄養の知識と口腔衛生」の章を新設し,高齢者の栄養管理,口腔衛生管理について解説を加えた.
1 ヘルスプロモーション総論
A●くろまるヘルスプロモーションとは
1 WHOの提唱するヘルスプロモーション
2 わが国におけるヘルスプロモーション
3 生活習慣病予防の重要性
コラム「生活習慣病の発症予防に効果的な運動量とは」
4 21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)
B●くろまる高齢者ヘルスプロモーションの重要性
C●くろまる老化の特徴
1 身体機能
2 認知機能,精神・心理機能
3 心理機能
4 社会性
D●くろまるヘルスプロモーションの進め方
1 健康な地域づくり
2 住民参加
3 行政関係者の関与
4 専門家の関与(理学療法士・作業療法士の役割)
コラム「地域ヘルスプロモーション実施の流れ」
2 フレイルの理解とその関連用語の整理
A●くろまるフレイルの概念と特徴
1 フレイルとは
2 フレイルの3つの特徴
3 フレイルの評価
4 フレイルの原因と3つの要素
5 フレイルサイクル
B●くろまるサルコペニアの概念と特徴
1 サルコペニアとは
2 サルコペニアの原因
3 サルコペニアの診断
コラム「老年症候群とは」
4 サルコペニアの有病率
C●くろまるロコモティブシンドロームの概念と特徴
1 ロコモティブシンドロームとは
2 ロコモティブシンドロームの診断
3 高齢者の評価
A●くろまる評価の考え方
B●くろまる高齢者の評価を行ううえでの廃用症候群の理解
コラム「サルコペニアと廃用性筋萎縮の見分け方」
C●くろまる評価を行ううえでの留意点
コラム「緊急時の対処法」
D●くろまる問診の取り方
1 問診の基本
2 座る位置と距離
3 話す姿勢
4 聞く姿勢
5 高齢者の反応
コラム「難聴への配慮」
E●くろまるバイタルチェック
1 体 温
2 脈 拍
3 血 圧
4 高齢者の身体機能評価?T
A●くろまる形態測定
1 身 長
2 体 重
3 BMI
B●くろまる身体組成
1 体組成
C●くろまる柔軟性
1 長座体前屈
D●くろまる筋 力
1 握 力
2 上体起こし
3 椅子立ち上がりテスト
E●くろまるバランス機能
1 タイムド"アップアンドゴー"テスト(TUG)
2 ファンクショナルリーチテスト(FRT,FR)
3 開眼片足立ちテスト
4 その他のバランス機能評価法
F●くろまる歩行能力
1 歩行速度
2 10 m障害物歩行
G●くろまる活動能力
1 老研式活動能力指標
2 JST版活動能力指標(JST-IC)
5 高齢者の身体機能評価?U
A●くろまる持久力
1 局所持久力
2 全身持久力
B●くろまる呼吸機能
1 スパイロメトリー
2 呼吸筋力
3 パルスオキシメーター
コラム「SpO 2はどこまで正確?」
C●くろまる循環機能
1 血 圧
2 脈 拍
3 二重積
D●くろまる身体活動性
1 身体活動とは
2 身体活動の評価
6 高齢者の認知機能,精神・心理機能およびQOLの評価
A●くろまる認知機能
1 認知症のスクリーニングテスト
コラム「HDS-RとMMSEのどちらを使用する?」
2 注意機能評価
B●くろまる精神・心理機能
1 PGCモラールスケール
2 geriatric depression scale(GDS)
3 profile of mood states(POMS)
C●くろまるQOL
1 SF-36(MOS 36-item short-form health survey)
2 視覚アナログ尺度(VAS)
3 日本語版EuroQol-5 dimention 5 level(EQ-5D-5L)
7 ヘルスプロモーションの実践?T サルコペニア予防
A●くろまるサルコペニア予防・治療の考え方
1 トレーニングの原理・原則と目標設定
2 サルコペニア診療ガイドライン2017年版
B●くろまる全身調整トレーニング
1 姿勢,動作練習
2 呼吸練習
3 ストレッチング
4 ウォーキング
C-1●くろまるレジスタンストレーニング
1 レジスタンストレーニング(抵抗運動)
2 スクワット
C-2●くろまるバランストレーニング
1 バランストレーニング
2 片足立ち
C-3●くろまる健康体操
D●くろまる日常生活での工夫
コラム「筋トレはきつい?」
8 ヘルスプロモーションの実践?U 転倒予防
A●くろまる転倒の疫学
B●くろまる転倒の原因
C●くろまる転倒予防の考え方
D●くろまる転倒予防の具体的取り組み
1 サルコペニアの改善
2 二重課題処理能力の改善
3 環境要因に対する簡便な対応策
4 地域全体の転倒発生率を抑制するには
9 ヘルスプロモーションの実践?V 認知症予防
A●くろまる認知症予防施策の現状と課題
B●くろまる認知症と軽度認知障害(MCI)
1 認知症の症状と治療の流れ
2 MCIの症状と取り組み
コラム「簡易にMCIを鑑別する取り組み」
C●くろまる認知症予防における危険因子と保護因子
D●くろまる地域における認知症予防事業の実践例
1 運動習慣の管理
2 効果判定
10 ヘルスプロモーションの実践?W 生活習慣病予防・改善
A●くろまる生活習慣病の疫学
B●くろまる生活習慣病発症予防のための身体活動水準および有酸素性作業能力
1 身体活動水準
2 有酸素性作業能力
C●くろまる生活習慣病改善のための運動処方と実践例
1 疾患者を対象とした有酸素運動およびレジスタンス運動強度の指針
2 基本運動プログラムおよび運動教室の実践例
D●くろまる運動処方時の注意点
1 有酸素運動
2 レジスタンス運動(筋力強化運動)
E●くろまる健康チェックと運動の注意点
1 運動時の突然死
2 健康チェックと運動の注意点
11 行動科学とヘルスプロモーション
A●くろまる運動を習慣化させるには
B●くろまる行動変容を促す:トランスセオレティカル・モデル
1 トランスセオレティカル・モデルとは
2 運動の習慣化へ向けた行動変容ステージの確認
3 行動変容ステージの活用
4 行動変容ステージの関連要素
12 ヘルスプロモーションのための栄養の知識と口腔衛生
A●くろまる日本の健康・栄養に関する施策
1 食品摂取量と栄養素等摂取量の時代的変遷
2 疾病構造の時代的変遷と栄養
コラム「疾病構造の変化」
3 国民健康づくり対策と栄養問題
B●くろまる過栄養と低栄養への対策
1 エネルギー摂取量とBMIの関係
2 ライフステージ別の栄養管理
3 過栄養の予防と改善
4 低栄養の予防と改善
C●くろまる栄養面で注意すべき加齢変化
1 加齢変化と低栄養の関係
2 高齢者の生理的特性と低栄養の関係
3 高齢者の身体的・精神的・社会的問題と食事の関係
D●くろまるフレイル・サルコペニア予防のための栄養管理
1 フレイル・サルコペニア予防とBMI
2 フレイル・サルコペニア予防とたんぱく質
3 フレイル・サルコペニア予防と食品摂取多様性
E●くろまる高齢者の口腔衛生管理
1 口腔機能の加齢変化
F●くろまる口腔衛生からみたフレイル,サルコペニア予防
G●くろまる口腔機能低下への対応
1 口腔機能低下症の病態と診断
2 口腔機能低下症の予防
3 口腔機能低下症の管理
コラム「オーラルフレイルとは」
13 要介護高齢者のヘルスプロモーション
A●くろまる在宅でのヘルスプロモーション
1 介護保険制度における居宅(在宅)サービスの役割
2 在宅を取り巻く現状
3 在宅で要求される視点
4 ヘルスプロモーションの展開例―家族構成別―
コラム「コーチングについて」
5 終末期について
B●くろまる入所施設でのヘルスプロモーション
1 介護保険制度における施設サービスの役割
2 入所施設を取り巻く現状
コラム「介護医療院創設の背景」
3 入所施設で要求される視点
コラム「ケア」
4 ヘルスプロモーションの展開例―要介護状態区分別―
C●くろまる通所施設でのヘルスプロモーション
1 介護保険制度における通所サービスの役割
2 通所施設を取り巻く現状
3 通所施設で要求される視点
4 ヘルスプロモーションの展開例―障害別―
14 ヘルスプロモーション関連法規
A●くろまる老人福祉法
1 地域密着型サービス
2 老人福祉施設,有料老人ホーム
B●くろまる老人保健法
C●くろまる介護保険法
1 保険者
2 被保険者
3 保険給付の内容と手続き
D●くろまるその他の関連法規
1 医療保険制度
2 公的年金保険
3 身体障害者福祉法
4 支援費制度
15 ヘルスプロモーション研究の進め方
A●くろまる研究デザイン
1 研究デザインの分類
B●くろまる研究データの分析
1 データの尺度
2 パラメトリックとノンパラメトリック
3 統計学的分析方法
C●くろまる研究計画と研究倫理審査委員会
1 研究計画書,研究倫理審査申請書の作成
D●くろまる研究結果の公表
1 学術論文
2 学会発表
参考文献
索 引
改訂第2版の序
本書は日本ヘルスプロモーション理学療法学会が編集している.この学会は,理学療法士や健康増進にかかわるコメディカルを中心として2011年2月に設立され,リハビリテーション医療の中心的役割を担ってきた従来の理学療法に加え,疾病予防や介護予防,健康増進を含んだ包括的な理学療法を「ヘルスプロモーション理学療法」と定義し取り組むことを目的としている.
当時,理学療法士,作業療法士を対象としたヘルスプロモーションを包括的に取り扱った教育現場向けのテキストがなかったことから,教科書として,本書『理学療法士・作業療法士のためのヘルスプロモーション―理論と実践』を2014年2月に上梓してから2023年現在,9年が経過している.この間に社会情勢も変化し,理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則(以下,指定規則)は時代のニーズに応えるべく改正されている.2020年度には,高齢化の進展に伴う医療需要の増大や,地域包括ケアシステムの構築等により,理学療法士および作業療法士に求められる役割や知識等が変化しているために,指定規則の一部が改正された.改正の内容として専門基礎分野が4単位増え30単位となり,「疾病と障害の成り立ち及び回復過程の促進」の教育内容において,「栄養,薬理,医用画像,救急救命及び予防の基礎」を必修とすることとなった.
ヘルスプロモーションとして特記すべき点は,「予防」の観点が加えられたことである.経済産業省によれば予防・健康づくりの意義は,「個人の健康を改善することで,個人のQOLを向上し,将来不安を解消する」「健康を理由にした早期退職や欠勤,生産性低下を防ぐとともに,就労の拡大や労働生産性の向上を通じて,経済成長につながる」「疾病の中心が生活習慣病に変化する中で,生活習慣の改善や早期予防を通じて,こうした疾患の医療需要の適正化に資する」「高齢化は認知症の方の増加等により介護需要の拡大が見込まれる中で,介護・認知症の予防を通じて,伸びゆく介護需要の適正化に資する」と多面的である.人生100年時代に,出来るだけ多くの方が長く健康に活躍できる社会を作るため,本学会としても予防・健康づくりを推進したい.
本書は初学者が理解しやすいような記述を心がけている.記載されている内容には,不十分な部分もあるかと思われるが,本書を利用いただいた学生の皆さん他の忌憚のないご意見,ご批判をお寄せいただければ幸いである.
最後に,出版に際し企画段階から今回の改訂まで尽力いただいた3名の編集責任者の村田 伸先生,堀江 淳先生,山崎先也先生と,南江堂編集部に感謝申し上げる.
2023年9月
日本ヘルスプロモーション理学療法学会 理事長 小野武也