特集 令和6年度の事例集から紹介全国財務局の地域連携の取組
財務局(沖縄総合事務局財務部を含む)は、財務省の総合出先機関として設置されている。各財務局は地域に根差し、各地域におけるニーズを踏まえながら、地域連携の取組を推進しており、毎年その内容を取りまとめ、「地域連携事例集」として公表している。本特集では、令和6年度の9分野・43事例から13事例を紹介する。
取材 文 向山勇
総論
財務局は、財務省の総合出先機関として、また、金融庁から事務委任を受けた組織として、地域に根差し、財政、国有財産、金融などの業務を通じて国の施策を実施するとともに、財務省及び金融庁の施策の広報、地域の声や経済の実態把握を通じて、地域に貢献することを使命としている。こうした機能を発揮することで、財務局は、各々の時代の要請の中で地域とつながり、地域と財務省・金融庁をつなぐ結節点となり、財政健全化や地域経済活性化に向けた施策を推進している。加えて、地域の主体とのネットワークを形成し、活用することで、地域の課題解決等をサポートする「地域連携」の取組を推進するほか、地方公共団体等が行う地方創生を支援している。
財政に関する取組
国有財産に関する取組
金融に関する取組
地域経済調査に関する取組
広報相談に関する取組
経済安全保障に関する取組
金融犯罪被害防止に向けた取組
災害に関する取組
地方創生支援に関する取組
CASE01 財政に関する取組
地方公共団体向け脱炭素の取組に係る勉強会を実施 関東財務局
関東財務局は、埼玉県内の地方公共団体を対象に、脱炭素の取組における課題解決支援と情報共有を目的とした勉強会を令和6年5月21日に開催した。これは、地方公共団体が「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき脱炭素への取組を進める中で、財源不足や具体的な推進方法といった多様な課題を抱えていることを踏まえたもの。
勉強会は、さいたま新都心合同庁舎からのWEB配信形式で実施され、関東地方環境事務所による「地域脱炭素の推進」に関する講義や、株式会社脱炭素化支援機構による「カーボンニュートラルを目指す事業への支援」についての説明が行われた。さらに、埼玉県春日部市及び神奈川県開成町から具体的な取組事例が紹介され、参加者間の意見交換も活発に行われた。
当日は環境、財政、防災など、多様な部署の担当者が参加した。参加者からは「他市町の状況を知る貴重な機会となった」「(同様の悩みを抱える団体等に)相談しやすい環境を作ってもらえた」といった声が寄せられた。本勉強会は、地方公共団体の取組推進と参加者間の関係構築に貢献した。
講師の声
脱炭素関連の取組は手探りの部分が多く、組織を超えて協力していくことが重要。
写真 参加団体の模様
写真 当局会場の模様
CASE02 国有財産に関する取組
国有財産(建物付)の売却により地方公共団体の課題解決を支援 北海道財務局小樽出張所
北海道財務局小樽出張所は、北海道泊村が抱える漁業の新規就業者用住宅の不足という課題に対し、国有財産(建物付)の売却を通じて課題解決を支援した。北海道泊村では、基幹産業である漁業の担い手確保のため、体験移住・就業体験の取組を実施しているが、首長訪問の際に「体験者用住宅が不足しているため、村内にある森林管理局所有の建物を取得して活用したい」というニーズを把握。これを受け、北海道財務局が主体となり林野庁北海道森林管理局と調整を行ったもの。
その結果、森林管理局から財産の引継ぎを受け、令和7年3月に同村への売却が実現した。この取組は、漁業の新規就業者を確保し、将来の人口減少に対応する北海道泊村の環境整備を支援するものといえる。
写真 住居内装
写真 住居外観
CASE03
斜面地に所在する活用困難な国有地を市民団体に管理委託し地域活性化等に貢献 福岡財務支局長崎財務事務所
福岡財務支局長崎財務事務所は、長崎市内の活用困難な国有地を市民団体へ交流型市民農園として管理を委託し、管理コストの削減と地域活性化に貢献した。これは九州初の取組である。
長崎市内では、相続等により国庫に帰属したものの、斜面地にあるため車両が進入できず活用が困難な国有地が増加し、除草等の管理コストが課題となっていた。そこで同事務所は、斜面地の空き地を活用する市民団体の情報を得て、当該団体にアプローチ。当該国有地が持つ眺望の良さや市街地に近いという特性を活かした活用を提案し、交流型市民農園として管理を委託することで管理コストの削減を実現した。
この取組は、国にとっては「管理コストの削減」、市民団体にとっては「地域のための土地活用」と、双方にメリットがある。さらに、少子高齢化やコミュニティ衰退といった課題を抱える地域において、新たな人の集う場が生まれることによる地域コミュニティの活性化も期待されている。
写真 (出典:長崎都市・景観研究所)
写真 地元テレビ局が当取組を特集し、「管理委託制度は、『国の管理コスト低減』、『土地の有効活用』、『地元住民のコミュニティ活発化』の三方良し」と紹介。
CASE04 金融に関する取組
備後圏域で初となる「びんご事業者支援事例発表会」開催 中国財務局
中国財務局では、令和6年6月、広島県福山市と連携し備後圏域で初となる「びんご事業者支援事例発表会」を開催した。目的は(1)金融機関・産業支援機関が自らの支援事例を発表し、各機関が事業者支援力・連携の強化に繋げること。(2)参加者同士の交流を図り、ネットワーク強化に繋げること。(3)圏域の事業者に参加を呼びかけ、支援機関等を利用するきっかけとすること。
当日は中国財務局と広島県福山市の基調講演に続き、圏域に所在する金融機関・産業支援機関8機関による支援事例発表と参加者による交流会を実施。金融機関、産業支援機関、事業者等の約170名が参加した。
参加者からは「具体的な事例をあげてもらい話がわかりやすかった」「どの事例もお客様に寄り添うことを大事にしており、支援機関との連携の重要性がよくわかった」「事業者へのヒアリングのポイントや支援の際の注目ポイントがわかった」などの声が聞かれた。
写真 参加者集合写真
CASE05 地域経済調査に関する取組
東海環状自動車道の全線開通に向けた経済レポートを公表 東海財務局岐阜財務事務所及び津財務事務所
東海財務局岐阜財務事務所及び津財務事務所は、岐阜県と三重県を結ぶ東海環状自動車道の全線開通に関する期待と課題について共同で調査した経済レポートを公表した。
レポートによると、東回りルートが先行開通している岐阜県では、企業立地件数が全国3位になるなど既に効果が現れており、全線開通による更なる企業活動の活発化が見込まれている。一方、三重県では未だ企業進出が限定的であるものの、四日市港のハブ機能強化などによる物流の活発化と本格的な企業進出が期待されている。
共通の課題として、岐阜県では企業進出の活発化に伴い有効求人倍率が全国でも高位となっており、三重県でも今後の人手不足が懸念されるなど、両県ともに今後の労働力確保が課題となっている。このレポートは、各メディアで取り上げられるなど全線開通に向けた機運醸成にも貢献しており、関係機関から感謝の声のほか、地方公共団体からは、「今後の企業誘致活動にレポートを活用したい」との声が聞かれた。
CASE06 広報相談に関する取組
地方財政教育プログラムを開発地方公共団体にこどもの意見を聞く場を提供 東北財務局
東北財務局は、国の財政教育プログラムをアレンジした独自の「地方財政教育プログラム」を開発し、「国の財政」や「地方公共団体の財政」、「人口減少問題」を一体でシミュレーションできるプログラムを実施している。生徒たちは未来の自分たちの住むまちに何が必要か、どんなまちに住み続けたいかをグループで議論し、作成した予算を発表し合うことで、持続可能なまちの将来について考えることができる。
この取組は、生徒たちが自分の住むまちの財政について議論し、政策を決める経験を通して、主権者として財政について主体的に考え、課題を多面的・多角的に捉える人材を育成することが期待されている。また、議論した意見を首長に直接提言する取組も行っており、こどもの意見を聞く場を地方公共団体に提供することも地域貢献に繋がっている。
生徒の感想
これから町を担っていく若い世代が自分の町に関心を持ち、深く考えることが大切だと感じた。
写真 町長へ提言を手交しました
CASE07
大阪教育大学と連携し財政教育の担い手を育成 近畿財務局
近畿財務局は、財政教育の担い手育成を目的として、令和6年10月に大阪教育大学と連携協定を締結。これは、令和4年度から高等学校で「公共」が必履修化され、主権者教育としての財政教育の重要性が増していることを背景に、若者向けの主権者教育の一層の充実を図るもの。協定締結当日には、連携協力の一環として、社会科教員を目指す同大学の学生に対し、出前授業(財政教育プログラム)を実施した。
その後も連携を継続しており、令和7年9月30日、同大学が提供する「教員生涯学習プラットフォーム(OZONE-EDU)」へ財政教育に関するコンテンツを掲載し、教員や学生がオンラインで財政授業を受けられる仕組みを構築した。
また、教員を志す学生や社会科教員向けに、財政に関するセミナーや出前授業を継続するほか、令和8年度には新たに連続講座の実施も計画している。
写真 社会科教員を志す大阪教育大学の学生を対象とした出前授業の様子。
CASE08 経済安全保障に関する取組
「経済安全保障セミナー」を管内各地で開催 関東財務局
関東財務局は、経済安全保障に関する制度や国外への技術流出防止策等の周知を目的として、関係機関と連携し、経済安全保障セミナーを管内各地で開催した。セミナーでは、関係機関の職員が講師となり、経済安全保障の取組状況、外為法等に基づく各種制度、企業の技術流出防止に向けた諸課題や対策等について講演。令和6年度は、埼玉県、東京都、群馬県、神奈川県において開催し、企業をはじめ、大学・研究機関等から多数の参加があった。
参加者からは「多面的な視点で知れて有意義であった」「経済安全保障の成り立ちや枠組みが大変勉強になった」との声が寄せられた。経済安全保障は様々な領域で課題が顕在化しているものの、現状ではこの制度を知らない企業等も多いことから、今後も関係機関等と連携を強化しながら周知に取り組んでいく。
写真 セミナーの様子
CASE09 金融犯罪被害防止に関する取組
地元新聞社の新聞連載を通じて金融リテラシーの向上に寄与 九州財務局
九州財務局は、熊本県の地元新聞社が読者の金融リテラシー向上を目的として令和6年1月から1年間にわたり連載するミニコーナー「学んで得する!お金の話(通称まね得)」に貢献した。連載にあたり、九州財務局は記事の監修やテーマの提案、さらには日頃からやりとりのある専門機関と同社をつなぐ役割を担った。
具体的には、財務省・金融庁の施策がテーマとなった記事(新NISA、マネー・ローンダリング、自然災害時の債務整理ガイドライン等)の監修・助言を行ったほか、新社会人や大学生等に向けたお金の知識といった、読者の学びにつながるテーマを提案した。さらに、熊本国税局や日本銀行熊本支店、日本証券業協会等の専門家へ監修協力を依頼し、連携の橋渡し役も果たした。
九州財務局の持つネットワークを最大限に活用することで、読者に対する多様かつ深度ある情報提供に貢献した。読者からは「分かりやすい」「九州財務局監修の表示で安心した」といった声が寄せられている。この取組は、読者の金融リテラシー向上だけでなく、財務省・金融庁施策の広報にもつながったといえる。
読者の声
元銀行員ですが、丁寧に読んでいます。分かりやすいです。スクラップしてしっかり勉強します。
話題の新NISA、躊躇していたが分かりやすくまとめられていた。
CASE10 災害に関する取組
能登半島地震 復旧・復興応援セミナー「Revival 能登」を開催 北陸財務局
北陸財務局は、能登半島地震からの復旧・復興を後押しするため、被災団体のニーズを踏まえ、財務局のネットワークを活用した課題解決支援セミナー「Revival 能登」を開催した。能登半島地震では、被災した上下水道ライフラインの復旧や水道管の耐震化率の低さといった課題が浮き彫りとなったほか、被災団体からは財政への影響や公営企業の経営悪化を懸念する声が上がっていた。
こうした課題を踏まえ、国土交通省や、過去の大震災から復興を進めている福島県新地町、熊本県益城町を講師に招き、令和7年2月13日にセミナーを実施。会場となった能登地域の七尾市には能登7市町から30名、オンラインでは190名の地方公共団体職員等が参加した。セミナーは、地震後のアンケートで把握した地域のニーズを踏まえたものであったことから、地方公共団体にとって有益かつ効果的な取組となった。本セミナーは、復興に向けた広域的なネットワークの深化・拡大にも寄与した。
参加者の声
東日本大震災や熊本地震での課題・取組など我が町と重なる点が多く、貴重な生の声が非常に参考になった。
当町と同じ小規模自治体として災害対応に当たる難しさと人員確保の工夫を聞くことができ参考となった。
能登半島地震の創造的復興に向けた取組や、財政面での課題など、実例を交えての話が非常に参考になった。
写真 セミナーの模様
CASE11 地方創生支援に関する取組
大阪・関西万博開催に向けて地域と連携し機運醸成 近畿財務局
近畿財務局は、大阪・関西万博に関して、地域の関係機関等と連携し、機運醸成に取り組んだ。その一環として、万博の機運醸成に取り組む9つの国の行政機関を会議メンバーとする連携会議を設置。令和5年2月から継続して開催し、地方支分部局間の関係深化や、万博関連イベントへの共同参加など、具体的な連携に繋がった。
また、令和7年2月26日には、万博開幕前の時期を捉え「第4回関西交通ネットワーク大商談会」を開催した。これは、管内金融機関の取引先と高速道路のサービスエリアや空港の物販店等との商談の場を設けるもので、国内外の万博来場者による関西各地への周遊を見据え、地域特産品の販路拡大や知名度向上を図ることを目的としたもの。当日は219社が参加し、374件の対面商談が実現した。
さらに、万博の「TEAM EXPO パビリオン」において、近畿財務局が財政教育プログラムや金融経済教育等をテーマとしたステージ発表及び展示参加した(令和7年7月25日)。当パビリオンへの参加を通じて、様々な機関・団体と共に地域一体となって機運醸成を図った。
写真 各省庁のオリジナルキャラクターも活躍。
写真 関西交通ネットワーク大商談会の模様。
写真 大商談会では万博に関する情報を発信。
写真 「TEAM EXPO パビリオン」の様子。
CASE12
自治体のデジタル化対応支援「自治体デジ博」を開催 四国財務局
四国財務局は、香川県内全自治体の地方版総合戦略の担当課と意見交換を実施。デジタル化対応について課題と感じている声を多く聴取した。自治体担当者から「デジタル化の必要性は感じているものの、具体的にどう動き始めるべきか」「デジタル実装している事例を知りたい」といった声が聞かれたことを受け、全国のデジタル実装事例を紹介するオンラインセミナー「自治体デジ博」を開催。各回約20〜60人の自治体職員等が参加したほか、他省庁、内閣府、各財務局職員も幅広く視聴した。
セミナーでは、全国のデジタル実装している自治体の担当者から取り組んだ背景、取組内容、効果などについて説明があったほか、疑問点や取り組むにあたっての留意点などについても対話できるよう個別意見交換の場を用意した。参加者からは専門的な質疑応答がなされた。
今回のセミナーでは、デジタル化という地域課題に対し、事例を紹介しメリットを示すことで、取り組むインセンティブを付与できた。また、分野ごとに開催することで、同じ業務内容だからこその深度ある対話を実現した。一部の参加者からは、「もっと話を聞いてみたいので、講師とつないで欲しい」といった依頼があるなど、自治体のデジタル化促進に寄与した。
CASE13
「福証IPOセミナーin沖縄」で県内企業の上場支援を後押し 沖縄総合事務局
沖縄総合事務局は、沖縄県内の上場を目指す企業の裾野拡大と、上場を通じた企業の成長支援を後押しするため、福岡証券取引所が主催する「福証IPOセミナーin沖縄」の開催を支援した。このセミナーは「福証から想いをかたちに」と題し、令和6年11月7日に沖縄県内で開催されたもので、沖縄県内の企業の上場支援を目的として一昨年より行われている。講演では、沖縄県内におけるスタートアップ支援の現状や、令和6年12月16日に開設された「Fukuoka PRO Market(略称FPM)」の活用による株式上場を通じた企業成長のメリット等が説明された。
セミナーにはFPMへの上場を目指す沖縄県内の企業を始め、金融機関、関係団体の参加があり、「大変勉強になった」「非常に有意義だった」等の意見が聞かれた。
企業の上場は、沖縄振興の基本方針に掲げる「民間主導の自立型経済の発展」につながる選択肢の一つであることから、沖縄総合事務局は有価証券の開示行政の推進を通じた地域連携及び企業の成長支援の一環として、今後も後援や広報により本セミナーを後押ししていく。
写真 開設式の様子(出典:福証HP)
今後の取組について
財務局はこれからも、地域の様々な主体と連携 ・ 協働し、地域課題の解決に向けて創意工夫を凝らしながら、社会の変化に伴う新たなニーズに対応していくことで、希望ある社会を次世代に引き継ぐため 、地域経済の発展に貢献し、地域住民の皆様にとって役立つ組織となることができるよう、引き続き地域と積極的に連携していく。
なお、地域連携事例集は、財務省財務局のホームページで公開している。令和6年度は、9つのカテゴリー、43 事例を紹介している。また、財務局ごとの地域連携事例や取組方針等も同ホームページから閲覧可能となっている。
(大臣官房地方課)
地域連携事例集
https://lfb.mof.go.jp/renkei/jireisyu.html
全国財務局の取組
https://lfb.mof.go.jp/renkei/torikumi.html
図表 売却の概要
図表 【参加者属性】
図表 全線開通に対する期待(地方公共団体アンケート結果)
図表 全線開通の効果と課題
図表 「地方財政教育プログラム」の概要
図表 参加者数
図表 実際のある日の記事(熊本日日新聞令和6年1月15日付)
図表 セミナーの内容
図表 新市場開設の目的
取材 文 向山勇
総論
財務局は、財務省の総合出先機関として、また、金融庁から事務委任を受けた組織として、地域に根差し、財政、国有財産、金融などの業務を通じて国の施策を実施するとともに、財務省及び金融庁の施策の広報、地域の声や経済の実態把握を通じて、地域に貢献することを使命としている。こうした機能を発揮することで、財務局は、各々の時代の要請の中で地域とつながり、地域と財務省・金融庁をつなぐ結節点となり、財政健全化や地域経済活性化に向けた施策を推進している。加えて、地域の主体とのネットワークを形成し、活用することで、地域の課題解決等をサポートする「地域連携」の取組を推進するほか、地方公共団体等が行う地方創生を支援している。
財政に関する取組
国有財産に関する取組
金融に関する取組
地域経済調査に関する取組
広報相談に関する取組
経済安全保障に関する取組
金融犯罪被害防止に向けた取組
災害に関する取組
地方創生支援に関する取組
CASE01 財政に関する取組
地方公共団体向け脱炭素の取組に係る勉強会を実施 関東財務局
関東財務局は、埼玉県内の地方公共団体を対象に、脱炭素の取組における課題解決支援と情報共有を目的とした勉強会を令和6年5月21日に開催した。これは、地方公共団体が「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づき脱炭素への取組を進める中で、財源不足や具体的な推進方法といった多様な課題を抱えていることを踏まえたもの。
勉強会は、さいたま新都心合同庁舎からのWEB配信形式で実施され、関東地方環境事務所による「地域脱炭素の推進」に関する講義や、株式会社脱炭素化支援機構による「カーボンニュートラルを目指す事業への支援」についての説明が行われた。さらに、埼玉県春日部市及び神奈川県開成町から具体的な取組事例が紹介され、参加者間の意見交換も活発に行われた。
当日は環境、財政、防災など、多様な部署の担当者が参加した。参加者からは「他市町の状況を知る貴重な機会となった」「(同様の悩みを抱える団体等に)相談しやすい環境を作ってもらえた」といった声が寄せられた。本勉強会は、地方公共団体の取組推進と参加者間の関係構築に貢献した。
講師の声
脱炭素関連の取組は手探りの部分が多く、組織を超えて協力していくことが重要。
写真 参加団体の模様
写真 当局会場の模様
CASE02 国有財産に関する取組
国有財産(建物付)の売却により地方公共団体の課題解決を支援 北海道財務局小樽出張所
北海道財務局小樽出張所は、北海道泊村が抱える漁業の新規就業者用住宅の不足という課題に対し、国有財産(建物付)の売却を通じて課題解決を支援した。北海道泊村では、基幹産業である漁業の担い手確保のため、体験移住・就業体験の取組を実施しているが、首長訪問の際に「体験者用住宅が不足しているため、村内にある森林管理局所有の建物を取得して活用したい」というニーズを把握。これを受け、北海道財務局が主体となり林野庁北海道森林管理局と調整を行ったもの。
その結果、森林管理局から財産の引継ぎを受け、令和7年3月に同村への売却が実現した。この取組は、漁業の新規就業者を確保し、将来の人口減少に対応する北海道泊村の環境整備を支援するものといえる。
写真 住居内装
写真 住居外観
CASE03
斜面地に所在する活用困難な国有地を市民団体に管理委託し地域活性化等に貢献 福岡財務支局長崎財務事務所
福岡財務支局長崎財務事務所は、長崎市内の活用困難な国有地を市民団体へ交流型市民農園として管理を委託し、管理コストの削減と地域活性化に貢献した。これは九州初の取組である。
長崎市内では、相続等により国庫に帰属したものの、斜面地にあるため車両が進入できず活用が困難な国有地が増加し、除草等の管理コストが課題となっていた。そこで同事務所は、斜面地の空き地を活用する市民団体の情報を得て、当該団体にアプローチ。当該国有地が持つ眺望の良さや市街地に近いという特性を活かした活用を提案し、交流型市民農園として管理を委託することで管理コストの削減を実現した。
この取組は、国にとっては「管理コストの削減」、市民団体にとっては「地域のための土地活用」と、双方にメリットがある。さらに、少子高齢化やコミュニティ衰退といった課題を抱える地域において、新たな人の集う場が生まれることによる地域コミュニティの活性化も期待されている。
写真 (出典:長崎都市・景観研究所)
写真 地元テレビ局が当取組を特集し、「管理委託制度は、『国の管理コスト低減』、『土地の有効活用』、『地元住民のコミュニティ活発化』の三方良し」と紹介。
CASE04 金融に関する取組
備後圏域で初となる「びんご事業者支援事例発表会」開催 中国財務局
中国財務局では、令和6年6月、広島県福山市と連携し備後圏域で初となる「びんご事業者支援事例発表会」を開催した。目的は(1)金融機関・産業支援機関が自らの支援事例を発表し、各機関が事業者支援力・連携の強化に繋げること。(2)参加者同士の交流を図り、ネットワーク強化に繋げること。(3)圏域の事業者に参加を呼びかけ、支援機関等を利用するきっかけとすること。
当日は中国財務局と広島県福山市の基調講演に続き、圏域に所在する金融機関・産業支援機関8機関による支援事例発表と参加者による交流会を実施。金融機関、産業支援機関、事業者等の約170名が参加した。
参加者からは「具体的な事例をあげてもらい話がわかりやすかった」「どの事例もお客様に寄り添うことを大事にしており、支援機関との連携の重要性がよくわかった」「事業者へのヒアリングのポイントや支援の際の注目ポイントがわかった」などの声が聞かれた。
写真 参加者集合写真
CASE05 地域経済調査に関する取組
東海環状自動車道の全線開通に向けた経済レポートを公表 東海財務局岐阜財務事務所及び津財務事務所
東海財務局岐阜財務事務所及び津財務事務所は、岐阜県と三重県を結ぶ東海環状自動車道の全線開通に関する期待と課題について共同で調査した経済レポートを公表した。
レポートによると、東回りルートが先行開通している岐阜県では、企業立地件数が全国3位になるなど既に効果が現れており、全線開通による更なる企業活動の活発化が見込まれている。一方、三重県では未だ企業進出が限定的であるものの、四日市港のハブ機能強化などによる物流の活発化と本格的な企業進出が期待されている。
共通の課題として、岐阜県では企業進出の活発化に伴い有効求人倍率が全国でも高位となっており、三重県でも今後の人手不足が懸念されるなど、両県ともに今後の労働力確保が課題となっている。このレポートは、各メディアで取り上げられるなど全線開通に向けた機運醸成にも貢献しており、関係機関から感謝の声のほか、地方公共団体からは、「今後の企業誘致活動にレポートを活用したい」との声が聞かれた。
CASE06 広報相談に関する取組
地方財政教育プログラムを開発地方公共団体にこどもの意見を聞く場を提供 東北財務局
東北財務局は、国の財政教育プログラムをアレンジした独自の「地方財政教育プログラム」を開発し、「国の財政」や「地方公共団体の財政」、「人口減少問題」を一体でシミュレーションできるプログラムを実施している。生徒たちは未来の自分たちの住むまちに何が必要か、どんなまちに住み続けたいかをグループで議論し、作成した予算を発表し合うことで、持続可能なまちの将来について考えることができる。
この取組は、生徒たちが自分の住むまちの財政について議論し、政策を決める経験を通して、主権者として財政について主体的に考え、課題を多面的・多角的に捉える人材を育成することが期待されている。また、議論した意見を首長に直接提言する取組も行っており、こどもの意見を聞く場を地方公共団体に提供することも地域貢献に繋がっている。
生徒の感想
これから町を担っていく若い世代が自分の町に関心を持ち、深く考えることが大切だと感じた。
写真 町長へ提言を手交しました
CASE07
大阪教育大学と連携し財政教育の担い手を育成 近畿財務局
近畿財務局は、財政教育の担い手育成を目的として、令和6年10月に大阪教育大学と連携協定を締結。これは、令和4年度から高等学校で「公共」が必履修化され、主権者教育としての財政教育の重要性が増していることを背景に、若者向けの主権者教育の一層の充実を図るもの。協定締結当日には、連携協力の一環として、社会科教員を目指す同大学の学生に対し、出前授業(財政教育プログラム)を実施した。
その後も連携を継続しており、令和7年9月30日、同大学が提供する「教員生涯学習プラットフォーム(OZONE-EDU)」へ財政教育に関するコンテンツを掲載し、教員や学生がオンラインで財政授業を受けられる仕組みを構築した。
また、教員を志す学生や社会科教員向けに、財政に関するセミナーや出前授業を継続するほか、令和8年度には新たに連続講座の実施も計画している。
写真 社会科教員を志す大阪教育大学の学生を対象とした出前授業の様子。
CASE08 経済安全保障に関する取組
「経済安全保障セミナー」を管内各地で開催 関東財務局
関東財務局は、経済安全保障に関する制度や国外への技術流出防止策等の周知を目的として、関係機関と連携し、経済安全保障セミナーを管内各地で開催した。セミナーでは、関係機関の職員が講師となり、経済安全保障の取組状況、外為法等に基づく各種制度、企業の技術流出防止に向けた諸課題や対策等について講演。令和6年度は、埼玉県、東京都、群馬県、神奈川県において開催し、企業をはじめ、大学・研究機関等から多数の参加があった。
参加者からは「多面的な視点で知れて有意義であった」「経済安全保障の成り立ちや枠組みが大変勉強になった」との声が寄せられた。経済安全保障は様々な領域で課題が顕在化しているものの、現状ではこの制度を知らない企業等も多いことから、今後も関係機関等と連携を強化しながら周知に取り組んでいく。
写真 セミナーの様子
CASE09 金融犯罪被害防止に関する取組
地元新聞社の新聞連載を通じて金融リテラシーの向上に寄与 九州財務局
九州財務局は、熊本県の地元新聞社が読者の金融リテラシー向上を目的として令和6年1月から1年間にわたり連載するミニコーナー「学んで得する!お金の話(通称まね得)」に貢献した。連載にあたり、九州財務局は記事の監修やテーマの提案、さらには日頃からやりとりのある専門機関と同社をつなぐ役割を担った。
具体的には、財務省・金融庁の施策がテーマとなった記事(新NISA、マネー・ローンダリング、自然災害時の債務整理ガイドライン等)の監修・助言を行ったほか、新社会人や大学生等に向けたお金の知識といった、読者の学びにつながるテーマを提案した。さらに、熊本国税局や日本銀行熊本支店、日本証券業協会等の専門家へ監修協力を依頼し、連携の橋渡し役も果たした。
九州財務局の持つネットワークを最大限に活用することで、読者に対する多様かつ深度ある情報提供に貢献した。読者からは「分かりやすい」「九州財務局監修の表示で安心した」といった声が寄せられている。この取組は、読者の金融リテラシー向上だけでなく、財務省・金融庁施策の広報にもつながったといえる。
読者の声
元銀行員ですが、丁寧に読んでいます。分かりやすいです。スクラップしてしっかり勉強します。
話題の新NISA、躊躇していたが分かりやすくまとめられていた。
CASE10 災害に関する取組
能登半島地震 復旧・復興応援セミナー「Revival 能登」を開催 北陸財務局
北陸財務局は、能登半島地震からの復旧・復興を後押しするため、被災団体のニーズを踏まえ、財務局のネットワークを活用した課題解決支援セミナー「Revival 能登」を開催した。能登半島地震では、被災した上下水道ライフラインの復旧や水道管の耐震化率の低さといった課題が浮き彫りとなったほか、被災団体からは財政への影響や公営企業の経営悪化を懸念する声が上がっていた。
こうした課題を踏まえ、国土交通省や、過去の大震災から復興を進めている福島県新地町、熊本県益城町を講師に招き、令和7年2月13日にセミナーを実施。会場となった能登地域の七尾市には能登7市町から30名、オンラインでは190名の地方公共団体職員等が参加した。セミナーは、地震後のアンケートで把握した地域のニーズを踏まえたものであったことから、地方公共団体にとって有益かつ効果的な取組となった。本セミナーは、復興に向けた広域的なネットワークの深化・拡大にも寄与した。
参加者の声
東日本大震災や熊本地震での課題・取組など我が町と重なる点が多く、貴重な生の声が非常に参考になった。
当町と同じ小規模自治体として災害対応に当たる難しさと人員確保の工夫を聞くことができ参考となった。
能登半島地震の創造的復興に向けた取組や、財政面での課題など、実例を交えての話が非常に参考になった。
写真 セミナーの模様
CASE11 地方創生支援に関する取組
大阪・関西万博開催に向けて地域と連携し機運醸成 近畿財務局
近畿財務局は、大阪・関西万博に関して、地域の関係機関等と連携し、機運醸成に取り組んだ。その一環として、万博の機運醸成に取り組む9つの国の行政機関を会議メンバーとする連携会議を設置。令和5年2月から継続して開催し、地方支分部局間の関係深化や、万博関連イベントへの共同参加など、具体的な連携に繋がった。
また、令和7年2月26日には、万博開幕前の時期を捉え「第4回関西交通ネットワーク大商談会」を開催した。これは、管内金融機関の取引先と高速道路のサービスエリアや空港の物販店等との商談の場を設けるもので、国内外の万博来場者による関西各地への周遊を見据え、地域特産品の販路拡大や知名度向上を図ることを目的としたもの。当日は219社が参加し、374件の対面商談が実現した。
さらに、万博の「TEAM EXPO パビリオン」において、近畿財務局が財政教育プログラムや金融経済教育等をテーマとしたステージ発表及び展示参加した(令和7年7月25日)。当パビリオンへの参加を通じて、様々な機関・団体と共に地域一体となって機運醸成を図った。
写真 各省庁のオリジナルキャラクターも活躍。
写真 関西交通ネットワーク大商談会の模様。
写真 大商談会では万博に関する情報を発信。
写真 「TEAM EXPO パビリオン」の様子。
CASE12
自治体のデジタル化対応支援「自治体デジ博」を開催 四国財務局
四国財務局は、香川県内全自治体の地方版総合戦略の担当課と意見交換を実施。デジタル化対応について課題と感じている声を多く聴取した。自治体担当者から「デジタル化の必要性は感じているものの、具体的にどう動き始めるべきか」「デジタル実装している事例を知りたい」といった声が聞かれたことを受け、全国のデジタル実装事例を紹介するオンラインセミナー「自治体デジ博」を開催。各回約20〜60人の自治体職員等が参加したほか、他省庁、内閣府、各財務局職員も幅広く視聴した。
セミナーでは、全国のデジタル実装している自治体の担当者から取り組んだ背景、取組内容、効果などについて説明があったほか、疑問点や取り組むにあたっての留意点などについても対話できるよう個別意見交換の場を用意した。参加者からは専門的な質疑応答がなされた。
今回のセミナーでは、デジタル化という地域課題に対し、事例を紹介しメリットを示すことで、取り組むインセンティブを付与できた。また、分野ごとに開催することで、同じ業務内容だからこその深度ある対話を実現した。一部の参加者からは、「もっと話を聞いてみたいので、講師とつないで欲しい」といった依頼があるなど、自治体のデジタル化促進に寄与した。
CASE13
「福証IPOセミナーin沖縄」で県内企業の上場支援を後押し 沖縄総合事務局
沖縄総合事務局は、沖縄県内の上場を目指す企業の裾野拡大と、上場を通じた企業の成長支援を後押しするため、福岡証券取引所が主催する「福証IPOセミナーin沖縄」の開催を支援した。このセミナーは「福証から想いをかたちに」と題し、令和6年11月7日に沖縄県内で開催されたもので、沖縄県内の企業の上場支援を目的として一昨年より行われている。講演では、沖縄県内におけるスタートアップ支援の現状や、令和6年12月16日に開設された「Fukuoka PRO Market(略称FPM)」の活用による株式上場を通じた企業成長のメリット等が説明された。
セミナーにはFPMへの上場を目指す沖縄県内の企業を始め、金融機関、関係団体の参加があり、「大変勉強になった」「非常に有意義だった」等の意見が聞かれた。
企業の上場は、沖縄振興の基本方針に掲げる「民間主導の自立型経済の発展」につながる選択肢の一つであることから、沖縄総合事務局は有価証券の開示行政の推進を通じた地域連携及び企業の成長支援の一環として、今後も後援や広報により本セミナーを後押ししていく。
写真 開設式の様子(出典:福証HP)
今後の取組について
財務局はこれからも、地域の様々な主体と連携 ・ 協働し、地域課題の解決に向けて創意工夫を凝らしながら、社会の変化に伴う新たなニーズに対応していくことで、希望ある社会を次世代に引き継ぐため 、地域経済の発展に貢献し、地域住民の皆様にとって役立つ組織となることができるよう、引き続き地域と積極的に連携していく。
なお、地域連携事例集は、財務省財務局のホームページで公開している。令和6年度は、9つのカテゴリー、43 事例を紹介している。また、財務局ごとの地域連携事例や取組方針等も同ホームページから閲覧可能となっている。
(大臣官房地方課)
地域連携事例集
https://lfb.mof.go.jp/renkei/jireisyu.html
全国財務局の取組
https://lfb.mof.go.jp/renkei/torikumi.html
図表 売却の概要
図表 【参加者属性】
図表 全線開通に対する期待(地方公共団体アンケート結果)
図表 全線開通の効果と課題
図表 「地方財政教育プログラム」の概要
図表 参加者数
図表 実際のある日の記事(熊本日日新聞令和6年1月15日付)
図表 セミナーの内容
図表 新市場開設の目的