第3回 急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ(令和7年10月17日)議事要旨
1. 日時 令和7年10月17日(金)10:00〜11:30
2. 場所 財務省第3特別会議室(オンライン併用)
3. 出席者
(関税分科会委員)注:◎にじゅうまるは座長
阿部 克則 学習院大学法学部教授
江藤 名保子 学習院大学法学部教授
片山 銘人 日本労働組合総連合会経済・社会政策局長
河野 真理子 早稲田大学法学学術院教授
木村 旬 (株)毎日新聞社論説委員
木村 福成 慶應義塾大学名誉教授・シニア教授
古城 佳子 東京大学名誉教授
佐藤 英明 慶應義塾大学大学院法務研究科教授
末冨 純子 弁護士
杉山 晶子 東洋大学経営学部会計ファイナンス学科教授
田邊 國昭(◎にじゅうまる) 東京大学大学院法学政治学研究科教授
野原 佐和子 (株)イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長
樋口 容子 (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会副会長
松島 浩道 (一財)大日本蚕糸会会頭
(オブザーバー)
岩水 満 株式会社国際エキスプレス 専務取締役
今野 孝一 (一社)日本通関業連合会 専務理事
坂本 瑛子 楽天グループ株式会社 政策渉外部 デジタル政策課 シニアマネージャー
佐々木 勝也 DHLジャパン株式会社 カスタムズ&レギュラトリー アフェアーズ シニアマネージャー
松田 友加里 アマゾンジャパン合同会社 渉外本部長(物流、製品コンプライアンス)
松本 義則 フェデラルエクスプレスジャパン合同会社 顧問
宮澤 恭一 ヤマト運輸株式会社 通関管理室室長
(敬称略、五十音順)
(財務省) 寺岡関税局長、中澤大臣官房審議官、大関総務課長、三浦関税課長、藤中業務課長 他
(経済産業省) 谷通商政策局国際経済部通商交渉調整官
(農林水産省) 須藤輸出・国際局国際経済課課長補佐
4. 事務局より少額輸入貨物の増加とそれに伴う課題について説明を行った後、オブザーバーから意見等を伺った。
主な意見等は以下のとおり。
(課税制度全般)
・通関実務負担の軽減等による貿易の円滑化、適正かつ公平な関税等の徴収、安全・安心な社会の実現について、官民で協議する場を今後も設置してほしい。
(少額免税制度)
・少額免税制度の導入以前は、極めて少額の貨物においても、品目分類を行って関税を納付する煩雑さがあった。現状の輸入件数の増加を踏まえれば、通関実務の負担減少のため、課税を行うことの費用対効果がある対象と税率を考える必要がある。
<消費税に係る少額免税制度>
・少額免税制度の見直し後、プラットフォーム事業者が納税を担う場合、通関業者は使用されたプラットフォーム(ECサイト)の把握と顧客に対する消費税等の請求の管理が難しい。通関実務上の負担が増加しないよう、制度設計時に留意いただきたい。
・販売時に課税される貨物の納税義務者となるプラットフォーム事業者や販売者には相応の負担がかかるため、取り扱う貨物の迅速な通関といったインセンティブの設計は考えられないか。
・プラットフォーム事業者等の登録義務の閾値の基準となる事業者の売上額については、国際郵便を含めた全ての輸入貨物を対象としていただきたい。
・豪州方式の場合、同じ少額貨物であっても、販売時に課税される貨物と、輸入申告時に一部免税される貨物があることが懸念。消費者が商品を購入する際に、消費税がかかるか否かが明瞭にわかるようにすべきではないか。
・仮に、プラットフォーム事業者等が納税義務者となる対象が少額貨物に限られると、同一のECサイトでの購入であっても、輸入申告時に課税される貨物と販売時に課税される貨物が混在するため、消費者にとって分かりにくいのではないか。
・販売者による納税漏れ等を防ぐには、プラットフォーム事業者等の番号の輸入申告書への記載の周知徹底が重要。
・システム改修や消費者・販売者への周知徹底のため、十分な移行期間(少なくとも24か月)を確保いただきたい。
<関税に係る少額免税制度>
・少額免税基準を1万円から6万円に引き上げていただきたい。制度が導入されてから36年が経過しており、現在の1万円の価値は当時と異なると思う。諸外国と比べても低い水準に思われ、客観的な数値をもとに少額免税基準を議論する必要があるのではないか。
・少額免税基準の引下げが行われた場合、関税の課税対象となる貨物が増加し、通関業者の負担となる。
・適用除外品目の見直しを行っていただきたい。
(課税価格決定の特例(0.6掛け))
・国内外事業者間の競争上の不均衡と不正利用防止の観点から、廃止を検討していただきたい。
(簡易税率)
・課税価格の合計額が1万円超の貨物については、マニフェスト申告の対象外であり、専門的な知識を要する品目分類が非常に手間である。簡易税率においても、実際は7区分より詳細な品目分類を要しており、手間がかかるため、利便性を高める見直しの実施が望ましい。
・適用除外品目の見直しを行っていただきたい。
・課税価格が20万円以下の輸入貨物については、複数の品目をまとめて輸入申告を行うことが多く、その場合はその中の一品目の関税率を適用することとなる。この少額合算をする際にも、簡易税率を適用できるように見直していただきたい。
・諸外国であるように、少額貨物を対象とした少ない桁数の統計番号(例:6桁のHSコード)で輸入申告ができるようなより簡易な税率の導入も検討いただきたい。
(国際郵便)
・国際郵便と一般貨物のイコールフッティングについて、他省庁とも連携して検討いただきたい。
・水際取締りと適正課税を確実に実施した上で、国際郵便と一般貨物のイコールフッティング等の課題の検討を行うものと理解。特に、国際郵便において一般貨物と同様に適正な課税を実現するためには、税関の体制整備も必要ではないか。
・消費税デミニミスの見直しや0.6掛けの廃止に伴い、税関で賦課課税する国際郵便物が増加すると見込まれるが、適正な課税を行う体制が整備されるのかが懸念。適正かつ公平な関税等の徴収の観点では、一般貨物と国際郵便の間で対応に差が生じないことが重要であり、課税を行うことの費用対効果を含めて検討することが重要ではないか。
(立替払い等)
・財務省関税局・税関から荷主等の貿易関係者に対する過去2回にわたる周知により、立替払いの懸念は徐々に改善に向かっている。また、2回目の周知の際には、立替払いに加えて、労務費の通関業務料金への適切な価格転嫁について配慮を求める内容も盛り込まれていた。
・消費税に係る少額免税制度の見直しにおいては、豪州方式・EU方式いずれかのうち、立替払いが発生する可能性が低い方式が採用されるのが望ましい。
・迅速な通関が重視される中、輸入申告時に課税される貨物は通関業者が立替払いをせざるを得ない。消費税に係る少額免税制度の見直しにあたっては、少額貨物に限らず、全ての貨物で販売時の課税とすることはできないか。
5. 意見交換
事務局説明、オブザーバーからの意見等を踏まえ、委員から意見等を伺った。
委員からの主な意見等は以下のとおり。
(課税制度全般)
・この30年間での大きな社会構造の変化、とりわけBtoCの極端な増大により生じている様々な課題の中で、国内外の事業者間の競争上の不均衡の解消の観点から対応を検討することが必要。
・消費者・通関業者の納税事務等の負担を考慮に入れても、国内外の事業者間の公平な競争環境の確保や諸外国との足並みを揃えた対応の重要性を鑑みれば、諸外国と同様に、日本でも厳格な関税等の徴収の実施が重要。
・制度改正においては、事業者やその企業で働く労働者、及び消費者にとって大きな負担とならないようにする観点が重要。特に、課税時期や税率について、消費者が理解・納得した上で購買を行える必要。
(少額免税制度)
・少額免税基準は1万円で固定されているが、近年は為替相場の変動が大きい。円安である現在は、同じ価値の輸入品がかつてより高額であり、結果的に免税の範囲が狭くなっている状態と言えるが、この点をどのように捉えているか。
<消費税に係る少額免税制度>
・国内外の事業者間の競争上の不均衡の解消から廃止が適当。国際郵便でも同様の対応を行うことを強調すべき。
・日本が輸入大国となる中、消費税率は8%又は10%と大きく、税収の確保の観点からも意義ある見直しと考えられる。
・販売時に課税される貨物への対応は一定の負担が見込まれることから、対応できる事業者は、大規模なプラットフォーム事業者等に限られるのではないか。新規の事業者が参入できない点が懸念。
<関税に係る少額免税制度>
・品目分類等の関税に特有の通関実務上の負担を踏まえると、課税価格の合計額が1万円以下の貨物にまで一度に課税対象を広げることは困難であり、当面は制度を維持することが考えられる。
・越境EC貨物に適用される関税率は、消費税率(10%)と同程度には高くないと考えられる。これを踏まえると、まずは、より経済的な歪みが生じていると言える消費税の少額免税制度について対応することが妥当。
・関税の少額免税基準を維持することによって生じる納税事務等の負担増加への対応としては、少額輸入貨物に係る簡易税率の利便性の向上が適当。
・簡易税率やその他の制度の見直しによる納税事務等の負担軽減を図った後、将来的には、関税に係る少額免税制度の廃止を検討することが考えられる。
(課税価格決定の特例(0.6掛け))
・越境EC貨物が卸売価格と同等の海外小売価格で輸入されていることを踏まえ、税により生じる競争上の不均衡を解消する観点から廃止が適当。様々な経済的な歪みを解消するための一連の措置と理解。
・本特例は、課税価格決定上の負担軽減等の正の側面もあるかと思うが、廃止にはその現状のメリットを上回る効果があるという判断か。
(簡易税率)
・適用除外品目をできる限り減らすことや簡易税率の水準をEPA税率よりも引き下げることで、通関業者の事務負担を軽減することが望ましい。
(国際郵便)
・国際郵便の見直しに際して、適正な課税の実施には人員等が必要と理解。この点、関係機関との間で検討し、対応可能と考えているのか。
問い合わせ先
財務省関税局関税課
電話:03-3581-4111(内線5277)