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第2回 急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ(令和7年9月10日)議事要旨

1. 日時 令和7年9月10日(水)13:00〜14:30

2. 場所 財務省第3特別会議室(オンライン併用)

3. 出席者

(関税分科会委員)注:にじゅうまるは座長

阿部 克則 学習院大学法学部教授

内山 智裕 東京農業大学国際食料情報学部教授

江藤 名保子 学習院大学法学部教授

片山 銘人 日本労働組合総連合会経済・社会政策局長

河野 真理子 早稲田大学法学学術院教授

木村 旬 (株)毎日新聞社論説委員

木村 福成 慶應義塾大学名誉教授・シニア教授

佐藤 英明 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

清水 順子 学習院大学経済学部教授

下坂 朝子 (一社)日本経済団体連合会国際協力本部長

末冨 純子 弁護士

杉山 晶子 東洋大学経営学部会計ファイナンス学科教授

高橋 裕子 (一財)消費科学センター企画運営委員

田邊 國昭(にじゅうまる) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

田村 善之 東京大学大学院法学政治学研究科教授・北海道大学名誉教授

手塚 広一郎 日本大学経済学部学部長・教授

野原 佐和子 (株)イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長

樋口 容子 (公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会副会長

松島 浩道 (一財)大日本蚕糸会会頭

若江 雅子 読売新聞東京本社編集委員

(オブザーバー)

岩水 満 株式会社国際エキスプレス​ 専務取締役

今野 孝一 (一社)日本通関業連合会​ 専務理事

坂本 瑛子 楽天グループ株式会社​ 政策渉外部 デジタル政策課 シニアマネージャー

佐々木 勝也 DHLジャパン株式会社 カスタムズ&レギュラトリー アフェアーズ シニアマネージャー

松田 友加里 アマゾンジャパン合同会社 渉外本部長

松本 義則 フェデラルエクスプレスジャパン合同会社 顧問

宮澤 恭一 ヤマト運輸株式会社 通関管理室室長

(敬称略、五十音順)

(財務省) 寺岡関税局長、中澤大臣官房審議官、大関総務課長、三浦関税課長、藤中業務課長 他

4. 事務局より少額輸入貨物の増加とそれに伴う課題について説明を行った後、オブザーバーから意見等を伺った。

主な意見等は以下のとおり。

(水際取締り全般に係る事項)

・税関は、越境EC貨物の輸入のうち、商業目的である、税関事務管理人を利用した輸入と転売を目的とした個人の輸入を中心とした取締りをするべきではないか。

・適正な通関手続・輸入申告に取組んでいるが、貨物が税関で止まることや課税されることを顧客が危惧し、他の通関業者や国際郵便に変更されることがある。水際取締りのあるべき姿の実現には、適正な通関手続を行う通関業者の増加策や国際郵便における取締りも必要ではないか。

・越境EC貨物の輸入形態や件数増加を把握するために、プラットフォーム事業者や販売者等を客観的にモニターする必要がある。

・越境EC貨物の水際取締りにおいては、プラットフォーム事業者の役割が重要。

・悪意のあるプラットフォーム事業者による社会の安全・安心を脅かす物品等の流入を防ぐため、全てのプラットフォーム事業者を輸入者と定義づけることや、MOU等により貨物の情報提供を義務付けることはできないか。悪意のあるプラットフォーム事業者には、高額の罰金を科す、または貨物の通関を止めるといった措置を講じてはどうか。

(輸入通関における保税業者・通関業者の役割)

・適正な業務運営の確保に取り組む事業者へのインセンティブとして、例えば、

✓ 人員補強やシステムの導入のため、補助金制度を検討してはどうか。税関・事業者共に業務量が増加する中、人手が増やせない状況で
あり、事業者に水際取締りへの協力を求める上で重要と考える。

✓ 審査区分に格差をつけるのはどうか。例えば、優良な通関業者については、簡易審査扱い(区分1)の比率を上げ、書類審査扱い(区
分2)の比率を減らす。これは、通関業者が税関から信頼を得ている証明となるほか、少額免税制度の見直しに伴う税関の業務増加への対
応にもなるのではないか。

(注)税関では、輸入申告を3つの審査区分に振り分け、これに応じた審査・検査を実施。審査区分には、簡易審査扱い(区分1)、書類審査扱い(区分2)、検査扱い(区分3)がある。

・税関と通関業者は一体となって水際取締りに取組んでいると認識。通関業者は、関税法令に基づく手続を代理・代行する立場であり、法令遵守の確保が最も重要であると感じている。

・不適正な通関手続を行う通関業者は一部に限られており、通関業務料金も極めて低価格の設定。実際、財務諸表を確認すると財務状況に問題がある者が存在しており、こういった通関業者に対して抜き打ちで立入検査を行うのはどうか。

・通関業者において、組織的に故意かつ悪質な不正の関与が認められた場合は、直ちに資格停止や社名公表といった措置を行っていただきたい。

(簡易・迅速な通関手続)

・簡易・迅速な通関手続というベネフィットを付与する対象として、事前に貨物の情報提供を行うという要件のみでは不十分。AEO事業者やその他の適正な業務運営に向けた取組みを行う通関業者に絞るのが効果的ではないか。

・少額輸入貨物の多くがマニフェスト申告を使った航空貨物での輸入と思われるため、航空小口簡易通関(仮称)の導入を速やかに行っていただきたい。

(BtoCによる貨物における情報)

・通関業者・税関とプラットフォーム事業者・販売者の連携において、例えば、

✓ 日本とEPA/FTAを締結している国・地域の当局間で交換している社会の安全・安心を脅かす物品等の情報について、事業者へもタイム
リーに共有してはどうか。

✓ プラットフォーム事業者から販売者に対する周知において、10月12日施行予定の輸入申告項目の追加等の制度改正についての多言語リ
ーフレットが有用だった。今後、初めて日本への輸入を行う海外販売者が増えることが予想され、基礎的な通関ルールの多言語での案内
(リーフレット、ホームページ等)が有用と考える。この中で、販売者から海外運送業者に適切に貨物の情報を伝える必要性を盛り込むと
良いのではないか。

✓ プラットフォーム事業者からは、輸入貨物の流れにおいて、海外運送業者と保税・通関業者間の契約関係が見えづらい。輸入申告に誤
りがあった場合、誰がどのような責任を負うのかという点を、関係者に分かりやすい形で示す必要があるのではないか。

・プラットフォーム事業者と税関での協力の在り方の取組みとして、例えば、

✓ 個別のプラットフォーム事業者と税関との協議のみならず、複数のプラットフォーム事業者との定期的な協議会を開催してはどうか。
税関との協力に積極的なプラットフォーム事業者にベネフィットを付与する形とすれば、国内外全体で協力の取組みが加速するのではない
か。

✓ 税関から商品が違反物品であるという確実な情報を入手できれば、プラットフォーム事業者から販売者等の情報提供が行いやすい。逆
に、税関からの情報が曖昧な場合、販売者との守秘義務や独占禁止法等の観点から情報提供に慎重にならざるを得ない。また、プラットフ
ォーム事業者から提供した情報の正確性について、罰則がない保障があるとよい。

✓ 関税局・税関とMOUを締結し協力を進めているプラットフォーム事業者もある中で、税関と国内に拠点を持たないプラットフォーム事
業者との間の協力関係が課題ではないか。国内外のプラットフォーム事業者間の公平な競争環境の確保について考える必要がある。

✓ 将来的に、民間企業の保有する情報がAPIで税関と連携可能となると、オペレーションの負担も軽減される。スマート税関の取組みが
一層進むことに期待。

5. 意見交換

事務局説明、オブザーバーからの意見等を踏まえ、委員から意見等を伺った。

委員からの主な意見等は以下のとおり。

(経済、社会情勢等)

・越境ECの拡大が、国民生活に不可欠であり経済成長の観点から重要な役割を担っていると社会的・経済的に意義付けされた点に賛同。越境ECの健全な発展のため今回の措置を実施するという方針を示したことは、国民の理解を得られる一助になるのではないか。

・今回の政策が社会にどう受け止められうるのか、当局がどのようなメッセージ性を込めるのかを考えること、越境ECが社会の安全・安心を脅かしているという課題をどう位置づけるかを検討することが重要。社会にとって、安価なものが手に入ることは良い面だけではなく、危険性もあるという問題点を、一般にも知ってもらえるような発信が必要ではないか。

・中国の個人向けECサイト運営事業者の過剰生産や採算性を考慮せず低価格を追求する在り方は、そのビジネス全体を自国の市場に取り込もうとする戦略が背景にある可能性がある。本課題を、国際的な枠組みの中でどのように議論していくかが重要ではないか。

・悪質なECサイトが多くある中、例えば、消費者庁等に消費者の被害情報が多く集まっていると考えられるが、現状有効な対策が取られていないように見受けられる。積極的に関係者間で情報共有を行い、日本の消費者が関わる悪質な事業者を排除していくことが重要ではないか。税関の入手する情報を主にすると、細かな消費者の被害の情報が反映されにくい。省庁横断的に、消費者自らが悪質なECサイトを利用せずに済むような情報の提供等の施策を検討いただきたい。

(水際取締り全般に係る事項)

・メリハリのある水際取締りの実現により、税関はリスクの高い貨物の審査・検査に重点的に投入することが可能となり、安全・安心な社会の実現と適正かつ迅速な通関の両立に資するのではないか。

・BtoCによる輸入の増加に伴う税関の業務量増という負荷の高まりを防ぐため、また事業者に対する適正な業務運営を確保するため、税関の適正な人員確保をお願いしたい。輸入貨物が急増する中で税関の人員が一定であれば、一貫した水際取締りに限界を迎えるか、働き方の面で限界を迎えるかのいずれかとなってしまう。

・水際取締りにおいては、プラットフォーム事業者への対策が重要であり、特に新興のプラットフォーム事業者に対して、法律により何らかの規制をしていくことが必要ではないか。長期的には通関時の規制が必要であるが、短期的には、既存法を強化・拡大し、違法な出品を検知した場合の、税関への通知等の義務付けが解決策の一つとして考えられるのではないか。

(輸入通関における保税業者・通関業者の役割)

・適正な業務運営確保のために実効性のある効果的な仕組みは極めて妥当な内容。世界の越境EC市場規模の拡大予測を踏まえ、本仕組みをできるだけ早急に実行に移していただきたい。

・保税業者に対する行政措置の整備について、極めて軽いものか重いもののいずれかしかない点は大きな課題。段階的な処分を設けることにより、きめ細やかなフォローが可能となると考える。

・適正な業務運営の確保に取り組む事業者へのインセンティブ導入は、急増する越境EC貨物と限られたマンパワーの中での効果的な体制整備のため欠かせない仕組みである。

・他の業種も参考に、業会団体に加入しない通関業者や過去に不正な業務運営が確認された通関業者をフォローアップする機能があってもよいのではないか。

・通関業者の法令遵守の確保においては、共同規制的な対応が考えられるのではないか。例えば、業界団体に加入した場合は負担を軽減し、加入しない場合には集中的に検査を行うといったメリハリをつけるのはどうか。

・通関業者の労務費の転嫁が進んでいない点について、既に政府からガイドラインが出ているが、引続き通関業者への支援をお願いしたい。通関業者による不正事案を減らすことにもなる。

・通関業においては、経済学が想定するような競争環境となっておらず、原価を下回る価格での競争状態になる可能性がある。労務費の転嫁がしにくい環境も必然であり、何らかの形で企業間の適正取引のための協調行動を促すことはできないか。

問い合わせ先

財務省関税局関税課

電話:03-3581-4111(内線5277)

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