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第1回 急増する少額輸入貨物への対応に関するワーキンググループ(令和7年6月12日)議事要旨

1. 日時 令和7年6月12日(木)13:30〜15:00

2. 場所 財務省第3特別会議室(オンライン併用)

3. 出席者

(関税分科会委員)注:にじゅうまるは座長

阿部 克則 学習院大学法学部教授

内山 智裕 東京農業大学国際食料情報学部教授

大橋 弘 東京大学副学長・東京大学大学院経済学研究科教授

河野 真理子 早稲田大学法学学術院教授

木村 旬 株式会社毎日新聞社論説委員

木村 福成 慶應義塾大学名誉教授・シニア教授

佐藤 英明 慶應義塾大学大学院法務研究科教授

清水 順子 学習院大学経済学部教授

末冨 純子 弁護士

高橋 裕子 一般財団法人消費科学センター企画運営委員

田邊 國昭(にじゅうまる) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

手塚 広一郎 日本大学経済学部学部長・教授

野原 佐和子 株式会社イプシ・マーケティング研究所代表取締役社長

松島 浩道 一般財団法人大日本蚕糸会会頭

若江 雅子 読売新聞東京本社編集委員

(オブザーバー)

岩水 満 株式会社国際エキスプレス 専務取締役

今野 孝一 一般社団法人日本通関業連合会 専務理事

坂本 瑛子 楽天グループ株式会社 政策渉外部 デジタル政策課 シニアマネージャー

佐々木 勝也 DHLジャパン株式会社 カスタムズ&レギュラトリーアフェアーズ シニアマネージャー

松田 友加里 アマゾンジャパン合同会社 渉外本部長

松本 義則 フェデラルエクスプレスジャパン合同会社 顧問

宮澤 恭一 ヤマト運輸株式会社 通関管理室室長

(敬称略、五十音順)

(財務省) 中澤大臣官房審議官、𠮷田総務課長、大関関税課長、藤中業務課長 他

4. 事務局より少額輸入貨物の増加とそれに伴う課題について説明を行った後、オブザーバーから意見等を伺った。

主な意見等は以下のとおり。

(課税制度)

<消費税に係る少額免税制度>

・政府税調専門家会合において、消費税に係る少額免税制度については、EU方式と豪州方式のどちらを志向するかが議論になっているが、通関実務や物流の円滑化を考慮して見直すべき。例えば、

✓ 2つの方式を比べれば、国際物流の円滑化の観点からは豪州方式が望ましいのではないか。

✓ 2つの方式に捉われず、日本の商慣習や通関実務に即した日本方式の制度が導入されることを期待。

・仮にEU方式が導入された場合、すべての貨物が課税対象となり通関実務の負担(システム改修や立替払いの増加等による負担を含む。)が大きい。

・仮に豪州方式が導入された場合、登録事業者に係る貨物以外の貨物に対しては少額免税制度が存置されるため、EU方式に比べると通関実務の負担は軽減される。一方、豪州方式に特有の課題として、事業者の売上規模(閾値)により少額免税制度が適用されるか否かが分かれることになるが、EC市場の公正な競争環境の確保等の観点も考慮して、閾値設定のあり方を検討すべきである。閾値はゼロが望ましいが、例えば、シンガポールで1.1億円相当となっていることも踏まえて、ごく少額の閾値設定としてはどうか。

・消費税の少額免税制度を見直す際には、適正な課税と執行、国内外の事業者間の競争上の公平性の確保の観点からプラットフォーム事業者に納税義務を課す形式があり得るが、以下の点が課題。

✓ プラットフォーム課税の閾値について、プラットフォーム事業者が把握可能な売上規模等とする必要

✓ 当該貨物が課税対象か否かの判定を、商品単位とするか、梱包単位とするか、注文単位とするか等を検討する必要。
プラットフォーム事業者の実務を踏まえると、注文単位を基本としつつ、少額貨物か否かの金額で区切らずプラットフォーム事業者が
消費税全額を徴収するほうが対応しやすい可能性

✓ 出品者からの情報の真偽を確かめられないプラットフォーム事業者が税務当局に提供した情報が誤りだった場合の取扱いについて罰則
の対象とならないようにする必要

✓ 本邦外のプラットフォーム事業者に対する適切な執行の確保

✓ 本改正が個人貨物のみを対象とした場合、プラットフォーム事業者において商業利用と個人利用を区別する必要はないようにする必要

・輸入時に登録事業者の貨物か否かの判別の為、新たにコードを税関に申告する必要が生じると思われるが、その際、輸出者から偽りのプラットフォーム事業者を教えられても通関業者では判別できない。このため、適正な申告を行う責務がある通関業者はコンプライアンスが確保された顧客を選ばざるを得ない。その分、コンプライアンスの低い顧客は国際郵便を利用するようになるのではないか。

<関税に係る少額免税制度及び課税価格決定の特例>

・国際物流の円滑化を確保するために、関税の少額免税制度の閾値を6万円に引き上げていただきたい。

・課税価格決定の特例(0.6掛け)については、デジタル経済が進展した現在において、不公平な競争環境を生じさせていることから、公平な競争環境を担保するため、廃止を含めた見直しが必要。

(水際取締り)

・輸入貨物が増えている中で、厳格な水際取締りを実現するためには、通関業者・プラットフォーム事業者・税関の連携を強化する必要がある。例えば、

✓ 税関で摘発された事例を、個人情報を排した上で、通関業者やプラットフォーム事業者に公表し、コンプライアンス意識の低い事業者
が市場参入しにくい仕組みを構築してはどうか。

✓ 現状においても、通関業者やプラットフォーム事業者は、模倣品業者等に関する情報や、貨物の事前情報を当局に提供しており、
知的財産侵害物品の摘発等に寄与している。こうした協力の範囲を拡大させてはどうか。

✓ 個別通達「海上小口貨物に係る簡易通関」での販売情報等の輸入申告前の税関への提供等を、航空貨物にも拡大してはどうか。

✓ プラットフォーム事業者から、販売者に対して、運送業者や通関業者に正確な貨物情報を伝えるよう制度周知を強化することが
考えられる。その際は当局の通関ルールの周知の多言語化が図られると有用。

✓ 情報の効果的な連携のためには、プラットフォーム事業者の既存のシステムを念頭に事業者の過度な負担にならない制度設計が必要。
その際には海外における成功事例の共有も有益。

・プラットフォーム事業者は、フルフィルメントサービスにおいても、販売者による日本への輸送や輸入通関に関与しておらず、販売者の輸入貨物情報や輸入申告の詳細についても把握できる立場にない。

・通関業者とプラットフォーム事業者にランクを付け、優良な者が通関において優遇措置を受けることが出来て、悪質な業者がペナルティを受ける形としてはどうか。

・マニフェスト申告に相当する制度を設けている国では、我が国と同様、貨物を小分けにする分割発送が生じている。購入者が分けて注文する場合と、販売者が分けて発送する場合があり、公平性の担保が課題。

(国際郵便)

・一般貨物の通関には申告納税方式が、国際郵便物の通関には賦課課税方式が採用されている。国際郵便物に比べて一般貨物の通関に係る負担が大きくなっている。国際郵便であっても、越境EC貨物であれば、データがあるのだから申告納税方式とすることも可能ではないか。税関にとっても取締りを行いやすくなると思慮。

・今後、少額輸入貨物に関する制度見直しを実施していくにあたっては、一般貨物と国際郵便物について制度的な差異を設けるべきではない。

(全般に係る事項)

・EC市場の特性として、販売者はプラットフォーム間の移動が非常に容易であることに留意が必要。

・越境EC貨物を取扱うことができている通関業者が少ない状況を踏まえ、AEO通関業者をはじめとするコンプライアンスを確保した通関業者が、越境EC貨物においても適正な申告ができるような制度を構築すべきである。

・納税義務者たる輸入者を代理・代行する立場にある通関業者が、商慣習として関税・消費税の立替えを行っている。迅速な通関処理のために行っているが、通関業者にとっては、資金管理面で負担となっている。制度見直しにおいては、よく考慮いただきたい。

・制度の改正時には社内のシステム改修にかかる時間や顧客説明を要するため、当局からも輸入者に対して丁寧な説明を求めたい。

5. 質疑応答

事務局説明、オブザーバーからの意見等を踏まえ、委員から意見等を伺った。

委員からの主な意見等は以下のとおり。

(経済、社会情勢等)

・少額輸入貨物の課税制度上の課題や水際取締り上の課題のいずれも問題意識を理解する。他方、越境ECの拡大は、デジタル化の進展のみならず、最近の経済情勢、物価高や格差の拡大等を反映しているのではないか。今回の見直しが少額輸入貨物の輸入を抑制する目的と捉えられると国民の理解を得るのが難しくなる可能性がある。越境ECは健全な形で発展していくことが望ましく、その具体化が今回の見直しで検討する事項だと明確になると国民の理解も得られると思う。

・少額輸入貨物が急増し、税関も手が回らないことにより、不正薬物や知的財産侵害物品、健康被害を引き起こすような越境EC貨物が国内に流入する、しやすくなる状況に危機意識を持つ。アメリカ、EUなど諸外国ではこうした貨物への対応が検討されているため、日本への流入リスクが更に高まっていると感じている。

(課税制度)

<少額免税制度>

・内外事業者の課税の公平性を確保する観点から、少額免税制度を見直して、少額輸入貨物を機械的に課税しつつ効率的に運用していくことには一定の合理性があるが、税関・通関業者や消費者に過度な負担をかけないことを考慮すべき。

・少額免税制度によって、国内外のイコールフッティングが保たれておらず、経済活動にゆがみが生じている。課税の中立性の観点からは、こうしたゆがみを生じさせるべきではない。一方、実務的な観点からどこまで対応できるのかは検討していく必要があると認識している。

・シームレスな物流の実現のためには、ボトルネックとなる手続き的な障害を取り除くべき。EU方式は税関で、ボトルネックの度合いが強まる印象。税関当局も、人手不足を考慮し、手続きの簡素化を図るべき。日本の通関実務の手間が増えれば、港や空港の競争力にも影響するのではないか。

・消費税に係る少額免税制度については政府税調専門家会合でも見直す方向で議論されており、見直しにあたっては豪州方式を推す委員が多いと承知している。他国では、消費税の少額免税制度は廃止し、関税は維持する例が多い。日本では通関実務への影響が大きいEU方式をEUで実施できているのは、国際郵便についても申告納税方式が採用されているからではないか。

・少額免税制度の見直しにおいて、プラットフォーム事業者に納税義務を課すことに理論的な整理が必要ではないか。本来、関税及び輸入消費税は、輸入者が納税義務を負うものと理解している。

<課税価格決定の特例>

・個人使用目的で輸入される貨物か否かで取り扱いが違うことにより、経済活動にゆがみが生じている。課税の中立性の観点からは、こうしたゆがみを生じさせるべきではない。

・課税価格決定の特例について、16,666円超の価格帯においても課税標準に一定の乖離が生じることを強調すべき。昭和55年に、関税のみを対象に当時珍しかった海外旅行の土産品を念頭に法制化されたものだが、現在では消費税が10%となっており、既に課税の公平性の観点で時代に合わなくなっているのではないか。

<その他>

・通関業者にとって立替払いが負担となっているとのことだが、サービスで行っているものなのか。それとも、契約に基づくものなのか。そして、他国においても同様の慣習があるのか。また、NACCSシステム上で輸入者が口座を設ける制度を活用するなど既存に対応できる課題ではないのか。

(水際取締り)

・制度に瑕疵がある結果、コンプライアンスを確保した通関業者が越境EC貨物の取扱いを忌避することが本来あってはならない。

・多数の利害関係者がいるインターネット空間においては、そのゲートキーパーたるプラットフォーム事業者が役割・責務を負うことが現実的かつ効率的。

・一部の通関業者が事前情報等の提供をしているとのことだが、成功と失敗の要因は何か。情報提供が任意であることが要因ならば税関と通関業者の連携において、情報提供の義務付けは考えられないか。

問い合わせ先

財務省関税局関税課

電話:03-3581-4111(内線5277)

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