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施設整備業務等の再点検のための調査委員会報告書の概要

厚 生 省

平成9年3月31日

前 書 これまでの検討状況と報告書の基本的性格

しろまる 今回の社会福祉施設整備補助金等の仕組みを悪用した事件について、事実関係の解明とともに、施設整備補助金の選定手続の見直し、社会福祉法人の認可や運営に関する業務の適正化等を図るため、平成8年12月5日、厚生省に「施設整備業務等の再点検のための調査委員会」を設け、再点検を行ってきた。
しろまる 調査委員会は、まず今回の事件の実態解明等を踏まえた特別養護老人ホームの施設整備に係る改善措置をとりまとめ、本年1月31日に第1次報告書として公表を行った。
しろまる 本報告書では、特別養護老人ホームに係る改善措置を踏まえながら、その他の社会福祉施設、医療関係施設、水道・廃棄物処理施設及び国立病院、社会保険関係施設並びに出向人事の在り方等についても見直しを行い、第1次報告書に示した事項も含め、調査委員会の検討結果を総括的にとりまとめた。

(全体構成)

第1部 特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設の整備等の再点検と改善措置

第2部 その他の分野の施設整備等の再点検と改善措置
第3部 出向人事等の在り方

第1部 特別養護老人ホームをはじめとする社会福祉施設の整備等の再点検と改善措置

(第1部中下線部は第1次報告書から内容に変更のあった点)

1 今回の事件の実態解明

しろまる 今回の事件は、第1次報告書に示したとおり、社会福祉施設が高率の補助金や政策融資等公費で賄われる仕組みとなっていることを悪用して、厚生省から出向していた県の担当課長の関与の下に、次々と複数の特別養護老人ホーム等の認可を受け、その建設に伴って総額約27億円にものぼる多額の差益を発生させた(「利ざや稼ぎ」を行った)もの。
しろまる 今回の事件から導かれる問題点としては、以下のとおり。
・ 県における補助対象施設の選定手続について、国は明確な基準を示しておらず、透明性を欠いていたり、施設・法人の認可手続等に不明確な点があり、県の担当課長の独断による認可を許したのではないか、
・ 建設工事契約、工事監督、検査等の指導が公共工事等に比べて緩やかすぎたのではないか、
・ 社会福祉法人の運営体制が理事長等の恣意的運営を可能とするものとなっていたのではないか、
などが挙げられ、厚生省としては、これらの点についての仕組みの不備や不十分な指導については、反省し、見直しが必要。

2 総点検結果

しろまる 第1次報告書で示した特別養護老人ホームの総点検に加え、その他の社会福祉施設についても総点検を行った。
(1) 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の認可審査
(2) 社会福祉施設の設置に係る社会福祉法人の運営体制
(3) 社会福祉施設の建設工事の発注契約状況
しろまる このうち、(3)については、国庫補助に係る特別養護老人ホームについて実態調査を実施。
しろまる 国庫補助に係る特別養護老人ホーム以外の社会福祉施設についても実態調査を実施。
しろまる 都道府県市の特別養護老人ホーム建設工事契約入札の指導状況等についても調査を実施。

3 社会福祉施設の整備等に係る改善事項

しろまる 今回の事件から導かれる特別養護老人ホームの施設整備に係る問題点と総点検結果を踏まえ、その改善事項を次のようにとりまとめた。
しろまる その他の社会福祉施設の整備についても、基本的にこれらの改善事項と同様の措置を講ずることとした。
しろまる これらの改善事項については、別紙のとおり必要な通知の発出を行い、可能な限り平成9年度の整備事業から適用する。
(1)補助金交付対象施設決定方法の明確化
(1) 国における整備(協議)基準の明確化
(2) 都道府県市における補助対象施設選定の適正化
ア 合議制による補助対象施設選定の実施
イ 施設整備と独立した法人審査体制の確立
ウ 都道府県市における国庫補助協議を行う施設に関する情報の公表
エ 国における補助対象施設の情報の公表
(3) 国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資審査の並行実施・連携
(4) 法人認可及び事業団融資に係る事務の簡素化
(5) 民間団体による施設整備補助の場合(国庫補助に準拠)
(2)公共工事に準じた建設工事契約の適正化
(1) 県の公共工事に準じた契約手続(入札の実施)
(2) 入札の実効を確保するための指導項目の明示
(3) 一括下請負の禁止
(4) 都道府県市による現地調査の実施
(5) 民間団体による施設整備補助に係る同様の指導
(3)幅広い人材の参画による公正な社会福祉法人運営の確保
(1) 幅広い人材の理事会への積極的参画
(2) 評議員会の活用等による幅広い人材の法人運営への参画
(3) 監事監査の充実による法人内部牽制機能の確保
(4) 役員の公開
(5) 財務諸表等の自主的な開示
(4)監査・考査の改善

(5)共同募金会の指定寄付金制度の運用の適正化

(1) 法人と特別の関係にある寄付者についての審査の徹底
(2) 一定額以上の指定寄付金の公表

4 埼玉県、山形県の今回の事件の関連施設の事後処理策
しろまる 今後、国と県が一体となって、新体制の法人の下に事件の関連施設の円滑な再建と事業の実施が図られるよう適切な指導や必要な補助金、融資の確保等に努めることとする。
しろまる 現在工事中の5施設については、現地調査の結果、手抜き工事はなく適正に工事が行われており、施設を補助目的どおり使用できること、地元自治体の早期開設の要望も強いこと、8年度分の補助金は関係者間の協議によって全額建設用途に充てられることが確実なこと等を踏まえて交付決定を実施。
しろまる 一方、これまでの元請額と下請額の差額については、法人が建物の引渡しを受けた後、今後精査して必要な措置を講じる。小山等原因者への厳正な対処も既に事業を開始している3施設についても同様の調査を実施。

5 さらに対応の必要な課題

しろまる 今回の改善措置の効果を客観的に評価しつつ、さらに特別養護老人ホーム等の社会福祉施設の整備・運営の実態を調査し、特別養護老人ホームを中心に社会福祉法人や社会福祉施設の整備・運営の在り方を検討するため、省内に検討会を設置して中長期的な観点から検討していく。

第2部 その他の分野の施設整備等の再点検と改善措置

1 医療関係施設等

(1)医療関係施設

しろまる 医療関係施設については、開設者は医療法人や個人が大部分であり、へき地、救急医療体制の整備や患者の療養環境の改善等、一定の政策目的に沿った事業を実施している施設に限定して国庫補助が行われている。また、これらの補助は新設の施設に対してではなく、主として既存施設の改築等について行われている。
このように補助対象となる施設が限定されていること、大部分が公費で賄われる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること、既存施設の改築等が大部分であること、また、特別養護老人ホームのような市町村からの委託事業ではないこと等から、特別養護老人ホームの国庫補助と同列に論じることはできない。
しかしながら、広く施設整備補助金に係る業務の適正化を図る観点から、事業の性格も踏まえ、特別養護老人ホームの例も参考として、以下の必要な改善方策を講じることとした。
(1) 国における整備(協議)基準の明確化
(2) 都道府県における補助金交付対象施設選定の適正化
ア 合議制による補助対象施設選定の実施
イ 都道府県における国庫補助協議を行う施設に関する情報の公表
ウ 国における補助対象施設の情報の公表
(3) 国庫補助協議と社会福祉・医療事業団融資との連携
(4) 建設工事契約の適正化
ア 1億円以上の国庫補助に係る施設の原則競争入札の実施
イ 一括下請負の禁止
ウ 入札結果等の公開
(5) 1億円以上の国庫補助に係る施設の建設工事中間点及び完了点における都道府県による現地調査の実施等
(2)老人保健施設
しろまる 老人保健施設については、開設者は医療法人が大部分であること、大部分が公費で賄われる特別養護老人ホームと比較して補助の仕組みが異なること、また、特別養護老人ホームのような市町村からの委託事業でないこと等から、特別養護老人ホームと同列に論じることはできない。
しかしながら、地域の中で施設整備が急速に進められている新設の施設整備であることを踏まえ、特別養護老人ホームの例も参考として、以下の必要な改善方策を講じることとした。
(1) 国における整備(協議)基準の明確化
(2) 都道府県における補助金交付対象施設選定の適正化
ア 合議制による補助対象施設選定の実施
イ 都道府県における国庫補助協議を行う施設に関する情報の公表
ウ 国における補助対象施設の情報の公表
(3) 国庫補助協議前の社会福祉・医療事業団への事前相談
(4) 建設工事契約の適正化
ア 原則競争入札の実施
イ 一括下請負の禁止
ウ 入札結果等の公開
(5) 建設工事中間点における都道府県に対する書面等による報告、建設工事完了点における都道府県の開設許可に当たっての公共事業担当部局と連携をとった現地検査の実施

2 水道・廃棄物処理施設

しろまる 水道・廃棄物処理施設の整備は、地方自治体の公共事業であり、地方自治法等に基づき工事契約の適正化、競争入札の実施、補助対象事業の情報の公表、施設の現地調査等の手続が厳正に実施されているが、施設整備補助金に係る業務の一層の適正化を図る観点から、さらに以下の事項について改善を図る。
(1) 一括下請負の禁止の徹底
(2) 合併処理浄化槽について、市町村における現場確認、写真審査、補助金交付事務と出納事務の相互チェックの徹底
(3) 国庫補助内示結果、入札結果の公表の徹底
(4) 新技術に係る国庫補助金の採択基準の明確化
(5) 合併処理浄化槽に係る国庫補助金の重点配分の基本方針の明確化

3 国立病院、社会保険関係施設

しろまる 国立病院、社会保険関係施設は、国の直轄事業として公共事業並びで実施しており、「公共事業の入札・契約手続の改善に関する行動計画」(閣議了解)等に基づき実施しているが、施設整備に係る業務等の一層の適正化を図る観点から、さらに以下の事項について改善を図る。
(1) 入札業者の資格審査の充実
(2) 工事監理業務量の平準化、建築等専門職員の活用による監理、検査体制の強化
(3) 入札結果等の公表
(4) 物品購入、役務関係の契約手続の適正化

第3部 出向人事等の在り方

(1)綱紀の保持
(1) 厚生省独自の綱紀粛正方針の策定(平成8年11月29日)
(2) 厚生省職員倫理規程の制定(平成8年12月26日)、厳正な運用
(2)出向人事の在り方
(1) 出向自治体、職務内容、職種、時期等の多様化
(2) 同一ポスト長期就任の見直し(技官等の特別な職務を除く)
(3) 綱紀の保持等に関する出向前研修の充実

終わりに

しろまる 本報告で示した一連の改善措置で未実施のものは、できる限り速やかに実行に移す。
しろまる 今回の事件は、厚生省内で決して風化されてはならず、今後とも調査委員会において不断の業務点検を行い、国民の信頼回復を図っていきたい。


改善措置を実施するための関係通知の発出について

《協議基準関係》
(1) 「平成9年度社会福祉施設等施設整備費及び社会福祉施設等設備整備費の国庫負担(補助)にかかる協議等について」
(平成9年3月6日 大臣官房障害保健福祉部長、社会・援護局長、老人保健福祉局長、児童家庭局長連名通知)
(内 容)
社会福祉施設を通じた基本的整備方針として、広く地域に開かれた在宅福祉の推進拠点としての機能を果たすもの、土地の有効活用等を図るもの等を優先的に整備すること等を規定するとともに、補助対象施設の選定の基準として、